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動物出てくるからナゴム、とも限らないので別ページ設けました。皆様のオススメ本を教えてください。

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「トマシーナ」 ポール・ギャリコ/矢川澄子 訳/角川文庫

スウ(2003.02.01)
●マクデューイくん成長記
自分の仕事に誇りはあるがやりがいを感じていない、幼子を残し妻に先立たれ神を信じていない男。アンドリュー・マクデューイ。
娘の猫(トマシーナ)をさっさと安楽死させてしまうようなこの人が、どれだけの事があると変わっていくのか、が興味深かった。ちょっとやそっとの事でこんな頑固者のくそおやじが変わってもらっては困るのだ。
でも、読んでいくうちにこの人も悪い人ではないし、悪徳獣医という訳でもない、娘への愛情表現がへたくそでかわいいところもある奴だ、というのが分かってきて楽しくなった。
弱り目にたたり目式にどんどんかわいそうな事になって行くのにも同情したし、
「この地上の貴重な生が祈祷だの呪文だのお追従だのをごにょごにょ唱えただけで左右されたり加減されたりするなんて余計なお世話だ」 という考え方にもけっこう同感だ。
自己の内部を見つめるというのがうまく出来ずにリスを話相手に人参で買収するところなんか実に哀しくてかわいい。変わっていくきっかけも迫力と説得力があり面白かった。
感動して涙ぐんでしまった所は、牧師のペディ氏がメアリ・ルーダにトマシーナの思い出話をしてなぐさめる場面。ここだけ読んでも、作者の猫への愛情の深さがよく分かる。ペットをなくした人の悲しみ・喪失感というものを、最近まであまり深く考えた事が無かったけれど、『グーグーだって猫である』を読んだり、REIさんのこともあって、メアリ・ルーダが悲しみのあまり命をも落しかけたという話に実感がわいた。
人にとって、愛猫がもはやいない、ということもさることながら、”みすみす死なせた”という事が一番苦しいこと、そしてその”死なせた”のが、一番愛していたはずのお父さんだったとしたら。7歳の子供でなくとも心を閉ざし病気になってしまうかもしれない。

「ジェニー」の時に感じた、 男ってしょうがないんだよ、やさしくてやわらかな女性に助けて欲しいんだよ、といいたげな作者の気持ちもまた感じた。女性に対する敬意・理想といったもの。心の狭い女性の私としては、そんなに甘えんな、という気がしなくもないが、自分の属性を検める思いもした。

最後、マクデューイ氏が人が変わったように完璧な「いいひと」になるのじゃなくて、”自分の思い通りにならないとひげを突き出してわめきたてる”人のままでいてくれたので安心した。
それと、彼が”神を信じるようになった”というよりは”神とけっこう仲良くやっていける”という表現になっていた所もすごく好きだった。



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