回転ドア 再び

 年末にメールが入っていた。私の回転ドアに関するブログを読んで、新型回転ドアについてコメントを求めるものだった。そのブログを書いたのは5年前だった。ブログを書くきっかけとなった事故が起きたのは2004年だ。月並みだが光陰矢の如しの思いだ。

 事故から8年の間に、巷にあった回転ドアはどんどん駆逐されていった。先日もあるビルで、事故後使用禁止のまま残っていた回転ドアが、改装工事で取除かれていた。
 又8年の間に、欧米を旅行する機会が何度かあって、回転ドアを使用する機会も多々あった。そして、日本人が閉まりかけの回転ドアに飛び込んで、ドアを急停止させるのに何度か遭遇した。「死ぬよ!」と、言ってやりたいと思った事もあったが黙っていた。それを口にする品位の問題もあるが、ドアは軽快に急停止して特に危険を感じなかったからだ。

 本学の図書館には、先述の新型回転ドアから回転ドア部分を取除いたような回転型スライドドアがある。1984年の竣工だが、図書館内部はゆったりとしていて階段の手摺りも太く、日本人の感性で設計されていないと感じていた。今回改めてドアに注目すると、初期の設計は回転ドアでなかったのだろうかと推測させられる。

 欧米で回転ドアが普及しているのは冬季の防寒対策とそれに伴うエネルギー節約効果が大きいからだろう。  日本では風徐室付のスライドドアが普及していて、同様の対策がなされて省エネ対策も万全だとの認識があるのかも知れない。
しかし、国交省の比較データがあって、「2重スライド自動ドア(風除室つき)と比較し、約90%程度の省エネ」と報告している。驚異的な数字と思うが、あの事故で全てが吹っ飛んだままだ。

 風徐室付のスライドドアに慣れ親しんだ日本人が、回転ドアを受入れるには危険なドアというレッテル以外にも取去る必要があるものがあるかも知れない。それは、ドアを通過中の閉塞感や、真っ直ぐに進めない違和感だろう。閉塞感は重厚なステンレスドアをやめて、デザインを洗練させれば緩和されるだろう。開いたドアの真ん中を通過出来ずに右に寄る違和感は、ドアの構造にも改善の余地があるかも知れない。
 しかし、エスカレータだが昔は皆、真ん中に立っていた。1984年にロンドンに出張した同僚から、今のように端に立って急ぐ人に道を譲るルールを聞いた時は良い事と思った。日本ではいつから普及したか定かではないが、当たり前の風景になっている。
 回転ドアはどこが発祥の地かは知らないが、右側通行になるように左回りが世界共通だ。これは日本人がその気になれば受入れ易いだろう。
(だから、飛び込みたくなりやすいんだって!?)

 昨年の原発事故の後、改めて節電が叫ばれるようになった。そして4月には東京電力が企業向け電力料金を値上げするという。節電のためにビルが風徐室付自動ドアから回転ドアに変更される可能性はどの程度あるだろうか。
 新型回転ドアは海外から関心を持たれているという。何時の日か、本場欧米でも認知された製品を国内に展開して欲しいと思う。 (2012/1/22)


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