回転ドア
HPを立ち上げた時、同時に設けた雑感に「回転ドアの事故対策について」と題するブログを掲載した。そして「小型だが良い回転ドアを見つけた。大型の自動回転ドアもこのように進化していく必要が有るのではと思う。」と結んだ。
回転ドアはあの事故以来、国内ではどこも自動式はおろか手動式まで使用禁止状態で、使っているのを見た事がなかった。しかし昨年6月にJR水道橋駅近くのオフィスビルを訪れた際に使用する事ができた。1階に2カ所ある出入口には自動式の回転ドアが稼働していた。通常の回転ドアとは少し変っていてベルトコンベアを横にしたような形で、ドアに入ると数メートルは直線を歩く事になる。通常の回転ドアの狭苦しさを改善したものだろう。
又2階にもテラスへの出口に円形の自動回転ドアが設置されていた。子供が出入りする性格のビルで無い事もあるが、世間の風潮に流されずに使用されているのを見て感心した。
昨年死亡事故で話題になった、エレベータや湯沸かし器は、その市場規模が縮小することなく事故を起こしたメーカーに代って他のメーカーが製品を供給できた。しかし自動ドアは回転ドアの需要が風除室付のスライドドアに代替されてしまった。回転ドアは危険性ばかりが宣伝されてしまったが、風徐室付スライドドアとは比べものにならないほどの省エネ効果など優れた特徴を持っている。回転ドアの市場が萎んでしまった事は、日本の炭酸ガス排出量削減にも影響を与えているのではと思う。
それだけでなく、事故を起こした稚拙な製品ばかりが話題になり、他の良い製品が無視された結果、まじめに良質の自動回転ドアを製造してきたメーカーに甚大な被害を与えてしまった。
先日、事故を起こしたメーカーが改良された回転ドアを発売するとのニュースを読んだ。
その中で「・・・果たして新型の自動回転扉は,事故が起きなくてもいつか開発されただろうかと。・・・」と出てくる。冗談じゃない。
「帰ってきた自動回転扉」というタイトルだが、40年前に流行った3人組のあの歌を思い出してしまった。 (2007/2/8)
2007/3/2追記
あの歌を初めて聞いたのは、発売直後の正月に友人の親戚が営むスキー民宿でだった。「♪天国よいとこ1度はおいで・・・」と友人達と楽しく歌った青春の思い出がある。
全ての回転ドア関係者の方に、あの歌の英語名「I Only Live Twice」という言葉を贈りたい。現在は皆無でも回転ドアには大きな潜在需要があると思う。自ら市場をぶっ壊したメーカーが再チャレンジを決心したのは、そんな計算が有っての事だろう。
先述の回転ドアの優れた特徴だが、リンク先は国土交通省である。改めて書くまでもないのだが、大型自動回転ドアと風徐室付スライドドアを併せ持つある病院で、別の日に片方づつ稼働させた時の室温変化が記録されている。朝の室内温度15℃が設定温度の22℃になるまでに、風徐室付スライドドアの場合9時間、自動回転ドアの場合1時間30分掛っている。
このデータをどのように計算したかは分からないが、「2重スライド自動ドア(風除室つき)と比較し、約90%の省エネ」と結論付けている。つまり、風徐室付スライドドアは回転ドアの10倍、空調などのエネルギーを消費させているという事だ。
この測定は1995年1月に行なわれた。平成11年改正省エネルギー法に合わせて、回転ドアの普及促進を計りたかったのだろう。しかし構造基準が無いのは拙速だった。又遅ればせながら出来たガイドラインは、現状追認形で最低限度を示すものであり、これが満たされれば万全というわけでもないと思う。
回転ドアは安全性や使い勝手について、更に研究を積み重ねる必要があるし、まだ進化する余地があると思っている。その意味では、再チャレンジで開発された新製品にも関心がある。ドアの重い軽いは程度問題だし、待避構造は常識だと思っている。フェイルセーフとフールプループ対策がいかにきめ細かくなされているのかが問題だ。
設計の現場では忙しさなどで、自分が設計して、出来たものを目にする機会が無い事がしばしばある。事故の話を聞いた時、ふとそんな状況を思い浮かべてしまった。しかし今回は十分に時間があったはずだ。
六本木ヒルズのあの死亡事故から3年になる。そろそろトラウマを克服して、不都合な真実と向き合う時期が来たと思う。
ビルのオーナー達は回転ドアの信頼性や利用者のエコマインド動向を注意深く探っているのだろう。
地球環境問題に貢献する回転ドアは、近い将来に、風徐室付スライドドアより高いステータスを得られるものと思っている。
2007/8/17追記
夏休みに旅行したがその帰り道、パリのシャルル・ド・ゴール空港で待避機構が付いた自動大型回転ドアにお目に掛かった。地図では3階出発ロビー入口の2.01〜2.17の丸い形がそれに相当する。
回転中心の下側に駆動機構がある。安全センサは人の背後側ドアの下に光電形が設置されている。外周側の小さな白い箱から、回転中心側の四角い穴に向けて赤い光線が発射され、遮断されたらドアは停止する。待避機構はドアが折れ曲がるようになっていて、非常時にドアとして機能するほど大きい。折れ曲がり確認のセンサは先述のセンサと兼用だろうか。他にも、引っ掛かりを検知するセンサがあるかもしれない。
デザインだが、洗練されている。材質は不明だが、白い枠と広い透明な面は軽快な感じがする。回転中心部が透明になっているので、ドアの向こうを見透し易く、利用者に安心感を与える。この事はスライド式の自動ドアとも共通する。実は死亡事故を起こしたドアは重厚で、重戦車の前を歩かされるような圧迫感があったと思っている。
ツアーの日本人が、大きなスーツケースを押しながら通る。
気忙しく、又慣れていないからだろう。回転ドアに大勢が駆け込んだ。ドアに挟まる人はいなかったが、満員だ。どこかのセンサが検知して、ドアが急停止した。1秒程で動き出したが、再び停止した。これを繰り返した挙げ句、待避機構のドアを押し開いて出て行ってしまった。待避機構のドアが開いたままなので回転しない。後に続く我々は立ち往生だ。こうなると頬を引き攣らせて笑うしかない。すでに通過した人が戻ってきて、ドアを閉じたので動きだし、通過できた。
安全に設計された回転ドアでも、機能しない事もあると思い知らされた。
回転ドアに駆け込んでも、エレベータや電車のドアに駆け込むのと違って、1本早く到着できるものではないから、何の得も無い。機械の方にどのような対策が必要かは、にわかには思い浮かばない。大人も小人も、無意識な駆け込みを戒める気持を持つように、慣れてもらう必要を感じた。特に海外旅行者には必須だ。
戻る
Home
|