放射能汚染とどう向き合っていくのか




◇ 国が示す基準値の矛盾と汚染ガレキの安全性は? ◇

Haginokai 2012 Miyagi Japan.
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2011年3月11日に宮城県沖を震源とした巨大地震・東日本大震災では多くの犠牲者を出し、家屋などが津波で流されました。
震災ガレキは家屋に留まらず、コンクリートや自動車などあらゆるものがガレキとなり、その量は膨大なものとなってしまいました。
しかし本当の悲劇はそれだけに留まらず、福島第一原発が爆発したことで、大量の放射能で被災地も汚染されてしまいました。

悲しいことに、震災ガレキも放射能汚染され、そのガレキについても何らかの方法で処理しなければ、地域の復興への道筋が全く見えない
ことから、何としてでも処理しなければなりません。 
ところが、ここでまた落とし穴が現れてしまったのです。 被災地では、町の今後の復興計画や被災した人が住むための仮設住宅の建設
などで身動きがとれない状態が続いてしまい、更に地元にある既設の焼却場だけでは処理しきれないという問題が発生しました。
このような状態に危機感を持った国は、全国の自治体に対して、震災ガレキを受け入れ、処理を協力するよう呼びかけたのです。
実はこの広域ガレキ処理について、私たちも受け入れ先の住民も大変理解に苦しんでいるのです。

何故、理解に苦しむのかと申しますと、国や行政はガレキを空間線量計で計測し、その線量が低いという理由などで安全宣言を
行っているからです。 ましてや、汚染されているという危険性を最優先に考えなければいけません。 
全国の自治体への受け入れについては、事前に決まった量のガレキの試験焼却を行い、残された主灰などの汚染レベルも確認したうえで
安全宣言を出しているとのことですが、その汚染レベルの基準値にも大きな問題が潜んでいるのです。
例えば、原発事故を起こした東京電力が管轄する柏崎刈羽原発(新潟県)では、発電所から出た低レベル放射性廃棄物1キログラム
あたり100ベクレル以下の廃棄物については、ドラム缶に入れて厳重管理しなければならないなど、安全に対する基準値がしっかりと
定められています。 それに対し、今回国が打ち出した安全基準値は、原発廃棄物の基準を上回る「8000ベクレル」なのです。

原発などから出される放射性廃棄物ですら100ベクレルを上限としているのにも関わらず、その倍以上という8000ベクレルもの
基準値が、決して安全なわけがないのですから。 ましてや、国際的な原子力の安全に係る規定では、放射性物質を移動してはならない
ということが定められています。 それを無視した国の方針は異常としか言いようがありません。

そのような問題を抱えながらも、被災地では汚染ガレキを受け入れてもらう前段として、受け入れ先の首長と同伴で線量計を用いての
安全性PRを行っている行政もあるようですが、実は、線量計のようなもので細かな汚染の実態は証明できないということです。
インターネット上で「ガイガーカウンター(線量計)で食品計測」というような見出しを目にしますが、よほど強力な放射線を放っていない限り、
線量計での食品や固体の放射線量を判別することは困難なのです。 そのために食品などの固体検査では、しっかりと精度を出すために
ガンマスペクトルメーターなどといった専用機器で計測しているわけです。
食品は体に入ることから検査体制を厳しくするのは当然ですが、ガレキについては「処分場へ埋設するので基準値が高めでも安全です」
などとは言い切ることができず、このような格差に矛盾も生じているのです。 

この実態を背景に、震災ガレキの放射線量はどれぐらいあるのでしょうか。 もしかすると100ベクレル超えのものが多数あるのでは
ないでしょうか。 復興を妨げるように聞こえるかも知れませんが、妨げようとして言っているのではありません。 
処理する場合について、しっかりとした段階的な検査体制と、基準値や処理方法を明確にしたうえで判断しなければらないということを
訴えているのです。 ましてや、放射性物質を移動してはいけないと、国際的な決まりごとがあるからです。

本来は、放射性物質そのものの量や放射線量について、原発内で保管されている低レベル放射性廃棄物の基準値と比べて高いのか
低いのかを事前にしっかりと測定しておく必要があり、その結果を受けて安全か否かを判断しなければならないのです。
それなのに国は、汚染されたガレキを全国の一般焼却場で処分しようとするのですから、危険極まりないことです。
このままでは、汚染されていない国土までもが汚染されてしまうと危険性と隣り合わせです。

「絆」に隠されたこうした行動は極めて危険であり、「全国土を放射能で汚染しよう!」キャンペーンとしか言いようがありません。
国や行政は、こうした的確ではない行動をしているが故に、各地で「受け入れ反対市民運動」が勃発しているのです。