放射能汚染とどう向き合っていくのか




◇ 科学と経済を優先した人体実験 ◇

このような環境で、私たちは今後どのように生きていけばよいのでしょうか。 原発事故当時、当時の官房長官が口にした「ただちに影響はない」という言葉。 これは、私たちに対する忠告と捉えた人は少なくないはずです。 ただちに影響はなくとも、後に影響が出る人の可能性が高まったということを明確に示唆しています。

Haginokai 2012 Miyagi Japan.
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福島近郊の低線量地域の町や農村の一部ではまるで何事も無かったかのように事故前と同じ生活を続けている人も居ます。
汚染されたままの校庭を走り回る子供たち。 汚染されたままの田んぼの泥に素足で入って田植えをする子供たち。 汚染
された畑の土を耕せば放射性物質が薄まるから問題ないという行政の発表を横目に農作物と作る生産者。 
何の根拠もなく、国の基準値以内であれば全く問題ないと安全性をPRする行政や自治体。 確かに基準値以内で
あれば安全と言い切れるのかも知れませんが、実は、低線量被曝の問題については、科学的にも未だ解明されておらず、
放射能と病気の発症との因果関係も解明されていないのが実態と言われています。

しかし、過去のチェルノブイリ原発事故では、事故後3〜5年後には甲状腺がん・肺がん・白血病など、多くの人々が深刻な病に
侵されていってしまったのです。 それでも当局は「放射能との直接的影響はない」と国民を騙し続けてきました。
このことは未だに行われ続け、本音で語りたい医師の思惑すら封印しようとする国家的な圧力が働いています。
まるで、今の日本とまったく同じ過ちを犯しているのです。 福島では事故直後、長崎大学から招いた医師であり大学教授を地元
大学の副学長として受け入れ、県民の放射線被曝による実証データ収集が行われはじめています。
このようななかでも、私たちは普通の生活を続けていかなければなりません。 生活せざる得ない環境下に置かれているのです。
本来、国は汚染地帯に住む住民を避難させなければならないはずですが、そうなると莫大な保障問題に発展し、国の財政は破綻
していきます。 ただでさえ狭い日本列島を守りたい国は、様々な問題を阻止するために見て見ぬふりをしていくでしょう。

それでも生きていかなければならない私たちが最も注意しなければいけないことは、内部被曝に細心の注意を払うということです。 
例えば、汚染されたままの校庭を走り回ると、当然その埃やチリが舞い上がります。 子供たちは活発に動き回るので、当然その埃
やチリを吸い込み、肺などに蓄積していきます。 蓄積すると、絶えず肺のなかで放射線を放ち、やがて病を発症してしまいます。
汚染された畑をそのまま耕せば、放射性物質が単に拡散するだけで何の解決策にもならず、微量ではあっても農作物に移行し、
農作物は低レベルの放射性物質と化します。 このようなことを未然に防止するために、本来ならば汚染された表土を剥ぎとって、
国がしっかりと保管場所を確保したうえで農作業を行っていく必要があるのです。

本来、数ベクレルでも人体に取り入れてはならない物質なのです。 食に関して言えば、毎日摂り続けなければならないものなので、
いくら基準値以下だから安全だと言われても、それはあくまで実証されていないはずの数字の一人歩きなので、細心の注意が必要
なのです。 国や行政は後先のことを考えず、どれも見切り発車の現状で安全性を発信し続け、一番大切な注意点を国民に周知徹底
しないという現状に対して危機感を抱いています。
多くの国民が不信感を抱いている以上、国は真実を明かし、今後の対策といった説明責任を「真心で」果たさなければなりません。
言い方は悪いですが、福島県民やその周辺の多くの住民は、
今後、長崎・広島で原爆被害を受けた私たちと同様、モルモット
のような扱いを受けることになるかも知れません。 
昔から学者などが、研究目的として放射線が人体に与える
疫学的影響を収集したいという声が高まっていてるのです。
私たち原爆被害者も、こうした屈辱から逃れられず、肉体的
・精神的にも苦しんできました。 同じ人間のはずなのに・・・