先に述べたとおり、放射性物質には非常に有害なものから、自然界に存在するものまで、1000核種近くあるとされています。
私たち生態系が地球上で生活している限り、放射線とは切っても切れない関係でもあるのも事実です。
その理由として、自然界には天然の放射性物質が存在するからで、宇宙から降り注ぐ自然放射線のほか、ウランやラジウム、カリウムがあります。地球の岩石などに含まれるカリウムの半減期は、およそ12億年とされ、動植物の成長にも必要不可欠な天然の放射性物質として、地球が誕生した頃から自然界に存在しているものです。
また、地球上に存在する様々な物質そのものが「原子や分子」で形成された集合体です。
しかし、なかには毒性の強い放射性物質もあることを挙げ、ここでは、2011年3月に起きた福島第一原発事故の爆発時に放出された天然核種以外の放射性物質について表にまとめました。
上記の図は、国の原子力委員会が算出した表の一部を抜粋したもので、主に生態系の健康を害する可能性がある放射性物質です。
今回の原発事故で放たれた有害な放射性物質は表に述べたものについては一部で、このほかに30核種以上の放射性物質が
大気中へ大量に放出されました。放たれた放射性物質は雲気流に乗り、地球を周回しながら、国内については希ガスとして拡
散したほか、雨などに混ざり、関東地方や東北地方の南部の大地を高レベルで放射能汚染したのです。
ここで図を改めてご覧いただくと、あることに気が付きづきませんか? あることとは、「放射線の種類」にあるα(アルファ)線・
β(ベータ)線・γ(ガンマ)線といった放射性物質の核種の違いについてです。 次のページでは、放射性核種について説明し
たいと思います。
Haginokai 2012 Miyagi Japan.
原発事故で放出された主な放射性物質 |
放出量(Bq) |
生物学的半減期 |
放射線の種類 |
人体への蓄積部位 |
キュリウム 242 |
1000億 |
162.81日 |
α線 |
骨・肝臓 |
プルトニウム 238 |
190億 |
50年 |
α線 |
骨・肝臓・生殖系 |
プルトニウム 239 |
32億 |
50年 |
α線 |
骨・肝臓・生殖系 |
キセノン 133 |
1100京 |
22秒〜17時間 |
β線 |
95%肺より換気 |
ヨウ素 133 |
680兆 |
12〜80日 |
γ線 |
甲状腺・全身 |
ヨウ素 131 |
16京 |
12〜80日 |
γ線 |
甲状腺・全身 |
テルル 129m |
3300兆 |
13.7年 |
β線 |
骨・甲状腺 |
ストロンチウム 89 |
2000兆 |
50年 |
β線 |
骨 |
ストロンチウム 90 |
140兆 |
50年 |
β線 |
骨 |
セシウム 134 |
1.8京 |
2〜110日 |
γ線 |
筋肉・全身 |
セシウム 137 |
1.5京 |
2〜110日 |
γ線 |
筋肉・全身 |
※Bq はベクレル。(秒間に原子核が崩壊して放射線を放つ放射能の量)