護衛艦ゆうだち“辛さと甘み、コクがあるビーフカレー”


       さて今回は、おおみなと海自カレーシリーズ第1弾『護衛艦ゆうだち“辛さと甘み、コクがあるビーフカレ
      ー”』
です。DD103護衛艦ゆうだちは、むらさめ型護衛艦の3番艦。従来のゆき型・きり型の後継となる
      次世代護衛艦として、1999年3月に華々しく就役した護衛艦隊のワークホースであります。
       今回が初となる大湊地方隊所属艦艇のカレーですが、まずはパッケージから見て行きましょう。大湊地方隊
      の桟橋に佇む護衛艦ゆうだちを、海面近くの高さから見上げる構図で撮影していますが、背後の山々や木々、
      建物が白く雪をかぶっているお陰で中央の護衛艦ゆうだちが黒潰れしているのが迫力ありますね。艦首の国旗
      が横っ飛びにはためいているのも、冷たい風が吹きすさぶ下北半島の厳しい気候が偲ばれます。
       その一方で、なぜか暖房の効いた艦内の暖かさも感じられるのは、白地のパッケージに配されたオレンジ色
      のお陰かな?下北半島はかれこれ30年近く前に一度行ったきりですが、冷たく肌を刺す様な11月の空気
      思い出してしまいました。

       ちなみに呉海自カレーではお馴染みだった呉海自一等海佐に代わり、おおみなと海自カレーでは女性幹部自
      衛官
がマスコットキャラを担当。肩章を見るに一等海尉さんの様ですね。ぴっと揃えた律義な足元が、いかに
      も自衛官らしいなあ。
       箱裏面には海上自衛隊とおおみなと海自カレーの説明や味覚チャート、調理方法、原材料表示が呉海自カレ
      ー同様に簡潔にまとめられていますが、ゆうだちカレーの評価は辛味3、甘味3、酸味3、コク3、トロみ4
      僅かにトロみが突出しているものの、バランスよくまとまった味わいになっている模様です。

       さて前置きはこれ位にして、早速試食に移りましょう。しっかりと温めたレトルトをお皿にあけて、まずは
      一口。
       ほほう、これはこれは。まず最初に感じるのは果実由来のフルーティな甘さ。そしてその甘さを引き締める
      ほのかな苦み。さらに一呼吸置いて結構な辛さが舌に襲い掛かります。
       具は大ぶりな牛肉ニンジンジャガイモがゴロゴロで、なかなか賑やかな見た目。ひとつひとつのカット
      が大きいので、目で味わうワクワク感も十分です。
       カレー自体は色んな旨味が複雑に絡まりあった豊かな味わいですが、やけに牛肉に歯ごたえがあるというか、
      カットの角がしっかり感じられる固さに煮込みを留めているのが意外な感じ。これだけ味わいに深みがあるカ
      レーの場合、長時間の煮込みで牛肉もヤワヤワになっている事が多いものですが、このゆうだちカレーの牛肉
      には十分に噛み締め味が残っています。

       これは恐らく、ある程度煮込んだ段階でいったん牛肉を引き上げ、その後野菜を加えてカレーの味を調えた
      のちに、最後に再び牛肉を合わせてこのカレーを完成させたんでしょうね。牛肉の旨味を肉の中に閉じ込める
      形
になるので、この場合カレー全体の味わいはやや弱いものになりそうですが、牛肉に旨味と噛み締め味をし
      っかりと残しつつカレー全体をこれだけ力強い味わいに仕上げて見せた、ゆうぎり給養員の腕前おそるべし!
      
と言わざるを得ないでしょう。
       それにしてもこの、ちょっとクセになりそうなフルーティな甘み・・・うっとりさせられますね。母港大湊
      地方隊という土地柄を考えると、この甘味の正体はやっぱりりんごかな?でも、単純にすりおろしたりんごや
      ジュースを加えただけではない気がします。
       かといって、手をかけた自作りんごチャツネでもない気がするなあ・・・そう、りんごジャム。単純にりん
      ご
白砂糖、あと少量のレモン果汁ペクチンだけで作ったりんごジャムが、このゆうだちカレーのキモと見
      た!と、鼻息荒く原材料表示を確認しますが、うーん、りんごペーストはあってもジャムは無しか。

       あと、チャツネはないなと思っていたのに、しっかり原材料に含まれていました(笑)。またしても自分の
      舌のいい加減さ
を晒してしまいましたが、かろうじてりんごには辿り着いたので、この勝負は引き分けという
      事で・・・(笑)。
       それにしても、この噛み締める程に口中に広がる牛肉の旨味・・・煮込みに煮込んで旨味を全てカレーに捧
      げてしまう調理方法では、決して味わう事の出来ない世界でしょう。ビーフカレーのお手本の如きビーフカレ
      ー
なのに、必要以上に牛肉の旨味に依存しない・・・この一本芯のある頑固さは、ある意味青森、引いては
      北人の個性
にも通じる様な気がします。

       また、味覚チャート的にはどの評価でも4を誇っていい味わいなのに、そこであえて自己評価3を中心にし
      てしまう控えめな性格・・・これも東北の人っぽいですね。
       「あんた、いくらなんでもこの味わいで5段階評価で3はないだろう。自己評価とは言え、これじゃ他のカ
      レーの評価基準と合わないよ。4にしとこうよ」

       と諭しても、
       「いえいえ、私は3でいいです」
       って返ってくる感じ。うーん、まあ辛味と酸味は3でいいとしても、甘味とコクは十分に4に値する味わい
      だと思うんですけどねえ。

       そんなどこか控えめになってしまう護衛艦ゆうだちカレーですが、りんごという地元の名産品を有効に取り
      入れている点も、ご当地カレーとして好印象。総合満足度で十分にをあげられる逸品でありました。
       日本指折りの美味しいりんごの産地である青森県。そのりんごを育む大地へのリスペクトを込めた味わいだ
      ったと思います。そのカレーを食べているのは日本の海上防衛を支える海の男達ですが、やはり彼らの帰るべ
      き場所は陸(おか)なのだ・・・と思い知らされた『護衛艦ゆうだち“辛さと甘み、コクがあるビーフカレー”』
      でありました。




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