潜水艦うずしおチキンカレー


       さて今回は、横須賀海自カレーシリーズ『潜水艦うずしおチキンカレー』です。SS592潜水艦うずしお
      はおやしお型潜水艦の3番艦。SS595なるしおSS597たかしおとともに、横須賀地方隊において
      2潜水隊群第2潜水隊
を構成しています。
       まずはパッケージから見て行きましょう。横須賀海自カレー共通のネイビーブルー地の中央には、波しぶき
      をあげて浮上航行する潜水艦うずしおの力強い姿がレイアウトされています。逆光の下で撮影したのか、白っ
      ぽく光る海と黒潰れした船体のコントラストがカッコいいなあ。いかにも潜水艦らしい重量感と頼もしさが伝
      わってくる、実にシブい写真であります。

       双眼鏡片手の一等海佐君の隣には潜水艦うずしおの簡単な性能緒元が書いてありますが、主要兵装が『水中
      発射管一式、シュノーケル』
とありました。んん~?シュノーケルも兵装扱いになるの?
       もちろん艦内に酸素を取り込んでディーゼルエンジンを稼働させ、蓄電池に充電して戦闘能力を継続せしめ
      るという意味では立派な兵装かもしれませんが、それなら水中ソナーの方がはるかに兵器っぽい様な・・・。
      出典として海上自衛隊と書いてあるので、もしかしたらシュノーケルの管理も第一分隊(水雷科)の仕事なの
      かな?

       箱裏面には海自カレーの簡単な説明と、あと潜水艦うずしおのレシピをもとに商品化した横須賀市内の飲食
      店『どぶ板食堂Perry』さんのうずしおカレーが紹介されています。丸いお皿の中央にオムライス型の白
      ご飯を盛り、その周囲をカレーで囲むという珍しいスタイルですが、これは浮上した潜水艦をモチーフにして
      いるのかな?ここまでやるなら艦橋もつけてほしかったですし、いっそイカ墨ライスで真っ黒にしても良かっ
      たと思いますが、さすがにそれは遊び過ぎか(笑)。でも、シーフードカレーならアリかもしれないなあ、
      カ墨ライス

       余談はこれ位にして、まずはしっかり温めたレトルトを開封してお皿にあけます。おお、大きなニンジンと
      ジャガイモがごろごろ!
鶏肉もたくさん入っていて、いかにも獰猛そうなダークブラウンが美味しそうですよ。
      手早く撮影を済ませ、まずは一口。
       んん~?んんんんん~?なんというかこの・・・随分と塩気が効いたカレーです。甘みの強い日本米に合わ
      せる為か、もともと日本のカレーは海外のカレーに比べて塩分が強い傾向にありますが、それを考慮しても
      の塩っぱさは突出している
というか、非常に個性的なカレーです。

       そんな塩味に惑わされない様に、しっかりと味わって食べて行きます。スパイスの香りや辛味、野菜の穏や
      かな甘味
、そして鶏肉のすっきりしたコクも感じられますが、やっぱりこの塩味のインパクトが強烈。濃厚で
      太い甘さを前面に出してくる事が多い海自カレーですが、その中にあってまず塩っぱさを、然る後にじわじわ
      と甘さを効かせてくるこの潜水艦うずしおカレーはかなり珍しい部類かも。塩辛とかパンチェッタとか、なに
      か特別塩分の強い食材でも使っているのかと原材料表示を確認しますが、特にそれらしきものは見当たりませ
      ん。
       さらに栄養成分表示を確認すると、一人前200g中の食塩相当量が3.5gとありました。ああ、これは
      確かに塩っぱいはずです。ちなみに横須賀海自カレーシリーズの他の7種類の平均値が2.7gだったので、
      うずしおカレーの3.5g突出して多い数字であります。
       これまで食べて来た海自カレーの中では、缶入りのしらせカレーが結構しょっぱかった記憶がありますが、
      そのしらせカレーでも一人前200gあたりの食塩相当量は3.4g。うずしおカレーの方がさらに塩分が強
      いのか・・・そりゃこの塩っぱさにも納得です。

       狭い艦内に押し込められた状態で、長期間緊張が続く潜水艦勤務。酸素を余計に消費する運動など推奨され
      る訳もなく、乗組員にのしかかるストレスは相当なものであることは想像に難くありません。きっと隊員さん
      のご家族は体調に気を配り、成人病予防の観点からも食事には十分に気を使っていると思います。
       とは言え、肉でもお菓子でも酒でもそうですが、美味しいものに限って体に悪いんですよねえ(笑)。まし
      てや口うるさい家族の目が全く届かない海の中、こっそり隠れる様にして食べる塩っぱいものが不味い訳があ
      りません(笑)。皆さんも思い当たるところがありませんか?未成年の頃にこっそり隠れて飲んでたお酒の方
      が今より美味しかった
とか、夜中に家を抜け出してドキドキしながら自販機で買ったしょぼいエロ本の方が、
      今のエロ本よりもはるかにむらむらした
とか!
       と、ここまでやたらと塩味ばかりを強調し、いかにも体に悪そうに書いてしまったこのレポートですが、そ
      もそも栄養士監修のレシピをもとに作られている(艦ごとにアレンジはありますが)自衛隊の献立、体を壊す
      レベルで塩分が多いという事は決してない
はず。潜水艦うずしおの場合はカレーにこれだけの塩を使ったぶん、
      ちゃんと他の食品で塩分摂取量を調節して帳尻を合わせてあるのでしょう。

       揚げ物、ゆで卵、生野菜、和え物、飲み物、デザートのすべてを含めて海上自衛隊の金曜カレーなのですか
      ら、やはりカレー単体での食塩相当量だけであれこれ言い切ってしまうのは、木を見て森を見ないのと同じ
      と思います。
       とは言え、表現のとっかかりとしては申し分ないこの個性的な塩味。レポートを書く側の私としては非常に
      イマジネーションを刺激してくれるので、色んな意味で『美味しい』と言わざるを得ません。
       そんな私の脳裏に浮かんだイメージは・・・深い深い海の中。家族の目が届かないのをいい事に、今日もみ
      んなで体に悪いものを食べるんだもんね♪
とでも言っている様な愛嬌のある憎めないワルさ
       艦それぞれの気風は、初代乗組員達の雰囲気がそのまま受け継がれる事が多いと聞いた事がありますが、そ
      んなどこか微笑ましいちょいワルが、潜水艦うずしおの個性なのかも。
       「白状します!実は入隊前に○○○やってましたけど、黙って試験受けたら合格しました(笑)!」
       「白状します!防大にいた頃、こっそり○○○○した事があります!たぶんもう時効です(笑)!」
       「あー、実は俺な、○○○○○○の時に○○○で○○○と○○やってバレてえらい騒ぎになったけど、知ら
      ん顔して乗り切ってやったわ」
       「さすがうちの艦長・・・色んな意味で洒落にならねえ・・・」

       そんなやんちゃな人達が揃っていたのかもしれませんね、うずしお初代乗組員って。

       深海という過酷な環境下。些細なミスが冗談抜きで命取りになる毎日。油断も甘えも妥協も一切許されない
      
のは言うまでもありません。非日常が日常である隊員さん達の見えない働きによって、今日も日本の平和は保
      たれている訳ですが、そんな男達の中に息づいている中学生じみたちょいワルテイスト
       ああ、一度でいいからうずしおの乗組員の人達と飲んでみたいなあ。すごくいいバカ話がいっぱい聞けるに
      違いない・・・(笑)
と、しみじみ思ってしまった潜水艦うずしおチキンカレーでありました。




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