まずは朝食です。一日のスタートを切るべく、消化が良くボリュームのあるメニューを組みました。ガスス
トーブとコッフェルで湯を沸かし、メインのアルミパックを湯煎にかけます。
その間に粉末ドリンクを用意。2種類4パックが入っていたうちのEXOTICを選びましたが、エキゾチ
ック?郷ひろみ味?調べてみると“異国風”という意味でした。パッケージにはFantasie(ファンタジ
ー)とあり、『中身を400mlの新鮮な水に溶かすと、美味しく元気回復』と書かれています。開封すると、
フルーツガムの様なキツイ香りが漂ってきました。
説明書の通りに作ると、オレンジ色のジュースが出来上がりです。一口飲んでみると、ほほう、マンゴー味
でした。若干の化学薬品臭がありますが、酸味が爽やかで飲みやすい味です。あと口に僅かに残るマンゴー独
特のエグミまで再現されているのが驚き。これは異国風というより、南国風のテイストですね。
続いてHartkeks(固焼きクッキー)を開封。5㎝四方の大きさのクッキーが、12枚入っていました。食
べてみると甘さは控えめで、サックリした口当たりのクッキーです。そばボウロをさらにあっさりさせたよう
な飽きの来ない味で、そのままでも美味しく頂けますが、ここは沢山入っているスプレッド類と一緒に食べて
みましょう。
Bierwurst(ビールソーセージスプレッド)を開封。ソーセージと銘打ちながらも中身はパテ状で、そこは
かとなくネコ缶の様な香りが漂います。一口掬って食べてみると、これが実に美味しい!見事なソーセージ味
で、豚肉のコクと脂肪分の美味さが存分に味わえます。口当りも滑らかで、魚肉ソーセージをさらにきめ細や
かにした様な食感。これを固焼きクッキーに乗せて食べると、戦闘糧食とは思えないリッチな味わいです。
プルプル震えるゼラチン状のジュースがこれまた美味しく、味付けもごく最小限なので豚肉の風味がストレ
ートに堪能出来ます。いやはや、さすがドイツ。これは昔から肉を食ってる民族でないと出せない味でしょう。
たった50gしかなかったのであっという間に食べきってしまいましたが、これ、市販されてないかなあ。軽
めの赤ワインにはピッタリだと思います。いやはや、のっけから衝撃的な美味しさでありました。
続いてSauerkirsche(スミノミザクラのジャム)を開封。スミノミザクラというものを知らないのですが、
どうやらサクランボの一種の模様。このジャムもなかなかのスグレモノで、果実の風味が生きたあっさりと上
品な味わいです。MREのウソ臭い味のジャムとは全然違いますね。クッキーとの相性もよく、とても美味し
いなあ。
さて、そろそろメインのGemüsepfanne mit Tofuzubereitung(野菜と豆腐のシチュー)が温まってきまし
た。しかしドイツ軍の戦闘糧食で、まさか豆腐と出会う事になるとはなあ・・・。パッケージの端がかなり強
力に接着されていたので、無理をせずにナイフで開封します。
おお、熱々の湯気とともに立ち昇る、濃厚なトマトソースのいい香りが鼻腔をくすぐります。見た目も色と
りどりの野菜がたっぷりで、これは食欲をそそるなあ。まずは一口。
うん、美味しい!シンプルなトマトソースに沢山の野菜の旨みが溶けだして、素晴らしく深みと奥行きのあ
る味わいになっています。キドニービーンズ、赤パプリカ、ズッキーニ、トマト、ジャガイモがふんだんに入
っていて、所々に賽の目切りの豆腐が見え隠れ。しかしこの豆腐、何だかチーズみたいな食感ですが、食bて
みると確かに豆腐だなあ。
味付けがしっかりしている上に野菜の風味も生きているので、肉なしなのに実にどっしりした重厚な味わい。
300gもあったのに、あっという間に食べきってしまいました。やや塩気がきついのが途中から気になりま
したが、一日中体を動かす前線の兵士の食糧ですから、発汗を考えるとこの味付けは納得でしょう。
しかしこの、日本食の代表とも言える豆腐と異国のトマトソースが、ここまで合うとは思いませんでしたね。
ドイツで生まれ育った日独ハーフの女の子が、年齢を重ねて素敵なおばさんになった様な、そんな一品でした。
12枚入りのクッキーを4枚残して、まずはお腹がいっぱいです。メインの野菜と豆腐のシチューとビアソ
ーセージで、朝から力いっぱいになれる満足度の高いメニューでした。
締めはコーヒー。200mlのお湯に粉末コーヒーとミルクを入れますが、砂糖1パックが12.5g!普
通のスティックシュガー3本分です。取り敢えず1/3だけ入れましたが、それでもかなり甘いコーヒーにな
りました。砂糖は手っ取り早いカロリー源ではありますが、全部入れていたらどうなっていた事やら・・・。
私は普段コーヒーを全く飲まないので、味については正直よく分かりませんでしたが、満足のいく食事の後
だったせいかとても美味しく感じました。
次は昼食です。朝からボリュームたっぷりだったので、遅い時間の昼食まで十分持ちました。まずは飲み物
から用意。もう一つの粉末ドリンクはグレープフルーツで、400mlの水に溶かすと・・・おお、搾りたて
の様な色合いです。パステルカラーみたいなMREのインチキ臭い飲み物とはえらい違いますね。
飲んでみると粒ラムネみたいな粉っぽさがありますが、ほのかな苦みと酸味が見事なグレープフルーツ味。
甘さは控えめで、さっぱりとした味わいが実に美味しいなあ。
朝食の残りの固焼きクッキーを、Rindfleischlyoner grob(牛肉のスプレッド)で頂きます。この牛肉ス
プレッド、見た目も香りも朝食のビアソーセージにそっくりですね。ワクワクしながらナイフで削って、まず
は一口。
ああっ、これも美味しい!ソーセージよりも脂肪分控えめでやや無愛想な味ですが、ほんの僅かにレバーっ
ぽいこの味は、確かに牛肉の力強さが感じられます。固焼きクッキーとの相性もよく、これも50gしかない
のが残念だなあ。こちらはボディが強めの赤ワインにピッタリですね。
続いてSchwarze Johannisbeere (黒スグリのジャム)。黒スグリなるものがよく分かりませんが、食べ
た感じはブルーベリージャムをぐっとワイルドにしたような味。ちょっと甘さがきつかったですが、果実感た
っぷりで実にジューシーなお味です。
さらに缶入りのRoggenschrotbrot geschnitten(ライ麦粗挽き黒パン)を開封。見た目は醤油味の炊き込
みご飯っぽいですが、粗挽きライ麦がびっしりと圧縮してあり、パンと言うよりもシリアルバーみたいです。
厚さ5mm程のディスク状のものが6枚入っていましたが、恐る恐る齧ってみると、うーん、しっとり湿った
酸っぱい味わいです。
食べ慣れていないせいかもしれませんが、これが主食になるのか・・・。ここにさっきの牛肉スプレッドを
乗せてみると、牛肉のわずかなエグミと黒パンの酸味がうまい具合に打ち消しあって、思ったよりも美味しく
なりました。これに生タマネギのスライスやパセリ、レモンなどを添えると、さらに美味しく頂けそう。ああ、
そうなると軽めの赤ワインなんかが合いそうですね(こればっかり)。
そしてこのライ麦、皮つきなのか僅かにシャリシャリした歯触りがあり、繊維質が豊富そう。戦闘糧食でこ
れはありがたいだろうなあ。
そしてGrießspeise (グリースのデザート)。このグリースを辞書で調べると、挽いた小麦や米、トウモロ
コシなどの事だそうです。今ひとつよく分かりませんが、プディングみたいなものなのかな?ちょっとドキド
キしながら開封すると、何とも濃厚な甘い香りが漂ってきました。
恐る恐る一口食べてみると、うーん、何と言うか・・・ボソボソしたプリン?中にはレーズン、アプリコッ
ト、リンゴといったドライフルーツ入っていますが、ブランデーか何かで戻してあるのか実に芳醇な香り。正
直かなり甘くて油っぽいですが、物珍しさもあって甘味が苦手な私でもぺろりと食べてしまいました。ほろ苦
いグレープフルーツドリンクとの相性が良かったのも大きいですね。
最後は紅茶で締めます。粉末を200mlのお湯で溶かしますが、独特の香りこそ乏しいものの、飲んでみ
ると確かに紅茶の味がしました。クリームも砂糖も無しで飲むと渋味が強いですが、先程のデザートの濃厚な
甘みと油っぽさをさっぱりと洗い流してくれて、口の中がスッキリするのが有難いなあ。これはさっきのデザ
ートと一緒に頂く方が美味しかったかもしれません。
午前の仕事で消費したカロリーを速やかに補給すべく、糖質中心にメニューを組みましたが、消化がよさそ
うですぐに午後の仕事に取り掛かれます。量的に若干物足りない気もしましたが、朝はボリューム十分だった
し即行動に移るにはこれ位の軽い満腹感の方がいいのかもしれません。味覚的にも十分満足のいく内容でした。
さて、最後は夕食です。メインのアルミパックを湯煎で温めている間に、粉末ドリンクのグレープフルーツ
味を用意します。
Schmelzkäse zubereitung (チーズスプレッド) のパックを開けると、ちょっとくすんだ色合いのチーズ
が出て来ました。香りはごく普通のプロセスチーズっぽいですが、一口食べてみるとピリリとした辛さがあり
ました。パッケージには“緑の胡椒”とあり、青唐辛子が入っている模様。若干の青臭さが鼻につきますが、新
しい状態だったならもっと美味しかったかも。MREのチーズスプレッドも、古いものははっきりと分かる位
に味が落ちますし。
しかしこのチーズ、酸っぱいライ麦粗挽き黒パンと結構合いますね。ウォッカの口直しにひと齧り・・・と
いうのが美味しそう。
ここで温まったメインのHamburger mit tomatensoße (ハンバーグトマトソース添え)を開封。トマト
ソースのいい香りがたまりません。真っ赤なソースにまみれたコロッケ大のハンバーグが二つ入っていました
が、おお、これは美味しいなあ。トマトの濃厚な旨みが効いていますが、口当たりはあっさりで後口も爽やか
です。
ハンバーグは、噛みしめる程に牛肉の旨みがじわりと染み出てくるよく出来たハンバーグです。レトルトも
のハンバーグにありがちなネリモノっぽい口当たりではなく、とても製造後5~6年経過した戦闘糧食とは思
えません。
ソースにまみれたジャガイモもほどよい固さで、メインミールとしての実力は十分。飾り気がなく質実剛健
な、素晴らしく力強い味わい。ライ麦粗挽き黒パンとの相性も最高で、夢中でがっついてしまいました(笑)。
ただ敢えて言わせてもらえるなら、途中から黒胡椒の一振りでもあれば、また充実した味になっていたと思い
ますね。
メインのトマトソース、チーズ、黒パン、ドリンク・・・と、どれもあっさり酸味系の味が重なってしまい、
メニュー構成としてはやや失敗した感のある夕食でしたが、個々のレベルは非常に高く十分満足のいく内容で
した。
あと、食べ忘れていたチョコレートとガムです。チョコレートはマイルドなミルクチョコで、保存性を高め
る為かやけに堅く、へし折るようにして口に入れると中でカキカキと割れていきます。思ったよりも甘くなく、
濃い目のブラックコーヒーに合いますね。
ガムは粒状のミント風味の糖衣ガム。これだけが民生品らしく、やけにカラフルな色合いでした。
全体的に見て、非常によく出来た戦闘糧食でした。無骨かつ無愛想な第一印象とは裏腹に味覚面で十分満足
のいく内容でしたし、必要なものは一通り揃っているのにコンパクトで、機能性も抜群。まさに優等生的な雰
囲気の漂う逸品だと言えるでしょう。手に入る機会があれば是非一度お試し頂きたい、戦闘糧食の傑作でした。
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