ドイツ軍戦闘糧食 
Einmannpackung TypU



       さて今回は、随分久しぶりとなるドイツ軍戦闘糧食です。メニューはTypU。以前試食したTypVがち
      ょっと驚きの美味の連続だったので、今回も楽しみ。
       質実剛健を絵に描いた様なボール紙製の外箱
を開封し、まずは中身を確認しますが、地味な印象の外箱とは
      裏腹に中身はとてもメタリック。ギラギラ具合が一昔前の宇宙食パッケージっぽいですね。今回のTypUの
      メインミールはシシカバブジャガイモの煮込み。ジャガイモの方はいいとして、シシカバブってトルコ料理
      じゃなかったっけ?まあ、ドイツから見ると日本よりもトルコの方が断然近いですから、お隣さん感覚なんで
      しょうか。TypVではメインミールの煮込み料理に豆腐が使われていましたし、トルコ料理が入っていても
      全く不自然ではありません。





【内容】
1:Cevapcici (シシカバブ)  2:Gulasch mit Kartoffeln 
(ジャガイモ煮込み)  3:ライ麦粗挽き黒パン  4:フルーツ
サラダ  5:ビアソーセージ  6:牛肉スプレッド  7:チ
ーズスプレッド  8:スミノミザクラのジャム  9:黒スグリ
のジャム  10:粉末ドリンク(2種類×2)  11:固焼ク
ッキー  12:糖衣ガム  13:粉末コーヒー×2  14:
粉末紅茶×2  15:砂糖×4  16:粉末ミルク×2  
17:浄水剤×8  18:塩  19:ウェットティッシュ  
                         20:チョコレート  21:マッチ





       さて、まずは朝食です。粉末ドリンクGRAPEFRUITEXOTICの二種類がそれぞれ2つずつ
      入っていますが、その中からEXOTICをチョイス。パッケージを開封しますが、ん〜?妙に湿気ていて、
      粉末がところどころになっています。よく見るとパッケージのアルミとビニールが所々剥離していて、ここ
      
から湿気が入り込んだ模様です。
       これ
大丈夫かな・・・と思いながら400mlの冷水で溶かすと、見た目は前回と全く同じマンゴー色の飲
      み物
が出来ました。やや怯みつつ飲んでみますが、うん、あっさりと甘くさっぱりと酸っぱい、美味しいマン
      ゴードリンクです。
ほんの僅かに前回とは違ったアクというかクセみたいなものが感じられますが、まあ品質
      が劣化していても仕方ない状態でしたからね。気にしないようにします(笑)。


       続いてHARTKEKS(固焼きクッキー)を開封。こんがりと焼けた5×5cmサイズのクッキーが、12枚出
      て来ました。これがソバボウロをぐっと大人にした様な味わいで、サクサクカキカキした歯応えも実にいい感
      じ。甘さが控えめなので、主食感覚で頂けます。


       パック入りジャムは、Sauerkirsche(スミノミザクラ)。開封すると中身が固形分と水分に分離していまし
      た。
まるでMREの袋ジャムにそっくりだなあ。前回試食したTypVではこうではなかったので、どうやら
      今回入手したTypUは味期限をかなりオーバーしたシロモノの模様です。うーん、他の食品の状態が心配
      だなあ。
       で、ジャムですが、前回同じものを食べた時には甘いなりに上品な果実の風味を感じたのですが、今回は何
      だか煮詰まった様なキツい甘さが舌を刺します。これも経年劣化かな?ただ決して安っぽい甘さではないので、
      さっぱり味のマンゴードリンク&サクサクカリカリの固焼クッキーとの相性も良く、なんだかんだで美味しく
      頂けました。


       さて、朝食メニューで一番楽しみにしていたBIERWURST(ビアソーセージ)です。前回同じものを
      食べた時に、あまりの美味さに感動してしまったんですよね。ソーセージとは言いつつも丸い容器入りのポー
      クペースト
ですが、上品かつ濃厚な豚肉の旨みが生きていて、さすが肉の保存食を食べ続けて来た民族の味!
      と納得させられたのでした。
       ワクワクしながら開封すると、ん〜?何じゃこりゃ?水分が飛んで縮こまった、黄土色の物体が入っていま
      した。
前回はしっとりと濡れた明るい薄ピンク色だったのに・・・。嫌な予感を感じながら匂いを嗅いでみる
      と、何だか紙粘土みたいなヘンなニオイがします。どうやら完全に駄目になっているみたい。うーん、楽しみ
      にしていたのに・・・(泣)。


       しょんぼりしつつOBSTSALAT(フルーツサラダ)を開封します。中身はシロップ漬けの果物でした
      が、これも何だか薄茶色の妙な色合い。匂いは特に異常はありませんが、シロップの中に浮いているパインの
      切り身が、まるで桃屋の味付けメンマみたいになっています。
       ちょっと怯みながらも、まずはシロップを一口。うん、特に危険な味ではなさそうですね。とろりとした粘
      度があり、甘味と酸味が効いたいかにもフルーツミックス缶のような味。軽く効かせてあるこの風味は、シナ
      モン
かな?


       入っている果物はパインの他に、オレンジ、洋梨、黄桃でしょうか。味はそこそこ美味しいですが、この
      どん出汁みたいな色合い
が食べる者の不安感を掻き立てます。これ、食べても大丈夫なのかなあ・・・。まあ
      全部食べた後にそんな事を心配しても仕方ないんですけどね(笑)。期限内だったら、もっと安心できる色だ
      と思います。


       以上で朝食は終了。期限超過による品質の劣化がひたひたと忍び寄っている状態ではありましたが、何とか
      食べる事が出来ました。とは言えアテにしていたビアソーセージがお星様になっていたので、甘味ばっかりの
      朝食になってしまったのはちょっと残念でしたね(笑)。
       昼食と夕食のメニューの状態が甚だ心配ではありますが、まずは御馳走様でした。




       さて昼食です。粉末ドリンクのGRAPEFRUITを開封すると、今度はサラサラの粉末状でした。これ
      を400mlの冷水で溶かすとグレープフルーツドリンクの出来上がり。酸味と甘味のバランスが絶妙で、な
      かなかのお味です。
       粒ラムネ風の粉っぽさ
を感じますが、それが昔あったクイッククエンチというガムの風味(加齢臭・・・)
      にそっくりで、ドイツの戦闘糧食を食べているのに何故か夏の夜の花火や縁日の夜店を思い出してしまいまし
      た。

       ジャムはSchwarze Johannisbeere(黒スグリ)。これも朝食のジャムとは違って中
      身が分離せず、しっかり固まった状態を保っていました。かなりエグい甘さですが意外と上品で、どっしり甘
      くさらりと酸っぱい味わい
がとてもいい感じ。ジャムの中にはちゃんと果実の皮や種が入っていて、MREに
      ありがちなニセモノっぽさも感じられません。朝食の残りのHARTKEKS(固焼きクッキー)との相性も
      よろしく、浮つきのない安定感を感じます。


       Schmelzkasezubereitung(チーズスプレッド)を開封しますが、あれ?これはちょ
      っとヤバいかな?中身が固形のチーズと液状の脂肪分に分離しています。しかし過去にも、こんな風になった
      MREのチーズを食べても何ともなかったですし、匂いも大丈夫っぽいので思い切って食べてみましょう。
       かなりねっとりとろりとした食感ではありますが、決して食べれないと言う訳では・・・と思ったら、何だ
      か妙な苦味が舌の上に広がってきました。
まるで塩っぱくて苦みの効いたチーズ味のプリンを食べている様。
      残りは迷わず捨ててしまいました。


       Roggen Schrotbrot,Geschnitten(ライ麦粗挽き黒パン)の缶を開封。一応
      パンと書いてありますが、表皮のついた麦を粗挽きにして押し固めた状態のシロモノです。いわゆる日本の食
      パンみたいな物を連想していると、かなり面喰らいますね。妙な酸味がありますが、慣れるとこの風味がちょ
      っとヤミツキ
で、けっこう美味しく頂けます。半端ではない繊維感がありビタミンも豊富なので、すごく体に
      良さそう。
       しかしこれはこのままで食べるより、何かとサンドイッチにして食べる方が美味しいかもしれませんね。
      タスやチコリ、タマネギなどの水分の少ないパリッとした歯応えの野菜、あとチーズ等が合う様な気がします。
      チ−ズスプレッドが駄目になっていたのが、つくづく惜しいなあ。


       さて、そろそろメインミールのCevapcici(シシカバブ)が温まってきました。ちなみにシシカバ
      ブとは、中東地域で食される肉料理の総称。
日本では串に刺した肉の塊(もしくは薄切り肉をまとめた物)を
      豪快に焼いたトルコ料理というイメージが強いですが、実際は煮たり揚げたり蒸したりしたものも、広い意味
      でカバブ(ケバブ)と呼んでいる
そうです。
       今回は経年劣化した食品が多かったのでちょっとドキドキしましたが、火傷に気をつけながら開封します。
      あれ?意外にもパックの中には米粒がぎっしりと詰まっていて、その中に80×20×10mmの棒状の肉
      4本埋まっています。なんだか
凄く美味しそうな香りが立ち上ってきましたよ。ご飯はまるでチキンライスの
      様にオレンジ色に染まり、所々に見える野菜はグリーンピース、コーン、インゲン豆、赤パプリカの模様です。


       品質には問題なさそうなので、とりあえず一口。おおおお!美味い!これは本当に驚きの美味さです!香辛
      料の香りが効いたスパイシーな味わいがたまりません。とは言え辛味は殆ど無く、肉と野菜と香辛料のエキス
      で炊き込まれたご飯がめちゃくちゃ美味しいです。

       お米は長粒種ですが、サラサラした口当りの中にもっちりした食感があり、なんだかカリフォルニア米っぽ
      いですね。炊き上げ方も思いのほかしっかりしていて、フニャけたような状態では無いのが嬉しいなあ。
       4本入っているシシカバブはまさに肉そのものの味わいで、例えるなら混ぜ物の無いとても真面目なハンバ
      ーグ
みたいな感じ。肉のダシをたっぷりとご飯に与えながら、自身にもしっかりと旨味を残しているのが感動
      的であります。


       MREのジャンバラヤをぐっとグレードアップさせて、そこから辛味だけを抜いた感じでしょうか。食べ進
      んでいくと意外と塩分が濃いのに気付きますが、体を使う兵隊さんの戦闘糧食ですから当然でしょう。味の方
      向性としては
ケンタッキーフライドチキンの味付けに似ていますね。
       しかしこれはビールが欲しくなるなあ。誰か私に冷えたハイネケンを(笑)!全くもって驚きの美味。本当
      に感動してしまいました。


       いやはや、実に満足度の高い昼食でした。まさかメインミールの半分以上がお米だとは思わなかったので、
      かなり糖質寄りの食事構成
になってしまいましたが、午後からすぐに行動に移る事を考えれば理想的な組み合
      わせ
と言えます。
       メインのシシカバブは感涙モノの美味さでしたが、少し冷えるとあっという間にお米がロウっぽくなってし
      まうので、十分温めて熱々のところを一気に食べるのがお勧めです。
       辛味はありませんが味付けはかなり濃いので、合わせる飲み物はグレープフルーツドリンクで正解。マンゴ
      ー風味のエキゾチックも悪くありませんが、あれだとちょっと味が強すぎると思いました。    



       さて、最後は夕食です。まずはRINDFLEISCHLYONER GROB(牛肉スプレッド)からで
      すが、朝のビアソーセージが完全に駄目になっていたので恐らくこれも・・・と思いつつ開封すると、中身は
      キレイなピンク色。
おお、大丈夫だった模様です。全く期待していなかったので、思わぬ拾いものをしたお得
      な気分
です。
       食べてみるとTypVの時と同じ、とても美味しい牛肉スプレッド。滑らかな口当たりの中にも牛肉らしい
      ボソボソ感
があり、程良い渋味とほのかなエグミが実にいい感じです。この濃厚な旨みと脂肪感が、酸っぱく
      て繊維っぽい味のライ麦黒パンとピッタリ
ですね。


       そろそろメインのGulaschmit Kartoffeln(じゃがいもの煮込み)が温まってきまし
      た。アルミパッケージをナイフで開封すると、オレンジ色のシチューの中に消しゴム大の牛肉と豚肉がごろご
      ろ
で、1p角にカットされたじゃがいも、ニンジン、グリーンピースもどっさり入っています。まずは一口い
      ってみましょう。


       おお、美味しい!牛肉と豚肉、野菜のコクがとても濃厚で、やや甘めの味付けがホッとさせるなんとも優し
      い味わい
です。牛肉と豚肉はどちらもしっとりした口当たりで、脂肪の旨みもきちんと残っていますね。グリ
      ーンピースが全然冷凍食品っぽくないのも嬉しいなあ。


       それにしても、一つの料理に牛肉と豚肉が入っているのは珍しいですね。ちょっと考えたらお互いの旨みが
      喧嘩しそう
ですが、このトロリと甘いソースがいい具合に全体をまとめています。酸っぱい味わいのライ麦黒
      パンとの相性も素晴らしく、ぱっと見は素朴で無骨な料理ですが、舌の上にじわりと浸み込むような豊かな味
      わい
がお見事。
       粉末ドリンクは昼と同じGRAPEFRUIT。口の中をさっぱりと洗い流す程良い酸味がいい感じです。


       栄養的にも味覚的にも非常に満足感があり、明日につながる夕食としては実によく出来たメニューでした。

       以上、ドイツ軍戦闘糧食TypUの試食を終わります。TypV同様に非常に機能的で、質実剛健な中にも
      どこかホッとさせる
温かみを持った、とても優れた戦闘糧食と言えますね。
       例えるなら、仕事中は無愛想で融通の効かない頑固なドイツ職人親父が、夕方ビアパブに寄った途端に人間
      臭いおっさんになり、いい気分で家に帰るとカミサンに「アンタまた飲んできて!医者の先生に止められてる
      でしょ!」とどやしつけられ、赤ら顔でバツが悪そうにしている・・・
そんな感じの戦闘糧食でした。




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