補給艦とわだカレー
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さて今回は、呉海自カレーシリーズ『補給艦とわだカレー』です。AOE422補給艦とわだは1987年
に就役したとわだ型補給艦の一番艦。一世代前のさがみ型補給艦に比べて補給能力を格段に向上させて艦艇部
隊の活動をサポートしてきた、海自を支えていると言っても過言ではない艦であります。
この度呉海自カレーの一員として華々しく商品化された補給艦とわだカレーですが、まずはパッケージから
見て行きましょう。バックの濃紺地はシリーズ共通で、正面には白波を蹴立てて航行する補給艦とわだの雄々
しい画像がレイアウトされています。長大な前甲板、聳え立つ6基の補給ステーション。中身がみちみちに詰
まった護衛艦とは違って艦内容積の多くを物資搭載スペースに割かれる補給艦だけに、基準排水量8100㌧
という数字以上のド迫力を感じますね。
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パッケージ裏面には海自と呉の成り立ち、呉海自カレーについての説明、そして補給艦とわだからレシピの
提供を受けたクレイトンベイホテルのレストランで商品化されている補給艦とわだカレーの画像があしらわれ
ています。しかしクレイトンベイホテルのとわだカレー、付け合わせも含めて意外にも和風のお皿で提供され
ているんですね。これは珍しいパターンだなあ。
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前置きはこれ位にして、さっそく試食に移ります。開封したレトルトから出て来たのは、もったりとした粘
度の強いカレー。牛肉、ニンジン、ジャガイモは嬉しい位にゴロゴロな大きさで、実に伝統的な見た目であり
ます。
一口頂いてみると、最初に感じられるのは野菜とフルーツの濃厚な旨味。そしてジャガイモ入りカレーなら
ではの微妙にザラついた口当たり、タマネギと牛肉のどっしりした味わい、さらに小麦粉を丁寧に炒って作っ
たルーの重量感のある滑らかさ。
うーん・・・なんて言うんでしょうねえ、このカレー。圧倒的に正しいというか、突っ込みどころが見つか
らない王道一直線の美味しさです。レトルトカレーなのに品格すら漂うところは、誰かに似てる気がするなあ
・・・あ、そうそう、王さんです!このカレーを人に例えるなら、世界のホームラン王王貞治氏そのものの印
象ですね。
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性格はあくまで温厚で柔和。少々生意気な口をきいても笑って受け止めてくれそうな懐の深さ。そして決し
て威張られている訳でも凄まれている訳でもないのに、目の前にいるだけで穏やかに気圧されている様なこの
感覚・・・。余人をもって代えがたい風格とは、まさにこの事でしょう。
ど真ん中ど直球の正当派という意味では、以前試食した護衛艦こんごうビーフカレーと同一軸線上にある個
性ではありますが、こちらの方が口当たりに若干のもったり感があるせいか、どこか古風で野暮ったい雰囲気
が漂います。ある意味、まだ洗練され切っていない原始の海軍カレーらしさがしっかりと残っているとも言え
ますね。
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なるほど、そういえば護衛艦こんごうビーフカレーは、古き良き海軍カレーを現代の水で磨き抜いた様な佇
まいがありました。疑いようのない正しさ、隠し切れない実力を秘めつつも、しっかりと今の時代の中で現役
として生きている感じ。
一方このとわだカレーは、現役の第一線から退いたものの、頂点に君臨しつつ大所高所から組織を束ねてい
る大物的な風格を感じます。さしずめ護衛艦こんごうビーフカレーが最新鋭DDGで指揮をとるベテラン艦長、
補給艦とわだカレーは第一海上補給隊を統べる司令・・・というイメージでしょうか。
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ただ、あまりに老練で完成された印象が強いだけに、いちカレー好きである私としては、補給艦とわだカレ
ーにこの先の進化の余地はあるのだろうか・・・という余計な心配もしてしまうんですよね。王道の中の王道
を突き進みつつも、時代に合わせてまだ自分を変化させる柔軟性と若さを感じた護衛艦こんごうビーフカレー
と比べると、なおさらそう思います。もしかして伝統を受け継ぎそれを完成させてしまうという事は、大きな
仕事を成し遂げた開放感からは程遠いものなのかもしれないなあ。
「立場が上がるという事は、まったく窮屈なものですよ・・・(笑)」
と、護衛艦とわだカレーが漏らしてしまったつぶやきが聞こえる様。まだ第一線ではっちゃける事が許され
た若き日の自分を、苦笑交じりに懐かしんでいるのでしょうか。
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・・・と、ここまで好き勝手なことを書いてきて気がつきましたが、今の海上自衛隊には高級幹部だけが食
べる事を許されるスペシャルなハイエンドカレーなどというものは存在せず、総監部で執務についている時も
洋上で艦艇に乗り込んでいる時も、組織のトップである司令は海曹や海士と全く同じカレーを食べています。
旧海軍時代の士官と兵士では食事の内容が全く違ったそうですが、そんな大昔の海軍カレーの風格を新時代
の海自を下支えする補給艦で味わう事ができるというのは、考えてみれば不思議な話。
間口は限りなく広く、そして奥行きはどこまでも深く。私が海自レトルトカレー道を極める事が出来るのは、
一体いつになる事やら・・・と、食べながら遠い目をしてしまった『補給艦とわだカレー』でありました。
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