鶏肉とひじき煮
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さて今回は、自衛隊非常用糧食『鶏肉とひじき煮』です。それにしても、カロリーが殆ど無い海藻を戦闘糧
食のメインに持ってくるとは・・・最近の自衛隊はなかなか大胆ですね。U型無印版から一気にメニュー数を
増やし、魅力的なおかずを取り揃えて来た自衛隊の戦闘糧食ですが、非常用糧食からは地味なお惣菜にもスポ
ットライトを当て始めた様で、糧食にかける防衛省の意気込みがひしひしと感じられます。
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先に試食した『鶏肉と大豆煮』もそうでしたが、この手の地味なお惣菜って手間がかかる割に(慣れると簡
単ですが)食卓のメインになりづらく、派手さもないのでお子様ウケもいまひとつ。体にいい事はわかってい
ても、家庭ではなかなか手を出しにくいメニューなんですよね。
とは言え今回はひじき単体ではなく鶏肉の力も借りていて、ボリューム的な満足感にも十分配慮している模
様です。しかし、ひじきに鶏肉か・・・。私的には未知の組み合わせだなあ。そもそも定食ものの小鉢にちょ
っと盛り付ける様な存在であるひじきに、肉体を酷使する自衛官の胃袋を満足させられる底力があるのかどう
か。大いなる期待と若干の不安を抱えつつ、レトルトを温めます。
ちなみに今回の主食は白飯と山菜飯。和食としての統一感を大事にしている模様です。
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まずはしっかりと温めた鶏肉とひじき煮のレトルトを開封。おお、確かにひじきがメインですが、鶏肉の他
にも色々入っているみたいですよ。里芋、ニンジン、大豆、油揚げ。甘辛い醤油の香りがぷんと漂い、実に伝
統的なニッポンのお惣菜!という感じ。まずは一口いってみましょう。
おお、なるほど、これはこれは。ひじきの持つ磯の香りがふんわりと口の中に広がって、至極まっとうな味
わいです。それぞれの具は持ち味を生かしながらもひじきのダシをいっぱいに吸い込んで、見た目の地味さと
は裏腹に舌の上に感じる味覚はすごく賑やか。
体を使う自衛官向けなので味が濃いところが『出来あいのおかず』っぽくはありますが、それを差し引いて
もかなりよく出来ています。
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あれ?これって高野豆腐?パッケージの原材料表示には凍み豆腐と書いてありますが、これもひじきや鶏肉、
根菜類のダシを全身に浴びる様に吸い込んで実に美味しいなあ。なんというか、すき焼きの最後に鍋の端っこ
に残っていた焼き豆腐の欠片の様な存在感。思わぬお宝を拾った気分ですね。
確かな実力を誇りながらも普段は食卓の隅の方で大人しくしているひじき君を盛りたてる為に、和の食材達
が一堂に集結して力を合わせた様なこの一品。ひじきでメインを張れるのかな?などと不安をこぼしてしまっ
た私としては、ひじき君に頭を下げて謝りたい気分です。
戦車や装甲車の如き怒涛の迫力を誇るスタミナ丼やタコライスとは一味違う、じんわりほっこりと胃袋に染
み入る様なこの味わい。主食として封入されいてる白飯との相性の良さは疑う余地もありませんし、全くもっ
て文句なしですね。
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海藻を食べる習慣がある国は、日本とイギリスの一部以外には殆ど無いと聞いた事がありますが、そういう
意味では海外の糧食マニアに是非食べさせてみたい一品でもあります。
「ええっ?これ海藻なの?マジでこれ食べるの?」
と、きっと目を白黒させるに違いありません(笑)。これも日本が誇る和食文化のひとつ、戦闘糧食世界選
手権の日本代表候補と言っても過言ではないでしょう。
あとこのメニューにもトレーが封入されていたので、例によってワンプレートランチ風に盛り付けてみまし
た。うーん、美味しそうと言えば美味しそうですが、見様によってはやっぱり路上生活者の方々の優雅なディ
ナー風だなあ。突撃隣の高架下の晩ごはんといった風情が漂うのは如何ともしがたいです。
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そしてこの、ひじきの煮汁が染みた山菜飯が最高です!いやあ、これは別々に味わっていては決して分から
ない味ですね。サバ味噌煮缶やすき焼き、カップめんの残り汁についご飯を入れて食べてしまう様な、選ばれ
し品のない者だけが知る味わいであります(笑)。
それにしても、山菜飯からはワラビ、タケノコ、ニンジン、シイタケ。ひじき煮からは鶏肉、里芋、ニンジ
ン、凍み豆腐、油揚げ、大豆。一見地味なメニューですが品目は充実していますし、味覚的な満足感以上に栄
養的にも非常に優れたメニューなんですね。全くもって文句のつけようがありません。
いやー、実に満足度の高い一品でした。先に試食した『鶏肉と大豆煮』と同様、食べているとどんどん心が
落ち着いてくるというか、それでいて静かな力強さが全身に満ちてくるような感覚。
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それにしてもこの味わい、何かに似ているなあ・・・。あ、あれです。バカボンのママ。バカボンのママの
味です。普段は物静かで控えめで、何かを強く主張する性格ではありませんが、実は芯のところがとても強い
この味わい。間違うことなきバカボンママの味わいであります。
そう考えると、この鶏肉とひじき煮にちょっとエロい冗談の一つも浴びせかけて怒られてみたい気がします
が、うん、やっぱり俺、今日も頭がおかしいな。
例によって書かなくていい事まで書いてしまい、またしても閲覧者の方々に思いっきり引かれている気がし
ますが、個人が食べ物について何かを語るという事は、それまで何かを食べて生きてきた自らの人生そのもの
と向き合う事に他なりません。自分に素直になればなるほど恥をかいてしまうのもある意味致し方なしという
か、必然なのでしょう。
自分で自分を下げてしまった気がしますが、味覚的には大満足の鶏肉とひじき煮でありました。
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