さて、今回は筑前煮です。筑前とは現在の福岡県北部辺りを指し、炒りつけた鶏肉のぶつ切りと根菜類を炊きこ
んだ、祝い事や地域の集まりには欠かせない郷土料理です。未だにこの料理の良し悪しで嫁いできた若奥さんが
評価されるという、恐怖のメニューでもあるとの事。ちなみに地元では“がめ煮”と言い、筑前煮という呼び方はされ
ないそうです。
自衛隊の戦闘糧食の中では珍しく郷土色豊かなメニューですが、隊員構成比では九州出身者が東北出身者と
並んで多いことを考えると、納得のいく話ですね。私個人的にも大好きなメニューで、しょっちゅう自分で作っている
料理なので、今回の試食は非常に楽しみでした。
湯煎した『筑前煮』を開封です。ごろごろにカットした根菜類が、うす醤油色の出汁をまとって沢山出て来ました。
具は鶏肉、ゴボウ、ニンジン、レンコン、タケノコ、サトイモ。押さえるべき所はきっちりと押さえてありますね。先ず
は一口。
うん、若干のレトルト臭はありますが、これはなかなか美味しい。鶏肉はエキスを出し切ってパサパサした食感で
すが、その旨みがしっかりと浸み込んだニンジンとサトイモが実にイイ味。全体の味付けが、想像したよりもあっさり
した繊細なものだったのが意外でした。T型の鶏肉野菜煮がしっかりした味付けだったので、同じ材料を使いなが
らもT型とU型で好対照ですね。個人的にはT型はビールに、U型は甘めの日本酒か焼酎が合いそうです。
今回初めての『カニチャーハン』。なるほど、カニカマボコの香りがします。白飯と違ってパックからするりと滑るよ
うに出て来たので、危うく下に落とす所でした。白飯みたいにパックにへばりついて出てこないかと思っていたので、
意表を突かれました。
うん、確かにこれはカニチャーハンです。やや塩味がきつい気がしますが、味付けはなかなか美味しい。所々に
薄切りのカニカマボコが見えるのがご愛嬌です。椎茸とネギ、卵が入っているようですが、かなり小さくカットしてあ
るので椎茸以外は見分けがつきません。ここで原材料表示を見て驚きましたが、何と「カニ」とありました。へー、カ
ニ肉も入っていたのか。まあ等級の低いものがほんの少し入っている程度だと思いますが、気は心と言う奴でしょう。
『はりはり漬け』は、コンビニ弁当に入っている様な甘辛はっきり味で舌がやや疲れますが、メインの筑前煮が優
しい味なので、ちょうどいいアクセントになっています。福神漬と違って原材料が国産なのがいいですね。
『即席わかめスープ』は、相変わらずのわかめどっさり具合がステキです。高カロリーが要求される戦闘糧食の中
ではやや肩身が狭いかもしれませんが、ミネラルたっぷりで大変よろしい。
メインの優しい甘辛しょうゆ味と副菜の濃い味が上手くマッチして、満足度の高いいいメニューでした。即席わか
めスープをもうちょっとお吸い物風の味にすれば、さらに全体としての味のバランスが良くなると思いますね。納入
業者の丸紅商事様と防衛省の方々には、是非御一考頂きたいところであります。
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