主食と副食の2つのレトルトを自衛隊の加熱剤で温めている間に、腰を下ろして一休み。空は明るく陽ざし
も穏やかで、吹きわたる風が気持ちいいなあ。そこらじゅうから鳴り響いているセミの鳴き声も柔らかで、9月
半ばだというのにすっかり秋の気配を感じさせます。
レトルトが十分温まったのを確認し、火傷に気をつけつつ開封。まずはแกงเขียวหวานไก่ น้ำหนัก
からですが、果たしてどんなカレーなのか・・・あれ?色といい香りといい、これはグリーンカレーではない
ですか!いやあ私大好物なんですよね、グリーンカレー!表面を黄緑色のオイルがたっぷりと覆っていて、な
かなか美味しそうですよ。胃袋から湧き上がる興奮を抑えつつ、まずは一口。
おお、これぞ本場のグリーンカレー!優しく豊かで実に刺激的な味わいです。濃厚なココナッツミルクにレ
モングラス、パクチー、青唐辛子の香りと辛さが効いていて、ナンプラーの塩味が全体を軽く引き締めている
感じ。具はたっぷりのタケノコと鶏肉で、小さなレトルトなのに見た目以上の食べ応えがあります。
この緑色のぴらぴらしたものは、バイカパオ(ホーリーバジル)かな?いやはや、これはかなり美味しいグ
リーンカレーですよ。私はタイ料理が好きなので、ヤマモリのレトルトを買ってきたり市販のペーストを使っ
て自作しているのですが、この戦闘糧食のグリーンカレーが今までで一番美味しいかも。自分で作ると、つい
砂糖の量をケチってしまうんですよね、中性脂肪というかカロリー的に(笑)。やっぱりこれ位思い切って甘
くした方が、断然美味しくなるんだよなあ・・・。
もう一つの大きいレトルト、ข้าวสวยหอมมะลิ น้ำหนัก(ジャスミン米)を開封です。自衛隊戦
闘糧食の様に厚みが均一なタイル状ではないので、柔らかくなった部分とまだ少し硬い部分が入り混じってい
ます。これは温める前に軽く揉みほぐした方がよかったのか。長粒種なので甘味が少なくパラパラで、香り米
独特の芳香は正直あまり感じられませんが、なんだかんだで主食がお米なのは日本人にとっては有難いなあ。
このジャスミン米にカレーをかけると、こんな感じ。うーん、鶏肉が完全に煮潰れてゴロゴロ感がないので、
見た目は正直微妙・・・。なんというか、ドッグフードがまだ一般的ではなかった時代のわんこのディナーと
いう感じです。
とは言えグリーンカレーとの相性は素晴らしく、旨味の少ない米がグリーンカレーの濃厚な甘味と旨味を纏
い、パラついた食感もたっぷりオイルのお陰で程良い口当たりになっています。甘くてもっちりした日本米も
いいですが、やっぱりタイ米で食べるグリーンカレーはひと味違いますね。
・・・と、ここまで我ながら絶賛に次ぐ絶賛ですが、これはある程度辛味慣れ、ナンプラー慣れしたタイ料
理好きの私の舌による感想です。グリーンカレーどころかタイ料理すら初めてという人にとっては、これはか
なり凶悪というか異様というか、身も蓋も無く言ってしまえばくさい料理だと思うんですよねえ(タイの人ゴ
メンナサイ)。慣れてしまうとこのクセが病みつきというか、誰か冷たいチャーンビール持ってきて!という
気分になりますが、初めて食べる人が10人いたら、最後まで完食出来るのは5人位かもしれません。
半分ほど食べ進んだところで、同封されていたナンプラーの小袋を開封。この袋入りナンプラーも強烈な香
りで、市販のものよりもエグイ気がします。ちなみにこの糧食は賞味期限を3年オーバーしているので、余計
に匂いもクセもキツくなっているんだと思いますが。
小袋の1/4程をグリーンカレーにかけただけで、強烈なニオイが辺り一面に漂いました。この臭気はなか
なか的確に表現しづらいのですが、真夏に5日位風呂に入らずクーラー無しで過ごすと、体のある部分がこん
なニオイになりそう・・・という感じかなあ。またタイの人に回し蹴りされそうな事を書いてしまいましたが、
決して悪く言っている訳ではないんです!そういうのを含めてタイ料理が大好きなんです!なんなら我が国の
納豆についてボロクソに貶してくれても構いません!ニヤニヤしながら拝聴します(笑)!
まあくさい事はくさいのですが、甘くてオイリーなグリーンカレーの味わいが独特のクセと塩気でぐっと引
き締まり、一層美味しくなった気がします。
さらに同封されていた赤唐辛子の小袋も開封。以前試食した時は少量でもかなり辛かったので、1/3だけ
かけてみます。おお、さらに全体の味が引き締まるというか、甘さと旨味を際立たせる辛さ。額に汗がどっと
浮きますが、そよ吹く風のお陰で逆に涼しく感じます。いやあ、やっぱり暑い国の食べ物は合理的に出来てい
ますねえ。
くさい、でも美味しい、でもくさい、でもやっぱり美味しい、ああああああもうアタシたまンない・・・と
いう感じで、結局一気に食べきってしまいました。唯一文句をつけるとすれば、300gの白米に130gの
グリーンカレーは、一食分のボリュームとしてかなり淋しいものがある気がします。グリーンカレーも半分以
上が液体だったので、体感的にはお茶わん軽く一杯半位の食べ応えでしたし。
同じカレーでも(全然同じじゃないけど)自衛隊戦闘糧食の場合は、白飯400gにカレー200g、さら
にもう一品おかずがつくのですから、重量感の差は歴然としています。とは言え、食べた後にすぐ体を動かす
なら腹七分目の方がいいと聞きますし、そもそもタイの人は小柄なので、これ位の量で丁度いいのかも。オイ
ル分も多かったですし、カロリー的にも問題はないのでしょう。
おっと、食後のデザートを忘れていました。タラコを輪切りにしたみたいなのがころころと出てきましたが、
何だこりゃ。赤緑黄と妙にカラフルなのがタイらしいなあ。とりあえず一口。
うん?これは・・・ドライパイナップル・・・いや、パイナップルの砂糖漬けかな?ホタテ貝柱をぎゅっと
圧縮した様な、メンマから水分を抜いた様な食感で、爽やかな甘味がなかなかいい塩梅。方向性としては、日
本の干し柿とか甘納豆に近いものがあります。
ねっちりもっちり&シャリシャリという不思議な食感ですが、グリーンカレーの濃厚な旨味と刺激的な辛さ
で疲労した舌を、すっきりリフレッシュしてくれるのがいい感じ。赤緑黄の味の違いはなかったので、ただの
着色と思われますが、変なキャンディなんかよりもよっぽど美味しいと思いました。
いやあ美味かった!ほんと美味しかったです!汗をかきかき山道を登ってきた疲労感も、より一層美味しさ
を増してくれた気がしますが、タイ料理好き、グリーンカレー好きとしては狂喜乱舞の味わいでした。体を使
い汗をかき、飛び交う蚊を払いのけながらの試食となりましたが、これこそが戦闘糧食の醍醐味でしょう。た
まにはこうして、屋外で食べなきゃなあ。
すっかり空になったクッカーとレトルトパックに
「コップンクラップ(御馳走様でした)!」
と合掌し、荷物をまとめて下山。ささやかながらも楽しい夏の終わりの昼下がりでありました。
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