パッケージの中からは、大小2つのレトルトパックと調味料の小袋が2つ、あとデザートらしきお菓子とぺ
らぺらの透明樹脂製レンゲが出てきました。まずはこの2つのレトルトを市販のモーリアンヒートパックで温
めます。
晴れてはいますが凍える様な寒空の下、水を注いだ加熱剤は一気に反応開始。派手に蒸気を吹き上げつつ沸
騰している様子が頼もしいなあ。そして15分ほどで加熱は終了。先程までは冷え切っていたレトルトが、す
っかり熱々になってます。
まずは大きい方の、ข้าวสวยหอมมะล(カウ・ホ・マリ:タイのジャスミン米)を開封です。紙皿
にあけると、真っ白な長粒米がどさっと出てきました。量は300g、市販のパックご飯1.5個ぶんですね。
少し食べてみると、うーん・・・パサパサのポロポロ。我が国の誇るコシヒカリの様な粘りのある甘味を期待
していた訳ではありませんが、なんか蝋で出来た食品サンプルみたい。
これはタイ米の質がどうこうというよりも、単にしっかり温まり切っていないだけかなあ。市販の加熱剤よ
りも強力な、自衛隊のヒートパックを持って来るべきだったか・・・。
続いては小さい方のレトルト、เนื้อกระเทียมพริกไทย (ヌァ・カティ・アム:牛肉とニンニクと
唐辛子)。どんなものが出て来るのかとワクワクしつつ開封すると、まるで倒れたフラスコから出て来たばか
りの妖怪人間ベムみたいなドロドロした液体が出て参りました。よく見るとその中には牛肉らしい破片がいく
つか混じっています。そして液状成分の半分以上が脂肪分で、スープの表面を分厚いガラス板の如く覆ってい
るのが確認できます。
えー、これがメインのおかずなの?殆どスープなんですけど・・・。非常に残念な見た目のメインディッシ
ュですが、それでもこれぞタイ料理!としか言いようがない、なんとも美味しそうな香りが漂っていますね。
さっそく一口食べてみると、おお、これは美味い!ナンプラー(タイの魚醤)とオイスターソースを混ぜた
様な、実に東南アジアチックな味付け。どことなく醤油に似た香りもあり、日本人の舌にも馴染みやすい風味
です。
ニンニクはそれほどキツくなく、口の中でほのかに香る程度。胡椒の香りも唐辛子の辛さも殆ど感じられず、
むしろ分厚く層を成している動物性脂肪のまろやかさが際立ちます。
いやこれ、ほんと美味しいです。タイ料理贔屓な私ではありますが、これは殆どの日本人が「美味しい!」
と感じる味なんじゃないかなあ。正直誰かの食べ残しの汁を貰っておかずにしているみたいな、かなり貧相に
見える食事ですが、これだけ脂肪分があれば当座の行動に必要なカロリーは十分賄えるでしょう。
しかしこれ、食べていると口の周りがヌルヌルになりますね。けた外れの量の脂肪です。あ、そうだ!この
脂肪ぬるぬるのヌァ・カティ・アムを、パサついたカウ・ホ・マリにぶっかけたら食べやすくなるのでは?つ
いでに付属のナンプラーと荒挽き唐辛子を足して、どんぶり風にしてみました。
おおお、めちゃくちゃ美味しい!動物性脂肪の滑らかさがパラパラしたタイ米をぬるりと包み込み、ナンプ
ラー独特の芳香と突き抜ける様な塩っぱさがいいアクセントになっています。そしてこの、少量でも強烈な辛
味を誇る荒挽き唐辛子。これはタイ料理最強と外国人旅行者から恐れられる、あのプリッキー・ヌゥですね!
まずは様子見で半分だけ入れてみたのですが、辛いものには大概慣れている私でも息がとまるほどの辛さ。
これ、全部入れてたらえらい事になってたな・・・。体感温度0℃以下という過酷な状況での試食ですが、額
の生え際にじわっと汗が浮く程であります。
ちなみにこのプリッキー・ヌゥ、直訳すると“ネズミのう〇こ”。名前の通り小さな可愛らしい唐辛子ですが、
その凶暴さは折り紙つきです(笑)。ハバネロとタメを張れるんじゃないかなあ。
胃袋は熱く燃え上がり、額に浮いた汗を拭きながらハフハフとかき込んでいきますが、そうしている間にも
お米に纏わりついた脂肪分が冷えて固まり始め、まるでかき氷丼みたいになってきました。レンゲの凹んだ部
分もあっという間に脂肪で埋まってしまい、食べづらい事この上なし。
というか、途中からはさらに風が強くなり、この極限状況下でカロリーを摂取する事だけで精一杯・・・と
いう情けない状態になってしまい、正直味わって食べる余裕がありませんでした。うーん、せっかく手に入れ
たタイ王国軍戦闘糧食なのに、これはちょっと勿体ない食べ方だったかなあ・・・。
よく考えると、そもそもタイ軍はこんな寒冷な環境下で食べる事を想定していない気がします。出来るだけ
過酷な状況でその実力の程を見極めたいと、朝から40㎞自転車で移動して(山間部含む)吹きっさらしの河
川敷を試食の場に選んだのですが、むしろ真夏のジャングルの様な環境で試食した方が、タイ王国軍戦闘糧食
の真価を発揮出来た気がするなあ・・・。
最後は封入されていたお菓子を頂きます。パッケージを開封すると、チョコでコーティングされたウエハー
スが2つ出てきましたが、賞味期限3年オーバーなのにきれいな状態で、ウエハースはぱりぱりの口当たり。
マイルドなミルクチョコは甘さほどほどで、想像以上に日本人の舌に馴染む味わいでした。普段は甘いのヤダ
ーとか言ってるくせに、ここまで状況的に追いつめられるとカロリーなら何でもいいというか、やっぱり甘い
お菓子って美味しいなあとか思ってしまいます(笑)。
最後はかじかんで感覚が無くなりつつある指先で後片付けを済ませ、震えながら荷物をまとめて大和川河川
敷を撤収。さらに20㎞の道のりを走破して、ほうほうの体で自宅に帰りつきました。
いやあ、期待を裏切らない素晴らしい美味しさでしたね、タイ王国軍戦闘糧食。しかし、普通に部屋で食べ
たらもっと美味しかった気がするなあ・・・。その辺りはずいぶん勿体ない事をしましたが、今回はたまたま
もう一つ別のメニューを入手できたので、こちらはもう少し気温が上がってから、タイ王国軍戦闘糧食に相応
しい環境を整えて試食したいと思いました。
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