まずは特選巧克力粉から行ってみましょう。小袋にはコーヒーらしきイラストが描かれていますが、この巧
克力というのがコーヒーのことなのかな?開封して中の匂いを確認すると、粉末ココアの甘い香りが。ああ、
巧克力ってチョコレートの事だったのか。なるほど、そう思って見ればそう読めますね。
パッケージには請用温涼開水調和飲用毎包可沖泡150ccと書いてあり、恐らく150ccのお湯もしくは冷
水で溶かせ、という意味なのでしょう。という訳で冷水で作ってみました。一口飲んでみると、なるほどチョ
コレートドリンクです。MREのココアの様な豊かな香りはありませんが、甘さ控えめでさっぱりと飲めます
ね。チロルチョコを水に溶かした様な、駄菓子テイストが溢れる一品であります。
次は乾餅(ビスケット)。カードよりも少し大きいサイズ(73×56×5mm)の薄いビスケットが14
枚、一片も欠ける事なく入っていました。最初は随分粗末なパッケージだなと思いましたが、その役割は十分
果たしているみたいですね。
一口齧ってみると、うん、実に素朴な味わいでなかなかイケますね。マリービスケットからミルクっぽさを
抜いた様な、上品なソバボウロの様な風味。けっこう堅いですが、5mmという薄さが丁度よく、サクサクと
美味しく頂けました。歯応えがあるので、食べた以上の満腹感がありそうです。
桔子果醤の小袋には輪切りになったオレンジのイラストが描かれていて、どうやらジャムかスプレッドの類
の模様です。食べてみると、おお、これはオレンジというよりもみかん味ですね。それも、日本が誇る温州み
かんそっくりの味。MREのジャムの様なしつこい甘さではなく、さっぱりとした優しい甘味がいい感じだな
あ。ただ、マーマレードの様な果肉の口当たりは全くなく、どちらかと言えば粘度強めのみかんシロップです
ね。
そしてこの、口の中で妙に粘る食感が不思議だなあ。果実本来のペクチンによるものではなく、まるで片栗
粉を使って無理矢理つけたような、喉に残る変なトロミが気になります。
続いては2つ入っていた營養即溶麥片。分かる様な分からない様な字面ですが、パッケージにはミルクを注
がれた果実入りシリアルの写真が印刷されています。開封すると、マッシュポテトみたいな真っ白い粉末がさ
らさらと出て来ました。よく見ると押し麦の様な小片も混じっていますが、うーん、写真と全然違う・・・。
どうやらこれも冷水かお湯を加えるみたいですが、そのままちょっと舐めてみると、粉末状にした落雁とコ
コナッツパウダーを混ぜた様な不思議な味でした。
二袋合計で250ccの冷水で溶かしてみると、微妙な泡を吹いた白く濁った液体の出来上がりです。うーん、
これ、コーンフレークのつもりなのかなあ。エイリアン2のラストで真っ二つにされた人造人間ビショップが、
口からどばどば噴き出していた体液そっくりなんですけど・・・。
ちょっとゲンナリしつつ一口飲んでみますが、あれ?意外と悪くないですよ。粉っぽいココナッツミルク風
味で、ほのかな甘さが結構イケます。タピオカなんかを入れると、夏向けの涼しげな美味しさに化けるんじゃ
ないでしょうか。
皿の底の方を掬うと、何だかモミガラくずのような物体がサルベージされましたが、どうやらこれがシリア
ルの模様です。食べてみるとかなりふやけ切っていますが、確かに繊維っぽい口当たりがありました。
最後は牛肉乾。何故かこれだけ迷彩柄のパッケージで、牛のシルエットが描かれていました。開封すると、
サイコロよりも小さいサイズの茶色い粒がザラザラと出て来ました。ぱっと見は鰹節の欠片みたいで、ビーフ
ジャーキーとインスタントコーヒーを混ぜた様な妙な香りが漂います。これを奥歯で噛みつぶすと、おお、な
るほどこれは牛肉の味!
たまり醤油っぽい甘辛味に香辛料のスパイシーさが効いていて、これも結構美味しいですね。そして何故か
鰹節の様な風味もあって、以前飼い猫のカリカリを一つ失敬して食べた時の記憶が甦りました。
しかしこれ、ビールの乾きモノにピッタリですね。味付けがけっこうキツく、2つ3つ食べていると喉が渇
いてきます。ここにほの甘いビスケットとシリアル入りココナッツミルクを合わせると、味のバランスが丁度
いい具合。まるで牛肉乾と營養即溶麥片、乾餅の三者が、6-4-3のダブルプレーを華麗に決めて見せたよ
うな感じであります。全体的にほの甘い食品が多い中、この牛肉乾の強烈な存在感が丁度いいアクセントにな
っていました。
おっと、薑糖を忘れていました。一円玉大のキャンディが4つ入っていますが、どうやらこれがデザートの
模様です。何味なのかさっぱり分からないままに口に入れてみると、強烈なショウガの辛味が舌を襲いました。
甘さはある様なない様な、まるでショウガの絞り汁をそのまま飲んだような味覚です。うーん、これはちょっ
と日本人には無理な味ですね。黙って口から出して、ゴミ箱に仕舞っておきました。
以上、台湾軍戦闘糧食『軍用野戰口糧 A式』の試食を終わります。全体としてはかなりお菓子っぽい糧食
でしたね。老人会のバス旅行で配られるおやつの様なイメージで、私個人的には、一食分の食事をとった満足
感には程遠い印象でありました。基本的に島国である国土の防衛が第一、敵地で戦線を伸ばす必要がない国な
ので、こんなもので十分なのでしょうか。
とは言え、世界に誇れる食文化を持つ台湾なんですから、もうちょっとそれなりのイロイロを見せて貰いた
かった気もしますね。
ただ、ショウガ飴を除くとどれもこれもどこか懐かしい風味が多く、昔こんなお菓子を食べた様な気がする
なあ・・・という不思議なノスタルジーを楽しめました。小さいころからの夢だった、駄菓子屋での豪遊をし
た気分というか(笑)。
大事な大事な100円玉を握りしめて通った小さい頃とは違い、今はあれもこれも好きなだけ買える事がと
ても楽しい反面、微妙な虚しさも感じる・・・。そんな所も含めて、台湾軍戦闘糧食の醍醐味なのだと感じま
した。
<追記>
あと、このA式と一緒に別メニューであるC式も入手出来たのですが、開封してみると両者の違いはジャム
と粉末ドリンクだけで、それ以外は全く同じ内容だったのが驚きでした。これ、現場の兵士達はかなりガッカ
リな気がするんだけどなあ。
基本的に炊事設備で作った温食が配給されるのが当たり前で、この野戰口糧を使う事は稀なんでしょうか?
別にレトルト糧食があるという話は聞いた事がありませんし、この辺は謎だなあ。
ちなみにC式に入っていたのは草莓果醤(イチゴジャム)でした。かき氷のいちごシロップを片栗粉でまと
めた様な味わいで、まあ美味いでもなく不味いでもなく。
粉末ドリンクは特選速溶珈琲(どちらも王へんではなく口へん)。コーヒー牛乳を薄めたような風味で、他
国戦闘糧食の粉末コーヒーに比べるとかなり置いて行かれてるなあ。でも、糧食全体に漂うレトロ駄菓子屋テ
イストに忠実な味とも言えるので、これはこれでいいのかもしれません。
いつの日か台湾軍の本気の戦闘糧食を試食できる事を祈りつつ、C式の試食を終えました。
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