スタミナ丼


       さて今回は、自衛隊非常用糧食『スタミナ丼』です。スタミナ丼とはこれまた具体的な内容が思い浮かびに
      くい料理名
ですが、とかニンニクとかてんこ盛りに入っているのかな?自衛官の強靭な体力の維持に必要な
      エネルギーがぎゅっと詰め込まれてそうで、なかなか頼もしげなメニュー名です。
       レトルトをしっかりと温めて、まずはドライカレーから行ってみましょう。普通の白飯よりも脂肪分がある
      せいか、開封するとつるりんと出て来るのがいい感じ。レトルトの長期保存食なのでお米の食感こそヤワヤワ
      ですが、意外なほど香辛料の刺激が強くて食べごたえがあります。辛味が苦手な人にはちょっとキツいかも。
       とは言え辛さと香り、そして甘さのバランスが絶妙なので、とても美味しく頂く事ができました。具はタマ
      ネギ、ニンジン、グリーンピース、マッシュルーム、豚肉
。どの具も存在感のある大きさで、食べていて満足
      感がありますね。

       もう一つの主食は白飯。普通のパックご飯を平べったいレトルトに詰め込んだ感じで、コシヒカリ並みとは
      いかないものの、日本人の主食として全く問題のない白ご飯です。U型無印版の白飯の様な、包装材のあから
      さまなプラスチック臭がない
のも好印象。
       さて、それではメインのスタミナ丼レトルトを開封です。お皿にあけると、おおお、何とも美味しそうな香
      りが漂ってきましたよ。牛丼的なビジュアルを予想していましたが、中身はドロドロのデロデロでちょっと面
      食らいます。鶏そぼろをさらに細かく挽いた感じで、以前試食したタコライスに近い見た目。
       そしてこの、強烈な油の量にも驚かされます。デロデロの上を真っ赤な油脂が防弾ガラスの如く覆っていて、
      相当なコテコテギタギタテイストが予想されますが、とにかく一口。
       おおお、これは美味い!オイスターソースたまり醤油ナンプラーを混ぜた様な、一言では言い表し難い
      不思議な風味
。っていうかコレ、どこかで食べた様な味だなぁ・・・と思ったら、私の大好きなタイ料理の
      肉のバジル炒め
、あれにそっくりです。

       試しに白飯にかけて食べてみると、バジルの香りが足りないガイ・パッ・バイカパオ(鶏肉のバジル炒め)
      そのもの。
いやこれ、マジで笑ってしまうぐらい美味しいですよ!
       豚挽き肉の中にはタマネギゴボウが入っています。シャクシャクした口当たりのゴボウはすぐ分かりまし
      たが、タマネギは煮溶けてしまったのか確認できません。そしてスタミナ丼らしくニンニクの香りが結構強く、
      口の中がヌルヌルになる脂肪分の多さもあってこれはパワーがつきそうだなあ。若い隊員さんは喜びそうです
      ね。
       それにしてもこのギタギタの油分が、白飯にとてもよく合います。豚肉の旨味と醤油、ニンニクのエキスを
      吸った香味油
が、今一つ力の無い白飯にを入れて一気にパワーアップさせてくれた感じ。この油分だけでお
      茶碗3杯はイケそう
な実力を感じます。

       あと、試しにドライカレーにもかけてみたのですが、これがまた驚きの美味!なんだこりゃ!戦闘糧食でこ
      れは美味すぎだろ!
と、怒り笑いが込み上げてきます。
       個性の強いドライカレーがスタミナ丼とケンカするのでは・・・
と危惧していましたが、意外な事にドライ
      カレーが快くスタミナ丼を受け入れて、悠久の歴史を誇るインドならではの包容力と器の大きさを見せつけら
      れたような気分。白ご飯とのマッチングも絶妙でしたが、私的にはよりスパイシーさが増すドライカレーとの
      組み合わせ
を推したいところであります。
       日本とインド、タイによる合同軍事演習を見ているかのようなこの一皿。こういう味が好きな私にとっては、
      正直たまンないものがあります(笑)。アジアの新たな夜明けを感じさせる様な味わいですが、どこかの国を
      忘れている様な・・・多分気のせいだな。ンフフフフフフ

       それにしても、ほんと美味しかったですね、スタミナ丼。落ち着け!落ち着かんか!もっとゆっくり味わっ
      て食べるんじゃK〜!
と、丹下段平のようにセコンドで叫んでいるもう一人の私を無視して、ガツガツと一気
      に食べきってしまいました。食べ終わった後も陶然としてしまうというか、うっとりと余韻に浸りたくなる味
      わい。戦闘糧食でこれは凄すぎだよなあ。
       ちなみにこのスタミナ丼、白ご飯一つで食べるにしてはかなり味が濃いというか塩気がキツイので、食後は
      結構喉が渇きました。まあ人一倍体を使って汗をかく陸自の隊員さんなら、これ位のナトリウムを摂らないと
      体が持たない
んだろうなあ。

       ただ一つ気になったのが、食べ終わった後のスタミナ丼のレトルトのニオイです。私は食べ終わった戦闘糧
      食のパッケージを、全て捨てずに保存してあるのですが(段ボール箱10個ぐらいあってすごい邪魔・・・)、
      きれいに洗って乾燥させた後のスタミナ丼レトルトの悪臭たるや、凄まじいものがありました。
       金属臭、レトルト臭、オイル臭、ニンニク臭、あと訳の分からないニオイが入り混じり、空腹時でも一呼吸
      で食欲をなくしそう。なんというか・・・一ヶ月位風呂に入らなかったロボみたいな匂いなんですよね(そん
      なロボに会った事はありませんが)。このメニューを入手した方は食後のレトルトのアロマを味わって、ぜひ
      私と同じ目に会って下さい(笑)

       それにしても、非常用糧食からほんっと美味しくなりましたね、自衛隊のレーション。今回で4つ目の試食
      ですが、鶏肉と大豆煮、タコライス、すき焼きハンバーグに続いて試合開始直後から4者連続ホームランと言
      っても過言ではない味わいです。
       その分、この記録が何処で途切れるのか、どんなメニューが断ち切ってくれるのかを考えると逆に空恐ろし
      くもあります。物事には何でも反動があるというか、何よりも心配なのが、U型改善版で消えるであろうメニ
      ューの筆頭と思っていたアイツ
が、なぜか非常用糧食でも生き残って、今私の手の中にあるんですよね、カツ
      オカレー煮。
一体どんな政治力を使って生き残りやがったんだ・・・。恐ろしい!でも食べたい!という、極
      上のホラー映画にも通じるテイストを感じます。
       あまりの美味しさに逆に今後が不安になってしまうと言うか、いい事なんてそうそう続かないぞと言うか。
      自分の後ろ向きな性格猜疑心の強さを今さらながら思い知らされて微妙に悲しくなる様な、素晴らしい味わ
      いに相応しくない後味となった試食でありました。




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