潜水艦そうりゅうカレー


       さて今回は、リニューアル版呉海自カレーシリーズ第2弾『潜水艦そうりゅうカレー』です。SS501潜
      水艦そうりゅう
のカレーはリニューアル前の呉海自カレーで既に試食済みですが、初っ端から一発かましてく
      るストレートな辛さが強く印象に残っています。
       そして今回入手したリニューアル版のそうりゅうカレー。同シリーズの商品なので中身が全く同じであって
      もおかしくありません
が・・・とレトルト外箱の原材料表示を確認すると、おお、全く別物ですね。艦艇で提
      供される金曜カレーは複数いる給養員が週替わりで個性を競い合う事が多いと聞きますが、前回とは別の給養
      員のレシピが採用されたのかな?
       「よし、今回のカレーはお前に任せた!」
       と、給養員長に背中を押された若手給養員が腕を振るったのかもしれません。

       ちなみに箱裏面の味覚チャートによると、今回のそうりゅうカレーは『辛味:2 甘味:5 酸味:1 コ
      ク:4 トロみ:4』
との事。前回とは違い、辛味を抑えて甘味とコクに振って来た模様です。給養員長のカ
      レーに倣う事を良しとせず、自分が本当に美味しいと思えるカレーを追求したその意気やよし!とほくそ笑み
      つつ、しっかり温めたレトルトをお皿にあけて、まずは一口頂いてみます。
       おおお、なるほど。確かに前回の刺激的な辛さのそうりゅうカレーとは全く別物ですね。特に印象的なのが、
      豊饒ながらもすっきりと澄んだ甘味。フルーツや野菜の分厚い甘みを前面に押し出しがちな海自カレーの中に
      あって、これはなかなか面白い個性です。
       ゴロゴロ転がっている具は牛肉じゃがいもニンジンという伝統的なラインナップ。赤身独特のしっかり
      噛み締め味
のあるこの牛肉は、もしかしてスネ肉かな?いや、別の肉には甘い脂の味わいがありますね。恐ら
      くバラ肉と思われます。

       豊かなコクと澄んだ甘味を基本とした、伝統的なこのカレー。海軍の末裔たる海上自衛隊に相応しい、クラ
      シックな味わい
に満ちています。その反面、期待の若手給養員が作ったにしてはちょっと正統派すぎるという
      か、もう少し若さ任せにハジけた勢いが欲しかった気もしますが、これだけレベルの高いスタンダードを極め
      た給養員なら、この先いくらでも自分の味を打ち出していけるでしょう。
       「ふうん、なるほど。まずは合格って事にしといてやるよ(笑)」
       という、試食した給養員長の不敵な笑みが瞼に浮かぶ様(笑)。
       それにしてもこの、不思議な甘味の正体はなんなんだろう。野菜の雑味にもフルーツの香りにも邪魔されな
      い、くっきりシンプルな甘味・・・考えられるとしたら、ストレートに白砂糖かな?
       という訳で箱裏の原材料表示を確認。おお、確かに砂糖がありました。甘みを構成している砂糖、りんごペ
      ースト、はちみつ、チャツネ
の中で一番最初に出て来るのが砂糖なので(原材料名は使用量が多い順に記載さ
      れます)、やはりこのそうりゅうカレーの甘味は砂糖が中核を担っていると言えるでしょう。

       それにしても、この実にバランスよく整った正統派のそうりゅうカレーの中で、どうして私は砂糖に気づく
      事ができたんだろう。さほど味覚が鋭敏でもない私の頭の中に、ぱっと思い浮かんだ白砂糖・・・これは味覚
      による分析的な結果ではなく、もっと直感的なもの。作り手の意図した何かが私に伝わり、そこから白砂糖の
      存在が浮かび上がって来た気がするんですよね。
       なんなんだろう、その作り手からのメッセージとは・・・と考えながら、舌の上で何度も何度も一口分のカ
      レーを転がしながら味わっていくうちに、ふと気が付いた事がありました。食べ進むうちに徐々に見えてくる
      お皿の白さ。これがきっと白砂糖を無意識に連想させたのでは?
       舌先に神経を集中してカレーを味わっていると、どうしても視覚的な注意力は落ちてしまいます。そんな警
      戒心が薄くなった私の視神経にすっと滑り込んでくる、このカレー皿の白さ。そこから浮かび上がってくる、
      白砂糖の存在・・・このサブリミナル効果が狙って仕込まれたものだとしたら、相当な技前を持つ給養員の仕
      事
と言わざるを得ません。

       しかしここで問題になってくるのが、艦内で使用されているお皿の種類です。曹士の憩いの場である科員食
      堂で使用されているのは、ステンレスの凸凹メストレー。食べ進んでも見えてくるのはステンレスの銀色だけ
      で、白砂糖の存在に気づく事はないでしょう。
       一方幹部が食事をとる士官室や先任海曹の棲み処となる先任海曹室では、カレーや生野菜、フルーツの類は
      それぞれ別皿で提供されます
。つまりこの時点でそうりゅうカレーの真実に気がつけるのは、銀色トレーを使
      用しない先任海曹以上の乗組員に絞られます。
       その中で、まずは士官室にいる幹部について考えてみましょう。多少の例外はありますが、頻繁に異動があ
      る幹部は一つの艦に長くいても1年半ほど。着任後はその艦と人に慣れるのに精いっぱいで、目の前にあるカ
      レーについて深く思いを巡らせるヒマなどまずないでしょう。せいぜい
       「おお、この艦のカレーは美味いなあ」
       程度の感想を抱く事があるとしても、その甘さの正体にまで思考のリソースを割く余裕は、膨大な仕事量を
      抱える幹部にはないと思われます。

       となると、残るは先任海曹。しかし先任海曹は先任海曹で、激務である事には変わりありません。特に先任
      海曹になりたての一等海曹クラスならなおさらです。科員食堂のヌシとして君臨していた以前とは違い、仕事
      や言動、振る舞いの一つ一つに先任バッジに相応しいレベルが求められます。常にに上座扱いだった科員居住
      区から先任海曹室の末席に居場所が変わり、目の前にいるのは海千山千のベテラン先任海曹ばかり。これはこ
      れで胃の痛くなる毎日というか、カレーについてのんきに語れる余裕があるとも思えません。
       となると、消去法で最終的に残るのは、先任海曹室にいる中堅クラス以上の隊員だけ。海自でメシを食って
      幾星霜。酸いも甘いも噛み分けて、仕事にも人にも重厚な余裕が持てるようになったベテラン親父。先任伍長
      以下僅か2~3名の先任海曹
だけが、このそうりゅうカレーの本質に気がつけると思われます。
       年齢で言えば40代後半あたり。今までいろんな艦でいろんなカレーを食べてきたけど、結局スタンダード
      でトラディショナルなカレーが一番・・・
という結論に落ち着きがちな年齢とも重なってきます。そうか、こ
      のカレーは僅か2~3名程度の、ベテラン先任海曹に向けて作られたカレーだったのか・・・。

       いやはや、一見して万人に受け入れられやすい基本的なカレーと思わせながら、その実こんなにもピンポイ
      ントで食べ手を絞り込んでくるカレー
だったとは、正直驚きです。このレポの最初の方で若手給養員がこのカ
      レーのレシピを担当したと想像しましたが、いくら腕利きとは言え若手にこんなカレーが作れる訳がありませ
      ん

       となるとこのカレーは、代替わりしたニュー給養員長の作品なのかもしれませんね。まったく私の妄想力も
      いい加減なもんだなあ・・・と苦笑して、また気づいてしまいました。

       ちょっと待てよ。あの狭苦しい潜水艦内に先任海曹室なんてあるんだろうか。艦の頭脳というべき士官室で
      すらも、山道の離合みたいな通路の一角でしかないのに。
       あと先任海曹室のカレーは白い皿で提供されているのか?確かステンレス製の深皿にカレーが盛られていた
      艦や、仕切りのついたお弁当箱風の容器を使った艦もあった様な気がします。
       さらによくよく考えてみると、科員食堂であっても白いオーバルプレートを使っていた潜水艦の画像も見た
      事がある様な・・・。もしそうだとしたら、ここまで私が長々と述べて来た一方的な考察が、根本的なところ
      から成り立たなくなる可能性
も出てきます。
       こうなったら是非潜水艦そうりゅうの一般公開に参加して、乗組員の人に実際のところを聞き込んでみたい
      ですが、それはそれでまたしても考えすぎ&こじつけすぎがバレて赤っ恥をかく結果になりそう・・・。
       まったく潜水艦は謎に包まれたフネだぜ・・・と変なところで納得しつつ、大満足の『潜水艦そうりゅうカ
      レー』
を食べ終えました。




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