関ヶ原ウォーランド

2016.01.17


       という訳で関ヶ原鍾乳洞を出発。すぐ近くにある関ヶ原ウォーランドへと移動します。それにしても関ヶ原ウォ
      ーランド、名前から察するに関ヶ原の合戦に関するテーマパークなのかな?せっかく岐阜まで来たのにすぐに
      帰るのは勿体ない・・・
とカーナビで適当に見つけた施設なのですが、日本史にさほど興味のない私が見に行
      って、果たしてその面白さが分かるのかどうか。
       道路から少し入ったところにその関ヶ原ウォーランドはありましたが、敷地に沿って瓦屋根の白壁が延々と
      続き、まるでどこかの大名屋敷の様。道路を抜けると広大な駐車スペースが広がっており、想像以上の規模
      です。敷地の脇には大きなドライブインがあり、団体バス客をあてこんだお土産屋とお食事処の模様。道の駅
      以外のこの手の店は久しぶりなので、あとで寄ってみようかな。
       そして驚いたのが、関ヶ原ウォーランドの正面玄関とでも言うべき正門。見上げる様な高さの石垣といい、漆
      喰の白壁いい、まさに城郭そのもの。これは想像していた以上に、本気度の高いテーマパークかもしれませ
      んよ。

       漫画や小説、映画にも言える事ですが、例えそのジャンルに興味がなくても作り手の本気度や作品愛が伝
      わってくる作品
には、おのずと共感できるもの。大して期待しないままなんとなく立ち寄った関ヶ原ウォーランド
      ですが、なんだか大当たりの予感がしてきました。
       正門前にはつやつやと黒光りする甲冑が展示してあり、申し出ればレンタルも可能との事。随分と細身で貫
      禄に欠けた甲冑
に見えますが、これは脱皮状態なだけで、実際に着ればそれなりに迫力あるんだろうなあ。

       その奥の方には記念メダルの自販機刻印機があり、非常に懐かしい気分。ああ、昔は観光地にありまし
      たね、記念メダル。
       受付にて大人500円なりを支払い敷地内に入りますが、この『カニ詰め放題』というポスターはなんなんだ。
      色んな意味で関ヶ原らしくない気がしますね。中真っ暗だし(笑)。

       とりあえず順路説明の通りに敷地内を歩きますが、すぐに小高い場所に突っ立っている武士の姿が目に入
      りました。どうやらこのテーマパークは広大な敷地全体を関ヶ原の合戦場に見立て、東西両軍の布陣有名
      な戦いの様子
を史実に基づきながら、等身大のコンクリート人形で再現したものみたいです。

       敷地内のあちこちに戦国武将が登場し、その人形の微妙にユーモラスな作り込み風雪に晒された程良い
      傷み加減
が、一種独特な味わいを醸し出しています。合戦の推移を解説した音声案内説明パネルの類も
      充実していて、これは歴史好きにはたまらないだろうなあ。
       そこら中にウヨウヨいるコンクリ戦国武将ですが、屈強なもののふながらもその肢体は非常に繊細らしく、
      触り厳禁という館長直々の注意書きがあちこちにありました。お触り厳禁か・・・Mr.オクレ大仁田厚にそっ
      くりな淑女達が空手の型の様な舞いを見せてくれた、昔入った事のある死ぬほど切ない新世界のストリップ劇
      場
を思い出してしまいました。

       なんというか、ここ、面白いな・・・と思いながら歩いて行くと、唐突に輪投げコーナーが出現。サビサビになっ
      たL字フックの下にはBL臭ぷんぷんな萌え萌え戦国武将カードが貼ってありますが、紫外線に焼けた上に印
      刷インクがに滲み、なんともトホホな雰囲気。

       白目を剥いたまま突っ立っている大久保彦左ェ門にビビりながら進んでいくと、徳川家康が最後の陣地を築
      いた場所に出ました。葵の御紋のもとに大勢の家臣が控え、その中央ではガンダムみたいな色をした家康
      どっかと座りこんで、首実験の真っ最中

       生首さんは湯浅五助という名前らしく、辺りに飛び散った血と真っ白く血の気を失った顔色が実に恐ろしげ。
      更に向こうからは、沢山の生首を丸太に括りつけた侍がやってきました。その作り込みはおどろおどろしく、運
      んできた侍が浴びた返り血までリアルに再現されています。

       お、こちらの方では、雑兵同士が馬乗りになって取っ組み合いの真っ最中。太刀ではなく、どちらも小刀を使
      っているのは拘りですねえ。

       別の場所にいるのは、武将の脇に控えている従者でしょうか。刀を抜いて構えつつもなんとなく目が泳いで
      いる
というか、すごく自信なさそうなのが興味深い。勇ましい合戦の最中にも、恐怖で膝が笑っていた人もい
      たんでしょう。そういうヘタレ侍に、なんとなく共感を覚えてしまいます。

       と、ここで妙な看板が。にんにん城?何じゃそれは・・・と思いつつ矢印の方に向かって行くと、陽当たりの悪
      い敷地の隅の方に、しょぼくれたお城がありました。どうやらここは忍者たちの住処らしいですが、辺りは雑草
      が生え放題ですし、塀の瓦や玄関の石段は崩れたまま。しかも扉の前にはにんにん城とどーんと大書
      きしてあるし・・・忍者がそれでいいのか(笑)

       城の内部は埃だらけの荒れ放題で、整理整頓や清掃といった忍者らしい几帳面さはとうに失われてしまった
      模様。『忍』と一文字だけ書かれた捻りのない掛け軸が傾いているのも、この粗末なにんにん城をあてがわれ
      た忍者たちの投げやり&やけっぱちな気分を表している様。

       また壁の一部が隠し扉になっていて、手のひらマークの部分を押すとくるりと回転。建物外壁と内壁の隙間
      
に入り込めますが、すぐ横に出口があるのであまり意味なさそう。しかもご丁寧に『ここから出れるよ!』と書
      
いてあり、隠し扉なのに出口を知らせてくれる忍者のホスピタリティに涙が出そうになります。

       ちなみにこのにんにん城のすぐ横には崩壊寸前の廃屋があり、中を覗いてみると古びた汚いトイレでした。
      いやこれはトイレというよりも、便所といった風情だなあ。忍者達の住環境のあまりの劣悪さに、こちらまで暗
      い気分にさせられます。
       よく見るとにんにん城の2階部分に忍者が潜んでいましたが、大賑わいの華やかな合戦場を悲しげな眼差し
      
で見つめていて、そぞろ哀れを催す一幕でした。

       その後も槍、刀、鉄砲を駆使した戦国時代絵巻が延々と繰り広げられます。とは言え単に勇ましいだけでは
      なくびっくり仰天で落馬したみっともない武士の様子なども再現されていて、なんとも人間くさい微笑ましさがい
      いなあ。
       それにしてもこの人、ズボンというか下履きというのか知りませんが、布地が肌色な所為で下半身すっぽん
      ぽん
に見えますね(笑)。正統派の変質者みたいでちょっと噴き出してしまいました。合戦の最中に何やってる
      んだ(笑)

       とんこつラーメン屋のマークが描かれた陣地では、島津豊久が刀を振りかざして見得を切っています。しかし
      着用しているのがルパン三世のジャケットみたいで、どうにも戦国武将らしい威厳に欠けます。

       また、こちらでは馬乗りの取っ組み合いが行われ、血まみれの小刀返り血を浴びた無表情な様子が何と
      も恐ろしげ。

       その脇の方では、なぜかトナカイみたいな扮装をした武田信玄反戦平和を訴えていますが、周囲の誰か
      らも賛同されていないところを見ると、あまり人望はなかった模様。そもそも、そんなクリスマスパーティーから
      抜け出してきたみたいな浮ついた恰好
で言われてもなあ。 っていうか、信玄は『ノーモア関ヶ原』なんて言わな
      いと思う・・・。

       敷地の端っこの方では、大谷吉隆とかいう人が死に装束に身を包み、今まさに自刃寸前。隣には元プロレ
      スラーの馳浩そっくりな家臣
が控え、悲しげな眼をしたお坊さんが手を合わせているのも戦の世の無常を感じ
      させます。

       それにしてもこの大谷吉隆、よほど無念だったのか目が真っ赤に血走っているのが強烈だなあ。作っている
      人のノリノリ具合というか、和歌山県の小原洞窟恐竜ランドや石川県のハニベ岩窟院に通じる、真面目なの
      にトホホなテイスト
を感じます。

       こちらには槍を持ったまま間抜けな表情でひっくり返っている人がいますが、なぜか股間部分だけ濃い色の
      塗料
が塗られていて、これは恐怖のあまりちびってしまった模様。そりゃそうでしょうねえ。戦国だのロマンだ
      の聞こえはいいですが、結局は人と人とのリアルな殺し合い。武家の出ならともかく、農民上がりの雑兵なら
      おしっこぐらいちびって当然
でしょう。なんだかこのお漏らしおじさんに同情してしまいました。

       そしてこちらでは刀が折れてしまった侍が、今まさに槍に突き殺される寸前。無様な尻もち恐怖に歪み泣
      きだしそうな表情
も、なんとも人間らしさに満ちています。勇ましい武将達の活躍だけでなく、こういった普通に
      善良で普通にマヌケで普通に人間らしい名もなき人々の悲喜こもごも
まできっちりと描き切っているところが、
      この関ヶ原ウォーランドの醍醐味なんだろうなあ。

       ふと見ると、敷地の隅に建築資材廃材が押し込められた一角があり、古い軽トラが埋まるように放置して
      ありました。おおお、六連星のエンブレム!『農道のポルシェ』との誉高い、スバルが誇る営農サンバー!
       ナンバープレートが無いので廃車になってる模様ですが、作業車両として敷地内だけで使う分には道路交通
      法の適用外
になるのかな?サイドミラーすらなくなっていますが・・・。

       しかしこの営農サンバー、なんか変だぞ・・・と思ってよく見ると、なんとフロントグリルがペンキによる手書き!
      しかも汚い字で『4WD』と書いてあります(笑)。これはいいセンスしていると言わざるを得ません。スバル営農
      サンバーStiバージョン!
もう555って描いちゃえ(笑)!それにしても、こんなものが対向車線を走ってきたら、
      目をくぎ付けにされて追突必至でしょう。岐阜は恐ろしいところだ・・・

       その後は、真面目な資料が充実した関ヶ原合戦資料館武具甲冑資料館を見て回ります。特に後者は昔
      大阪城のすぐ脇で展示を行っていた、大阪市立歴史博物館にそっくりな雰囲気ですごくいい感じでしたが、天
      井からぶら下がっている『決戦!関ヶ原』という昔のロボットアニメのサブタイトルみたいな看板が、猛烈に浮
      いているのがなんともはや。落ち着いた古めかしい雰囲気が台無しです。

       いやー、実に面白かった!適当に見つけて適当に入ったにもかかわらず、まさかまさかの大当り。歴史に
     大して興味のない私でも十分に楽しめたとてもよく出来たテーマパークでしたが、歴史好きな人が見れば色ん
     な意味でニヤリ
とさせられるような、小ネタ仕掛けがいっぱいあるんだろうなあ。。
       その後は駐車場に隣接する花伊吹というドライブインへ。思った通り団体客向けのお土産屋兼お食事処で、
      個人客はあまりアテにしていないっぽいのが逆に気楽でよかったです。座敷には一人用の小鍋冷えてそう
      な天ぷら
がずらりと並び、バス旅行の団体客を待ち構えている様。
       そういえばこの手の団体バス旅行って、個人的には全く縁がなくなったなあ。最後に参加したのっていつの
      話だったっけ。正直あまり性に合わない旅行スタイルではありますが、今ならそれはそれで別の意味で楽しめ
      るかもしれないな・・・
。気まぐれに購入した赤みそせんべいを齧りながら、関ヶ原ウォーランドを後にしました。




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