精鋭の休息



        さて今回は、『精鋭の休息』であります。どうやらレトルトカレーの模様ですが、この精鋭の休息というの
       は基地駐屯地の売店によくあるお土産のシリーズ商品で、同名のドリップコーヒーアソートキャンディ
       パウンドケーキの類を何度か見かけた事がありますが、いつの間にかレトルトカレーも出ていた模様。
        いきなりこんな事を言ってはなんですが、名前こそミリタリーっぽいものの、商品自体は自衛隊や陸海
       軍との関連性が薄い
ですし、ソレっぽいパッケージを纏っているだけで、結局中身はカレーでもキャンデ
       ィでもなんでもいいんですよね
。香川県の善通寺駐屯地の売店で発見した時は、遠征のテンションのま
       まについ購入してしまったのですが、なんかこの買わされてしまった感が、自分でもちょっと悔しいなあ。
        もう少し自衛隊との関連性のアピールがあればまた別ですが、こういった自衛隊人気に安易に便乗し
       ただけに見える商品
には、つい辛口になってしまいます。購入しておいて何ですが(笑)


        パッケージは暗い感じの迷彩柄で、夕焼けをバックにした擬装姿の兵士が、64式と思しき小銃を抱え
       ています。粒子の荒さが逆に雰囲気を醸し出しているよく出来たデザインですが、この適当に描きました
       
といった感じの迷彩柄や、『研ぎ澄まされた辛さと味わい』という投げやりなコピーがいかにも安直で、
       衛隊に対する思い入れ
や戦前から続く伝統ある糧食メニューとしてのカレーに対するリスペクトが、いま
       一つ伝わってきません。
        一人前180gというボリュームも、他の自衛隊レトルトカレーに比べると頼りない印象ですし、一つ500
       円もしたこのカレー、大丈夫なのかなあ・・・。


        とりあえずレトルトを温めて、お皿に盛ったご飯にかけてみます。ほほう、最初はかなり懐疑的な目で見
       てしまいましたが、見た目は凶暴そうなダークブラウンでなかなか美味しそうですね。ごろごろとした具
       は存在感があり、立ちのぼる香辛料の香りも刺激的。果たしてどのようなお味なのか、まずは一口です。
        ほほう、これはなかなか。パッケージの安直な印象を見事に裏切る、実に力強い味わいのカレーです。
       入っているのはとろとろになるまで煮込まれた牛スジ肉で、大ぶりのものが4切れ、ぱっと見の迫力を際
       立たせています。
        そしてこのやや下品ながらもパワーのある牛スジ肉の旨味と脂肪の甘味を、しっかりとした辛味が引き
       締めていて、隠し味として使われた醤油のスッキリ味とデミグラスソースの深いコクが、上手い具合に全
       体の味の豊かさを支えている感じ。適当っぽい第一印象に惑わされてしまいましたが、かなりの実力を隠
       し持っているカレー
だと言えますよ、これは。


        これだけ太い味わいのカレーだと、総カロリーもそれなりの数字になるものですが、この精鋭の休息は
       一人前180gでわずか168kcal
。へー、300kcalはあるかと思っていたのですが。意外とローカロリー
       なんですね。これはダイエット中の人にも喜ばれそう。
        最初の印象を大きく裏切ると言う意味では、してやられたと言うか見た目だけで判断しちゃいけないな
       と反省させられたカレーでした。ただそれでも、このカレーの何をもって精鋭の休息なのか、何でこれが
       ミリタリー系(自衛隊とは書かれていませんでした)として売りだされているのか・・・
という疑問は解消され
       ず、微妙にもやもやとした食後感が残りました。


        なんというか、学科試験や体力試験、健康診断の結果は申し分ないものの、志望動機や熱意に今一つ
       疑問が残る防衛大学校受験生
みたい。建前だけでも、『国防という崇高な職務の中で、自らを鍛え高め
       たい』とか『人の為に何かをしたい』と言ってくれれば問題なく合格印を押す事ができるのに、面接で志望
       動機を尋ねても
        「あ、いえ、まあなんとなくやってみようかなあって・・・」
        という返事しか返ってこなかった感じです(そんな受験生がいるかどうか知りませんが)。
        確かにレトルトカレーとしては高水準の味わいですが、果たしてこれを自衛隊や陸海軍カレーと同じカテ
       ゴリーに含めていいものかどうか。
        『これだけ有能な人材なら、是非迎え入れるべきだ。心の在り方については、在学中に受け入れる側が
       しっかりと叩き込めばいいだろう。それが俺達の仕事じゃないか!』

        という考え方も出来ますが、
        『最初の段階でハートが無い奴は、どれだけ優秀でもお断りだ!』
        という考え方にも頷けます。
        うーん・・・。このカレーの中途半端な立ち位置は、ある意味食べる側の人材というものに対する評価基
       準を浮き彫りにしてしまう
のかもしれません。私の場合は、ギリギリ最後まで悩んで悩んで・・・やっぱり不
       合格
にしてしまうのかなあ。難しいところですが。
        しかし、意外とこういった人材の方が入隊した後に結果を残し、トントン拍子に出世してしまう事もあるん
       ですから、人を育てたり見極めるというのは、大変な事なんですねえ。


        なんだか途中から変な方向に脱線してしまいましたが、その実力は折り紙つき。ちょっと懐に余裕があ
       る時はまた買いたいと思わせる、実に美味しいカレーでした。
        あと、自衛隊とは全然違うパッケージの迷彩柄ですが、各国軍隊で採用されている迷彩模様それぞれ
       にはれっきとした特許の概念があり、無断で使用する事はできない
そうです。へー、知らなかったなあ。レ
       トルトカレーにまたひとつ世の中の事を教えられたり考えさせられたりした、実に意義のある試食でした。




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