さんまピリカラ
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さて今回は、自衛隊非常用糧食『さんまピリカラ』です。以前試食した事のある、U型改善版からの引き継
ぎメニューですね。さんまピリ辛煮自体の味はかなり美味しかったのですが、いかんせんタッグを組んだのが
コーンスープという極めて不可解な組み合わせだったので、総合評価でかなり落としてしまった事が強く印象
に残っています。
ちなみに今回の非常用糧食では丸かじりチキンが新たな相棒として採用され、これはかなり期待できそう。
さんまピリ辛煮&コーンスープという悲惨な組み合わせについては、以前の試食でボロカスに書いてしまった
私ですが、実際に現場の隊員さんからも不評が続出したんでしょうか?丸かじりチキンと組んで再起を誓うさ
んまピリカラには、大いに期待したいところ。
あとU型改善版では『さんまピリ辛煮』だったメニュー名が、非常用糧食からは『さんまピリカラ』に変更
となっています。もしかして内容も一新してきたのかな?しかもパッケージをよく見ると、今回から『ふりか
け』までついてきた模様。おおお、ふりかけときたか・・・。
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U型無印版時代は副食以外に汁物、漬物類が充実していたのですが、U型改善版以降はかなり質素になって
しまった自衛隊戦闘糧食。今回は主食以外に副食が2品、さらにふりかけまで用意するという充実っぷりで、
これは嬉しいなあ。現場の血の滲む様なコストダウンの努力が、こうして一袋のふりかけとなって結実した訳
ですね。メインディッシュこそU型改善版からの引き継ぎですが、これはもう新メニューとして扱ってもいい
でしょう。気合いを入れつつ、さっそく3つのレトルトを温めます。
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まずはさんまピリカラを開封。一見して、U型改善版のさんまピリ辛煮と殆ど変らない気がしますね。一口
食べてみると、おお、そうそう、これこれ。甘味噌風の味付けがさんまの濃厚な旨味にピッタリ合っていて、
白ご飯にも実によく合います。
味付けは醤油メインの筈なのに、そこに青魚独特の風味とワタっぽい苦みが加わって味噌煮風の味わいにな
っているのが不思議だなあ。このとろとろぴろぴろした皮の部分に残っている、いかにも青魚らしい脂肪の風
味もたまりません。うーん、これは冷酒が欲しい!
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味付けの方向性はU型改善版時代とほとんど同じですが、非常用糧食の方はピリカラっぽさが随分と抑えら
れている気がします。前回の試食が数年前の事なので、正確に比べるのは無理がありますが、こうして食べて
いてもとてもピリカラとは言い難いマイルドな甘ウマ風味。U型改善版の方では煮汁の上に沢山浮いていた粉
末唐辛子っぽいものも、今回のさんまピリカラでは見当たりませんし。
舌の感覚に集中して注意深く味わっていると、うん、ほんのりと、僅かな辛味がありますね。これはピリカ
ラというより、全体の甘ウマ風味をより一層際立たせる為、隠し味として入れた僅かな辛味・・・と解釈すべ
きでしょう。
名前通りの刺激的なピリカラを期待すると肩透かしを食らった様な気分になりますが、これはある意味辛味
の本道というか、辛さの有効な活かし方だと言えます。このあるかないかの僅かな辛味を抜いてしまうと、途
端に鈍重で野暮ったい味わいになりそうですし。
うん、やはりピリカラとは言い難いですが、これはこれで非常に美味しいから問題ないでしょう。
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もう一方の副食は、丸かじりチキン。以前『すき焼きハンバーグ』で試食したものですね。フライドチキン
をレトルトにしちゃえ!という、保守的に纏まりがちな自衛隊の装備品にしては珍しく前衛的な一品。もうち
ょっとスパイシーさを前面に出してもいい気がしますが、パックに押し固められたコロモが不思議な食感で、
これはこれで面白いかも。
また、ひき肉を押し固めて成型したMREのニセモノっぽい鶏肉とは随分違うのが好印象。一口ごとに繊維
っぽかったり柔らかかったりと、部位によって異なる鶏肉の食感も楽しめます。
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さて、ある意味このメニューの影の主役とでも言うべき、ふりかけを食べてみましょう。これだけ妙にメタ
リックな小袋を開封すると、やけに湿った黒い物体がボロボロとこぼれ出てきました。もっと乾燥したものを
予想していましたが、贈答品でたまに頂く高級品っぽいフリカケみたいです。一時期ラーメン屋で流行った焦
がしネギみたいにも見えますが、とにかく一口。
ほほう、鰹節と白ゴマを甘辛醤油でまとめた、ごくシンプルなふりかけですね。見た目こそ錦松梅っぽい高
級感がありましたが、予算が厳しい糧食に無理矢理ねじ込んだ様子が伺える、実にチープな味わい(笑)。と
は言え、この白ご飯にふりかけがあるのとないのとでは大違いです。おまけみたいな存在でこの味なら十分健
闘していると言うべきかもしれません。
しかしこれ、風が強いと吹き飛ばされそうだなあ。強風下の状況での飛散防止のために、白ご飯に振りかけ
た後はすぐに埋め込んでしまうといった特殊喫食技術が求められそう。
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ここでふと思いつき、さんまピリカラをカレー風に白ご飯にかけて、さんまライスにしてみました。おお、
これはなかなか!別々に食べるよりも一口ごとの味の濃淡をより一層調節し易くなりますし、なんだか子供用
の小さなカレーみたいでカワイイなあ。
っていうかこれ、最初からさんまがフレーク状に砕けてしまっているんですから、トレーを封入して『さん
ま丼』にした方がより魅力的なメニューになる気がしますね。米!醤油!魚!という『和』を感じさせる食材
で作ったのに、何故か無国籍風の奇妙な美味しさになっている辺りも興味深いです。
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いやあ、今回も実に美味しいメニューでした。さんまの持つ実力を遺憾なく発揮してくれた感じです。コン
ビを解消されてしまい、ハンカチを咥えながら電柱の陰から半泣きで眺めているコーンスープ君には申し訳あ
りませんが、新たにバディを組んだ丸かじりチキン君との相性も上々で、予想以上の満足感がありました。食
材は純和風なのにこってりと濃厚で力強く、それでいて日本人の舌にしっとり馴染むこの味わい。堪能させて
頂きました。
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華やかなスター性を感じさせるタコライスやスタミナ丼、地味ながら文句なしの実力を誇る鶏肉大豆煮とは
また一風違った、硬派バンカラ系とでも言うべきこのメニュー。全20種類に及ぶ非常用糧食の中で裏番長的
な独特の存在感を放っています。
どこかしら古臭く時代錯誤で、いかにも自衛隊らしい男くさい味わいでありながらも、不思議とおふくろの
味を思わせるこの一品。限りなくシンプルですがその実非常に奥が深い、ある意味日本の食文化を体現してい
ると言っても過言ではない逸品でありました。
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