さば味噌煮
さて今回は、2008年より採用された自衛隊戦闘糧食U型改善版の初めての試食です。栄えある第一回目
はさば味噌煮。入手した時点で賞味期限を3ヶ月ほどオーバーしていますが、まあ大丈夫でしょう。
従来のU型とは違い、この改善版からは主食と副食が一まとめのパッケージに収められています。見たとこ
ろ包装がペラペラでかなりチャチですが、これを丸ごと湯煎にかける事が出来るので、加熱が容易になった模
様。
まずは開封して中身を確認します。中からは、いわゆるサトウのごはん式のプラスチックトレーに入ったご
飯が2つ、それと別にレトルトパック入りの副食さば味噌煮、そしてプラスチック製の先割れスプーンが出て
来ました。
トレーご飯は白飯と山菜飯で、製造業者が違うせいか微妙に形が違います。白飯の方は印刷されてあるフォ
ントが妙に可愛らしいポップ体なので、何だか戦闘糧食というよりもおままごとっぽい感じですね。
とりあえず副食のさば味噌煮を湯煎にかけて、その間にトレーご飯2つをレンジアップします。うーん、何
だか戦闘糧食を食べるって雰囲気じゃないなあ、電子レンジを使うと。それにしても前のU型では豊富につい
てきた漬物や汁物、ポテトサラダ等のもう一品のおかずが無いのは、ちょっと寂しい気がします。
で、温め上がったさば味噌煮を開封してびっくり!うおお、グズグズに煮崩れてフレーク状になってる!前
のU型の鯖生姜煮みたいな立派な切り身を予想していたので、まさにネコ缶みたいなさば味噌煮はちょっとシ
ョックであります。
しかしこれ、見た目が悪いことこの上無しですね。正直、盛り上がった期待と食欲がしぼんでしまいました。
何というか、昔のチューブで食べる宇宙食ってあったじゃないですか、あれのさば味噌煮バージョンをネリネ
リと皿の上に絞り出した・・・みたいなビジュアルなんですよね。やや暗澹たる気分で先割れスプーンを突っ
込み、まずは一口。
ん?あれ?結構美味しいですよ、これ。見た目はちょっとエグいですが、味は意外にさらりとしていて、や
や甘めの味噌がちょうどいい感じです。
これは是非白ご飯で食べねば!と白飯を開封します、うん、見た目そのまんまサトウのごはんですね。米粒
はそれなりにつやつやと光っていて、なかなか美味しそう。味もまあそのまんまなんですが、前のU型の異様
にべたつくタイル状の白飯と比べれば格段の進化を遂げたと言ってもいいでしょう。
もう一つの山菜飯は、なかなか表面のフィルムが剥がれないのでナイフで開封です。これまたつやつやの山
菜飯で、具はワラビ、タケノコ、ニンジン、シイタケ。かなり頑張ってはいますが、どれも2×15mm程の
極細切りなので、いまいち存在感を主張している様には見えません。とにかく一口。
うーん、炊き込みご飯らしい味付けはあるかないか。具はどれもカチカチに干からびた様な状態で、歯応え
はありますが素材の味そのものは殆ど無し。パック化のお陰で米自体の口当たりは格段によくなっていますが、
味付けは前のU型の山菜飯とほぼ同じです。
しかしこの、殆どないと言っていい味付けがさば味噌煮の邪魔をしていないので、これはこれでいいのかも。
あまりよく出来すぎた炊き込みご飯だと、さば味噌煮と合わせると重たくなってしまいそうですし。うるち米
よりももち米を多く使っているので、口当たりはかなりモチモチ。腹もちも良さそうです。
しかしこのさば味噌煮、見た目はちょっとアレですがなかなかのお味です。さば味噌煮は私の好物なのでよ
く缶詰を買ったりするのですが、こっちの方があっさり風味で美味しいと思いました。
最初から木端微塵のフレーク状になっているのは面喰いましたが、移動中の車両内や行軍中の大休止で食べ
るとなると、美味しそうな切り身よりもパックからスプーンでかき込む事の出来るこの状態の方が合理的なん
だろうなあ。
漬物や汁物がないのも、恐らく同じ理由でしょう。私みたいに面白半分の試食で食べてる人間には
「えー、おかずが一品だけー?」
と言いたくなりますが、現場ではちまちま漬物の小袋を開けたりスープを作ったり・・・というのは面倒く
さいのかもしれませんね。この辺は、一度隊員さんに詳しく聞いてみたいなあ。
全体的に見ると、主食であるご飯の進化ぶりが際立った内容でした。ただ、見当違いを承知で言わせてもら
えれば、戦闘糧食としての面白さはやや後退したと言わざるを得ません。トレーご飯は見ても食べても
「ああ、成程ね」
と言った軽い感想しか思い浮かばず、ビニール入りの先割れスプーンもコンビニみたいな雰囲気です。
ある意味よく出来すぎていて、戦闘糧食の醍醐味とも言うべきうおお、な、なんじゃこれは・・・という楽
しみ方が弱くなっているのが、少し残念と言えば残念でした。あ、でも、さば味噌煮は美味しくて面白かった
です。
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