護衛艦おおよど“スパイスの香り豊かなビーフカレー”
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さて今回は、おおみなと海自カレーシリーズ第2弾『護衛艦おおよど“スパイスの香り豊かなビーフカレー”』
です。DE231護衛艦おおよどはあぶくま型護衛艦の3番艦。DD155護衛艦はまぎり、DE233護衛
艦ちくまとともに大湊地方隊にて第15護衛隊を編成している、地方配備部隊のDE(沿岸用小型護衛艦)で
あります。
それにしてもDEのカレーって随分久しぶり。かなり前に試食した護衛艦とねカレー以来です。果たしてど
の様なお味で大湊地方隊らしさ、護衛艦おおよどらしさを表現してくれるのか。ワクワクしつつ、まずは外箱
から鑑賞していきましょう。
パッケージ正面には凪いだ海面を静かに切り進む護衛艦おおよどの画像がレイアウトされていますが、小さ
な船体に合わせた低めの艦橋、2本の丸っこい煙突に挟まれたアスロックランチャー、しんがりの守りを一手
に引き受けた高性能20mm機関砲・・・スマート&コンパクトなあぶくま型らしさがいい感じですね。
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また穏やかに凪いでいるものの、冷たそうな黒々とした海面はいかにも冬の海っぽいですが、こんな静かな
海は珍しいんだろうなあ。むしろ真冬の荒れ狂うオホーツク海を突き進むおおよど画像の方が、大湊らしさが
出た気がしますが、それでは撮影する方が命がけになるんでしょうね(笑)。
箱裏面には海上自衛隊とおおみなと海自カレーの成り立ちや味覚チャート、調理方法、原材料表示がまとめ
られていますが、おおよどカレーの味覚評価は辛味4、甘味4、酸味4、コク2、トロみ4との事。甘辛酸は
ぐっと主張しつつコクを抑えたカレーか。バランスの整ったカレーも安心感がありますが、こういう風に個性
をはっきりと打ち出してくれるカレーも面白いんですよね。ワクワクしながら温めたレトルトを開封して、お
皿にあけます。
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ほほう、ニンジンとジャガイモのカットが大きいなあ。牛肉も小ぶりの消しゴム大のものが2つ入っていて、
見た目の美味しさもまずは合格点。早速一口頂いてみましょう。
おおお、なんというかこの・・・とても繊細で柔らかな甘みのカレーですね。そして一呼吸置いて襲ってく
る、シンプルでストレートな辛味。私は辛いものはわりと平気な方ですが、このど真ん中に直球を投げ込んで
くる辛さはちょっと予想外。額にじんわりと汗が浮いてきました。
とは言え、この程度の辛さはそれほど珍しくないのですが、海自のカレーは分厚い甘みを売りにしているも
のが多く、結構な辛さがあってもどっしりした旨味と甘みで包み込んでしまう為、意外と辛さはきつくは感じ
ないんですよね。
しかしこのおおよどカレーの甘さはすっきりさらさら系の甘味なので、そのぶん誤魔化しなしのド直球で辛
さが効いてくる感じ。これは海自カレーにありそうでなかった個性です。そしてその辛さがストレートなぶん、
ニンジンの甘さとじゃがいものほっこり感も一層強調されています。
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牛肉はしっかりと噛み締め味があるのが好印象。すね肉かな?と思いましたが、脂の甘い味わいもあるので
恐らくバラ肉でしょう。これもストレートな辛さのお陰で、牛脂の甘さが引き出されています。
この一口飲み込むたびに胃袋のぽっと火が灯る様なシンプルな辛さ・・・なんだか自分の中にあるボイラー
に点火されたみたい。護衛艦おおよどはガスタービン艦なのに、なぜかボイラー艦のイメージが浮かんでしま
ったのは、旧軍時代に建造された歴史ある修理ドックを今でも現役で使っている大湊地方隊らしさでしょう。
それにしても、他の艦艇のカレーが甘さを引き締めるための辛さでいるのに対し、このおおよどカレーは辛
さを引き立てるための甘味という全く逆の発想から始まっているのが面白いですね。野菜のカットは大きく牛
肉にもしっかりした噛み締め味を残してありますが、カレーの主役はやっぱりスパイス!と言わんばかりにス
パイス一点突破で個性を打ち出している、実に清々しい思い切りの良さを感じます。
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そもそも日本の一般的なカレー作りを考えた場合、スパイスに関しては市販のルーに最初から任せっ放しな
事が多く、追加投入するはちみつやコーヒー、野菜ジュース、乳製品、ワイン、トマトペースト等で全体の旨
味を補強していく方法が殆どだと思います。確かにそれはカレーの味わいを一層豊かにしてはくれますが、そ
の一方でちょうどいい塩梅に整えられたスパイスの個性を損ねてしまうというか、上からべったりと塗り潰し
てしまう行為でもあるんですね。
これだけカレー好きな国民性なのに、スパイスの使い方に関しては私達は本当に無知なんだろうなあ。私自
身かなりこだわってカレーを作る方なのに、肝心のスパイスに関しては知識もテクニックもからっきしですし。
しかしこれは、海上自衛隊でカレーを作る上である意味仕方のない事でもあるのです。基本的に食材は業者
の競争入札を経て購入されるため、納入されるカレールーはその時々によって多種多様。ご家庭で作るカレー
とは違い、最初から特定の銘柄のルーを選べる訳ではないのです。
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その時によってコロコロと変わるカレールー。そんな状況下で毎週一定水準以上のカレーを安定して作ると
なると、カレールーにプラスする調味料による調整テクニックが重要となるのは、ある意味当然でしょう。
「もう少し甘味が欲しいからはちみつを・・・いや、もっとスッキリした甘さを求めるならシンプルに白砂
糖かな?いやいや、香りと苦みも欲しいのでここはコーヒー牛乳で。避けられないお菓子っぽい甘さは赤ワイ
ンとデミグラスソースで打ち消して・・・」
もしかしたら護衛艦おおよどカレーを完成させた給養員さんは、そんな一見自由に思えてその実みんな同じ
方向に向かっているカレー作りに、ずっと疑問を抱いていたのかもしれません。
「どうしてみんなスパイスを重要視しないんだろう。確かに驚くほど隠し味の技が豊富な人ばかりだけど、
本当にそれでいいんだろうか。濃厚で分厚い甘味と旨味でスパイスの個性を潰してしまって、それでいいんだ
ろうか・・・」
そう考えると、味覚チャートの5段階評価でコクだけが2だった理由も、なんとなくわかる気がします。市
販のカレールーに様々な隠し味を足して味をぶ厚くする手法をよしとせず、あえてスパイスを際立たせる事で
味を先鋭化させたかったんでしょうね、このカレーを作ったおおよどの給養員さんは。
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数々の旨味補強系の食材に必要以上に頼りすぎる事なく、むしろスパイスの持ち味を生かす個性を打ち出し
た護衛艦おおよどカレー。試行錯誤の過程では、乗組員から不満の声が出た時期もあったのかもしれません。
しかし最大公約数的なカレーに逃げる事なく、決して己の信念を曲げず、スパイスの使い方にこだわってこ
こまでの味にしてのけたおおよど給養員スピリッツには、立ち上がって拍手せざるを得ない気分です。
いつの日か大湊地方隊で行われるであろう、おおみなと海自カレーコンテスト。スパイス重視の一点突破で
優勝の栄冠に輝く護衛艦おおよどの姿を瞼に浮かべつつ、大満足の『護衛艦おおよど“スパイスの香り豊かな
ビーフカレー”』を食べ終えました。
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