大形乾パン
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さて今回は、自衛隊非常用糧食『大形乾パン』です。U型無印版のハムステーキ&クラッカー、U型改善版
のウィンナーソーセージ&小型乾パンの流れをくむカワキモノメニューですね。
やや軽めのパッケージを開封すると、5枚入りの乾パンパックが2つ、あとツナサラダとフランクフルトの
レトルトが出てきました。飾り気のない乾パンといい割れた腹直筋のようなフランクフルトといい、なんとも
マッチョな雰囲気が漂います。
非常用糧食になって以来、さらにグルメ度が増した自衛隊の戦闘糧食ですが、こういった素朴でシンプルな
軍隊の保存食らしい力強さは嬉しいなあ。パッと見はどこにでもいそうな今時の普通の若者ですが、その鍛え
上げられた体にびしっと通っている一本の芯を感じさせる、ある意味非常に自衛隊らしいメニューの様な気が
します。
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今回のメニューは加熱を必要としないので、さっそく主食である大形乾パンから試食していきましょう。ち
なみにこの乾パン、大型ではなく“大形”なんですね。一体どういう使い分けなんでしょうか。
大きさは75×50mmと、一般的なカードや名刺よりもやや小さいサイズですが、厚さが10mmもある
上にかなり固く噛みごたえがあるので、1枚食べるだけでも結構なボリュームを感じます。一般的な消しゴム
サイズの乾パンに比べてミルクっぽい甘味があり、時折潰れる黒ゴマの風味もいい感じ。
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ちなみにこの乾パンは、自治体が保管している災害用保存食にも採用されています。各地で行われている防
災イベントでは、参加者へのお土産代りに期限切れ間近のものが配布される事もあるので、「あ、これ食べた
事ある!」という方も多いかも。
また海上自衛隊の艦艇にも一斗缶詰めのものが積み込まれていて、調理作業が制限される訓練中の食事や普
段の夜食として配食されたり、体験航海等のイベントでは一般乗艦者に試食として振る舞われる事もあります。
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続いてはツナサラダ。レトルトを開封すると、平べったいタイル状のツナサラダがつるんと出てきました。
圧縮状態で詰め込まれているので、スプーンでほぐすと結構な量になりますね。先ずは一口。
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お、これこれ!U型無印版のビーフカレーやU型改善版のウィンナーソーセージに封入されていた、あの懐
かしいツナサラダそのまんま。この酸味のキツさがいかにも長期保存食!という感じで、戦闘糧食好きには堪
らないものがあります。ダイスカットのジャガイモ、ニンジン、グリーンピース、コーンが色とりどりで、カ
ラフルな冷凍ミックスベジタブルがいい味出してますね。
乾パン独特のほんのり優しい女性的な甘さとの組み合わせも絶妙で、乾パンに乗せて食べてみたくなります
が、むしろレトルトにスプーンを突っ込んでがつがつとツナサラダを食べた後、返す刀で乾パンをバキッと齧
る・・・といった粗野な食べ方の方が、戦闘糧食の醍醐味を味わえる気がします。
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素材も調味料もいいものを使っている訳ではないので、正直言ってツナサラダとしてはそれほど美味しいも
のではないのですが、山の中や移動の車両の中で食べるこれは普段の5割増しで美味しく感じそう。しまった、
これは野外で試食すべきだったか。
続いてフランクフルトのレトルトを開封。中からは長さ70mm、直径20mmの寸詰まりソーセージが4
本、僅かなスープをまとって転がり出てきました。U型無印版のソーセージと全く同じ形状ですね。U型改善
版では一旦長細いタイプに変更されましたが、非常用糧食からは再びず太いタイプに戻った模様。なんという
か、リバウンドしてしまった間違ったダイエットを見ている気分だなあ。
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ソーセージ自体は皮なしタイプで、食感は意外とフワフワ。丁寧に扱わないと、ちょっとスプーンで転がし
ただけで表面が割れてしまうほどです。茶色くスモークされた手強そうな見た目とは裏腹になかなかナイーヴ
というか、筋肉ムキムキなのにとても気が弱いオカマみたいな風情を感じます。
味つけはシンプルな塩味で、脂肪分は少ないもののなかなか美味しいですよ。大形乾パンやツナサラダとの
相性も上々で、疲れている時にこのメニューはホッとしそう。消化吸収も良さそうですし、食後の胃腸に負担
をかけることなく、速やかに体中にエネルギーが満ちていく感じ。
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いやあ、派手さこそないものの、実に安心感のある優れたメニューでした。タコライスやスタミナ丼の様に
うおおおおおおテンション上がってきたー!という味わいではありませんが、体の芯から効いてくるいかにも
保存食らしい頼もしさがあるというか、体力の回復と同時に静かに集中力も高まって来る様な味わいがありま
した。粗食と言っては失礼ですが、無駄を一切削った後に初めて見えてくる、食べ物の本質みたいなものを感
じましたね。
他のメニューに比べて格段に美味いという訳ではありませんが、「帰ったらもっと美味いものを食ってやる
ぞチクショー!」というモチベーションの高め方も、それはそれでアリなんじゃないでしょうか。
そういう意味では、あまりに美味しすぎるメニューは戦闘糧食としては余計なおせっかいなのかなあ。私が
これぞ本物の戦闘糧食!と太鼓判を押すポーランド軍戦闘糧食も、決して最高の美味ではなかったですし。
ただ美味けりゃいいというもんじゃない・・・うーん、改めてこの世界の奥の深さを思い知らされた試食で
ありました。
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