航空自衛隊新田原基地カレー(辛口)



        さて今回は、『航空自衛隊新田原基地カレー(辛口)』です。このカレーは新田原基地給養小隊による監修
       を受けていて、販売者は基地の地元である宮崎県児湯郡新富町の地場産業振興会。基地と地域が一体と
       なって産業の活性化を図るという、自衛隊ご当地カレーの模範的な姿と言えますね。
        パッケージには大空を舞うF−4EJファントム、そして備前焼を思わせる器に盛られた濃厚そうなカレー
       デザインされ、ファントム特有のどすこい的なイメージがいやがうえにも食べ応えを期待させます。ちなみに
       今回入手した辛口は牛肉を使っていますが(甘口は鶏肉)、宮崎は日本有数の畜産県なのでこれは期待が
       持てそうだなあ。
        パッケージの裏側には、原材料表示や食品成分表示、お召し上がり方の説明の他に、新田原基地のご
       く簡単な解説
所属部隊の航空機の画像があります。うーん、せっかくの新田原基地カレーと銘打っている
       んですから、もう少し基地と新富町の説明に力を入れてほしかった気がしますね。


        また、新田原の読み方が書いていないのも気になります。これ、知らない人は普通に“しんたはら”と読ん
       でしまいますよねえ。正しくは“にゅうたばる”なのですが、こんなの地元の人ミリタリーマニアしか知らない
       でしょうに。へー、これでにゅうたばるって読むのか・・・という、小ネタ拾っちゃった的なお得感をくすぐる売り
       方があってもいい気がしました。
        とは言え、そういう意味ではいかにも地元の人が作った地元のカレーというか、「えっ、にゅうたばるって普
       通に読めないの?」
と真顔で言い返されそうな気の効かないローカル色がよく出ていて、これはこれで面白
       いかもなあ。大阪人にとっての放出中古車センターみたいなものでしょうか。
        ちなみにカレーの量は、一人前220g。一般的なレトルトカレーは200gが標準なので、若干多めになって
       います。しかしその割には233kcalと、熱量は控えめ。果たしてどのようなお味なのか、さっそく頂いてみま
       す。


        おおお、これはかなり辛い!後からじわじわ来る辛さではなく、食べた瞬間にガツンと襲ってくるこの辛さ。
       のっけから殺気丸出しです。上空で敵機と合い見えた瞬間には既に刀を抜き放っている様な、「様子見なん
       てしないよ♪先手必勝だよ♪」
とでも言いそうな、まさにファイターパイロット気質を感じさせる一口目のイン
       パクトであります。
        そしてこの辛さの奥にある牛肉の旨味、野菜と果実の大地の甘味がしっかりと感じられ、日本の空を守る
       隊員さん達の鉄の意志を、地域がしっかりと下支えしている様子が伺えます。
        容赦なく舌を攻撃してくるこの辛さ、そしてそれに負けない位濃厚な旨味があって、これはかなり戦闘力が
       高いカレー
だなあ。今回は通常通り200gのごはんで迎え撃ったのですが、このカレーの実力を受け止める
       なら、少なくとも250・・・いや300gは欲しい所でしょう。
        牛肉は2cm角のものが5つ入っていて、価格と味わいの濃厚さに十分見合ったボリュームです。ジャガイ
       モとニンジンはゴロゴロの角切り
ですし、これも見た目の美味しさの演出に貢献しています。よくみると5mm
       角にカットされた赤ピーマン
も入っていますが、こちらは今一つ目立たず、『海軍さんのカレー舞鶴編』に入っ
       ていた万願寺唐辛子
程のインパクトはありません。周囲の牛肉や野菜のパワフルさについて行けず、赤ピ
       ーマン君一人だけが置いていかれている感じ。


        それにしてもこの、マグマの様な味わいの強さと辛さ、そして重量感。基地の若い隊員さん達にウケそうな
       味わいだなあ。その分あっさりしたものが食べたい年かさの隊員さん達が割を食った形になっていますが、
       陸や海とは違い、年をとったエライさんよりも若いファイターパイロット達が幅を利かせる気風がある空自ら
       しい味わい
だと言えるでしょう。
        この気持ちいい位に割切った辛さと濃厚さへの振り方は、陸や海では出せないだろうなあ。海の人なら、
        「辛くて元気がいいけど、こんなのちょっとスマートじゃないよねー」
        と切り捨てそうですし、何かにつけて慎重を期す陸の人は、
        「いや、うちは大所帯なんで。これでは一部の辛いもの好きしか喜ばないですよ」
        と却下しそう。
        「何ィ?もっと辛くて濃いカレーが欲しいって?じゃあこれでも喰らいやがれ!」
        とでも言いそうなフットワークの軽さと思い切りの良さ。まさに空自気質である勇猛果敢支離滅裂を体現し
       ているカレーだと言えます。


        あと、食べていて気付いたのですが、キツイ辛さと濃厚な旨味の奥の方に不思議と紅茶の様なスッキリし
       た香りが感じられます。
原材料表示の欄には紅茶はなかったので気のせいかもしれませんが、紅茶の香り
       と渋味って、カレーに合う
様な気がするなあ。これは一度試してみる価値はあるかも。そんなプログレッシヴ
       な発想
を誘発するところも、非常に空自らしい気がしました。
        いやあ、ほんと美味しいカレーでした。かなりの乱暴者というか、これまでの自衛隊カレーには無い暴れっ
       ぷり
見せてくれましたね。思い切った辛さとそれに負けない濃厚な旨味を誇りながらも、空のカレーであると
       いう自己主張
もばっちり。極めて高い次元でバランスのとれた、珠玉のひと皿でありました。




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