航空自衛隊新田原基地カレー(甘口)
さて今回は、『航空自衛隊新田原基地カレー(甘口)』です。これは以前試食した新田原基地カレーの甘
口バージョンで、パッケージには大空を舞う飛行教導隊のF−15J、辛口版同様に濃厚そうな照りを見せ
るカレー、そして絆の文字が描かれています。
ちなみに牛肉を使用していた辛口に対し、今回試食する甘口では鶏肉がメインになっています。一人前
220gという標準よりもやや多めのボリュームや、製造にあたって新田原基地給養小隊の監修を受けて
いるところ、あと新田原についての正しい読み方が説明されていないところ等は、辛口と同様ですね。知ら
ない人は普通に『しんたはら』と読んでしまいそうですが、正しくは『にゅうたばる』。こんなの地元の人かミ
リタリーマニアにしか分かりませんよねえ(笑)。ある意味、作り手の無意識下にある地方色がよく表れてい
ると言えるでしょう。
とりあえずレトルトをしっかりと温めて試食です。おお、本場インドカレーのサラリズムを真っ向から拒否
する、実に濃厚そうな見た目だなあ。まずは一口いってみましょう。
おお・・・これはこれは。文字通りの甘口カレーですが、辛口版をデチューンしただけの甘口ではなく、大
地の力強さを感じさせる太くて分厚い甘口ですね。最高に美味い甘口カレーを作ってやるですばい!とい
う、新田原基地給養小隊と新富町地場産業振興会の本気がひしひしと伝わって来る様。
鶏肉は2〜3p角のものが5つ入っていて、見た目の美味しさも十分。そしてこの鶏肉に意外な程の歯
応えがあり、自身の旨味を惜しげもなくカレーに提供しながらも、噛みしめるごとに口の中にじわっとにじ
み出る鶏肉そのものの味わいもしっかりと残しています。
フワフワ食感に近いところまで煮込まれたレトルトチキンカレーが多い中、この硬派な噛み締め感は逆
に新鮮だなあ。皮の部分のクニクニした弾力ある食感もあって、これは鶏肉が入ったカレーというより、カ
レー味の鶏料理なんじゃ・・・と思わせる存在感を放っています。
そしてこのサツマイモ(原材料表示の記載は甘藷)が、カレー全体に横溢する力強い甘味をしっかりと演
出しています。辛口版はジャガイモを使っていましたが、なるほど甘口版はサツマイモを持ってきたか。味
そのものへのこだわりもさることながら、同時に地域の特産品や食文化までもきちんとアピール出来てい
るのがお見事。
辛口同様にピーマンも入っているのですが、残念ながらこちらの方でもこれといった存在感は表現出来
ないまま。辛口版ではスパイスのあからさまな辛さと他の具材の強烈な旨味に圧倒されっ放しでしたが、
甘口版なら僕の出番があるかも・・・と喜び勇んでやってきたピーマン君。しかし普段は地中深くに隠れて
目立たない甘藷君の大活躍に押しやられ、またしても舞台の隅で小さくなっている感じです。本人はかな
りのショックだったと思うので、スネたりいじけたりしなければいいのですが・・・。誰かピーマン君にフォロ
ーしてやって下さい。
いやあそれにしても、本当に美味しいカレーであります。前回の辛口版が素晴らしい出来だったので、
次に控えている甘口はちょっとやりづらいんじゃないかな・・・という心配を、見事に吹き飛ばす美味しさ。
私は辛い料理が好きな方ですが、単純にどちらの方が美味しいかと聞かれたら、かなり悩んだ挙句に僅
差で甘口の判定勝ちにしてしまうと思います。それ位に出来のいい甘口カレーでした。
とかくついて回りがちなお子様的イメージはまるでなく、むしろ分かっている大人のカレー好きにこそ食
べて貰いたい一品だったと言えるでしょう。とは言え、人間の味覚は幼少期の食生活でかなりの部分が
決まってしまうという話を聞いた事があるので、食育と言う観点からもこれは小さな子供にこそ食べさせ
るべきなのかもしれません。
辛口甘口両方ともに、強烈な個性と美味しさを持ったカレーでありました。甘口がこれだけ盤石の味わ
いを誇っているが故に、辛口は存分に暴れ回れる・・・という感じかな?そういう意味では、辛口がファイ
ターパイロットや列線整備員、甘口は基地業務隊をはじめとした裏方集団・・・と捉える事が出来る気が
します。
スクランブルがかかったらとにかく飛べ!腹が減ったらとにかくこれを食え!清々しいまでのシンプル
さと思い切りの良さに圧倒される思いです。単純明快豪放磊落勇猛果敢支離滅裂。実に空自カラーに
満ち溢れた新田原基地カレーでありました。
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