陸上自衛隊那覇駐屯地名物 三枚肉入り力カレー


       さて今回は、『陸上自衛隊那覇駐屯地名物 三枚肉入り力(りき)カレー』です。那覇駐屯地は言うまでも
      なく沖縄県那覇市に所在する陸自の駐屯地で、第15旅団司令部を頂点に数多くの部隊が集結している日本南
      西部の守りの要
であります。
       そんな那覇駐屯地の名物カレーですが、商品名からして陸自らしい力強さがあっていいですね。豚の三枚肉
      
(あばら付近のバラ肉)も琉球伝統料理文化にのっとっていますし、ご当地メニューとしての説得力も十分。
      購入した時から試食が楽しみな一品でした。

       まずはパッケージから見て行きましょう。外箱上段には低空でホバリング中のCH-47輸送ヘリからロー
      プ降下して、すかさず四方を警戒する普通科隊員の画像がレイアウトされ、下段には全身に擬装を施した狙撃
      手
が対人狙撃銃を構えています。沖縄の青い空と蒼い海というありがちなイメージに拘らず、あえてやや暗め
      の色調
に抑えているのは、やはり国境の海を目の前にした那覇駐屯地ならではの緊迫感を表現したかったんで
      しょうね。

       箱裏面には所在部隊の紹介と力カレー誕生までの説明、調理方法と原材料表示等がまとめられてありますが、
      力カレーの説明文の中にあった
       『那覇駐屯地名物力カレーとして隊員に親しまれているこの味を、是非地元の皆様に!という熱い思いで幾
      度もの改良を繰り返した末、ついに完成しました!』

       というくだりがちょっと微妙。商品化にあたっての意気込みは伝わってきますが、駐屯地の味に幾度もの改
      良
を繰り返してしまったか・・・。私の様な糧食マニアの場合、なるべく那覇駐屯地の味そのまんまで商品化
      してほしかったんですよね。

       とは言え、この力カレーを通じて一人でも多くの人に那覇駐屯地について興味を持ってもらう為には、ある
      程度の改良という名の変更は仕方のないところ
。まずは食べて満足してもらってなんぼの話ですから、こだわ
      りと商業主義のギリギリの妥協点だったんだろうなあ。
       それよりも私が驚いたのが、一人前200gで326kcalというエネルギー量。おおおおお、300kcal越
      えですか!これまで結構な数の海軍自衛隊カレーを食べ散らかしてきましたが、300kcalの大台を超えたカ
      レーは初めてじゃないかなあ。さすが年間平均気温の高い沖縄で体を鍛えまくる隊員さんを支える駐屯地のカ
      レー。半端な覚悟では返り討ちにあうぞ・・・と今一度身を引き締めつつ、十分に温めたレトルトをお皿にあ
      けて試食に移ります。

       おお、でかいジャガイモだな!と思ったら、これがなんと三枚肉の塊でありました。あまりに立派なサイズ
      だったのでつい測ってしまいましたが、30×40×10mmというレトルトカレーの具としては破格のサイ
      ズ
。もう一つ25×25×10mmの赤身肉も入っていますし、いきなり米軍のような物量攻撃で圧倒してき
      ます。
       カレーの表面には小さな白い粒がぽつぽつと浮いていますが、これは豚のアクですね。煮込み前にしっかり
      下茹でしても、完全にはなくなりませんからねえ。とは言えこのアクが残っているところも、豚三枚肉の塊ら
      しさ
があってむしろ好印象です。
       いつまでも眺めていても仕方ないので、ワクワクしつつまずは一口。あれ?思ったよりも軽い口当たりです
      ね。豚三枚肉ならではのどっしり重量感のある旨味はビンビンに感じますが、それを重苦しく感じさせないこ
      の軽やかな口当たり・・・なんとも意外な展開です。どうやら何かしらの甘酸っぱ系食材が暗躍している模様
      ですが、その正体を探るべく舌先に神経を集中させて、もう一度味わってみましょう。

       うーん・・・この甘味と香り、そして沖縄という土地柄から察するに、トマトショウガ黒糖、あとごく
      僅かなパイナップル果汁・・・かな?
       外箱の原材料表示を確認しますが、辛うじてトマトケチャップが入っていたものの、ショウガも黒糖もパイ
      ナップル果汁も無し
。うーん、またしても外してしまいました。
       甘酸っぱ系食材としてはりんごピューレチャツネがありましたが、ごく当たり前というかありきたりなの
      が意外ですね。たったそれだけで、この豚三枚肉の旨味大暴走を抑え込めるとは・・・那覇駐屯地給養員の高
      い力量
が推し量られます。
       あといかにも沖縄らしいなあと感じたのが、カレー全体の明るい色調。やはりこれは日照時間の長い沖縄ら
      しさ
の演出かな?いや、もしかして沖縄名産のウコンを取り入れたか?という訳で再度原材料表示を確認しま
      すが、ウコンのうの字もなし。とは言え『香辛料』とは書かれてあるので、この中にウコンが含まれている可
      能性は否定できません。

       それにしても、これだけ濃厚な旨味なのにすっきり感のあるこの味わい。黄色っぽい色調もあって、どこか
      そば屋で食べるカレーうどんを彷彿とさせます・・・ん?今、俺何言った?カレーうどん・・・?
       改めてじっくりと味わってみると、ほんの僅かですが、確かにかつお節っぽい風味が感じられる気がします。
      沖縄・・・豚肉・・・かつお節・・・ここで私の脳内に雷鳴の如くひらめいたのが、沖縄ソバの濃縮スープ
      す。豚骨とかつお節の旨味を凝縮させたあの味・・・もしかして、沖縄ソバの濃縮スープが隠し味として使わ
      れているのでは・・・!?
       しかし原材料表示には書いてないなあ。いや待てよ、最後の方にある『調味料(アミノ酸等)』という項目、
      これが怪しいですね。この那覇駐屯地名物力カレーの裏の主役である、ほんのわずかな沖縄ソバの濃縮スープ。
      この最重要機密を簡単に明かしたくないが故に、あえてこんな曖昧な表記にしたのでは?

       しかしよくよく考えてみれば、これは沖縄の那覇駐屯地の名物として売り出したカレーです。いわば沖縄土
      産にもなり得る商品なのに、
沖縄ならではの食材を隠す意味は果たしてあるのでしょうか?本当に沖縄ソバの
      濃縮スープが入っているなら、むしろ誇らしげにアピールして当然の様な気がします。うーん、やはりこれも
      私の勘違いなのか・・・。
       これまでの数々の舌分析大失敗で、何度も味覚の未熟さを晒してきた私ではありますが、それでもこの推理
      はあながち間違ってはいない気がするんですよね。それを確かめる意味でも、今度カレーを自作する時に少し
      だけ試してみようかなあ、沖縄ソバの濃縮スープ。豚肉との相性もばっちりですし、少量でかなり有効な隠し
      味
になると思います。

       豚三枚肉の破壊力のある旨味を、ここまで洗練させた形で見事にカレーに溶け込ませる。食材の長所も短所
      も知り尽くした上で、地元の料理文化へのリスペクトも忘れない・・・さらに食べ手のイマジネーションをこ
      こまで刺激して、今後のカレー作りに新たなヒントまで与えてくれるとは。全くもってお見事の一言に尽きま
      すね、那覇駐屯地名物の力カレー。
       これだから自衛隊レトルトカレー巡りはやめられないな!と大いに納得しつつ、大満足の『陸上自衛隊那覇
      駐屯地名物 三枚肉入り力(りき)カレー』
を食べ終わりました。




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