舞鶴軍港館肉じゃがカレー



        さて今回は『舞鶴軍港館肉じゃがカレー』です。大きな旭日をバックにしたパッケージには、青い海
       い雲が能天気っぽくデザインされ、なんだか憧れのハワイ航路っぽいというか、夏メロテイストなレトロ感
       
ですね。申し訳程度に赤レンガ倉庫が描かれてはいるものの、このカラッと明るくのほほんとした雰囲気
       が、いま一つ舞鶴らしくない様な・・・。
        また、海軍の制服らしきものを着たオジサンがいますが、舞鶴で肉じゃが・・・と言う事は、もしかしてこ
       の方は東郷平八郎提督なのでありましょうか。制帽をアミダに被りプイと目をそらした表情で、なんだか
       スネて不貞腐れているみたい
なのが気になります。山本権兵衛海軍大臣にいじめられたのかな?海軍
       提督らしからぬ貫録の無さが、微妙にカワイイと言えばカワイイですが、世界三大提督に数えられるアド
       ミラル・トーゴーまでもが萌えキャラになってしまうとは・・・。これが今若人の間で流行っている、『艦これ』
       ってやつなのでしょうか。クールジャパン恐るべしであります。


        箱の裏側には、原材料表示とレトルトの加熱方法が簡単に説明されているだけ。肉じゃがやカレーが
       東郷提督や海軍を通じて日本に持ち込まれ、今や我が国の国民食となった経緯
等は、一切説明されて
       いません。味で勝負!という潔さの表れなのかもしれませんが、海軍カレーの知名度が上がったとは言
       え、やはりここは一言だけでも書き加えてほしかったなあ。


        のっけから突っ込みどころだらけではありますが、まずはレトルトを温めて試食と行きましょう。
        おお、ジャガイモとニンジンがゴロゴロで、なかなか食欲をそそる見た目ですよ。そしてこの、四角い切
       手
みたいなのはコンニャクです。なるほど肉じゃがらしいラインナップと言えますね。
        一方、牛肉は控えめなサイズですが、スジ肉を使っているのかゼラチンっぽい旨味がしっかり残ってい
       て、これもなかなかの美味。全体の味付けは野菜の甘味を主軸にした日本風カレーでありながら、マイ
       ルドなスパイシーさ
もあり、多くの人に好かれやすいデコボコのない味わいです。やや甘口な印象があり
       ますが、甘味、辛味、酸味、塩味、旨味の全員が仲良く手を取り合ってダンスしている様な、トータルバラ
       ンスに優れた手堅い仕事っぷり
だと言えます。


        ただ、敢えて一言だけ申し上げるとするならば、手堅い仕事の中にもきらりと光る何かが欲しかったと
       いうか、優等生なんですがいま一つ無個性な印象が否めません。これという売りが見当たらないだけに、
       具の大きさでは『よこすか海軍カレー(黄)』に一枚上を行かれ、トータルバランスの次元の高さでは『兵学
       校のカレー』
の後塵を拝し、肉じゃがのコンニャクを個性として生かすという発想は『呉海軍亭肉じゃがカ
       レー』
に後れをとった感があります。
        様々な方向で名を成している綺羅星の如き海軍・自衛隊カレーが居並んでいるだけに、出て来る順番
       でかなり損をした点
については、ちょっと気の毒だったかも。ただ、いたずらに奇を衒う事をよしとせず、
       後発ながらもど真ん中の直球勝負に出た心意気だけは、十分に評価したいですね。確かな実力が感じ
       られるだけに、もっと早い時期にこのカレーを食べていたら、もう少し高い評価になった事は間違いあり
       ません。


        それにしても、以前似たようなカレーを食べたデジャヴを感じてしまうのが、勿体ないというか不利だな
       あ。新規に試食するカレーについては、その辺りはもう少し下駄を履かせた評価にするべきかも・・・等と
       考えながら食べていて気がついたのですが、この野菜のゴロゴロ感といい、四角い切手大のコンニャク
       
といい、野菜の瑞々しい甘口な旨味といい・・・以前試食した『呉海軍亭肉じゃがカレー』とすごく似ている
       様な気が・・・。
        たまたま在庫があったのでパッケージを比べてみましたが、旭日をバックにしたデザイン、個性的な
       物
の描き方、『今、昔し語り継がれる』『肉じゃがの具材感を大切にしました』という全く同じコピー・・・。見
       れば見るほど、両社の共通点の多さに驚かされます。


        さらに中のレトルトを見ても、製造年月日ロット番号以外は全く同じ。もしかしてこれって、外箱が違う
       だけで、中身は全く同じ商品
なの?
        箱裏の原材料表示の内容は微妙に違っていますが、舞鶴軍港館肉じゃがカレーの方には入っていた
       コンニャクが記載されてありません
。んん〜?これって確か、食品表示法か何かに抵触するんじゃ・・・。
       ちなみに記載されていた販売者名は別ですが、これはあくまで販売者であり、製造元ではないんですよ
       ねえ。うーん、謎すぎる・・・。
        と言う訳で、日を改めて二つのカレーを並べて食べ比べてみたのですが、もう見た目も味も殆ど一緒
       ここまでくると外箱こそ違っているものの、この二つのカレーは完全に同一のものだと断言してもいいで
       しょう。


        それにしても、なんでまたこんな事に。まるで『犬神家の一族』にて一人二役を演じ、金田一耕助の裏
       をかこうとしたスケキヨの様です。まさかこの世に数多ある海軍レトルトカレーを食べ比べ、トリックを見
       破るような名探偵・・・もといヒマ人がいる訳ないだろうとタカをくくっていたのかもしれませんが、その
     ヒマ人がいるんだよ!ここにな(笑)!


        ちなみに私の海軍自衛隊レトルトカレー遍歴ですが、この『舞鶴軍港館肉じゃがカレー』でついに18食
       となりました。自衛隊イベントレポも戦闘糧食試食レポも甚だ中途半端な私ですが、事この分野に限っ
       ては、もう『海軍自衛隊レトルトカレー界の加藤鷹』と自称させて頂いてもいいんじゃないでしょうか(笑)。
        それ故に、新しいカレーを試食してもそろそろ書く事がなくなってきたというか、それぞれの個性の見つ
       け方や表現方法に限界が来ている
気がしていたのですが、まさかこんな罠が待ち受けていたとは思いも
       しませんでした。いやー、油断してたなあ・・・。
        この先まだまだ沢山の強カレー(と書いてと読む)が、私の行く手に待ち受けていると思いますが、
       一度気を引き締め直して試食に臨みたいと、決意を新たにさせられた試食でありました。




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