まずはrefresher tissueを開封。所謂ウエットティッシュですが、レモン風味の粒ラムネみたいな香料が添
加されていて、なんだかお菓子みたい。お手拭きとしては不自然なニオイですが、意外と嫌味のない香りなの
で気分がスッキリします。
メインの紙箱を開封すると、中から銀色のレトルトパックと加熱剤が出て来ました。メインはTROŠKINTA
MĔSA SU RYŽIUKOŠE(ポットローストと粥)。そして加熱剤は何故か韓国製で、パッケージの表裏には
英語とハングルの仕様説明書きが印刷されていました。って言うか、何でリトアニア語じゃないんだろう。微
妙に親切で微妙に不親切なのが気になります。
加熱剤は米軍のMREに封入されているものと同じ種類の、水に反応して発熱するタイプの模様。分かりや
すいイラストで使用方法が描かれているので、ぱっと見れば大体分かります。
それにしても、MREの加熱剤に比べると随分パッケージが薄っぺらいなあ。使い捨てカイロの包装の様な
ペラペラのポリエチレン製ですが、これ、熱とか内圧とか大丈夫なんでしょうか。内部の発熱体自体はけっこ
うぶ厚く、MREの発熱体に比べると倍ぐらいの重さですね。このタイプの加熱剤は当たり外れが大きいシロ
モノなので、しっかり温めてくれるといいのですが・・・。
とりあえず加熱剤の封を開け、下のラインまで水を注ぎます。そして発熱体全体に水分を行きわたらせ、イ
ラストの通りにレトルトをくるくると巻いてしばし待ちます。んん~、ウンともスンとも言いません。やはり
これも駄目だったか・・・と諦めかけた頃、ようやく発熱体はジブジブと音を立てて、嫌々っぽく反応を始め
ました。
後は加熱剤に任せて、APELSINŲ SKONIO GĔRIMAS(粉末オレンジドリンク)を作ります。こっちは
リトアニア語と英語の両方で説明書が印刷されているのでラクチンですね。開封すると、うっ、中の粉末が湿
気てべたべたになっていました。紙製の簡素なパッケージなので、やっぱりチ・・・いや、湿気には勝てなか
った模様です。
なんとか中身をかき出してムリヤリ水に溶かすと、やけにケミカルな色合いのオレンジドリンクの出来上が
り。しかしこれ、オレンジと言うよりもユンケル黄帝液みたいな色だなあ。とにかく飲んでみましょう。
うーん、スポーツドリンクに擂り潰した粒ラムネを溶かした様な、いかにも作りモノという粉っぽいお味。
これ、本当にオレンジのつもりで作ったのかなあ。浜田省吾と有明省吾ぐらい違う気がするんですけど・・・。
もちろん湿気による品質劣化の影響も大きいとは思いますが、何と言うか機能を優先するあまり、味に関して
はかなりおろそかになってしまった様な印象を受けました。見た目のケミカルっぽさもあって、何だか機械の
為の水分と言うか、エンジンオイルみたい。
とは言え意外とあっさりとした嫌味の無い味なので、思ったよりも飲めますね。最初にオレンジ味だと知ら
されなければ、普通に違和感なく飲めたと思います。
次はSUCHARY SPECJALN(スペシャルクッキー)ですが、あれ?これって、以前試食したポーランド軍
戦闘糧食に入っていたクッキーと同じものですね。まあリトアニアとポーランドは国境を接していますし、基
本的に陸続きのヨーロッパでは珍しい事ではないのでしょう。
齧ってみると、ぶ厚く固く、ちょとだけ湿った風味の素朴なクッキーです。甘味の添加は殆ど感じられず、
クッキーと言うよりも乾パンみたいな味。キャラウェイシードのメンソールっぽい香りは好みが分かれそうで
すが、私はこれはこれで美味しいと思いました。
ここでABRIKOSŲ DŽEMAS(アプリコットジャム)を開封。いかにもアプリコットらしい明るい色合い
のジャムですが、これが爽やかな香りと甘味で実に美味!戦闘糧食のジャムの中ではピカイチの出来ですね。
クッキーとの相性も素晴らしく、アプリコットの爽やかな果実の風味にキャラウェイシードのスースー感がう
まくマッチし、どこか野暮ったく重いクッキーが急に華やかな味わいに化けたのが驚きであります。
次はMIGDOLAI(アーモンド)。茶色い薄皮をまとったアーモンドが、ごろごろざーっと出て来ました。ひ
と粒齧ると、うん、特にどうという事のない、ごく普通のアーモンドです。軽量で高カロリー、保存も効くの
で戦闘糧食には向いていますね。
それにしても、その数なんと62粒!一度にこんなに食べれません(笑)。まあこれだけ別にポケットに入
れておいて、小腹が空いた時につまめばいいか。その為なのか、この糧食の中には結束バンドも入っていまし
た。けっこう細かいところまで気を使っています。
さて、いよいよメインのレトルトです。先程まで派手に水素ガスを吹き上げながら快調に働いていた加熱剤
ですが、途中から急に大人しくなってしまいました。もう温まったのかな?と一旦レトルトを取り出してみる
と、あれ?何だかテーブルに鉛色の液体が・・・うわっ、加熱剤の袋が破れて液漏れしていました!
加熱剤と反応した水は確かけっこうヤバかった筈なので、慌てず慎重にレトルトパックを取り出して水洗い。
幸い漏出は大した量ではありませんでしたが、よく見るとパッケージの一部に小さな穴が空いていました。最
初から空いていたのか加熱時の内圧に耐え切れず破れたのかは不明ですが、米軍のものに比べて韓国製の加熱
剤の袋はかなりペラペラと頼りないので、まあこうなっても不思議ではないなあ。
ちなみにレトルトパックはほの温かい程度で、しっかりとは加熱できていない状態。うーん、やっぱりこう
なったか。威勢がいいのは最初だけだったなあ。
仕方ないので鍋に湯を沸かして湯煎し直し、レトルトパックを開封。皿にあけると、中からはドロドロとし
た塊がどばっと出て来ました。
うーん、これが初めて見るTROŠKINTA MĔSA SU RYŽIUKOŠE(ポットローストと粥)か・・・。確
かにドロドロでお粥っぽいですね。表面を少し均すと、ハンバーグみたいな大きな肉の塊が見えて来ました。
それにしてもこの料理、表面を覆っている油の量がハンパではありません。最初は水分かと思いましたが、
これは殆ど油煮です。大人の階段を上りきり、今やその向こうにあったオッサンの階段を下り始めている私に
とって、この油脂量は正直恐怖を感じてしまいます。
勇気を振り絞り、まずは一口。うぐぐ・・・あれ?美味いですよこれ。見た目は相当ヤバそうな奴ですが、
意外にも脂肪の重さを感じさせないふわりと軽い口当たりです。大きなポットローストはミートローフの様な
ハンバーグの様な食感で、ロールキャベツの真ん中のミンチを集めて作った様な、あっさりした挽肉の旨みを
堪能出来ますね。味付けは塩胡椒中心ののシンプルなもので、実に素朴というか真面目なお味。
それにしても、これだけ脂肪でギタギタなのにクドさを感じさせないのは、とても不思議です。見た目は毒
蝮三太夫!中身は野村義男!という感じでしょうか。またこの脂肪分は冷えても液体のままだったので、植物
性油脂だった模様。そのあたりも、味わいの軽やかさの一因でしょうね。
それにしても、このポットローストにデロデロと絡まっているこれが米なんでしょうか。もう固体と液体の
境目の如き状態で、まるでダシに溶けきった天ぷらうどんのコロモみたいです。正直、その色合いを含めて甚
だしく見た目が悪いのですが、これが意外に美味しいんですよね。油でコテコテなので、日本人が持つ粥のイ
メージからはかなり乖離していますが、見た目以上にボリュームがあるので、これならメインディッシュとし
て十分通用するお粥であります。
またこのサラリとした油の風味が、クッキーのスースーとしたキャラウェイシードの香りとよく合っていま
す。何故かケミカル臭いオレンジドリンクとの相性もよろしく、予想外によくまとまっていますね。
シメはTirpi Naturali Kava(粉末コーヒー)。パッケージを見てもお湯の量が記載されていないので、
適当にカップ一杯ぐらいで作りました。香りはそれなりながらもストレートな苦みが効いていて、口の中の油
っぽさをキレイに洗い流してくれる感じ。うん、油っぽい食事の後のコーヒーは結構美味しいなあ。
あとŠOKOLADAS(チョコレート)を忘れていました。保管中に熱でとろけたのか、パッケージぴったりと
張り付いて捻じれた形になっていますが、食べてみると落雁みたいな粉っぽいチョコレート。戦闘糧食のチョ
コにしては珍しく固くないタイプで、やはりこの辺りは年間気温が低い国ならではの選択ですね。
ここでふと思いつき、先程のアーモンドとチョコを一緒に食べてみたら、もうそのまんまのアーモンドチョ
コ。何だか得した気がするのが我ながら貧乏性と言うかガキくさいですが、アーモンドチョコが大好物だった
ロック岩崎さんの事をふと思い出してしまいました。私は相も変わらず地べたをはいずり回る毎日ですが、ロ
ックさんはきっと天国の空を楽しそうに飛び回っているのでしょう・・・。
あと、固形燃料を使った簡易ストーブです。こちらは流石に室内で使えなかったので、後日改めて屋外で使
用してみました。
紙パッケージからは、ステンレスを型抜きしただけの平らな金属板が出て来ました。隅には切り込みが入っ
ていて、四辺を交互に折り畳めば完成ですが、これはまた随分チャチな造りだなあ。
とりあえず中央部に固形燃料をのせて、付属のマッチで着火。今回は性能チェックと言う事で、蓋なしシエ
ラカップに入った200mlの冷水が、固形燃料一つでどこまで温まるか試してみます。
固形燃料には簡単に着火。丸穴のお陰で効率的に空気が流れているのか、なかなかどうしてちゃんとストー
ブの働きをしているのが驚きです。2月の半ばという事で気温もかなり低いのですが、しばらくするとシエラ
カップの内側にふつふつと気泡が沸き始め、湯気が濛々とあがってきました。
そのまま固形燃料は快調に燃焼し続け、5分程で燃え尽きた後は沸騰したお湯の出来上がり。おお、これな
ら熱いコーヒー位は十分楽しめそうです。ちゃんと蓋の出来るクッカーを使えばもっと多くの熱湯を作れそう。
固形燃料は3つ入っているので、2つはレトルトを温めるのに使用し、残り1つで熱いコーヒーを作れる計算
なのでしょう。
ただストーブの高さが足りないせいか、固形燃料を乗せるとカップとの間のクリアランスがほぼゼロになっ
てしまうのが気になりました。そのままでも問題なく使用できますが、四隅の切り込みをもう1cm深くすれ
ばもっと燃焼効率が上がると思います。まあこの辺りは使う側の工夫次第ですね
見た目はかなり貧相ですが、コストパフォーマンスを考えればかなりよく出来た簡易ストーブでありました。
以上、リトアニア軍戦闘糧食の試食を終わります。大量の油!肉!ナッツ!というカロリー重視な思想が感
じられるよく出来た戦闘糧食でした。メインはコテコテ&あっさりで味もよかったですし、なかなかやるじゃ
んリトアニア!といったところでしょうか。今までリトアニアの事をあまり考えない日常を送ってきた私です
が、ちょっとリトアニアという国を身近に感じると共に、その文化や料理にも興味が沸いてきました。
今回のTROŠKINTA MĔSA SRYŽIUKOŠE(ポットローストと粥)のもとになった料理があると思います
が、一度ちゃんとしたリトアニア料理の店で改めて食べてみたいですね。
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