呉潜基特製ビーフカレー
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さて今回は、『呉潜基特製ビーフカレー』です。呉潜基とはあまり聞きなれない部隊名ですが、正しくは呉
潜水艦基地隊。広島県の呉地方総監部からほど近い所にある、第一潜水隊群の基地食堂で提供されているカレ
ーですね。
ちなみに海上自衛隊にはもう一ヶ所、神奈川県の横須賀基地にも潜水艦基地隊がありますが、呉の場合特に
大きなウェイトを占めているのが潜水艦教育訓練隊の存在。未来のサブマリナー、潜水艦乗りを育てる訓練施
設です。艦それぞれの持ち味を再現したレトルトカレーが多い中、これはかなり異色の存在だと言えますね。
パッケージは呉海自カレー共通のネイビーブルーですが、中央にレイアウトされているのは潜水艦ではなく、
呉潜水艦基地隊の正門と警衛所。カッコいい水上艦や潜水艦を前面に出した他のカレーに比べると、ずいぶん
地味なパッケージです。同シリーズのカレーがずらりと並べられていた大和ミュージアムの売店でも正直あま
りぱっとしなかったというか、目立っていませんでしたし。とは言え、その目立たなさに色んな意味を見出そ
うとしてしまうのが、歪んだ糧食マニアの困ったところ(笑)。
「ふふん、俺の真価がお前なんかに分かるのかねえ・・・(笑)」
と、レトルトカレーに試されている様な緊張感を覚えつつ、湯煎にかけます。
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ご飯を盛ったお皿にかけた呉潜基特製ビーフカレー。さっそく一口頂いてみましょう。まず感じたのが、予
想外にあっさりとした甘さ。水分の多い野菜の個性を感じる、さらさらと軽い口当たりのカレーです。
具はごろごろの牛肉、ジャガイモ、ニンジン。レトルトの割に結構なカタマリ感があり、見た目の美味しさ
もいい感じ。そしてやはり、カレー色に染まった大きなジャガイモに目が行きます。自分で作るカレーには入
れないのに、他所のカレーに入っていると嬉しいんですよね、ジャガイモって。
育ちの良さを感じる素直な味わいですが、あと口はしっかりじんわりスパイシー。とは言え多種多様なスパ
イスが折り重なった重層的な香りではなく、唐辛子によるごくシンプルな辛さと、それを引き立てる胡椒のす
っきり爽やかな香り・・・という感じ。このあたりも、あっさりさらさらとした個性を感じる所以でしょう。
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ひとことで言ってしまうと、特にこれといった特徴のない普通のカレーです。呉潜基ならではの何かを期待
すると、肩すかしを喰らいそうなほんとフツーのカレー。
とは言えこのフツー、未知の世界である潜水艦教育訓練隊に飛び込んできた学生達にとっては、実に心休ま
るフツーなのではないでしょうか。潜水艦という得体の知れないフネ、水上艦乗り組みとは次元の異なるスト
レス、短い教育訓練期間に畳みかける様に襲ってくるプレッシャー・・・。
またそれは、学生だけでなく受け入れる訓練隊、潜水艦基地隊側も同様でしょう。短期間で学生全員を一人
前に鍛え上げねばならない使命感、自分達が育てた学生が潜水艦部隊に迷惑をかけられない責任感・・・。教
わる側も教える側もこれほどホッとしたい人達だらけの学校って、外の世界ではなかなかないと思います。
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そして誰よりもホッとしていたいのは、自衛隊に我が子を送り出したご家族でしょう。あの子が自衛隊なん
かでやっていけるんだろうか、潜水艦なんて見た事もないけど、本当に大丈夫なんだろうか・・・。味わう者
をしてホッとさせる個性を持ったこのカレーは、ある意味潜水艦乗りのご家族にこそ食べてもらいたいカレー
とも言えます。
いや、ホッとしていたいのは潜水艦乗りのご家族に限りません。それどころか、陸海空の区別すらないでし
ょう。海上自衛隊の中の呉、呉の中の潜水艦基地隊、とごく狭い範囲に絞ったマニアックなカレーなのに、結
果的に陸海空の枠を超えた普遍的な味わいになっているところが、非常に興味深いなあ。
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物足りなさはまるで感じさせない、極限まで磨き抜いたフツーの中のフツー。そこからくる安心感が、何よ
りのご馳走になる人達がいる。海自のイベントに参加すると、ついついカッコイイ艦艇やピシッとした隊員さ
んに見とれがちになりますが、こんな事も教えてくれる海自のレトルトカレーは、やはり他のカレーに比べて
別格の存在感があると言えるでしょう。
海上自衛隊はこのカレーを大量に買い上げて、休暇で帰省する隊員さん達に家族の人数分持たせるべき!そ
んな事を考えてしまった、安心印の呉潜基特製ビーフカレーでありました。
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