韓国軍戦闘糧食 カレー




    さて、今回は韓国軍戦闘糧食です。随分前に入手したままだったので賞味期限を一年ほど過ぎていますが、まあ
   大丈夫でしょう。メニューは炸醤飯(甘めの肉味噌をご飯にかけた中国料理)とカレーがあり、今回入手したものは
   カレー
でした。うーん、韓国のカレーか…。
    糧食はベコベコの厚紙で出来た箱に入っていてドイツ軍のものに似ていますが、韓国のは随分チャチで、片手で
   持つと箱がしなって中身がこぼれ出そう。表面にはハングルで何やら書かれていますが、当然ながら全く分かりま
   せん。
しかし側面には分かりやすいイラストが描かれてあり、どうにか温める事は出来そうです。
    まずは中身を確認。銀色のレトルトパックが3つ入っていて、小さいのがキムチ、あとはカレーでしょう。ん?
   何だか米のレトルトパックがやけにヌルヌルしているのですが…あ!穴が空いてる!
どうやら加熱剤の突起が米パ
   ックに当たったようで、小さな穴から内部の油が漏れ出ていました。しかしレトルトパックって、こんなに簡単に穴が空
   くものなのか?
    ちょっと心配だったのでニオイをかいでみましたが、何か変な油のニオイがします。これはおかしくなってこのニオ
   イなのか、もともとこういうニオイなのかが分からない
のが他国戦闘糧食の醍醐味であります。
    
    


 





【内容物】
1:加熱剤(水入り)
2:キムチ
3:カレー
4:ご飯
5:紙皿・スプーン




 

    しかしこの糧食の中で最もスペースを取っているのが加熱剤、というのが驚きですね。いわゆる加水式の加熱剤で
   すが、わざわざ最初から水も同封してあるのでかさ張るわ重いわで、余り戦闘糧食には向いていない方法の様な気
   がします。しかもこの加熱剤、レトルトパックをぐるりと取り囲むように出来ているので、かなり凝った作りです。なんだ
   か変な所に手間とコストをかけている
ようで、なかなか面白いなあ。
    とりあえず米のレトルトを加熱剤の中に収め、その上にカレーのレトルトを乗せて箱の中に戻します。加熱剤の上の
   出っ張りを切り取ると2本の樹脂製の棒があり、それを強く引っ張ると加熱剤の中の水袋が破れて漏れ出し、加熱剤
   と化学反応を起こしてレトルトパックを温める…
という仕組みです。


    とりあえず棒を引っ張ってみますが、全然反応なし。あれ?箱を開けて加熱剤を確認しますが、確かに加熱剤の中
   に水が出ています。古くなったから駄目なのかな?
    そのまま1分ほど待つと、微かにじわじわと音が聞こえ始め、すぐにシューシューと大きな音を立てながらさかんに
   湯気を上げ始めました。
この湯気の勢いがかなり強烈で、1m近い高さまで噴き上がっています。そして、何とも言え
   ない異臭が。
うーん、何というか、使い古しの雑巾を蒸籠で蒸し上げたようなニオイ?食欲が失せる事この上無しで
   すが、視覚的にはとても面白いなあ。円谷プロダクションの特撮ものを見ている様な気分です。
    箱を触ってみるとかなり熱くなっていて、蒸気は相変わらずもうもうと上がっていますが、5分程で落ち着きました。さ
   らに3分後には蒸気の噴出も止まりましたが、加熱剤自体はまだ反応を続けているようでジブジブと小さな音を立てて
   います。更に念入りに2分蒸らし、都合10分たったところで開封してみます。


    まずは米パック。おお、かなり熱くなっていて、加熱前は固い板状だった中身がすっかり柔らかくなっています。同封
   されていた紙皿を立ち上げ、レトルトから米を押し出すと、あれ?てっきり白ご飯かと思っていましたが炒飯でした。
    しかしこの油ぎった炒飯は何者でしょうか。油で米を炊いたのかと思う程に、もうベタベタです。自衛隊の戦闘糧食U
   型のカニチャーハンもかなり油っぽかったですが、これとは比べ物になりません。
    続いてカレーのレトルトを開封してびっくり。なにこの真っ黄色のカレー。ターメリックそのまんまの、鮮やかな黄色が
   目に眩しいです。うーん、ここまで思い切って黄色いと、カレーと言う気がしませんね。下手糞な食品サンプルを見てい
   るみたいです。

    さらにキムチのレトルトを開封。強烈なニオイが鼻腔を襲います。しかしカレーにキムチか…お国柄だなあ。
    まずは炒飯だけを食べてみます。ううう、見た目を裏切らない油っぽさです。味付け自体がほぼ無いに等しいだけに、
   どうにもこの油っぽさが気になります。よく見るとニンジンコーンが入っていますが、このコーンが綿棒の頭程度で、び
   っくりする程の小ささ。こんなコーン、初めて見ました。こういう種類のものなのでしょうか。十分しっかり加熱したのです
   が、米自体は随分パサついた固い口当り。


    続いてカレーを味見。うーん、カレーなのにカレーの味がしない…。辛さは殆ど無く、まるでお子様カレーのような甘
   口なのですが、甘口なりの旨みと言うものが全くない、不思議なカレーです。具は鶏肉、ジャガイモ、ニンジンの小片
   が幾つか入っている程度。
    そして白菜キムチ。さすが本場物、強烈なニオイがします。賞味期限を1年過ぎた発酵食品ですが、レトルトに膨ら
   みは全然無かったので品質的に問題は無い
でしょう。恐る恐る一口。んー、痛んではいないみたいですね。キムチと
   しか言いようがない強烈な味の後に、結構きつい辛味と酸味が舌を襲います。思ったよりも食べれますが、しかしこれ、
   カレーに合うか?

    次はカレーと炒飯を混ぜて食べてみましょう。うーん、油煮のごとき炒飯もどき味も香りも無いカレーが絡まった、
   何とも不思議な物体になりました。これにキムチを混ぜ込んで韓国風に食べてみると、うーん、キムチの味しかしませ
   ん。カレーも炒飯も味がスカスカなので、キムチの強烈な味に全然対抗出来ていません。
決して食べれないと言う訳
   ではありませんが、自衛隊戦闘糧食U型のカレーと比べると、余りにも違いが歴然としています。


    あとこれ、ボリュームが物足りなくないかなあ。調べてみると、カレーが200g、炒飯が250g、キムチが70gです。自衛
   隊戦闘糧食U型は、カレーが270g、白飯二つで400g、ツナサラダが75g、福神漬が25g、と、ボリュームが全然違い
   ました。もっとも今回入手した韓国カレーは民間向けバージョンで、実際にはこれにプラスしてもう2品程付くらしいの
   ですが。

    そして紙皿。材質がビニールコーティングされていないただの紙なので、食べているうちに水分を吸ってへにゃへに
   ゃになってしまいます。
ゆっくり味わって食べていると途中から崩壊の憂き目にあいそうで、慌ててかき込む羽目にな
   りました。レトルトにスプーンを突っ込んで食べればいいような気がしますが、それでも敢えて紙皿をつけてしまうあた
   りが、とにかく混ぜまくって食べないと気が済まない国民性を表していて、実に興味深いなあ。



    カレーとしての評価はさすがに厳しいものにならざるを得ないですが、キムチのカレー添えと思えばこれはこれでい
   いのかもしれません。
なまじ日本のカレーに近いものを作ろうとしただけに、どうしても日本のカレーと比べない訳に
   はいかない…そんな所でしょうか。これが米軍のMREのビーフテリヤキみたいに、完全に明後日の方向へ行ってし
   まっている
ならば、全く異種の料理として楽しむ事も出来ましょうが…。どうせなら、もっと韓国ならではの特徴を押し
   出した、独自のカレーを作ってはどうでしょうか。日本のカレーも、インドのカレーとは完全に別のものになってしまっ
   ていますし。
    痛んでいるのではと心配になった米レトルトの穴ですが、特に気になる様な異常はなく、体調も問題ありませんでし
   た。試食直前にあいた穴だったのかもしれません。
    最初からパッケージに加水剤用の水を仕込んであるのは面白いですが、そのために内容物やボリュームが制限
   されてしまうのは本末転倒
ですね。別に泥水でも尿でも使用には耐えるのですから、水を別にしたほうが携帯性も
   上がると思うのですが。
    そもそも、日本よりも寒い朝鮮半島の冬場に、この水は凍らずにいられるのでしょうか。不凍液でも入れてあるな
   ら別ですが、まだまだ工夫の余地の多い加熱システムに思えました。
    しかし加熱の様子は、見ていて非常に面白かったです。そこだけは大きく評価したいですね。




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