イージス艦こんごうビーフカレー
![](kongoubeefcurry1.jpg)
さて今回は、『イージス艦こんごうビーフカレー』です。DDG173護衛艦こんごう、言わずと知れた国産イー
ジス艦第一号ですね。1993年の就役以来25年近くに渡って海上防衛の第一線で活躍している、海自新時
代の象徴ともいえるフネです。
ちなみにこの護衛艦こんごう、2014年に佐世保地方隊で行われたGC1(護衛艦カレーNo.1)グランプリ
において、参加8部隊(艦艇7隻+陸自相浦駐屯地)の中から見事頂点に輝いたという、栄えある艦でもあり
ます。その功績を称えられ、このたびめでたく商品化となった訳ですが、相当な腕ききが揃っていると思われ
る護衛艦こんごうのカレーを再現したこの一品、入手した時から試食が楽しみでした。
まずはパッケージから見ていきましょう。正面には迫力満点の護衛艦こんごうの画像が配置されています
が、なんというかこの・・・正直微妙な見た目だなあ。こんな事を言ってはなんですが、GC1グランプリに輝い
たとは思えない位に素人くさいパッケージのデザインです。
![](kongoubeefcurry8.jpg)
あまりこういう仕事をした事がない人が、慣れないパソコンを使って苦労しながら徹夜して作った様な、たど
たどしさすら感じられるデザインですが、綺麗にまとまったプロの仕事っぽいデザインに比べると、逆に『手作
り感』の様なものが強調されているのが面白いなあ。商売っ気のない、いかにも艦内調理室で作られたカレ
ーらしいとも解釈できますね。
一般的な流通ルートに乗せる商品として考えた場合、このどうにもぱっとしないデザインはかなり不利でしょ
うけど、それを逆手に取って自衛隊らしさを表現したとしたら、それはそれで評価すべき勇気ある決断かもし
れませんね。
あとこのパッケージ、なんか変なんですよね。上手く言えないのですが、なんなんだろうこの違和感・・・とパ
ッケージを眺めていて気がついたのですが、正面に配置された真円形のこんごうの写真、微妙に左側に寄っ
てる気がしますよ。
![](kongoubeefcurry3.jpg)
定規を当てて確認してみると、写真左側の余白が18mmしかないのに対し、右側の余白は20mm。あ、
やっぱり正中線から僅かにずれてるんですね。そう分かるとますます不安定感が増していき、なんだか足元
が揺れている錯覚すら憶えます。まるで船酔いにかかったみたい。まさかこれも、艦艇のカレーらしさの演出
なのかなあ(笑)。担当デザイナー恐るべしと言わざるを得ません。
無駄な前置きが長くなってしまいましたが、とりあえずレトルトを温めて試食に移ります。まずは一口。
おお、これはこれは・・・最初にしっかりとした甘味が舌に乗ってきますが、決して重々しくはなく雑味の少な
い甘味が印象的。このすっきりした甘さの正体はなんだろうとパッケージ裏の原材料表示を見ると、リンゴピ
ューレ、チョコレート、チャツネ、はちみつ、砂糖といった多種多様な甘味系食材が入っていました。
![](kongoubeefcurry10.jpg)
これだけ色々入れると重くしつこい甘味に傾きがちですが、そこをさらりと爽やかな甘味に整えてあるのが
お見事ですね。このカレーの商品化にあたって監修を担当した、護衛艦こんごう給養員冨永誠剛2等海曹の
職人技の賜物でしょう。しっかりしているのに全然重くない、絶妙な甘味バランスの上に成り立った味わい。
ニッポンのいちカレー好きとして、実にほっとする味になっています。
そうですね、このカレーを一言で言い表すならば、踏み外しのない正統派・・・という感じかな?珍奇な素材
や調理法に逃げる事なく、ニッポンの伝統的なカレーライスをとことんまで突き詰めたが故の安心感。まさに
優等生的な印象を強く感じます。レトルトカレー達が通う学校があれば(はい、みなさんこれがいい歳したお
っさんの発想ですよ)、満場一致で生徒会長に選ばれそうな正統派であります。
![](kongoubeefcurry11.jpg)
良き師匠の下で、長年に渡って地味で単調な稽古を一心にやり通した修行者だけが到達できる境地。浮
つき度ゼロ、チャラつき度ゼロ。まさに日本のカレーライスの王道を行く味わいと言えるでしょう。
そしてこれは、ほかならぬ護衛艦こんごうそのものの在り方でもある気がします。海自初のイージスシステ
ム搭載艦として、各国各方面からの大きな注目を浴びながら就役し、以来20年以上を経た今も海自艦艇と
しての規範であり続けようとするその気概。決して初心を忘れないでいる心の在り様が、正統派そのものの
このカレーからひしひしと伝わって来る気がします。
![](kongoubeefcurry14.jpg)
就役後に参加した派米訓練の最終段階で行われた装備認定試験において、それまで米海軍が一度も達
成し得なかった100点満点『対空、対水上、対水中全ての目標を完璧に撃破した』を叩き出し、訓練を監督
する立場にあった米海軍をも絶句させた護衛艦こんごう。日本の海上防衛最新最強の盾としての、強い決
意と覚悟のもとに臨んでいた事は容易に想像できます。
今にして思えば、確かな実力に裏打ちされた正統派の誕生が、この瞬間だったのかもしれません。背負っ
たものの重さに負けなかった者だけが持つ凄みを、まざまざと見せつけられた気分。これぞまさにど真ん中
の王道、ど直球の正統派・・・。
「見事じゃこんごう!天晴れであるぞ!」
と、最後はなぜか殿様みたいな口調になってしまった試食でありました。
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