かつおカレー煮


       さて今回は、自衛隊非常用糧食『かつおカレー煮』です。これは戦闘糧食U型改善版から非常用糧食に引き
      継がれたメニューですが、U型改善版で試食した時は、カレー煮と銘打っておきながら全然カレーの味がしな
      い・・・
という、実に不可解というか摩訶不思議な一品でありました。ネタとしては非常に秀逸でしたが、ま
      さかこのメニューが生き残るとは思いもしなかったなあ。面白ければいいと思っているんでしょうか陸上自衛
      隊は。私じゃあるまいし。
       ちなみに今回封入されている主食は、白飯五目飯。これもU型の時と同じ組み合わせですね。それにして
      も改良も変更もなくそのままという事は、もしかして意外と評判良かったのかなあ。私はボロカスに書いてし
      まいましたが(笑)。なんだか自分の舌に自信がなくなりそう。
       とは言え、U型のかつおカレー煮と全く同じかどうかは食べてみなければ分かりません。さっそくパッケー
      ジを開封し、レトルトを温めます。

       さて、まずはいきなりかつおカレー煮から行ってみましょう。少しドキドキしながら中身をお皿にあけます
      が、ああ、これこれ。片栗粉でつけたっぽい中華チックなとろみ、そしてこの微妙に透明感のある茶色・・・
      一見してカレーに似ている様で、その実まるでカレーらしくありません。とりあえず一口頂きます。
       うーん、前のU型とまんま同じ味ですね。カレー煮という魅力的な名前の響きを思いっきり裏切ってくれる、
      砂糖と醤油のジャポニズム。ここに一味唐辛子っぽい辛味が加わり、やっぱりこれをカレーと呼ぶには無理が
      ある
様な・・・。
       かつお独特のクセを消してくれる筈のカレー風味が皆無なので、いい意味でも悪い意味でもかつおの味わい
      がダイレクトに舌の上に乗ってきます
。私はかつおの血生臭い風味は嫌いではないので問題ありませんが、
      手な人にはちょっとつらいかも
なあ、これ。

       しかしこのかつおカレー煮、これはこれで意外と悪くない気もします。初めて食べた時はカレー風味を期待
      していたので、裏切られたショックのあまり『ボウリング 隣のレーンにストライク』などと支離滅裂なのか
      正鵠を射ているのか自分でもよくわからない感想
を書いてしまいましたが、最初からこういうものだと分かっ
      ていれば、そう酷い味でもない気がします。
       それにしてもこれ、何かに似ているけどどう表現していいのか悩む味だなあ。サバの味噌煮缶かつお味つ
      けフレーク缶
を混ぜて、一味唐辛子をぱらりとかけたらこれに近くなるかな?そう書くとなんだかとても美味
      しそうな気がしますが、目の前にあるこれはなあ・・・。うーん、正直かなり人を選ぶ味だと思います。

       ちなみにU型かつおカレー煮のパッケージと比べてみると、原材料表示の内容も順番も全く同じ。納入元も
      ほぼ同一(U型は株式会社ホテイフーズ、非常用糧食は気仙沼ほてい株式会社)なので、やはり中身について
      は全く同じ
と考えていいでしょう。まあこのあたりは、下手に改良してコストが跳ね上がっては元も子もあり
      ませんからね。
       とは言え、やはりこれはもっとカレーっぽい味にした方が断然美味しくなる気がするんですよね。非常用糧
      食にはポークカレーというメニューがありますが、カレー味なら2〜3品重なっても問題ないでしょう。
       基本的に甘辛醤油&唐辛子のピリ辛なので、主食である白ご飯との相性は悪くありません。しかし、カレー
      を食べられると思ったのに・・・というもやもやした第一印象の残念さは残ります。食べられない程不味い訳
      ではないものの、これをカレーとは認められない。でも、言うほど酷い味でもない、でもやっぱりこれはカレ
      ーじゃないだろ・・・と、延々と思考がループするこの感覚。自らのしっぽを飲み込んだ蛇、ウロボロスを彷
      彿とさせる一品であります。

       ちなみにこのかつおカレー煮には、ごく小さくカットされたニンジンタマネギが入っていますが、目を皿
      の様にしてなんとかニンジンが確認できる程度で、無いよりはマシかというレベル。ってか、U型の時も入っ
      ていたんですね、ニンジンとタマネギ。あの時はメニューそのもののインパクトが強烈すぎて、全く気がつき
      ませんでしたが。

       もう片方の主食である五目飯は、あっさりとした味わいながらも美味しそうな茶色に染まっていて、実に食
      欲を刺激してくれます。具はタケノコ、ゴボウ、ニンジン、しいたけ、油揚げ。それぞれに自分の持ち味をち
      ゃんと主張していて、実にまっとうな炊き込みご飯訳の分からないかつおカレー煮で乱されてしまった私の
      脳波
を、穏やかに収めてくれる感じ。

       ちなみに今回のメニューにも使い捨てのトレーが入っていたので、かつおカレー煮を中心としてワンプレー
      トランチ風
に盛り付けてみました。うーん、こうしてみると、やっぱり白ご飯くんと五目飯くんがかつおカレ
      ー煮くんの異質さに思いっきり引いている
気がするなあ。真ん中に収まったかつおカレー煮くんはおすまし顔
      ですが、それだけに彼自身が持つナチュラルに踏み外してしまっている感が、一層際立つ様な・・・。
       まあ、全20種類に及ぶ非常用糧食、たまにはこういった変な奴が混じっていても、味の多様性という意味
      ではアリなのかもしれませんね。

       「やったーようやく昼飯だ!今日は何かな・・・うわぁ、よりによってかつおカレー煮かよチクショー!お
      いちょっと、お前のタコライスと交換してくれよ!(笑)」

       「班長の頼みでも、それだけはお断りッス!(笑)」
       とかなんとかいったような、現場の隊員さん達のトホホな苦笑が聞こえてきそうな一品。自らの在り方に全
      く疑問を感じていなさそうなかつおカレー煮くんにとっては不満のある扱いかもしれませんが、問題児だの
      わり者だのと散々な言われようながらも、彼がメニューからいなくなったら結構寂しいだろうなあ・・・と、
      しみじみ思わせる味わいがありますね。
       そんな立ち位置で自分の個性を存分に発揮しているという点で、もうお前はその路線でどこまでもまっすぐ
      行け!
と、背中を押してやりたくなるメニューでありました。




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