鹿屋海軍航空カレー



      さて今回は、『鹿屋(かのや)海軍航空カレー』です。これは近所の大型スーパーのレトルトカレーコー
     ナーにてたまたま発見したシロモノで、『清盛カレー』『18禁カレー』『馬鹿カレー』といったイロモノ系
     に囲まれて心細そうにしていたところを、私が救助したものであります。いやー、海軍カレーもすっかりメ
     ジャーになったので、どこでネタを拾えるか分かりません。
      それにしても鹿屋海軍航空カレーとは、また随分狭い範囲でまとめた海軍カレーだなあ。販売元の
     鹿屋大隅地域おこし公社
というのもなかなか珍しく、鹿児島名産のきもつき黒毛和牛を使用していると
     の事。自衛隊や海軍ブランドに目をつけた大手食品メーカーが商品を展開しているのはよくありますが、
     こうして地元の特産品で地域おこしをかけている小規模な商品は、なんだか応援したくなりますね。


      それより鹿屋海軍航空カレーって、略称は『KKKカレー』になるんでしょうか。何だか物騒だなあ。
      パッケージには零式艦上戦闘機がドンと描かれ、軽いエンボス効果が粒子の荒い昔の白黒写真を無
     理矢理引き伸ばして拡大したかのような感じ
を上手く表現していますね。箱自体は昔のカレーらしい黄
     色
で彩られ、一種独特な懐かしさを感じさせる優れたデザインであります。
      対照的にパッケージ裏面はカラフルな写真がいっぱい。噴煙を上げる桜島をバックに悠然と編隊飛行
     するP−3C対潜哨戒機
お花畑の様な霧島ヶ丘公園、鹿屋航空基地資料館、そして鹿屋基地のエプ
     ロン脇で花と戯れるWAVE
がレイアウトされています。


      その写真がどれも微妙に古臭くはありますが、ある意味戦前から陸軍航空隊の基地として歴史を重ね
     て来た鹿屋のイメージ
とも重なり、ダサさよりもノスタルジーを感じさせるのが不思議だなあ。これまで幾
     つか試食レポを上げて来た自衛隊&海軍カレーの中でも、パッケージの出来に関してはピカイチと言え
     そうです。






      それではしっかりと温めたレトルトを開封し、ご飯にかけてまずは一口。
      おお、これはなかなか。最初はもったりとしたやや鈍重な味に感じましたが、野菜の爽やかで軽やかな
     力強さ
が主軸になっているので意外と食べ易いですね。今どきのカレーには無い“うどん粉臭さ”もあり、
     この辺りもいい意味での古臭さを感じます。
      見たところ具は溶けかけのジャガイモ、細切れのニンジン、そしてこの茶色い粒子状の物体鹿児島
     きもつき黒毛和牛
なのでしょうか?しかしこれは思い切った使い方だなあ。ガンパウダーかよ!と突っ込
     みたくなる様な顆粒状で、こうなると最早肉と言っていいのかどうか分からないレベルであります。挽き肉
     
などといった甘っちょろいものではなく、もう粉末状と言っても過言ではない細かさ。


      当然肉そのものの食べ応えはゼロに等しいのですが、全体のダシに徹すると言う意味では、実にいい
     仕事をしていると言えますね。タマネギと果実の甘味を骨幹とした味わいですが、決してそれだけではな
     い骨太なダシを感じさせるのは、このニュートリノみたいな牛肉のお陰でしょう。
      辛さはほんの僅かに感じる程度で、辛味が苦手な人でも全く問題ありません。大人の舌で味わうのに
     何の不足も無い実力派の甘口ですね。成程この辺りも、食べる者に一種独特な郷愁を感じさせる意図
     的な味付けなのでしょうか。
      ひと箱一人前で248円と、他の自衛隊&海軍カレーに比べて半分ほどの価格設定ではありますが、
     その低予算を逆手にとって、うどん粉っぽい懐かしい美味しさに仕立て上げて見せたのはお見事です。
     牛肉の使い方に関しても、この価格ではとてもではないが食べ応えのある量は使えない・・・じゃあ超細
     切れにすっとでごわす!(適当鹿児島弁)
という、小規模公社ならではのフットワークの軽さが感じられ、
     結果的に十分合格点の商品に仕上げて来たのもご立派です。 


      私が今まで食べた自衛隊&海軍カレーの中で、西と東の両横綱を張れると思った『兵学校のカレー』
     や『航空自衛隊小松基地隊員給食カレー』と比べると確かに見劣りはしますが、価格設定が半分程度
     な事を考えると、互角以上に善戦していると思いましたね。
      一人前で400〜800円もする高級ご当地カレーにするか、一つ248円のお手軽海軍カレーにするか
     
正直かなり悩むところではありますが、どちらもその価格に十分見合う仕事をしてくれているので、いち
     消費者としては選択肢が広がる事に喜びを感じるべきでしょう。
      当時の海軍士官が給仕付きで食べていた様なスペシャル感高級感だけではなく、それこそ末端の
     水兵たちが美味い美味いと食べていた様な普通のカレーを、庶民的な価格で楽しむ事が出来る・・・

     いう意味で、大きな存在感を見せた鹿屋海軍航空カレー。奥行きの深い海軍カレーの世界の間口を大
     きく広げた
と言う点において、私個人的に高く評価したい逸品でありました。 




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