それではしっかりと温めたレトルトを開封し、ご飯にかけてまずは一口。
おお、これはなかなか。最初はもったりとしたやや鈍重な味に感じましたが、野菜の爽やかで軽やかな
力強さが主軸になっているので意外と食べ易いですね。今どきのカレーには無い“うどん粉臭さ”もあり、
この辺りもいい意味での古臭さを感じます。
見たところ具は溶けかけのジャガイモ、細切れのニンジン、そしてこの茶色い粒子状の物体が鹿児島
きもつき黒毛和牛なのでしょうか?しかしこれは思い切った使い方だなあ。ガンパウダーかよ!と突っ込
みたくなる様な顆粒状で、こうなると最早肉と言っていいのかどうか分からないレベルであります。挽き肉
などといった甘っちょろいものではなく、もう粉末状と言っても過言ではない細かさ。
当然肉そのものの食べ応えはゼロに等しいのですが、全体のダシに徹すると言う意味では、実にいい
仕事をしていると言えますね。タマネギと果実の甘味を骨幹とした味わいですが、決してそれだけではな
い骨太なダシを感じさせるのは、このニュートリノみたいな牛肉のお陰でしょう。
辛さはほんの僅かに感じる程度で、辛味が苦手な人でも全く問題ありません。大人の舌で味わうのに
何の不足も無い実力派の甘口ですね。成程この辺りも、食べる者に一種独特な郷愁を感じさせる意図
的な味付けなのでしょうか。
ひと箱一人前で248円と、他の自衛隊&海軍カレーに比べて半分ほどの価格設定ではありますが、
その低予算を逆手にとって、うどん粉っぽい懐かしい美味しさに仕立て上げて見せたのはお見事です。
牛肉の使い方に関しても、この価格ではとてもではないが食べ応えのある量は使えない・・・じゃあ超細
切れにすっとでごわす!(適当鹿児島弁)という、小規模公社ならではのフットワークの軽さが感じられ、
結果的に十分合格点の商品に仕上げて来たのもご立派です。
私が今まで食べた自衛隊&海軍カレーの中で、西と東の両横綱を張れると思った『兵学校のカレー』
や『航空自衛隊小松基地隊員給食カレー』と比べると確かに見劣りはしますが、価格設定が半分程度
な事を考えると、互角以上に善戦していると思いましたね。
一人前で400〜800円もする高級ご当地カレーにするか、一つ248円のお手軽海軍カレーにするか
正直かなり悩むところではありますが、どちらもその価格に十分見合う仕事をしてくれているので、いち
消費者としては選択肢が広がる事に喜びを感じるべきでしょう。
当時の海軍士官が給仕付きで食べていた様なスペシャル感や高級感だけではなく、それこそ末端の
水兵たちが美味い美味いと食べていた様な普通のカレーを、庶民的な価格で楽しむ事が出来る・・・と
いう意味で、大きな存在感を見せた鹿屋海軍航空カレー。奥行きの深い海軍カレーの世界の間口を大
きく広げたと言う点において、私個人的に高く評価したい逸品でありました。
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