一期一会 護衛艦かがカレー
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さて今回は、呉海自カレーシリーズ『一期一会 護衛艦かがカレー』であります。DDH184護衛艦かが
はいずも型護衛艦の2番艦。同じく広大な全通甲板を持つひゅうが型護衛艦からさらに船体を巨大化させ、海
上におけるヘリコプターの運用性の一層の向上を果たした、海上自衛隊最大の護衛艦です。
外洋を思わせる濃紺のパッケージには護衛艦かがの巨体がレイアウトされ、広大な全通甲板もあってなかな
かのインパクト。逆光を利用して船体側面を黒く潰し、飛行甲板を強調する撮影手法もなかなか心憎いものが
あります。
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箱裏面には呉と海自の成り立ち、海自の金曜カレーに関する説明がわかりやすくまとめられていますが、護
衛艦かがについての説明がないのがちょっと残念。全長や基準排水量等の簡単なスペックは記載されています
が、護衛艦隊の中でも特別な位置にいる艦だけに、このかががどういう役割を果たすのか等を少しだけでも書
いてほしかった気がしますね。
全14種共通デザインのパッケージ故に個々に融通を利かせづらいのは仕方ありませんが、伝えるべき事、
伝えて欲しい事がいまいち伝わらないもどかしさを覚えました。
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とまあ前置きはこれ位にして、早速試食に移りましょう。お皿にあけてまず驚かされたのが、ものすごい濃
度。湯煎でしっかり温めたのに、もったりぽたぽたと滑り落ちてくる感じはまるでマグマの様。これは一筋縄
ではいかないぞ・・・と気を引き締めつつ、まずは一口頂いてみます。
おおおおお、これはまたなんと・・・見た目通りのものすごく濃厚な味わいです。口の中で粘り、舌に絡み
ついてくるようなこの粘度・・・これまで食べて来た海軍自衛隊レトルトカレーの中でも、間違いなく最濃と
言えるレベルです。
ただ、微かな苦みが全体を引き締めているので、意外と食べやすくはありますね。隠し味はカカオ80%以
上のビターチョコと見ましたが、原材料表示を確認すると、苦みの正体はチョコではなくコーヒーでした。
それ以外にもバナナやヨーグルト、チャツネといったカレーらしい材料が沢山使われていますが、その中に
意外なものを発見。練り胡麻とみそ?風味的にカレーにはちょっと合わない気がしましたが、隠し味として上
手に使えばこんなにも威力を発揮するものなんですね、練り胡麻とみそって。これはものすごい発想とテクニ
ック。かがの給養員に一本取られた気分です。
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あともう一つ、実に面白いものが入っていました。なんとボイルひじき!確かによく見るとカレーの中に黒
いツブツブが混じっていますが、ひじきを使ったカレーは初めて見ました。ひじきらしい風味は私の舌では全
く感じられないレベルでしたが、長期航海のストレスに悩まされる乗組員にとって、カルシウムやマグネシウ
ム、食物繊維が豊富なひじきは非常に有難い存在。あまりに地味すぎて若い隊員さんには敬遠されそうなひじ
きですが、それを何とかして食べさせようという給養員長の親心が伝わってきます。
それにしてもこの濃い味わい・・・強烈の一言に尽きます。おかげで合間合間に口に運ぶ冷たい生野菜のみ
ずみずしさが、いつも以上に美味しく感じます。レタスやトマト、きゅうりってこんなにはっきりした味だっ
たのかと、今更ながら気づかされました。
ちなみに特濃カレーと言えば、以前同じ様な感想を缶入りの護衛艦きりしまカレーで書いた覚えがあります
が、きりしまカレーで浮かんだイメージが部隊指揮官たる艦長の孤独だったのに対し、このかがカレーでは若
手幹部の悪戦苦闘する姿が脳裏に浮かびました。
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ある程度長い目で成長を見守ってもらえる任期制隊員とは違い、同じ若手であっても幹部の場合は最初から
一本の戦力として結果を求められる立場。そして海上自衛隊最大かつ最新の護衛艦であるかがの乗組員として
選ばれた事の意味を、理解していない幹部はいないでしょう。
幹部候補生学校を出て間もない両肩に圧し掛かってくる責任感、使命感、義務感。一分の隙も見逃してくれ
ない上官の眼が光る中、海千山千のベテラン海曹達を束ねていかねばならないプレッシャー・・・それに耐え
うる人材として認められたからこそ幹部の階級章をつけているとは言え、逃げ場のない艦内で日々いっぱいい
っぱいになっている事は容易に想像がつきます。
そんな毎日の中訪れた、金曜昼のかがカレータイム。濃厚極まるカレーとの格闘に、またしてもいっぱいい
っぱいになっている若手幹部達は、逃げる様に口にした生野菜の美味しさに救われると同時に、問題そのもの
だけでなくその周囲にも目をやる事の重要性を気づかされるのではないでしょうか。そしてそれに気づける者
だけが味わう事を許される、護衛艦かがのカレー。
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しかしカレーの横に添えられているのは、生野菜の様な味方だけではないのです。生野菜、ゆで卵、フルー
ツ、牛乳と並ぶ金曜カレーの定番である、揚げ物の存在を忘れてはいけません。冷たく瑞々しい生野菜やまろ
やかなゆで卵、甘酸っぱいフルーツ、優しい甘さの牛乳が辛うじて中和してくれたかがカレーの濃厚メーター
を、再びレッドゾーンまで振り切ってしまうコテコテの揚げ物・・・先程までは優しかった給養員長の、ドS
っぽい高笑いが聞こえてくる様ではありませんか(笑)。
この超濃厚カレーにプラスされる揚げ物・・・濃い、あまりにも濃い・・・。素晴らしい味わいであること
は間違いないのですが、胃の痛くなる重圧に日々耐えている若手幹部にとっては、追い打ちのボディーブロー
を食らっている気分になりそう。
しかし世間一般的には立派なオジサンである艦長が涼しい顔で食べているのに、若手である自分が音を上げ
る訳にはいきません。その様子を一目見て察した艦長は、アイコンタクトで
『貴様ら!この程度の濃さで弱音を吐いて、この先幹部としてやっていけると思うなよ!』
『わ、わかりまりた艦長!(←いっぱいいっぱいだったのでちょっと噛んだ)』
超特濃カレーの醍醐味だけではなく、かが艦内の人間模様や若手幹部の悪戦苦闘ぶりまで想像させる護衛艦
かがカレー。誠に面白い個性だと言えますね。食べているだけの私まで胃が痛くなってきました(笑)。
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ちなみにこの護衛艦かがカレー、JR呉駅からほど近い所にあるクレイトンベイホテルのレストランでも提
供されています。護衛艦かが艦長遠藤一等海佐による認定証が発行されたというお墨付きですが、箱裏に掲載
されたカレーの画像を見ると、見るからに濃厚そうなカレー、上に乗せられたトンカツ、脇に添えられたたっ
ぷりの刻みキャベツ・・・んん~、なんかどこかで見た事がある様な・・・あ、これってゴーゴーカレーに代
表される、金沢カレーのスタイルそのものです。そうか!護衛艦かがだから金沢カレーなのか!
クレイトンベイホテルのシェフが加賀地方への思いを演出したのか、それとも護衛艦かが艦内で出していた
スタイルに則ったのかは分かりませんが、やはりこの超特濃カレーは生野菜との密接な連携があってこそ、真
価を発揮するカレーなのかもしれません。
ああ、これは一度護衛艦かが艦内で、実際に金曜カレーをご馳走になって確かめてみたいものだ・・・とし
みじみ思いつつ、大満足の試食を終えました。
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