護衛艦かが “じっくり煮込んだビーフカレー”


       さて今回は、リニューアル版呉海自カレーシリーズ第9弾『護衛艦かが “じっくり煮込んだビーフカレー”』
      です。DDH184護衛艦かがの説明については、リニューアル前の『一期一会 護衛艦かがカレー』のレポ
      をご参照頂くとして、まずはパッケージから見て行きましょう。
       威風堂々と突き進む護衛艦かがの巨体がレイアウトされているのはリニューアル前と同じですが、以前は護
      衛艦かが単独だった画像が、今回のリニューアル版からは僚艦を伴っている点に要注目。艦番号は確認できま
      せんが、後方に見えるのは恐らくDD117護衛艦すずつき。そして右舷後方に見えるイージス艦は・・・あ
      れ?マスト後方に大きな星条旗を掲げていますね。どうやらアメリカ海軍のイージス艦の様ですが、日米共同
      訓練等で撮影された画像でしょうか。

       以前はかが単独の画像だったのに、今回のリニューアルに伴い海自のみならずアメリカ海軍との強固な連携
      
をも合わせて表現してきたとは。単にスペック的な説明にとどまらず、日本の海上防衛の中で護衛艦かががど
      ういう役割を果たしているか
を一目でわかる形で描き切った、なかなかいいデザインですね。
       箱裏面には海上自衛隊と呉海自カレーの成り立ちや味覚チャート、調理方法、原材料表示とともに呉市内の
      飲食店で提供されているかがカレーの画像が紹介されていますが、よく見るとリニューアル前と同じ画像です。

       そしてマスコットキャラの呉海自一等海佐くんの説明によると、『鶏のブイヨンとひじきや黒胡麻、大豆を
      使用しじっくりと煮込んだビーフカレー』
との事。リニューアル前のかがカレーもひじき胡麻が入った超重
      量級のド迫力カレー
でしたが、今回も同じ路線なのかな?給養員が代替わりするたびに基本方針が変わるカレ
      -も変化が楽しめますが、その艦の個性の土台が受け継がれていくカレーもいいものです。今回も怒濤の旨味
      攻撃
にボコボコにされるのかなあ・・・とドMっぽい喜びに打ち震えつつ、温めたレトルトをお皿にあけてま
      ずは一口頂いてみましょう。
       ・・・あれ?あれれ?リニューアル前に比べて軽くなったというか、随分大人しくなった印象です。味の基
      本路線はそのままに、かなりあっさりしたカレーに仕上がっていたのが驚き。
       ここでリニューアル前のかがカレーの外箱を確認したところ、一人前200gで242kcalとありますが、
      それに対してリニューアル版かがカレーはなんと186kcal!25%減という驚くべきダイエットを果たして
      いました。

       海自の金曜カレーと言えば、濃厚な旨味を追求するあまり200kcal越えは当たり前、中には300kcalに
      迫るヘビー級
も珍しくない中、これだけの旨味満足度を誇りながら200kcal以下に抑えているのはすごい
      なあ。アンコ型体形だったプロレスラーが、総合格闘技に挑戦するにあたって見事に体を絞り込んできた感じ
      でしょうか。
       目に見える具は小さく刻んだニンジンごく細かく挽いた牛肉なのは、リニューアル前と同様。そして沢山
      入っている黒いツブツブがひじきと思われますが、この大きな具による見た目のデコボコ感が全くないカレー
      は、かなり地味な佇まい。やはり箱裏画像の通りに千切りキャベツ&とんかつと合わせて初めて完成する、艦
      名のかが繋がりからの金沢カレースタイルに則るのが正しい頂き方なのでしょう。
       そう考えると、箱裏画像のカレーの上にどっしりと乗ったとんかつが、なんだかF35Bに見えてきました。
      なるほど、つまりこのカレーは、護衛艦かがはF35Bと組み合わせる事で本来の実力を発揮すると言いたい
      訳ですね。

       洋上における戦闘機の運用性を高めるために、飛行甲板の耐熱化改修が進められるいずも型護衛艦。F35
      Bの運用能力を抜きに護衛艦かがを語れない時代
は、もうそこまで来ています。今回はカレーの濃厚さをあえ
      て下げる事で、航空戦力たるとんか・・・もといF35Bの存在感をアピールし、護衛艦かがとしての新しい
      在り方を示して見せた
のでしょう。うぬぬ、ここまで考え抜いての大減量だったとは・・・これは一本取られ
      ました。
       しかしここで気になるのが、この護衛艦かがカレーを購入した人のうち、果たしてどれだけの人が千切りキ
      ャベツ&とんかつと合わせた金沢カレースタイルで食べてくれるか
、という問題です。今回の私の様に、単に
      温めたカレーをご飯にかけただけの状態で食べた人にとったら、
       「んん~、美味しい事は美味しいけど、具は小さいし見た目も地味だし・・・値段を考えたら満足感に欠け
      るなあ。海上自衛隊の金曜カレーってこんなものなのか・・・」

       そんな感想で終わってしまいそうな恐れがあるんですよね。リニューアル前の超濃厚力押しな味わいなら、
      まだそのお得感に納得してもらえると思いますが、深いメッセージが込められているとは言え、やはりこのカ
      レーはリニューアル前のものに比べて弱くなった印象が否めない気がします。

       せめて護衛艦かが石川県加賀地方金沢金沢カレー、というリスペクトの流れを外箱に紹介し、とんか
      つと千切りキャベツを必ず添えてね!
とリコメンド出来ていれば、もっと多くの人がこの護衛艦かがカレーの
      神髄を楽しめる
と思うのですが・・・。
       とは言え、全国各地で行われる自衛隊イベントに多くの人が押し寄せる様になって、もう随分になりました。
      もしかしたら私が心配している以上に、人々はこのカレーから別の意味での護衛艦かがらしさを見つけ出して
      いるのかも。おせっかいな古参マニア気取りにはありがちな事とは言え、この空回りの老婆心・・・私もヤキ
      が回った
のかもなあ(笑)。
       またそれを言うなら、艦によって様々に異なる任務に合わせた個性を誇る海自の金曜カレーを、ご飯だけで
      試食する事自体に無理がある
のかもしれません。今回のかがカレーが千切りキャベツ&とんかつとセットにな
      って初めて完成するカレー
だった様に、他にも特定の揚げもの生野菜フルーツとタッグを組んでこそ語る
      に値するカレーになったカレーもあったのかも。もしかして私はとても重要な要素を見落としたまま、ここま
      で海自のレトルトカレーを語ってきてしまったのではないだろうか・・・。

       そして何よりも、リニューアル前のかがカレーの大艦巨砲主義的な重厚で濃厚な味わいと比べてしまった私
      自身が、護衛艦かがの超ド級のイメージに簡単に引きずられてしまっていたとも言えるでしょう。中途半端に
      知った気になっていたせいで、余計な先入観にとらわれてしまっていたのか・・・。私如きがこのかがカレー
      を語るのは、どうやら10年早かった模様です。
       時代に合わせて自らを柔軟に変化させつつ、同時に初心も忘れない事の大切さと難しさ・・・そんな事をひ
      と皿のカレーに教えられた気がした『護衛艦かが“じっくり煮込んだビーフカレー”』でありました。




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