戦闘プリン
さて今回入手できたのは、自衛隊戦闘糧食『戦闘プリン』・・・であります。例によって鋼海物産が自衛隊
に納入しているブツですが、一連のラインナップの中ではまだまともな部類に入るのが、よく考えたら酷い
話ですね。しかし戦闘プリンか・・・。いや、これも大概だな・・・。“戦闘”と“プリン”との間に、ものすごい落
差を感じる組み合わせです。
まあ他国の戦闘糧食と違って、甘味等の嗜好品の類が全く含まれていない自衛隊戦闘糧食です。こうい
う物に関する需要というか現場の隊員さん達からの期待感も、決して無視できないものがあるのでしょう。
今回も鋼海物産様のご厚意により、陸海空の3種類のプリンを入手する事が出来ました。なんというか、
見れば見るほどあのプリンにそっくりなんですが、色々と面倒くさそうなので細かい所には触れないようにし
ましょう。
まずは陸上自衛隊に納入されている陸自版戦闘プリンから。上部の包装を剥がし、お皿に乗せて容器の
底にあるポッチをプ○チンします・・・ってこれ、本当に大丈夫なの?あの会社が、実用新案とか特許とか
取っていると思うのですが・・・お願い!訴えないで!!
慌てて玄関の鍵を締めて雨戸も降ろし、初めてエロ本を拾った小学生と同じ位ドキドキしながらプ○チン
します。容器をそっと持ち上げると、陸プリンはこんな感じ。
うーん、納得のOD色ですね。実に分かりやすい陸自カラーです。あからさまに作り物っぽく、これを食べ
るのかと思うと何とも言えない不安感に襲われますが、とりあえず一口。
うっ、何この青臭いニオイ・・・。てっきり昨年の戦闘ピ○と同じく抹茶味かと思いきや、その辺に生えてい
る雑草を食べている様なこの青臭く苦い味わい・・・。慌てて鋼海物産の担当者に問い合わせたところ、陸
自用戦闘プリンは『青汁味』との事。
なんでも陸自糧食班の教育を行っている千葉県の松戸駐屯地には、教育用の野草園があるそうで、ここ
で日本国内の山間部に自生している野草類を栽培し、食べていい植物とダメな植物を隊員さんに教えてい
るとの事。今回はそこで栽培した野草を、独自の配合でブレンドしたそうです。
うーん、体には無害どころか、ビタミンとかミネラルが豊富な気がするのですが、正直マズイです。
なんというか、牛とか馬になった気分。八名信夫の例の決め台詞がしっくりきます。
続いては空自版戦闘プリン。むかつく胃をなだめつつお皿にプ○チンしたところ、うーん、ライトゴーストグ
レイっていうんでしょうか。F−15戦闘機の制空迷彩色そのまんまです。これも微妙に美味しくなさそうなプ
リンだなあ。飛行隊長に怒鳴りつけられる5秒前の新米パイロット・・・みたいな、非常に顔色の悪いプリン
です。私もつられてゲンナリしてきましたが、意を決して一口。
んん〜、これは・・・以前試食した戦闘ピ○と同じく、ガリガリ君ソーダ味味です。一般的なプリンから想像
できるまろやかな味わいとはベクトルが異なるので、やや期待外れな感もないではないですが、口の中い
っぱいにカメムシを頬張っている様な陸プリンに比べれば、はるかにマシだと言えるでしょう。
ちなみにこの色にはちゃんとした理由があり、戦闘機パイロットが訓練中にこっそり食べる時に、僚機に
バレないようにキャノピーの背後の空の色に溶け込ませる意図があるそうです。そうか、戦闘訓練中に食
べるか、プリンを・・・。このぷるぷるのプリンが、戦闘機動の高Gに耐える事が出来るのかどうか甚だ疑問
ではありますが、まあ頑張ってくれ空の人・・・。
最後は海自版戦闘プリンです。お皿にあけてみると、うわあ、なんだこりゃ。マリンブルーのプリンです。
船乗りらしく海の色をモチーフにした事は間違いなさそうですが、正直言って全然食欲が湧きません。そも
そも青系の色って、自然界では毒物色なんですよねえ。大丈夫なのかコレ・・・。
頂にはちゃんとカラメルソースが載っていますが、なんかどこかで見た事あるぞこれ・・・と思ったら、劇場
作品『銀河鉄道の夜』のジョバンニそっくりです(笑)。一体何味なのか想像もつきませんが、嫌々一口だけ
食べてみます。
・・・ん?これ・・・塩味・・・ですね?大海原をイメージしたのだから当然と言えば当然かもしれませんが、
塩プリンときたか。でもこれ、結構イケますよ。一時期はやった塩キャラメルや塩ソフトクリームと同じ方向
性で、この僅かにきかせた塩味が、プリン独特のまろやかな甘味をうまい具合に引き立てています。スイ
カに塩と同じ原理ですね。
ちなみに鋼海物産に問い合わせてみた所、この塩は海洋深層水から精製したそうです。なるほど、ます
ますもって海そのもの。天然ミネラルもたっぷりで、お肌の健康にも非常にいいとか。しかもその海洋深層
水は、わざわざ海自の潜水艦を繰り出して採取しにいったとの事。なにやってんだ潜水艦部隊・・・。
さらに担当者の弁によると、折角だからと海自の潜水艦も気合いを入れまくり、かなりヤバイ海域にまで
侵入して汲んできてくれたそうです。それがどのあたりなのかは流石に言えないそうですが、正直私もあま
り知りたいとは思いません。大丈夫なのか、海洋汚染とか。
味に関してはいい意味で見た目を裏切り、正直美味しいと言っても過言ではない海プリンでしたが、やっ
ぱりこの、ジョバンニに開頭手術を施しているみたいなアナトミーな見た目、著しく食欲を失わせるものが
あります。
なんというかこの、張り切り過ぎて本質を完全に見失っている空回りっぷりが、鋼海物産と自衛隊タッグ
の真骨頂なのかなあ。基地駐屯地の隊員食堂や周辺の警備が次々とアウトソーシング化され、戦闘糧食
にも市販されているものが採用されるという、いまどきの世情に逆らえない自衛隊ではありますが、こうい
う部分だけでもバカな意味で頑なであり続けて欲しい・・・。そんな気がした試食でありました。
この記事は、2014年4月1日にupしました。
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