うーん成程、これは確かにレンコンカレーです。ほぼ立方体に近い大胆なカットという事もあり、
なかなか存在感がありますね。
一口食べてみると、はっきりとした牛肉のダシが感じられます。そこにタマネギの甘さと煮崩れ
たジャガイモ独特のざらついたとろみが加わり、見た目のインパクトとは裏腹に実に伝統的な味
わい。ごろごろのレンコンは具を齧る楽しさが味わえ、ほくほくした口当たりと根菜らしいどっしり
した太い滋味がカレーによく合って美味しいなあ。
牛肉はミンチ状なので流石に見た目の迫力こそありませんが、自身が持っている旨味を惜しげ
もなくカレーに提供している潔さがエライですね。おかげで主役を張るレンコンが十分引き立って
います。
ただ、牛肉のダシが効いているのにこのさっぱりとした軽い風味は、評価が分かれるところであ
ります。決して水っぽいとか物足りない訳ではありませんし、ある意味主役の岩国レンコンに一歩
譲った味付けなのかもしれませんが、もう少し重量感のある味にしても、根菜のエースと言うべき
レンコンの風味はなんら損なわれる事はないと思うんですが・・・。
この味を物足りないと取るか絶妙と取るかは、食べる人によって大きく評価が分かれる気がしま
す。カレーは食べたいけど、あまり重いのはちょっとなあ・・・という局面でこそ、大きな存在感を発
揮してくれる一品なのかもしれません。
また味わいが軽い分だけ、食べている途中からやや塩気が気になりました。とは言えこの塩気
は、潮気と受け取るべきなのかもしれませんね。海面からの離着水で機体にたっぷりと潮を被っ
たUS−2をイメージさせてくれる、これはこれで岩国海軍飛行艇カレーのあるべき姿というか、意
欲的な表現の一つであると言えるでしょう。
そしてこのカレー全体に漂う味の軽やかさですが、これは主役であるレンコンが地中に埋まって
いる時からずっと抱えていた、一種の『大空への憧れ』のようなものかもしれません。
そもそもレンコン最大の特徴と言える地下茎を貫通している長い穴ぼこは、地中深くにいるレン
コンが呼吸を行う為に発達したものと聞いた事があります。言わば、潜水艦のシュノーケルみた
いなものですね。
長期間の潜航に耐えた潜水艦が、浮上してハッチを解放した時に感じる空気の美味さ、太陽の
眩しさ、海と空の果てしない広がりを、レンコン君は畑の地下深くでずっと夢見ていたのではない
でしょうか。
そうして長年地中で大地の滋養を蓄えつつ育ってきたレンコン君が、体験搭乗で乗ったUS−2
の機上からどこまでも広がる海と空を見た時の感動が、きっとこの一皿に詰まっているのでしょう。
海軍カレーでありながらも決して歴史や伝統だけに捉われる事なく、海と空の両方を舞台に駆け
巡る飛行艇の個性をも十分に表現したこのカレー、実に秀逸な一品と言えますね。
地元の特産品もきっちりと取りこんだ上でしっかりと消化していますし、他に類を見ないセールス
ポイントを持った、よく出来たご当地海軍カレーでありました。
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