| 伊丹駐屯地ビーフカレー 
 
 
        さて今回は、『伊丹駐屯地ビーフカレー』です。これは2014年の中部方面隊創隊記念行事で伊丹駐屯地を訪れた際に入手したのですが、陸自駐屯地の名を冠したカレーというのは初めて見ました。海自の金曜カ
 レーでは珍しくありませんが、とうとう陸自も本格的にレトルトカレーの分野に進出ですね。もしかしたら既に
 他の駐屯地で発売されているのかもしれませんが、私の一発目が伊丹というのは、個人的に馴染みの深い
 駐屯地だけにちょっと嬉しくなります。
 
        まずはパッケージから鑑賞しましょう。うーん、妙にPOPというか、力強さと安っぽさが不思議なバランスで成り立っている独特のデザインです。アメコミっぽいアート感覚を感じないでもないですが、自衛隊について
 あまり興味も知識もない人が適当にデザインした様な、微妙な違和感を覚えます。
 そしてふと気がついたのですが、パッケージに並んでいる3両の陸自車両、化学防護車、74式戦車、10
 式戦車のいずれもが伊丹には存在しない車両なんですけど・・・。まあ無稼動雨ざらし展示の74式戦車なら
 伊丹の敷地内にもありますが、ちょっとこれはいい加減すぎる・・・。
 
        しかもこすっからい事に、化学防護車を指揮通信車と偽って表示してあるし(怒)。何が『A nickname isa “commander”』だよ!確かにぱっと見は指揮通信車そっくりですが、運転席の後方に地磁気方位計が
 突っ立っています。どう見ても化学防護車じゃないですかー!
 さらに呆れた事に、パッケージの写真は全て防衛省陸上自衛隊HPから引用した、との事。なんというか、
 ものすごいやる気の無さとやっつけ仕事の匂いを感じます。
 こんなもんどこの会社が作ってるんだ・・・と見てみると、販売者は高知県の会社でした。えー・・・これを買
 ったら、地元伊丹じゃなくて高知にお金が落ちる仕組みなのか・・・。商品として一般的に流通されているレト
 ルトカレーに対してこんな事を言うのは野暮かもしれませんが、パッケージの経緯も含めて文句の一つも言
 いたくなる気分です。
 
        これを一つ550円も出して買ってしまった自分(しかも2個も)が嫌になってきましたが、こういった最初の印象が最悪のカレーは、えてして食べてみたらすっごく美味しかった!というオチになりがちです。自分の突
 っ込みからどんどん愛が抜けて行く悲しさを覚えながら、とりあえず温めて食べてみましょう。
 あれ?結構深い色合いのカレーですね。ホットチョコレートに近いダークブラウンが印象的。そしてふと思い
 出したのですが、このカレーの色、2009年の伊丹駐屯地創立記念行事で曹友会が出していた屋台のカレ
 ーにそっくり。とても美味しかったので印象に残っていたのですが、まさかあのカレーを再現したのか?
 しかし、5年前に食べたカレーを覚えている私も大概だなあ。なんでそれを仕事に生かせないんだよ・・・と
 再び暗い気分になりましたが、とりあえず一口。
 
        うーん、牛肉のどっしりした味わいがありますが、あの伊丹曹友会のカレーとはちょっと違う様な・・・。カレーらしいスパイスのトゲトゲしさよりも、しっかりと炒ったルーの香ばしさを強調していて、コーヒーで言えばエ
 スプレッソの様な風味をもったカレーです。それでも辛さは十分にあり、重量感のある味わいをきっちりと引
 き締め、かなりの食べ応えを誇っています。
 牛肉はスジ肉を使っている様で、ゼラチンっぽい旨味が全体の味わいの太さとよくマッチしています。パッ
 ケージこそいい加減で落ち着かない雰囲気ですが、意外にも大人の味わいを感じさせるよく出来たカレーだ
 と言えるでしょう。
 それにしても、パッケージに書いてある『力みなぎる!かつてない味わい!』というコピーが、この落ち着い
 た個性を感じさせるカレーに全然合っていません。『黒にんにく入り』という売り文句も、それらしい味わいは
 ある様なない様な・・・。とは言え、あまりにんにくの個性が突出したカレーは私の好みではないので、これは
 隠し味として生きていると解釈すべきですね。
 
        結果的に、最初の悪印象とは裏腹にかなり美味しいカレーではありましたが、550円か・・・。お土産的要素を加味しても、コスパ的にはちょっと微妙な価格設定だなあ。
 また、550円出してスジ肉かよ、という気もしないでもありません。実際カレーによく合っていて美味しかっ
 たのですが、この価格設定ではちょっとアピールの仕方が難しい様な気がします。もちろん本当に美味しい
 スジ肉はそれなりのお値段になりますし、下拵えは普通の肉以上に手間もヒマもかかるのですが、うーん・・・
 550円か。難しいところだなあ。この内容で400円台なら、また、いい意味でつい手に取りたくなる様なパッ
 ケージのデザインなら、文句のつけようは無かったのですが・・・。
 あと、何故これが伊丹なのかという点もあやふやなままですね。黒にんにくって、伊丹の名産だったっけ?
 伊丹と言えば空港、あと歴史のある造り酒屋が多い事で有名ですが、それなら酒粕を隠し味に使ってみる
 とか(合うかどうかは分かりませんが)、そういう伊丹らしい地場産業のアピールが欲しかったなあ。また、伊
 丹駐屯地の給養員長による監修つき、でもいいと思いますし。
 
        今後も駐屯地の名を頂いたカレーは、どんどん出てくるかもしれません。私的にはその一発目がこの伊丹駐屯地ビーフカレーとなりましたが、これと同等の内容のカレーを400円台で出せるかどうかが、今後の私
 の中の駐屯地カレーのスタンダードになる気がします。
 そういう意味では、もっと他の駐屯地カレーを食べてからでないと、この伊丹駐屯地ビーフカレーの本当の
 評価は出せないでしょうね。正直もやもやする部分は多々ありましたが、現時点での評価はひとまず保留と
 したいと思います。
 ・・・と思いながら箱裏の原材料表示を見ていて気がついたのですが、黒にんにくペーストとおろし生姜のと
 ころにだけ、高知産と誇らしげに書いてありました。え?売り文句である黒にんにくは高知産なの?
 っていうか、なんで高知産の材料だけ強調してあるんだろう。他の食材には何も書いていないのに。もちろ
 ん高知の会社が高知の食材をアピールするのは至極当然ではありますが、それなら最初から高知駐屯地ビ
 ーフカレーでよかったんじゃ・・・。
 
 カレーそのものは非常によく出来ていましたが、なんだか最後まで釈然としない気分でした。というか、こう
 して自分が抱いた感想を振り返ってみると、マニアの面倒くささを映す鏡としては、もしかして非常に優秀なカ
 レーだったのかもしれません。俺はこのカレーに手玉にとられてしまったのか?と思い悩みつつ、やっぱり釈
 然としない試食を終えました。
 
 
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