イタリア軍戦闘糧食
RAZION VIVERI DA COMBATTIMENTO MODELO“C”



       さて今回は久々の大物、イタリア軍戦闘糧食『RAZION VIVELI DA COMBATTIMENTO』です。イタ
      リアらしい個性が溢れ、味覚的にもかなり評価が高い戦闘糧食だと聞いていたので、入手して以来試食が楽し
      みでした。
       枕ぐらいの大きさのアルミ製真空パックに、一日3食分の食糧がぎちぎちに詰め込まれています。パッケー
      ジはかなり頑丈で、湿気や直射日光を完全にシャットアウト出来そう。見るからに強そうなOD色で、その大
      きさと重量感も相まって非常にマッチョな雰囲気
を醸し出しています。
       イタリア軍戦闘糧食は全部で7種類あり、それぞれパッケージ正面に描かれた小さな丸の色で区別する事が
      出来ます。ちなみに今回入手したのは銀色のMODELO“C”。しかし、他国の戦闘糧食は文字や数字、記号等で
      種類分けしているのが殆どなのに、色で種類分けしていると言うのが何だかとてもイタリアらしい気がします
      ね。全メニューの色分けについては、下記の通りです。

A:  B:  C:  D:  E:白  F:ピンク  G:

       ここでイタリア料理について簡単な説明を。そもそも南北に細長い地形であるイタリアは、北部と南部で気
      候風土が大きく異なります。
普段私達が抱いているイタリア料理のイメージは、オリーブオイルとトマト、新
      鮮な海の幸
をふんだんに使った色鮮やかな料理…というのが多いと思いますが、これは概ねイタリア南部の食
      文化
が反映されている模様で、北部はバターや肉類、乳製品を使った料理が多いそうです。
       また文化的な歴史は非常に豊かであるものの、現在のイタリア共和国という統一国家としての体を成してか
      らの歴史は意外にも浅く、
つい最近までは小さな地方国家に分裂していたそうです。その為、厳密な意味での
      “イタリア料理”というものは存在せず、幾つもの個性的な郷土料理文化がごった煮の様に集まって、現在のイ
      タリアの食文化を構成している
との事。
       現地の人達も、こと食文化の話題になると『私はイタリア人ではありません、トスカーナ人です』といった
      具合に、郷土に対する強い誇りとこだわりを抱いているそうです。
       また領土の大部分が地中海に突き出た形になっているので、新鮮な魚介類が非常に豊富である事も特徴的。
      イカもタコも平気で食べるという点で、スペインと並んでヨーロッパではかなり独特の食文化を持っている
      言えます。この辺りも、日本人がイタリア料理に親しみやすい一因なのかもしれません。


       前置きはこれ位にして、早速試食に移りましょう。パッケージを開封すると、何故か中からはリンゴの様な
      桃の様なバナナの様な、実にフルーティな香りが漂ってきました。小学校の頃に集めていた、フルーツのニオ
      イのする消しゴム
を思い出します。
       中からは3つの紙箱が出て来ました。なるほど、このそれぞれが朝昼夕の三食セットな訳ですね。開封する
      と実に沢山の食品類が出て来ました。


 



【REFEZIONE DEL MATTINO(朝の軽い食事)】
1:GELATINA(イチゴ味ゼリー)   2:GELATINA(?味ゼリー)
3:BISCOTTO DOLCE(ビスケット)   4:練乳 
5:CIOCCOLATO(チョコレート)  6:粉末コーヒー
7:砂糖×2   8:マッチ   9:浄水剤×4   10:塩
11:爪楊枝×3   12:紙ナプキン&カトラリー   
13:簡易ストーブ   14:固形燃料×6   15:歯ブラシ×3
16:紙袋×3  


【PASTO DEL MEZZOGIORNO(正午の食事)】
1:TORTELLINI AL RAGU(肉入りトルテリーニ)
2:WURSTEL(ソーセージ)  3:MACEDONIA(フルーツサラダ)
4:紙ナプキン&カトラリー  5:BISCOTTO DOLCE(ビスケット)×2
6:ビタミン・ミネラルタブレット×4   7:ふすまタブレット×10
8:砂糖   9:粉末コーヒー




【PASTO DELLA SERA(夕方の食事)】
1:PASTA E FAGIOLI(パスタと豆)   2:サバのオイル漬け
3:果物と穀物のバー×2   4:BISCOTTO DOLCE(ビスケット)
6:紙ナプキン&カトラリー   7:粉末コーヒー   8:砂糖×2






 


       まずは朝食です。ボール紙で出来た箱を開けると、中からはいろいろ沢山出て来ました。内容物の半分以上
      は固形燃料簡易ストーブ、紙ナプキン、歯ブラシ、爪楊枝、浄水剤等で、実際に朝食として用意された食品
      は意外と少ないですね。
       折り畳まれた紙袋も3つ出て来ましたが、これは食べ終えた後のゴミを片づけるものかな?固形燃料ストー
      ブはかなり頑丈な造り
で、これを一日だけで使い捨てるのはちょっと勿体ない位。


       まずは『BISCOTTO DOLCE』を開封。銀色ギラギラのパッケージの中からは、50×60mm大のビスケ
      ットが6枚
出て来ました。一枚齧ってみると、おお、これは美味しいなあ。口当たりはサクサクと軽やかで、
      甘さも控えめで上品な味わい。うーん、これは今まで食べた戦闘糧食のビスケットの中でも屈指の出来栄えで
      すね。


       続いて『LATTE INTERO CONCENTRATO ZUCCHERATO』。直訳すると甘くして集められるミルク
      出ましたが、要は練乳の事ですね。しかしこの歯磨き粉みたいな練乳チューブが100gと結構なボリューム
      で、甘いものが苦手な私は閉口してしまいます。鶏卵1コが概ね60〜70gなので、その量を想像頂けるで
      しょうか。うーん、これを一日で食べるのか・・・。
       とりあえずキャップ尖端の突起でチューブの口に穴を開けます。ん?なんじゃこりゃ?茶色いドロドロした
      クリーム
が出て来ましたよ。腐ってるのかな?と思いつつちょっと舐めてみますが、んー、大丈夫っぽいな。
      味は意外とあっさりで、ねっとりした甘さながらも舌の上でさらりと溶ける感じ。うん、結構いけます。
       ビスケットの上にのせてみますが、見た目は練乳というよりマロンクリームみたい。しかしこの練乳が、
      スケットと非常によく合います。
この懐かしい風味、随分昔に食べた味だなあ…と思っていたら、ビスコの味
      にそっくりでした。
小さい頃に通った駄菓子屋の風景が甦ります。


       続いて『GELATINA』が2本。フルーツのピュレをゼラチンで固めて、グラニュー糖をまぶしたものかな。
      一つは『GUSTO FRAGOLA(イチゴ)』、もう一つは『GUSTO PESCA(釣りをする)』・・・釣り?
      のことやらさっぱりですが、とりあえずイチゴ味の方から食べてみましょう。
       あれ?意外に柔らかい口当たりです。もっとオブラートで包んだゼリーみたいなネッチリした食感かと思っ
      ていましたが、このもっちりかつサクサクの歯応えは何かに似ているなあ。あ、アレです、味は全然違います
      が、ヅケにしたマグロの赤身そっくりでした。
       しかしこれはハードな甘さだなあ。午前中の行動に備えて一気に血糖値を上げるという意味では十分理にか
      なっていますが、練乳に引き続いてのこの甘さには、正直ちょっとうんざりしてしまいます。


       もう一方の『GUSTO PESCA』。イチゴ味よりもほんの少し固めですが、これは一体何の味なんだろう。
      ほんの僅かにクセのあるこの風味は、アンズ・・・いや、桃
かな?意識を舌に集中して味わいますが、豊富に
      まぶされたグラニュー糖が邪魔をして、イマイチ何の果物なのか分かりません。
       ここで『CAFFE(コーヒー)』の小袋を開封。中からはインスタントのコーヒー粒がザラザラと出て来まし
      た。お湯の量がよく分からないので、適当にカップ一杯分位で見当をつけます。うん、ごく普通のインスタン
      トコーヒー
ですね。特に香りが高い訳でもありませんが、先程から甘味の往復ビンタを受けてダウン寸前の私
      には、この苦味が
丁度いい感じです。
       さらに甘味は続きます。『CIOCCOLATE(チョコレート)』は戦闘糧食には珍しい柔らかタイプで、食べて
      みるとごく普通のミルクチョコ。ほんの少しビターが効いていてまあ美味しいですが、正直ゼラチンバー2本
      の時点で胃がムカムカしているので、もう甘味は勘弁して下さいお願いしますと言いたい気分。一口だけ齧っ
      て、冷蔵庫に放り込みました。


       さて、このイタリア軍戦闘糧食は食品以外がとても充実していて、食後も忙しいです。まずは『爪楊枝』。
      
ああ、これは地味に有り難いですね。色違いのパッケージが3つ、ちゃんと三食分入っているのも好印象。ま
      たこのパッケージ、よく見ると『SAMURAI』と印刷されています。サムライ?日本刀でもイメージしている
      のでしょうか?そんなの怖くてホジホジできません。よく見ると鎧武者の小さなイラストも入っています。
       中からは爪楊枝が一本出て来ましたが、鉛筆の貧乏削りの如く両端を削ってある点に、アメリカみたいな合
      理主義精神を感じます。折角のイタリア軍戦闘糧食なんですから、数々の名車を生んだイタリアらしい凝った
      デザイン
にしてほしかったなあ。


       さらにこの戦闘糧食には、ご丁寧な事に『歯ブラシ』までついています。戦闘糧食に歯ブラシか・・・初め
      て見ました。長さ8cmほどの小さなものですが、柄の尖端が尖っているのは歯間ブラシとして使えという事
      でしょうか。興味津々で使ってみますが、このアールの角度が絶妙で、歯の裏側の食べカスもキレイにほじれ
      る
のがちょっと驚き。
       しかし肝心の歯ブラシ部分は粗末なもので、へにゃへにゃとしなってまるで使い物になりません。ブラシの
      ヘッドも植毛というより突起に近く、前辛うじて歯をコスれる程度。これでは奥歯は無理ですね。最初からヘ
      ッド部分についている歯磨き粉は一応ミントの香りを漂わせていますが、量が絶対的に足りません。まあ無い
      よりマシか・・・といった程度
でしょう。


       以上、朝食でした。ボリューム的には全然物足りませんが、何もここまでしなくてもと言いたくなる様な
      味の連続
で、正ギブアップというかもういいよというか・・・かなり堪えました。この朝食一食分で、私の
      甘味摂取量の半年分位ある
んじゃないかなあ。血糖値がぎゅんぎゅん上昇しているのが分かりますが、幾らな
      んでも朝からこれは無いなあ・・・重い疲労感が漂う食後でありました。 



  


       さて、続いては昼食です。朝昼夕に分かれたパックの中では昼食の箱が一番大きく、ずっしりとした重さが
      相当なボリュームを感じさせます。ワクワクしながら開封すると、でかい缶詰が3つとビスケットが2つ、あ
      とは粉末コーヒー。
しかしこれ、本当に一食分のメニューなの?朝食がかなり寂しいボリュームだっただけに、
      ちょっとビックリしてしまいます。


       まずは『Tortellini al ragu(肉のトルテリーニ)』の缶詰から。トルテリーニとはシート状の生地で具を包
      み、リング状に捻ったパスタの一種
であります。見た目は赤ちゃんの耳みたいで、方向性としては餃子に近い
      
ものがありますね。
       血の様な真っ赤なラベルには文字が印刷してあるだけで、かなりそっけない見た目。なんだか不安感をかき
      立てられます。イージーオープン方式のフタをパッカンして皿に空けると、竹輪状のトルテリーニが大量の真
      っ赤なスープと共にどっと出て来ました。


       まずはスープを一口。うん、見た目こそ凶悪な色ですが、トマトの旨みそのもののサラリとした爽やかな甘
      酸っぱさがいい感じ。
トルテリーニは若干ふやけ気味ではありますが、もっちりした生地に歯が食い込んでい
      く食感はなかなか。
米軍のMREにもチーズトルテリーニが採用されていますが、レトルトだったので妙に押
      し固められた汁気の少ない感じだったんですよね。あれはあれで意外と美味しかったのですが、パスタらしさ
      では流石に本場物の方が一枚上手
かもしれません。
       トルテリーニの中には細かい挽肉が入っていますが、量的にはごくわずかなので何の肉なのかはよく分かり
      ませんでした。

       しかしこの、軽やかなトマト風味が実に夏向けの味わいですね。この試食はまだ残暑の厳しい9月半ばに行
      っているので、一際美味しく感じます。スープの中にはトマトとタマネギが煮溶ける寸前の状態で入っていて、
      この甘酸っぱい味の屋台骨になっている模様。


       また、途中から意外に塩分が濃い事に気づきましたが、まあ戦闘糧食ですからね。おかげでほの甘く香ばし
      いビスケット
との相性が素晴らしく、両者のいい所をお互いに高め合っている様な気がします。
       最初はこんなに食べれないよと思いましたが、パスタに比べてスープの分量が意外に多く、結局一缶ぺろり
      と食べてしまいました。
       続いての缶詰は『Wurstel』。おそらくヴルスト(ソーセージ)の事でしょうか。振るとチャポチャポと水
      音がする缶詰を開けると、中からはスープ漬けになったソーセージが出て来ました。ちょっとくすんだピンク
      色
がなかなか美味しそうですが、ぱっと見がユムシっぽいんですよね・・・。釣りをする人ならお分かり頂け
      ると思いますが。あと、ちょん切った子供の○○○○にも見えて背筋が寒くなります。((((;゚Д゚))))ヒィィィィィィ


       40×20mmほどのずんぐりとしたソーセージが10本。独特のスモーキーフレイバーが漂い、なかなか
      美味しそう。さっそく一つ頂いてみましょう。
       ぱっちんぱっちんに張った見た目の割にソーセージはかなり柔らかく、軽くフォークで突いただけで簡単に
      刺さります。自衛隊戦闘糧食U型(旧タイプ)や米軍のMREにラインナップされていたソーセージと同じ、
      ケーシングの無いタイプですね。かなり塩味がきついですが、その後に豚肉の自然な甘味と旨みがジワリと舌
      の上に広がり、なかなか美味しいなあ。
       食感は昔よく食べた真っ赤なソーセージに近く、ボソボソながらも妙に滑らか。全体的にはフワフワと言っ
      てもいい位の柔らかさで、赤ちゃんの握力で握ったみたいなソーセージです。
       スープもいい味ですが、やっぱりかなり塩っぱいなあ。お湯で割って丁度位です。缶詰の原材料表示を見る
      と『ソーセージ、水、塩』としか書いてなかったので、スープ漬けというよりも水煮だった模様。


       『BISCOTTO CRACKER』は朝食と同じものが2つ封入されていました。甘さあっさりで香ばしいビスケッ
      ト
で、メイン缶の旨みをがっしりと受け止めています。
       『CAFFE(コーヒー)』も朝食のものと同じですが、組合せの妙なのかとても美味しく頂けました。かっ
      たりっぱかったりっぱかったりばしかったりと騒々しいまでに個性あふれる食品達を、その苦味で上手
      にまとめている
感じです。
       最後は『MACEDONIA DI FRUTTA(フルーツサラダ)』。いわゆるフルーツ缶ですが、これもなかなかあ
      っさり美味しく、甘味が苦手な私でもするりと食べる事が出来ました。ダイスカットの黄桃、パイン、ブドウ、
      洋梨
がほんのり甘いシロップに浸っていて、実に満足感があります。
       やや人工甘味料っぽい味ですが、甘めのスポーツドリンクから塩分を抜いたような味わいで、べったりした
      重い甘さではないのがいいなあ。缶のラベルには中に入っていなかったチェリーも描かれていますが、これは
      作った時期によって中身が微妙に異なるのかもしれません。

 
       結局ビスケット1パックとソーセージ5本を残してしまいましたが、もうお腹いっぱいです。味覚的にも満
      足度の高い、実に食べ応えのある昼食
でした。しかしイタリア人って、朝食はあんな程度で昼食をドカンと食
      べるのかな?何事も慌ただしい日本と違い、昼食はワインを味わいながら時間をかけて楽しむとは聞いていま
      したが、戦闘糧食にもそのあたりの食文化が色濃く反映されているのかもしれません。
       また、残念ながら今回のmodelo“C”には封入されていませんでしたが、別のメニューには何と食前酒のミニ
      ボトル
が入っているそうです。戦闘糧食にまで食前酒か・・・我が国の自衛隊ではちょっと考えられない事で
      すね。さすがイタリアだなあ。以上、大満足の昼食でした。


       おっと、昼食パックに入っていた2種類のサプリメントを忘れてました。まずは『ENERMIX』。イタリア
      語で書かれた説明書きを苦労しながら読むと、どうやらビタミンやミネラル類を補給する為のものだそうです。
      矢印アイコンみたいな10円玉大のタブレットで、口に入れてみるとほのかに甘いレモン風味。
       さっぱり味でなかなか美味しいですが、途中から口の中一杯にザラザラした粒子が広がってきました。そし
      て甘かったのは最初だけで、徐々に漢方薬っぽい妙な苦みが出てきたので慌てて飲み込みました。キャンディ
      ーみたいに口の中で転がすのではなく、薬感覚で飲み込む方が良さそうです。


       続いて『Compresse di crusca(ふすまのタブレット)』。フスマと言うと、戦後の食糧難時代に主食代わ
      りに食べていた小麦を製粉した際に出るカスの事ですね。恐らく繊維質補給のサプリメントなのでしょう。薬
      局の薬みたいなプラスチックのシートに入っていて、これもゴクリと飲み込むべきシロモノの様ですが、折角
      なのでちょっと味わってみます。
       一粒取り出して恐る恐る舌の上にのせ、ゆっくりと味わいます。うぐぐ、何じゃこりゃ・・・なんというか、
      まるで
湿った段ボール箱みたいな味です。ほのかにワラ半紙みたいな風味もあり、妙な苦みまで広がって来た
      ので慌てて飲み込みましたが、何とも言えない後味の悪さが口の中に残りました。しかしこれでもかと言わん
      ばかりの繊維っぽさ
は十分に感じられたので、恐らく体にはいいんだと思いますが、これもやっぱり素直に飲
      み込んだ方が良さそうでした。





       さて、最後はディナーです。先ずは紙箱に入った四角い缶詰から。パッケージのイタリア語を辞書で調べる
      と、どうやら青魚のフィレのオリーブオイル漬けの模様です。缶の取っ手をパッカンすると、中にはとろりと
      したオリーブオイルに浸された白身魚
が入っていました。身肉や骨の具合から察するに、どうやらサバっぽい
      
なあ。とりあえず一口頂いてみましょう。


       ほほう、食べ慣れたツナのスープ煮とは明らかに違う味。サバ自体に脂肪感は殆どなく、ツナ缶よりもしっ
      かりした塩味
がついていますが、オリーブオイルがその塩気を優しく包み込んでいるかのよう。
       サバ自体の味も実に濃厚ですが、意外とさっぱりしているのでぱくぱく食べる事が出来ます。ビスケットと
      の相性も良いのが嬉しいですね。これ、生タマネギのスライスイタリアンパセリといっしょにベーグルに挟
      んで食べたい
なあ。
       恐らく塩サバをオリーブオイルに漬けているんだと思いますが、この微妙な脂肪感の無さは、もしかして
      暖な地中海産のサバなんでしょうか。同じヨーロッパでもノルウェー辺りからの輸入サバだと、もっと青魚独
      特の脂肪の風味が楽しめるのですが。オリーブオイル漬けにするなら、こういうさっぱりした脂気の少ないサ
      バの方が合う
のかもしれません。
       それにしても、戦闘糧食でここまでモロに魚っぽいのは珍しいですね。自衛隊戦闘糧食も魚料理を多く採用
      している点で個性的ですが、やっぱりこの辺も国土の周囲を豊かな漁場に恵まれている、日本とイタリアの共
      通点
なのかもしれません。


       次は『Minestra di pasta e fagioli con brodo vegetable』という大きな円筒形の缶詰。直訳するとパスタ
      と豆の野菜スープ、
でしょうか。中はオレンジ色のスープで満たされていて、皿に空けるとキドニービーンズ
      
パスタがどばぁと出て来ました。パスタは直径9mm、チョロQのタイヤみたいでカワイイなあ。戦闘糧食
      らしからぬ
遊び心すら感じますが、これもイタリアならでは。先ずは一口行ってみましょう。
       トマトベース塩味を効かせたスープはなかなかの美味。甘味を押さえてトマトの酸味を強調しているので、
      見た目よりもグッと引き締まった大人の味になっています。パスタは唇で簡単に押し潰れるほど柔らかいので
      すが、缶詰ですからね。まあこんなもんでしょう。
       キドニービーンズも甘く柔らかく、全体的に刺激を抑えたホッとする味付けです。実に優しく食べ易い味わ
      いで、一日の疲れを癒す夕食としてはちょうどいい感じだなあ。とかく華やかな印象のあるイタリア料理です
      が、本場の家庭料理って結構こんな感じなのかもしれません。


       2本入ってる『BARRETTA 8000 FRUTTA』を開封すると、物差しみたいな薄平べったく茶色いエナジ
      ーバー
が出て来ました。干しイチヂクの様な甘酸っぱい香りが、ちょっと美味しそうですよ。しっとり湿って
      いるので少々歯にニチャつきますが、あっさりと爽やかな果実の甘味がなかなかイケます。
       それにしてもこの、いかにも穀物と果実といった自然な味わい・・・小さい頃に食べた様な記憶があるなあ
      と思ったら、東鳩のオールレーズンにそっくりでした。今も売ってるのかなあ、オールレーズン。


       『CAFFE』は、このメニューとの相性が一番良かったと思います。サバ缶のオイル風味、スープの塩味と酸
      味、エナジーバーの果実の甘味を上手い具合にまとめてくれて、程良い苦味であと口もさっぱり。私は和食党
      なので普段コーヒーというものを全く飲まない生活ですが、こうして海外の戦闘糧食を食べているとコーヒー
      も結構美味しいものだなあ・・・
と感じる事が多くなりましたね。
       個々の味が素晴らしく、全体的なバランスも整った非常に満足度の高い夕食でした。


       以上、イタリア軍戦闘糧食メニュー“C”の試食を終わります。缶詰主体でボリュームも満点、実に戦闘糧食
      らしい質実剛健さ
に溢れた魅力的な糧食でしたが、随所にイタリアらしい遊び心と言うか洒落っ気が垣間見え、
      同じEU圏でありながらドイツ軍やフランス軍の戦闘糧食とは大きく異なる雰囲気が楽しめました。歯ブラシ
      
爪楊枝などの小物も充実していて、内容の満足度ではフランス軍戦闘糧食と肩を並べるレベルだと言えるで
      しょう。

       ただ、フランス軍のものに比べるとどこか若々しいとっちらかった様な印象もありますが、それはそれで
      タリアらしい好感の持てる個性
だと思います。なんというか、洗練され切ってない魅力みたいなものを感じま
      すね。入手できる機会があれば、今度は是非食前酒付きのメニューを試食してみたいと思います。




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