期待に胸を膨らませつつ、温めたレトルトを開封してご飯にかけてまず一口。
んん?洗練されたパッケージのデザインとは裏腹に、どこか野暮ったい味わいですね。美味しい事は美味
しいのですが、この小麦粉と溶けたジャガイモが突出している風味が独特だなあ。
具はやや小さめにカットされた牛肉とジャガイモ、ニンジン、タマネギで、量は沢山入っているもののこのカ
ットの小ささで見た目の損をしている気がします。
しかし食べ進んでいて気がついたのですが、具のカットが小さいが故に、スプーンですくい上げた一口分の
カレーに全ての具が入ります。一口ごとの具の変化は楽しめませんが、艦内で大量のカレーを作って沢山の
水兵さんに均一に行きわたらせる事を考えると、この具のサイズは納得できる調理法ですね。隣のカレーは
お肉ごろごろなのに、俺のはジャガイモばっかりだよ(泣)!という悲劇は防げます。
![](GYKC8.jpg)
確かに大ぶりの具が堂々としているカレーは見た目も楽しいですが、大量生産大量消費という艦内事情を
考えると、このやや物足りなさを感じさせる具のサイズも、それはそれで理由あっての事なのでしょう。
また、具のカットが小さい方が、火の通りが早く調理に必要な時間も短く済みます。限られた予算と時間、
そして艦内という特殊な環境下でカレーを大量に作るとなると、おのずとお店で出す商品とは違ってくるのは
当然でしょう。
そういう意味では、海軍カレーとうたいながらもどこか他のレトルトカレーを過剰に意識したり、お店で出す
カレーに対抗意識を燃やしたりしている他のカレーに比べると、格段に海軍再現度の高いカレーだと思いま
す。
この一口目に感じた野暮ったさや具の小ささも、様々な誘惑を断ち切った上で海軍カレーの本道を突き進
もうとした勇気の産物と言えるでしょう。
![](GYKC9.jpg)
そもそも明治期のカレーって、こんな感じだったのではないでしょうか。今風のカレーを食べ慣れた舌に野
暮ったく感じるという事は、これこそが間違う事なきカレーの原点!と言えるのかもしれません。
とは言えこの野暮ったいカレー、福神漬と組み合わせると不思議と一本芯の通った味になります。福神漬
の甘辛さがこのぼんやり味のカレーと組み合わさり、まるでパズルの最後のピースがきっちり入った様な達
成感があります。
今どきの本格的なカレーでは軽視されがちな福神漬ですが、明治期のカレーではこんな重要な役割を果
たしていたんですね。最近タイのカレーだのマレーシアのカレーだのにうつつを抜かしている私としては、激
動の時代を生き抜いた会った事もないひい爺さんに、大和魂注入棒でドツかれたような気分でありました。
現代日本に咲き誇る様々なカレーをより一層美味しく頂くために、今一度日本のカレーの原点を確認すべ
きという考え方には頷かされるものがあります。海軍という枠をあえて作りながらも、結果的にその枠を大き
く飛び越えているところが、この魚藍亭よこすか海軍カレーの真骨頂でしょう。
温故知新、まさにこの一言に尽きる、美味しいカレーでありました。
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