まずは朝食です。湯煎で十分に温めた『STEAK VEG&POTATO』を開封すると、ゴロゴロとし
た牛肉が大量の野菜と一緒に転がり出て来ました。牛肉は大きな塊ですが、フォークで突くとホロホロと崩れ
る程に柔らかくなっています。野菜はダイスカットのジャガイモ、ニンジン、グリーンピース。見た目はステ
ーキと言うよりもビーフシチューみたいですね。
一口食べてみると、ほほう、ブラウンソースの味わいはまあまあ。しかし食べ進むにつれて、英国戦闘糧食
独特の“何かが足りない感”がひしひしと感じられてきます。前回のメニューCでも感じましたが、不味くはな
いけど決して美味しくもないと言うか…。レトルト臭も気になり、食べていても今ひとつ楽しくないんですよ
ねえ。
しかし味を変えようにも調味料の類は塩胡椒すら付いていないので、甚だ反則ではありますが自前の調味料
で味に変化をつけてみましょう。
醤油・・・意外に合いません。逆に変に生臭く感じます。
タバスコ・・・悪くはありませんが、何だかハズレのMREを食べている様な気がします。
塩・・・若干味は締まりましたが、レトルト臭は消えず。
胡椒・・・ああ、これが一番美味しくなりました。
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『VEGETABLE STOCK DRINK』のアルミ包装を開封すると、溶けかけのチョコレートみ
たいな妙な黒い塊が出て来ました。これを小ぶりのマグカップに入れて170mlのお湯を注ぐと、香辛料の
効いたビーフコンソメが出来上がり。なかなかどっしりした味わいで、実に美味しいスープです。しっかりし
た塩味のお陰で目が覚める様。
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『OATMEALBLOCK−S』は、いわゆるオートミールのクッキー。口当たりはサクサクとカリカリ
の中間で、いかにも繊維質を大量に摂取出来そうなモソモソ感が心強いなあ。グラニュー糖っぽい甘味が結構
きついですが、戦闘糧食の性格上、すぐエネルギーになり易い甘味を重視するのは当然でしょう。甘味が全然
入っていない戦闘糧食って、世界を見渡しても自衛隊ぐらいじゃないかなあ。もっとも主食であるお米が糖質
の塊なので、問題ないと言えばそうなんでしょうけど。
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最後は『INSTANT COFFEE』で締めます。苦みも程々で、口の中の甘ったるさやレトルト臭が
爽やかに洗い流されるのがいいですねえ。私は普段からコーヒーを全然飲まないんですが、戦闘糧食の試食の
後は結構美味しく感じられる気がするなあ。あと、粉末ミルクは『BEVERAGE WHITENER』と
書いてありました。何だか絵の具や修正液みたいですね。
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味はまあともかく(笑)、朝食としてのカロリーは十分でしょう。ボリュームもあってすっかり満腹ですが、
野菜が多かったせいか意外とお腹は軽い感じです。このあと体を使うには丁度いい具合な気がしました。
さて昼食です。『LEMON POWDER』のパッケージには1Lの水で溶かすように書いてありますが、
レモネードみたいなものかな?開封すると、この手の飲み物にありがちな入浴剤みたいなニオイがします。大
丈夫かなコレ・・・と思いながら水に溶かすと、おお、レモン果汁に近い少し濁った色合いです。
飲んでみるとやや粉っぽい感じがしますが、酸味の効いた爽やかなレモネード。甘味も抑え気味で、うん、
これはなかなか美味しいですよ。肉料理等のしつこい味の後に良く合いそうですね。
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もう一つのドリンクは『DRINKING CHOCOLATE MIX』。いわゆるホットチョコレート
ですが、パッケージには1パイントのお湯を加えろと書いてあります。1ぱいんと?馴染みのない単位なので
慌てて調べると、568mlとの事。えええええ、そんなにココアを飲むの?幾らなんでも多すぎないかなあ。
今ひとつ釈然としないまままずは少量のお湯で良く練り、滑らかなペースト状になった所で残りのお湯で伸
ばします。うーん、これ、丼一杯位ありますよ・・・。
しかし飲んでみると、これがなかなか美味しいココアでした。MREのココアを軽くしてちょっと甘味を足
した様な感じで、寒い日の午後なんかには丁度良さそう。この上品な甘さが英国王室御用達と言った感じです
ね。しかし、いくらなんでも一度にこの量はないよなあ。大きめのマグカップでも優に三杯分はあります。
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メインは『RICE PUDDING』ですが、食事というよりもデザートだよなあ、これ。でも三食分で
レトルトが三つという事は、朝昼晩のうち一食はコレを食べる事になるんでしょう。ちなみにメニューCには
フルーツダンプリングという正体不明なシロモノが入っていましたが・・・と不安を覚えながら開封すると、
な、何じゃこれは・・・真っ白な雑炊と言うか、離乳食みたいなモノがでろでろと出て来ました。ほのかに甘
ったるい香りが漂い、かなり不気味です。
一口食べてみますが、うむむ、見た目以上に『何じゃこれは・・・』な味です。もったりとした甘ミルク味
のリゾット・・・?お米をコンデンスミルクと牛乳、ココナッツミルクで煮込んだような、何かこう一口食べ
た後に「ウェッ」と来る味です。
個人的にはちょっと勘弁してほしい味ですが、慣れるとこれはこれで美味しいのかも・・・と自分に言い聞
かせつつ食べ進みますが、やっぱり「ウェッ」。
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激しい拒否反応を起こす舌を無理矢理納得させながら食べますが、今度は食道から胃にかけてが大混乱を起
こし、やっぱり「ウェッ」・・・。塩や胡椒、タバスコ達の力を借りるべきかとも思いましたが、その味を想
像しただけでまたしても熱い何かが胃袋からこみ上げて来ます。なんとか食べきりましたが、正直言って今食
べた物を忘れたい気持ちで一杯でした。
額に浮かんだ汗を拭いつつ、『TURKEY&HERBS』の缶を開けます。以前はさほど美味しいとも思
えなかった七面鳥のペーストですが、今回はさっきのライスプディングのお陰で美味しく頂く事が出来ました。
ねっとりしながらもボソボソという斬新な口当たりですが、程良い塩気が有り難いなあ。なんだか「あの
男の事を忘れさせてっ!」という変な気持になってしまいました。
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ライスプディングの異様な後味を七面鳥ペーストの塩気でなんとか和らげた所に、先程のレモネードで口の
中をさっぱりさせます。火事を鎮火させた時の消防士さんの気分って、こんな感じなのかもしれません。
『BISCUITSBROWN−S』は、相変わらずの素朴な味わい。甘さは控えめで、じっくりと噛んで
いると全粒麦のほのかな甘味と香りが口の中に広がるのがいいですね。定期券を一回り大きくしたサイズです
が、豊富な繊維っぽさと程良い歯応えのお陰で見た目以上にボリュームがあります。先程の七面鳥ペーストを
塗りつけるとちょっとしたオードブル風になり、塩味と甘味、ねっとりとボソボソとサクサクが合わさってと
ても豊かな味わいが楽しめます。
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それにしてもライスプディングに尽きますね、この昼食は。先入観を捨てて純粋にその味わいを探ってみま
したが、やはりこみ上げてくる「ウェッ」は最後まで続きました。栄養補給の筈なのに、食べ終わった後の方
がぐったりとしてしまう体たらくでありました。
それでは夕食です。メインのレトルトを温めている間に、『TOMATO AND BEEF』のスープを
作りましょう。パッケージの中の粉末を300mlのお湯で溶かすと、赤だしの味噌汁みたいなものが出来ま
した。一口飲むと、うーん、ビーフシチューから肉のコクを抜いて酸味を足した様な・・・?
ややクセがあり塩気もきついですが、これはこれでちゃんとトマト風味でなかなか美味しいですね。今回の
試食は10月末の寒い倉庫の中で行っているのですが、適度についたトロミがいい具合に体を温めてくれます。
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湯煎で十分に温めた『BEEF BURGER』を開封すると、大量の白いんげん豆と一緒にゴロリとした
ハンバーグが出て来ました。ぱっと見はそう大きくありませんが、よく見るとかなりぶ厚いですね。大きめの
鶏卵を軽く押しつぶしたぐらいのサイズで、これは食べ応えがありそう。
うん、挽肉のジューシーさはありませんが、これはハンバーグそのもの。ツナギは殆ど感じられず口当たり
はボソボソですが、牛赤身の美味さはちゃんと残っています。
しかしこの、妙に甘ったるい味わいが気になるなあ。確かにトマトソースですが、なんというかケチャップ
に砂糖を入れて牛乳を足した様な、子ちゃまっぽい味つけ。あ、良く考えたらこれって、メニューCに入って
いたソーセージと豆の煮込みにそっくりな味です。という事は、これってイギリスではよくある味覚なんでし
ょうか。
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私は豆料理が大好きなので、たっぷりの白いんげん豆は嬉しいのですが、このもったりと重い甘さがちょっ
としんどいなあ。そして、やっぱりこう何かもう一つ足りない味ですね。塩胡椒やタバスコの一振りでグッと
味が締まると思いますが、この辺りは実にイギリス料理らしいと言わざるを得ません。
あと、煮込む野菜が白いんげん豆だけと言うのも寂しい気がします。朝と被りますが、ニンジンやジャガイ
モが入ってもいいのに。この辺も質実剛健なイギリス料理らしさなんだろうなあ。
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『BISCUITS FRUIT−S』ですが、これは相変わらずの美味しさですね。流石にティータイム
のお国らしい、香りの高い上品な味わいのフルーツビスケット。ただ、美味しいビスケットが糧食に向いてい
るかと言うとこれはまた別問題でして、お茶と一緒につまむならまだしも、これをご飯感覚で頂くのは副食と
のバランスが悪い気がします。
MREのクラッカーやドイツ軍戦闘糧食のクッキーみたいに、僅かな塩気と小麦の素朴な味だけの方が、副
食の味を引き立てると思いますね。まあこれは、主食と副食を完全に分けて考える日本人ならではの感覚なの
でしょう。欧米では両者の線引きは曖昧だと聞いた事がありますし。
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以上、夕食でした。甘酸っぱい味が重なったメニュー構成でしたが、これは私の組合せミスですね。それに
しても、やっぱり塩胡椒やタバスコは欲しいところだなあ。イギリス軍では調味料は兵隊さんの自前なんでし
ょうか。
あと同じハンバーグでも、自衛隊戦闘糧食の醤油味の和風ハンバーグとはこうも違うのかと驚かされました。
まあ自衛隊のハンバーグではあの上品な甘さのクッキーには合わないでしょうし、今回のハンバーグで白飯は
ちょっと勘弁だなあ。そう思うと、同じ料理でもそれぞれの食文化の中に組み込まれると、全然違ってくるん
ですねえ。つくづく世界の戦闘糧食グルメは面白い!と思いました。
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あと、オマケの間食です。
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『INSTANT WHITE TEA』の粉末をカップ一杯のお湯で溶かすと、ミルクティーの出来上が
り。おお!流石は紅茶の国の味!・・・という感動はまったくない、ごくごく普通の香りの立たないインスタ
ント紅茶でした。勝手な期待とは言え、なんだかガックリです。
『MILK CHOCOLATE』は民生品でした。メニューCのものとはパッケージが違うので別モノか
と思いましたが、形も味も全く同じ程良い甘さのミルクチョコ。そして何なんでしょうか、この独特の食感は。
溶けにくくする為かかなり固いのですが、マカデミアナッツみたいな口当たりがなんとも変な感じです。
『BOILD SWEETS』は、いわゆるフルーツキャンディ。色とりどりのカラフルなキャンディが合
計12粒入っていましたが、何というか砂糖そのまんまの甘さで、味や香りにもうちょっと工夫があればいい
のに・・・と思いました。
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