まずは朝食。メイン缶詰はSAUMON RIZ LEGUMESを選びます。フランス語は何がなんやら
さっぱりですが、苦労して仏和辞典で調べたところサーモン・米・野菜という意味でした。RIZと言うのは
リゾットの事でしょうか?しかし、調理法のリゾットという意味はなさそうですが・・・。
とにかく湯煎にかけましょう。本来は簡易ストーブと固形燃料を使用して温めるのですが、今回は室内なの
でストーブとコッフェルで代用します。
EO式のプルトップを引き上げると、ニンジンの赤も色鮮やかな炊き込みごはんっぽいものが入っていまし
た。熱々の湯気と共にサーモンの香りが立ち上って、食欲をそそられるなあ。しかしこのニンジン、スーパー
で売っている様なオレンジっぽい色合いではなく、パプリカかと見間違えるような真っ赤なニンジンです。深
緑のは何だろう、ズッキーニかな?椎茸っぽいものも見えますね。
スプーンで軽く中をほぐしてみると、でかいサーモンの塊が出て来ました。よく見ると四角い缶詰の下半分
が全部サーモンで、その上に野菜のご飯がのせてある状態。サーモンステーキ 季節の野菜のリゾット添えと
でも言うべきシロモノでしょうか。
取り敢えず熱々のうちに一口。おお、美味しい!軽そうな見た目を裏切って、かなり濃厚かつ重厚な、しっ
かりどっしりした味わいです。サーモンフィレ自体はあっさりと脂気の少ない軽い味ですが、このリゾットが
サーモンの旨みと脂肪分、野菜のジュースをしっかりと受け止めて、実に豊かな味わいになっています。うー
ん、これが戦闘糧食なのか・・・。
半分ほど食べ進んだところで少し口当たりが重く感じられたので、アクセサリーパケットの塩胡椒をひと振
り。うん、こっちの方が美味しいですね。もったりと重厚な味わいに、ピンと一本芯が入った様な感じになり
ました。
米は流石にアルデンテという訳には行きませんが、決してフニャけたような仕上がりではなく十分に美味し
く頂けました。いや、本当に美味かったです。
BARRE COMMANDOを開封すると、外側を白いキャラメル風の生地でコーティングした、小ぶり
なカロリーメイトみたいなのが出て来ました。食べてみるとみっしりとした歯応えの極甘エナジーバーでした。
しかしこれ、強烈な甘さだなあ。一本で相当なカロリーがありそう。
粉末コーヒーは何故か2種類入っていましたが、朝食にはネスカフェのスティックタイプをチョイス。苦み
が強く香りはあまり感じられませんでしたが、エナジーバーの甘味が強烈なので砂糖なしで丁度いい位です。
メイン缶の濃厚な味わいの後ですし、これ位シンプルに苦みを利かせたコーヒーの方が合うかもしれませんね。
クラッカーは、プレーンとチョコの2種類。プレーンはほのかな甘味と塩味が絶妙なバランスで、戦闘糧食
というより輸入ものの上等なお菓子の様。一口齧ると上品な甘さが感じられ、僅かな塩気が舌をさっぱりさせ
てくれます。
チョコの方は甘さ控えめながらもカカオの香りが高く、これも実に美味しい。イギリス軍のビスケットもフ
ルーティーで美味でしたが、こちらの方がぐっと洗練された味わいです。
CHOCOLAT LACTE。これは粉末ココアでした。適当な量の湯で溶かしてみると、美味しいホッ
トチョコの出来上がり。うーん、意外にも直線的で若々しい味ですね。米軍のMREに入っていたココアは上
品でふくらみのある味でしたが、この辺りはお互いの国のイメージと正反対で面白いなあ。
以上、朝食でした。どれをとっても戦闘糧食とは思えないほど質が高く、さすが美味と名高いフランス軍戦
闘糧食ですね。クラッカーは歯応えがあって十分噛む必要があるため、実際の量以上に食べた満足感がありま
した。とは言え消化吸収がよく胃腸への負担が少なそうな食品ばかりだったので、いつまでも満腹感が続いて
動き辛くはなさそう。うーん、お見事!の一言に尽きる朝食でした。
それでは昼食、まずはPOTAGE AROMATISE POISSINSから行ってみましょう。和訳
すると魚のポタージュですが、パッケージを開封してシエラカップに空け、説明書き通りに250mlの熱湯
を注いでかき混ぜます。少々ダマになりましたが、何だか味噌汁みたいな色のスープが出来上がり。
一口すすると、かつお出汁とコンソメを合わせた様な不思議な味わいですね。ほのかにハーブっぽい香りも
あり、なかなか美味しいなあ。思いのほか塩味が強いのですが、これは発汗で失われる塩分を考えての事でし
ょう。しっかりとしたトロミがあり、体の中からじんわりと温まる感じがいいですね。
改めてパッケージを見てみると、大きな鍋とスプーン、トマト、ニンジン、そして何故かイルカのイラスト
が。イルカ出汁・・・?な訳はないか。
次はNOUGAT AUX FRUITS。フルーツ風味のヌガーバーでしょうか。甘味の苦手な私はちょ
っと構えつつ、アルミギラギラのパッケージを開封。真っ白なヌガーバーに色とりどりのドライフルーツが散
りばめられていて、何だか眺めているだけで血糖値がぎゅんぎゅん上がって行きそう・・・。とにかく食べて
みましょう。
うーん、固い!エポキシパテの塊を冷蔵庫に入れておいた様な歯応えで、これは差し歯の人には向いてませ
んね。苦労してひとかけら齧りとりましたが、舌を襲う猛烈な甘味に頭がクラクラしてきました。この舌にヒ
リつく甘味が悪い意味でたまりません。食後に飲むつもりだったコーヒーを慌てて作ります。
この糧食には2種類の粉末コーヒーが合計5つ入っていましたが、SAFORと書かれたこのコーヒーは、
朝飲んだネスレのものよりも香りが高い気がしました。ああ、口の中で暴れていたヘビーな甘味をさっぱりさ
せてくれます。そう言えば角砂糖がいていましたね。試しに一つ入れてみましょう。
角砂糖は一つずつ紙で包装され、なんだか可愛らしいなあ。表にはスリッパみたいな顔をした人が描かれて
いますが、小学生が左手でかいたような、妙な味わいのあるイラストです。しかし角砂糖なんて久しぶりに見
たなあ。今となっては逆にお洒落に見えますね、角砂糖。
Rillettes de SAUMONは、サーモンパテの缶詰です。これが思いのほかジューシーで、
ねっとりクリーミーな味わいの中にもフレーク状の食感が残っていて、サーモンの香り高い脂肪分の味わいも
損なわれず実に美味。ナイフで削ってプレーンタイプのクラッカーにのせて食べましたが、一体これのどこが
戦闘糧食なんだろう・・・レベル高すぎです。
これにブラックオリーブのスライスやイタリアンパセリでも散らせば立派なオードブルです。うーん、イタ
リア軍戦闘糧食なら、ここで食前酒が出てくるんだけどなあ(笑)。
暖かいスープとサーモンパテ、6枚のクラッカーで十分満足のいくリッチな味わいが楽しめました。
おっと、もうひとつ缶詰が残っているのを忘れていました。gateau de Riz。お米を使ったお
菓子の模様です。これもネスレ社の民生品で、缶の側面にはスクランブルエッグにキャラメルソースをかけた
様なイメージ画像がありました。蓋を開けると甘い香りが柔らかに漂ってきます。
一口食べると、うーん・・・プリンにお米が入ってる・・・。断面を見るとプリンの中に蓮コラの如く米粒
が入っていて、神経質な人なら背筋に悪寒が走りそうなビジュアルですね。
しかし味の方はいたってマトモで、キャラメルソースの濃密な香りをまといつつ、舌の上でさらりと溶ける
様な甘味がなかなか。いや、なかなかどころか甘味の苦手な私でも「おお、美味い!」と呟いてしまったので
すから、これは大したものでしょう。
正直プリンの中のお米には抵抗を憶えましたが、意外と違和感なくするりと食べてしまいました。中の米は
ジャポニカ種に近い丸くて粘り気のある米ですが、噛みしめていると大麦のようなねっちりした歯ごたえ。お
米ではなく得体の知れない何かが入っているプリンだと思えば、抵抗感もなくなるかもしれません。いや、そ
れはそれで嫌だなあ。
間食は2品、まずはキャラメルからいってみましょう。小さな紙箱に入っているキャラメルは、市販のもの
と比べて随分粒が大きいですね。例によってかなり甘味が強いですが、上品な香りがあってなかなか美味しい
なあ。それにしても、フランス人は小柄なのに口がでかいのかなあ。粒が大きくて、口の中で持て余してしま
いました。
次はガム。フランス軍の糧食なのに、パッケージには何故かHORRYWOODと書いてあります。てっき
り粒ガムかと思ったら、中からは板ガムが7枚出て来ました。味は甘味控えめのかなり強烈なミントフレーバ
ーで、何だか歯磨きをしている気分。ほのかに漂うアンモニア臭が小学校のトイレに入っていたきついニオイ
の玉ころを連想させ、ちょっとトホホな気分でした。
さて、最後はディナー。今回は付属の固形燃料と簡易ストーブキットを使い、メイン缶を温めてみます。パ
ッケージのフランス語は全く理解不能ですが、分かりやすいイラストが描かれているので問題なくストーブを
組み上げる事が出来ました。型抜きされた金属板の四隅を折り曲げるだけなんですが、これはよく出来ていま
すね。金属板自体は薄っぺらいものの、見た目よりもしっかりした造りです。固形燃料に点火するとオレンジ
色の炎が上がりました。
さて、これメイン缶のTAJINE DAGNEAUを温めます。しばらくすると、缶の真ん中あたりがく
つくつと沸き立ってきました。全体に熱が回るように何度かそっとかき混ぜ、5分程で燃焼終了。湯気がもう
もうと上がり、何とも言えないいい香りが漂います。
見た所ジャガイモとニンジン、羊肉をしっかりと煮込んだ料理の様で、直火で温めるせいかスープがほど良
く煮詰まり、とろりとした見た目が実に美味しそう。ジャガイモは全部まん丸にカットされてあり、本当に食
にこだわっているんですね、フランス軍は。
とにかく一口。おおお!美味いよこれ!ジャガイモもニンジンも羊肉の旨みをたっぷりと吸い込みながらも
自分の持ち味を十分残していて、口の中でほどける程に煮込まれた羊肉も実に美味!これ、本当に戦闘糧食な
の?と疑ってしまうレベルです。
メイン缶は300gとボリュームたっぷり。途中で残っていた黒胡椒をかけてみましたが、じんわりと舌に
浸み込む様な味わいがぐっと引き締まり、これまた驚きの美味であります。
夢中になって食べ進んでいくと、缶の底の方にオコゲを発見。野菜とスープが直火で焼かれて焦げてしまっ
た様ですが、これがまた香ばしくて、スプーンで必死に削り取って頂きました。
いやあ、これが湯煎で温めていたなら、こんな素晴らしい味にはならなかっただろうなあ。加熱済みの缶詰
ですから室温のまま食べても全く問題ない筈ですが、それでも手間とコストを度外視して固形燃料ストーブを
入れてしまったフランス軍の糧食へのこだわりは、ただただ賞賛するしかありません。本当に一気に平らげて
しまいました。
思い出したかのようにLAIT ECREME EN POUDERを開封。粉末ミルクとの事ですが、微
妙にグリーンがかった白い粉末が出て来ました。いわゆる脱脂粉乳という奴でしょうか。説明書きに湯量の表
示が見当たらなかったので、適当な量のお湯で溶かしてみます。
おお、何だこれ、本当の牛乳みたいですよ。表面にタンパク質らしい膜が張っているのもホットミルクその
もの。恐る恐る飲んでみると、うーん、コクの無い水っぽいぎうにう・・・。ちょっと薄すぎたかな?確かに
牛乳ですが、明らかに牛乳ではない何かの出来上がりです。
しかしこのインチキミルク、別に作った粉末コーヒーに足してカフェオレにしてみると、かなり美味しくな
りました。ああ、最初から粉ミルクとしてコーヒーに入れれば良かったのか?
この苦し紛れカフェオレでチョコタイプのビスケットを齧ると、これまたシンプルでありながら奥深い味わ
いで本当に美味しい・・・何と言うか、他国の糧食に比べると豊かさが格段に違いますね。全くもって流石と
しか言い様がありません。
あと、最後はチョコレートです。戦闘糧食らしからぬソフトタイプのチョコレートで、これも当たり前みた
いに美味しいなあ。もうここまで来たら驚きませんよ、本当に。苦味と甘味のバランスが素晴らしく、馥郁た
る香りが口の中いっぱいに広がります。何度も言いますが、本当に戦闘糧食なの?これ・・・。
と言う訳で、フランス軍戦闘糧食の試食を終了です。巷で(ものすごく狭いチマタですが)騒がれている様
に、確かに戦闘糧食の最高峰という名に恥じない素晴らしく満足度の高い味わいでありました。
それにしても、簡易ストーブキットはかなりのスグレモノでしたね。『ここまでやって、初めて俺たち
は満足するんだよ!』と言うフランス軍兵士たちの高慢ちきかつ誇り高そうな顔が、糧食の向こうに見える
様です。
兵隊は美味いメシを喰わせないと働かないとは言いますが、機会があればぜひ他のメニューも試してみたい
と思いました。
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