掃海艇えのしまカレー
さて今回は、横須賀海自カレーシリーズ『掃海艇えのしまカレー』です。微かなグラデーションを見せる群
青色のパッケージは、同シリーズ共通のデザイン。いかにも海自らしい色合いですね。掃海艇えのしまのバッ
クに浮かぶこんもりとした島影は、神奈川県の江の島でしょうか。以前江の島水族館へクラゲを見に行った時
にすぐ近くを通りましたが、なんかちょっと違うような・・・随分昔の事なので記憶もいい加減です。
パッケージ裏面には海自の金曜カレーに関する説明と、掃海艇えのしまから秘伝のレシピの提供を受けた横
須賀市内の飲食店『茶楽』さんの地図が描かれています。へー、掃海艇えのしまのカレーは挽き肉を使ったキ
ーマカレーなんですね。海自と組んでカレーで町興しを成功させている横須賀市ですが、市内の飲食店で出し
ている海自カレー巡りも一度やってみたいなあ。2泊3日なら結構な数を回れそうですが、体重がえらい事に
なりそう(笑)。
さて前置きはこれぐらいにして、レトルトを温めて試食です。ご飯を盛ったお皿にあけたえのしまカレーは、
表面上のデコボコが殆どないどこまでも平坦な見た目で、なるほど挽き肉ですね。それにしてもキーマカレー
って久しぶり・・・と思いつつ、まずは一口頂いてみます。
ほうほう、なるほど。これは確かに普通のカレーと随分趣が異なりますね。大きな具がゴロゴロしている普
通のカレーが個々の自我が確立した大人達による少数精鋭の仕事場だとすれば、このキーマカレーはまるで小
さな子供達がワイワイ騒いでいる幼稚園にいる様。スプーン一口ごとに、ああこれは挽き肉くん、これはニン
ジンちゃん、こちらはタマネギくん・・・と、元気いっぱいの小さな生命力が舌の上になだれ込んで来て、な
んだか保母さんになった気分。なるほど、これは普通のカレーにはない個性です。
カレーとしての味は、ごくマイルド。スパイスの辛さも香りもちゃんとありますが、挽き肉くんが提供する
旨味のまろやかさが全てを包み込んでいる感じですね。一口大カットの肉に比べて表面積がはるかに広いので、
同じ量でも外に出せる旨味濃度が段違いです。
その分、カレーの“顔”としての肉の存在感は薄れますが、どの料理でも主役として担ぎ出される事の多い牛
肉くんが、今回はあえて脇役に徹して、普段自分を下支えしてくれる野菜くん達を立てようとしているのでし
ょう。その懐の深さも大したものですが、例え脇役に収まっていても実力の高さは隠せないのは流石の一言に
尽きます。野菜くん達も
「やっぱり牛肉くんはすげーなー」
と驚嘆の声を上げている様。
とはいえ、この深く柔らかく豊かな旨味・・・果たして牛肉だけの力でしょうか。口の中に僅かに残る泡立
つ様なあと口、微かに感じられる乳くさくも馥郁たる味わい・・・乳製品の存在が見え隠れしている気がしま
す。パッケージの原材料表示を確認すると、果たしてチーズフードと書いてありました。ああなるほど、これ
はチーズの味わいか。自分で作るカレーには使う事のない食材なので、とっさに思いつきませんでした。
そう分かった上で改めて味わってみると、一口ごとにチーズの個性が明確に感じられる気がしますね。これ
はキーマカレーというよりも、挽き肉入りチーズカレーと言うべきかもなあ。両者が持つクセやアクを互いに
打ち消しあう相性の良さに、ちょっと驚いてしまいました。これならチーズが嫌いな隊員さんも、
「あれっ?これ、そんなに嫌な味じゃないぞ?チーズって結構おいしいかも・・・」
となるかもしれません。味覚が出来上がってしまった大人の好き嫌いを治すのは結構大変な事だと思います
が、このチーズを隠し味にしたカレーを作った隊員さんがニヤリと笑う瞬間がそれなんだろうなあ。すごいぞ
掃海艇えのしまの給養員!そのかわり変に腕を見込まれてしまい、人事異動のたびにチーズ嫌いな隊員さんば
かり送り込まれそうな気もしますが(笑)。
それにしても、チーズじゃなくてチーズフード?チーズの加工品の事でしょうか。もろに商品名は書けなか
ったので、チーズフードという名称でお茶を濁したのかもしれませんが、隠し味をあえてはっきりさせない事
でこのカレーの印象を一層ミステリアスに演出する意図だとしたら、たいした策士だと言えるでしょう。
いつもお世話になっている野菜くん達を引き立てようと、今回はあえて挽き肉となって脇役に回った牛肉く
ん。しかし突然やってきたチーズくんが、いいところを全部持って行きやがったぞチクショー!
「全くチーズの野郎にはかなわんな・・・(笑)」
という野菜くん達の苦笑いが見えるようです。いますよね、普段あまり寄り付かないのに飲み会の時だけち
ゃっかりやってきて、簡単に初対面の女の子と仲良くなってきっちりメールアドレス交換してる奴。チーズく
んって、きっとそんなキャラなんだと思います。それでも妙に憎めない性格なので、陰口を叩かれても本気で
嫌う人は誰もいない感じ。くそう、なんで俺はそんな風に生きられなかったんだ・・・。
例によって途中から違う話になってしまいましたが、このカレーの特筆すべきところは、これだけの旨味と
満足感を誇りながら一人前200gで僅か186kcalという点でしょう。てっきり250kcalぐらい
はあると思いましたが、意外とローカロリーなんだなあ。
とかく運動不足になりがちな海自の艦艇乗組員には有難いカレーですが、逆にキ〇ガイレベルの体力を要求
される水中処分員の人達は、これで体がもつのかな?足りない分はお代わりしたり、航空要員みたいに+αの
加給食がつくのかも。よし、次に掃海艇の一般公開に参加出来たらそのあたりも質問してみよう・・・と思い
つつ、大満足の試食を終えました。
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