クロアチア軍戦闘糧食
INDIVIDUALNI BORBENI OBROK 
TIP3



       今回はクロアチア軍戦闘糧食『INDIVIDUALINI BORBENI OBROK TIP3』
      す。クロアチアはアドリア海を挟んでイタリアの対岸に位置する、1991年にユーゴスラビアから独立した
      東欧の国
で、治安の良さと温暖な気候、美しい自然を生かして古くから観光業が盛んな国でもあります。人口
      450万人たらずの国に年間で実に900万人もの観光客がやって来る事からも、その人気の高さが伺えます
      ね。
       親しみやすく世話好きなクロアチア人の国民性もそれに一役買っていますが、内戦の末に独立を果たし
      いう成り立ち故か愛国心も強烈で、国際的なスポーツイベント等では、しばしば困ったちゃん的な存在になっ
      てしまう事も多い様です。
       クロアチアの食文化に関しては、地理的歴史的要因から周辺国(イタリア・オーストリア・トルコ・ハンガ
      リー)の影響
が大きく、クロアチアならではの味はある様で無いとの事。言わば「クロアチア料理というもの
      はこの世に存在せず、クロアチアに無い料理もこの世には存在しない」
状態だそうです。
       アドリア海沿岸からは新鮮な魚介類が、山岳部からは山の幸が、温暖で広大な平野部には穀倉地帯が広がっ
      ているため、非常に食材に恵まれた国でもあります。特産品である生ハムトリュフ等の高級食材(現地では
      激安)、ワイン乳製品は世界的に評価が高く、良質な養殖クロマグロの輸出に関しては日本は大のお得意さ
      ん
でもあるようです。
       前置きはこれ位にして、さっそく糧食を見て行きましょう。OD色の頑丈な樹脂パッケージの表面には、
      ロアチア語・英語・フランス語
の3ヶ国表記で『個人用戦闘糧食Type3 クロアチア共和国軍』と書かれてい
      るだけ。何とも素っ気ないというかシンプルというか、戦闘糧食らしい質実剛健な雰囲気を漂わせています。
       中からは、頑丈なボール紙で出来た箱が出てきました。22×18×10cmとなかなか立派なサイズで、
      ドイツ軍の戦闘糧食を一回り大きくした感じ
。なんとも重量感あふれる頼もしさが漂います。
       紙箱表面には樹脂パッケージと同じく3ヶ国表記の他に、賞味期限、保管時の注意事項、あと製造元らしき
      記載がありました。ちなみに入手した時点で賞味期限を2年ほどオーバーしていましたが、海外の戦闘糧食を
      食べていると、この辺の感覚がマヒして来ますね(笑)。2年オーバー?だいじょぶだいじょぶ!という感じ
      です。


       紙箱の中からは、意外とカラフルな食品類が出てきました。全体容積の半分近くを占める4つの缶詰はいず
      れも民生品らしく、あとこの迷彩柄のはクッキーかな?それ以外は不愛想なアルミパッケージを多用していて、
      なんだかスーパーで買った食品昔の宇宙食をごっちゃにしたみたい。
       ちなみに固形燃料加熱剤の類は入っていませんでした。クロアチアの兵士はストーブを個人携帯している
      のでしょうか。まあ一年を通して温暖な気候のクロアチアですから、缶詰めならそのまま食べても問題ないの
      でしょう。
       あと内容物を簡単に解説した説明書が入っていますが、こちらも3ヶ国表記という新設ぶり。そしてこの説
      明書が妙にお洒落な雰囲気
で、なんだか戦闘糧食とは思えないなあ。


       ちなみにこの試食を行うにあたってクロアチアの事を簡単に調べたのですが、それ以前の私の中のクロアチ
      アの印象としては、クロの部分から来る玄人っぽいイメージと、内戦の末に独立を勝ち取ったレジスタンス的
      なイメージ
しかありませんでした。なんというか、市街地戦闘慣れした地味でシブいオッサンみたいな印象?
      しかしこうして調べたり糧食を見ると、かなりの誤解というか偏見が混じっていますね(笑)。
       これからの朝昼夕3回の試食で、私の中のクロアチア観はどのように変化するのでしょうか?知らない国の
      知らないものを食べるというのは、ほんと面白いよなあ・・・
と思いつつ、食品群を朝昼夕に分けていきます。
      ちなみにそれぞれのメニューの指定はないので、分け方は適当です。



 


【内容】
1:クッキー   2:Pureci narezak(七面鳥のスライス)
3:CAJINA PASTETA(お茶のパテ)
4:GRAH S HAMBURGEROM(豆とベーコンの煮込み)
5:オイルサーディン    6:パイナップル  
7:パパイヤ    8:ビーフ風味のスープ
9:粉末レモンティー   10:粉末オレンジドリンク×2
11:ジンジャーブレッド   12:ウェットティッシュ×3
13:チョコレート    14:コーヒーキャンディ
15:ハチミツ×2    16:内容説明書


 




       それでは朝食です。まずはウェットティッシュで手を拭きますが、これがトイレの芳香剤みたいな強烈に安
      っぽい香り
で、いきなりゲンナリ気分にさせられます。乾いてもべたつく様な甘い香りが残ったままで、全然
      
きれいになった気がしません。普通のアルコールっぽい奴の方が、消毒にも使えて便利なんですけどねえ。
       気を取り直して、INSTANT NAPITAK S OKUSOM NARANCE(オレンジ風味のインスタント飲料)
      を開封。中からは入浴剤チックなキツイ香りの粉末が出てきました。これを300mlの冷水で溶かすと、淡
      いオレンジ色の飲み物が出来上がり。
       ほほう、やや粉っぽいニセモノ丸出しの味ですが、酸味の強い温州みかん風のテイストがイケますね。甘味
      はごく穏やかで、このしゅわしゅわした爽やかな酸味が微炭酸っぽい風味になってるのが面白い。昔の駄菓子
      屋の粉末ジュースをぐっと大人の味にした様な
、朝からぱっちり目が覚める感じがいいなあ。


       続いてはJuha s okusom govedine(ビーフ風味のスープ)。説明書にはお湯で溶かして2〜3分待て
      と書いてあります。すぐ飲めないの?と思いつつ開封すると、中からは粉々に砕けたインスタントラーメン
      ざらざらと出てきました。あー、スープというよりもヌードルだったのかこれ。まさかクロアチア軍の戦闘糧
      食で日本の誇るインスタントラーメンを見る事になるとは!これは面白いな。


       さっそくお湯を注いで3分待つと、実にいい香りのスープの出来上がり。一口飲むと、うーん、機内食で出
      てきそうな美味しいビーフコンソメです。指示通りの200mlのお湯だとかなり塩味がきつく感じますが、
      これはお湯の量で調節できますし、このはっきりした塩味が寝起きでぼんやりした頭をしゃきっとさせてく
      れそう。
       肝心のは底の方に沈んでいて、スプーンですくうとこんな感じ。長さはどれも5oぐらいなので、麺とい
      うより具
の感覚でしょうか。今風のつるつるした生麺仕立てではなく、駄菓子屋の30円カップめんみたいな
      チープな味わい。ビーフコンソメの本格的で重厚な味わいとは今一つ合わない気がしますが、この懐かしい面
      白さ
は個人的に好印象ですね。


       次はKEKS。いわゆるクッキーです。昔の陸自迷彩っぽいパッケージを開封すると、中からは薄いクッキー
      が27枚出てきました。とりあえず朝食として9枚頂きます。
       ほほう、なるほどなるほど。味付けはほんの僅かな塩味だけなので、穀物の素朴な味わいが楽しめます。ク
      ッキーというより乾パンに近い、食パンの耳みたいな味。余計な甘味がないので主食としての役割は十分に果
      たしてくれそう
です。
       同じEU圏ではイタリア軍イギリス軍のクッキーも質が高いですが、味付けがあるとどうしても合わない
      料理が出てきますからね。どの食品の邪魔もしないという意味では、非常に優秀な一品です。


       このクッキーには、CVJETNI ME(花のハチミツ)を合わせます。気温の低い時期に試食した所為か、中
      の一部が結晶化していましたが、なかなか美味しいハチミツですよ。スミレのハチミツの様な高貴な味わいに
      は程遠いものの、上品さよりも雑草の力強さを感じさせる風味。いい意味で無個性なクッキーや、酸味の強い
      オレンジドリンクとの相性も抜群です。


       さていよいよメインの缶詰、Pureci narezak(七面鳥のスライス)をいってみましょう。日本では殆ど馴
      染みのない食材ですが、どんな味なのかな?
       EO式のフタをパッカンすると、ん?スライスじゃなくて、猫缶みたいなパテになっています。それに不思
      議と懐かしいこの香り
、どこかで食べた気がするなあ。一口すくって口に入れると、んん〜?これ・・・魚肉
      ソーセージ?


       ふた口食べても、うーん、これどう考えても魚肉ソーセージそのものなんですけど・・・。今夜は七面鳥料
      理だよ!
と言われてワクワクしながら帰ってきたら、何故か魚肉ソーセージをそのまま出されてしまった様な
      何じゃこれ感・・・。
       拍子抜けした気分で魚肉ソ・・・いや七面鳥パテを食べますが、これひと缶でギョニソ5〜6本分はあるの
      で、途中から飽きてしまいます。とは言えクッキーとの相性はなかなかよろしく、米軍MREのクラッカーみ
      たいな相手を選ばない渋い仕事ぶりに助けられた感じ。
       そのまま食べても素朴で美味しいクッキーですが、誰かと組むと最高の引き立て役に徹してくれる・・・
      決してトップスターではありませんが、こういう縁の下の力持ちがいないとチームは纏まらないんですよね。
      いやはやお見事。


       最後はNANAS DUKATI(パイナップル)。パッケージを開封すると、ホタテ貝柱の干物みたいなものがざ
      らざらっと出て来ました。砂糖で覆われた表面が実に甘そうですが、口に含むとパイナップルの爽やかな甘酸
      っぱさ
が舌の上に広がります。ああこれ、パインの砂糖漬けだったのか。
       噛みしめてみるとパイナップル独特の繊維っぽさがあり、甘味はキツイですが結構美味しいなあ。疲労回復
      
即効性のあるエネルギー源としても優秀ですが、スープと七面鳥パテの強い塩味をなだめる効果もあり、全
      部ぺろりと平らげてしまいました。


       いやあ、なかなかの美味じゃないですか!インスタントラーメン&魚肉ソーセージはなんだか貧乏学生の夕
      食の如き内容
で、朝食としてはちょっと外したかという気もしますが、まあこれは私の組み合わせミスか。


       それにしても、まさかクロアチア軍戦闘糧食でこの両者に遭遇するとは思いませんでした。なんというか、
      休暇旅行で訪れたクロアチアの首都ザグレブの郊外
、ひと息つこうとアドリア海を見下ろせる高台にある洒落
      たカフェ
に入ったら、隣に住んでるおっさんが注文をとりに来た気分です。
       まあこれも、海外ものの戦闘糧食を試食する妙味のひとつですね(笑)。初っ端からいきなりやってくれた
      というか、実に面白い朝食でありました。



       続いては昼食です。まずはINSTANT CRNI CAJ S AROMOM LIMANA(レモンティー風味のインス
      タント飲料)を、300mlの冷水で溶かします。甘味の強いニセモノくさいレモンティーですが、マスカット
      を思わせる爽やかな酸味があって、インスタントのフレーバーティーとしてはかなり美味しい方。
       米軍のMREの粉末アイスティーには一歩及びませんが、紅茶風味の飲み物と割り切ってしまえば十分満足
      のいく出来だと思います。


       次はPAPRENJAK(ジンジャークッキー)。昔の宇宙食を彷彿とさせるアルミぎらぎらパッケージからは四
      角いクッキーが3枚出てきて、あたりに生姜糖っぽい甘辛い香りがぷんと漂います。さっそく一口齧ってみま
      すが、うーん・・・ショウガというより、シナモン八角を混ぜた様な不思議なチャイニーズテイスト
       味付けはかなりはっきりと甘く、食べていると確かにショウガ独特の辛味がじわじわと広がって来ます。同
      時に胃の辺りがほんのりと温かくなるようなこの感覚。
       正直それほど美味しいとは思えませんが、他の役者を輝かせる事を何よりも優先させていたKEKSのあり方
      
と比べると、とても対照的な二人に見えました。まあ、こういう個性があってもいいでしょう。ちなみに下画
      像の左側の3枚がジンジャークッキー。右の7枚がKEKSです。


       さて、いよいよメインのGRAH S HAMBURGEROM(豆とベーコン)の缶詰です。ちなみにこの缶詰、温
      めて食べるかそのまま食べるか少し悩みましたが、まずは室温そのままで食べてみる事にします。
       EO式のフタをパッカンすると、たっぷりのスープが見えますね。水分を少し取り除くとこんな感じ。ベーコ
      ンらしいスモーキーフレーバー
がぷんと漂い、ちょっと美味しそうですよ。


       メストレーにあけると、おお、大量の白いんげん豆の中に、ゴロゴロとしたベーコンの塊が幾つも入ってい
      ます。豚バラ肉独特の純白の脂肪層もあって、なんだか角煮みたい。カットのサイズが制限されるレトルトで
      はなかなか出せない、缶詰ならではの豪快な雰囲気に心が躍ります。
       というかこのベーコン、どう見ても缶のパッケージに写っているベーコンよりも遥かにでかいんですよね。
      パッケージよりも中身の方が美味しそうって、珍しい気がするなあ・・・。まずはひと口頂いてみます。
       ほほうなるほど、こう来たか・・・。あっさり&しっかりしたトマト風味に、ベーコンならではの熟成され
      た脂肪の旨味と香り
が溶け込んで、柔らかく煮込まれた白いんげん豆にもしっかりと味が染みています。塩味
      がやや強めですが、体を使う兵士の発汗を考慮するならこんなもんでしょう。
       そしてこの塩味がアドリア海から吹いてくる潮風をイメージさせ、豚肉&豆という内陸部の料理ながらも、
      海の幸にも山の幸にも恵まれたクロアチアの食文化の豊かさをも感じさせます。


       とはいえこれだけの量となると、塩味による喉の渇きが心配になりますが、基本的に国外に積極的に展開す
      る役割ではないクロアチア軍ですから、水の補給に関しては心配する必要はないのかもしれません。もしかし
      たら、日本同様に山岳部は水源に恵まれているのかも。
       ベーコンは舌先で軽く押し潰せるほど柔らかく煮込まれ、角煮をスモークした様な実に面白い味わい。脂肪
      分が口内の温度でとろける感じも上々ですし、いやこれ、ほんと美味しいですよ。保存食としての豚肉の旨味
      
がダイレクトに味わえます。見たところ市販品の様ですが、今度輸入食品店で探してみようかなあ。
       それにしても、室温のままではスープに浮いた固形脂肪がスプーンに絡みついて少し食べづらいですね。半
      分まで食べたところで残りをマグカップに移し、レンジアップしてみましょう。
       おお、先程まで分離していた脂肪分とスープが一体となり、ぐっと滑らかな味わいになりました。脂肪の旨
      味もより一層鮮やかになり、やはりこれは温めた方が美味しいなあ。一品の料理としてレストランで出ても不
      自然ではない、実に豊かな味わい。温める事で塩っぱさも若干抑えられ、より食べやすくなったのもいい感じ
      です。


       それにしても、この煮込みとKEKS(クッキー)の相性が実に素晴らしい!自己主張に乏しいクロアチア軍
      のクッキーですが、メニューの中の誰一人としてその実力を疑っていないというか、皆が全幅の信頼を寄せて
      いる
雰囲気が感じられます。まさに戦闘糧食のクッキーの鑑と言えるでしょう。
       ちなみにこれひと缶で400gもあるので、最後まで美味しく頂けるかどうか少し心配でしたが、結局一気
      に食べきってしまいました
。あまりに美味かったので、マグカップで温めたところを撮影するのを忘れてしま
      った位(笑)。ベーコンと豆、トマトの力強さを余すところなくひと缶にぎゅっと閉じ込めた、大満足のメイ
      ンディッシュ
でありました。


       さて、最後はPAPAJA、パパイヤの砂糖漬けです。アルミパックからザラザラと出て来たのは、ダイスカッ
      トされたパパイヤ粒。一粒口に入れてみると、かなりキツイ甘さですね。パパイヤっぽい風味はあるかないか
      で、殆ど砂糖の甘さに潰されている感じ。
       もう少し甘さを控えめにした方が美味しい気がしますが、カロリーの確保保存性を考えれば、これが正解
      なんでしょう。決して不味い訳ではないので、何日かかけてポチポチと食べる事にします。


       いやあ、実に美味しい昼食でした。他国の市販品をそのまんま取り込む事が多いEU圏の戦闘糧食ですが、
      このメイン缶は紛う事なきメイドインクロアチア様々な国のテイストを取り込んで洗練させた、まさにクロ
      アチアそのものの魅力
を感じましたね。
       メインのGRAH S HAMBURGEROM(豆とベーコン)の缶詰についてはやはり温めて食べる方が美味しい
      気がしましたが、室温のまま缶にスプーンを突っ込んで食べる方が、いかにも兵士の栄養補給という気分を味
      わえますね(笑)。レトルトとはまた違った、荒っぽく男くさい雰囲気が楽しめる気がします。
       ちなみに私は非喫煙者ですが、この食事の後の一服はさぞかし美味いだろうなあ・・・と感じさせられた昼
      食でありました。


       こちらはおやつ。Desertna cokolada、チョコレートです。戦闘糧食にありがちなパキパキカキカキした
      食感のハードチョコ
で、最初はまるでプラスチック片を口の中に入れた様な味気ない風味ですが、しばらくす
      ると口の中にじんわりとチョコの味が広がります。甘さ控えめのマイルドビターで、まあ可もなく不可もなく、
      といったところでありました。

       



       最後は夕食です。飲み物は朝と同じINSTANT NAPITAK S OKUSOM NARANCE(オレンジ風味のイ
      ンスタント飲料)を、300mlの冷水で溶かします。あっさりスッキリのオレンジ風味が食欲を刺激してくれ
      ますね。
       続いてはSARDINE(サーディン)。真夏のアドリア海を思わせるマリンブルーの缶が実に色鮮やかで、思
      わず見とれてしまいました。水兵服を着たセイウチ(トド?)もキュートですが、アドリア海にセイウチって
      いたっけ?


       開けようとするとプルトップがぱきんと折れてしまい、一瞬にて途方に暮れる羽目なってしまいましたが、
      鞄の中にアーミーナイフを入れていた事を思い出し、缶切りで無事開封する事ができました。いやあ、普段は
      全然使わないので忘れていましたが、ひとつ持っておくもんですね(笑)。
       小ぶりながらもまるまると太ったイワシが6尾、たっぷりのオイルに浸かっています。軽い塩味も効いてい
      て、うん、美味しいなあ。KEKS(クッキー)との相性も素晴らしく、イワシ独特の濃厚な旨味をしっかり受
      け止めると同時に、ほんのり塩味が穀物の底力を引っぱり出す感じ。
       いい意味での無個性が故にあらゆる食品を引き立ててくれる素晴らしいクッキーですが、こんな旨味を隠し
      持っていたとは・・・
。私もまだまだ分かってなかったな!と、すがすがしい負け方をした気分です。


       それにしてもこの、オイルサーディンとクッキーだけで一回分の食事が完成している様な満足感。この上な
      くシンプルでありながら、これ以上何もいらない組み合わせです。美食と贅沢の果てに行きついたのは、炊き
      たて白ご飯とイワシの丸干し
だった・・・みたいな感じでしょうか。
       次はCAJINA PASTETA(お茶のパテ)。お茶のパテ?なんだそりゃ。缶にはチーズの塊の上に乗せられた
      ティーセットのイラストがありますが、紅茶風味のチーズかな?ちょっと面白そうですよと思いつつ蓋をパッ
      カンしますが、んん〜?中に詰まっているのは、どろりんとしたピンク色の物体です。


       スプーンを突っ込むとかなり柔らかく、パテと言うよりペースト状。訝しがりながら一口食べてみますが、
      うん、これ・・・魚肉ソーセージだわ。ってか、お茶の香りもチーズの味も全然しないんですけど・・・。
       今さらながら原材料表示を見ると、『牛・豚・・・』と書いてありましたが、全くもって正体不明の実に怪
      しい缶詰です。蒸す前のすり身状の魚肉ソーセージって、こんな感じかなあ。
       口当たりは冷たくないソフトクリームみたいで、食べていると頭の中が混乱して来そう。なんというか、
      ッケージのイラストと中身が全然一致していません
。うーん・・・。


       とは言え味そのものは悪くありませんし、KEKSとの相性もなかなか。最初からこういうものだと分かって
      いれば十分美味しいと思いますが、なんだかタヌキに化かされた様な一品でありました。
       CVJETNI MED(花のハチミツ)は、これも朝食べたのと同じもの。素朴なKEKS(クッキー)と組んで
      にいい仕事
をしている感じでした。


       食後はKavabon。カバボン?元祖天才的な何か?と思いましたが、どうやらコーヒー味のキャンディー
      模様。一粒口に放り込むと、うーん、甘い。この強烈な甘さが以前MREで食べたトッツィーロールを思い出
      
させますが、こちらは甘さ以外に深炒りコーヒー豆らしい太い苦みが感じられ、これはこれで悪くない気がし
      ます。
       苦さと甘さがいい塩梅というか、確かブラジルのコーヒーってこんな感じなんでしたっけ?ちょっとひと息
      というより、飲むとユンケル的に元気になる感じ。好き嫌いの分かれる風味ではありますが、私的にこれはこ
      れでアリだなあ。


       昼食のGRAH S HAMBURGEROM(豆とベーコン)の様な、メインを張れる華のある主役が不在ではあり
      ましたが、名脇役のKEKS(クッキー)がその実力を遺憾なく発揮し、それぞれの持ち味を十分に引き出してく
      れた夕食でした。
       サーディンのオイル&青魚の旨味、訳の分からないパテの塩味、ハチミツの甘味、ドリンクの酸味。それら
      すべてが素材重視のKEKSを中心に展開し、指揮官不在の部隊をベテラン陸曹長がきっちりとまとめ上げた
      感じ
。果たすべき役割をわきまえたスーパーサブがいる集団は、やっぱり強いんだなあ・・・と痛感させられ
      た夕食でありました。


       以上、クロアチア軍戦闘糧食TIP3の試食を終わります。冒頭で挙げた『クロアチア料理というものはこ
      の世に存在せず、クロアチアに無い料理もこの世には存在しない』
という言葉の通り、独自性を感じさせる味
      は見当たらず、どの食品もいつかどこかで食べた様な内容でした。缶詰は魚肉ソーセージだし、スープはカッ
      プめんだし、豆とベーコンはテクスメクス風味だし、キャンディーはブラジリアンテイストだし。
       そいう言う意味では、クロアチアならではの味がなかったのが正直ちょっと残念ではありますが、それはこ
      の糧食を一方向からしか見ていない感想に過ぎず、やはりこれといった特徴が皆無なのがクロアチアの個性
      違いありません。宗教的な禁忌は別として、この糧食が味覚的に合わず食べることが出来ない・・・という人
      は殆どいないと思いますね。
       今回試食したTIP3以外のメニューも、様々な国のテイストが入り混じった万国博覧会的な内容なのかな
      あ。いや、万国博覧会と言うよりむしろ多国籍軍・・・地球連邦軍的な味わいを持つのがクロアチア軍戦闘糧
      食の真骨頂
なのかもしれません。
       高度な科学技術を持つ地球外生命体からの侵略をうけた人類が、各国の利害や主張の対立を乗り越えて一致
      団結して闘う局面において、様々な国から集結した兵士達の胃袋と舌を最も満足させる事が出来たのは、意外
      な事に
クロアチア軍の戦闘糧食だった・・・等と、変な妄想が広がった試食でありました。     




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