さて、まずは『即溶個体飲料』から行ってみましょう。何となく分からないでもない説明書きや主要成分表示を見ると、ど
うやらスポーツドリンクの類かな?しかしこれ、どこを見ても溶かす水の量が書いてありません。
とりあえず開封すると、中からは薄茶色の粉末がサラサラと出て来ました。鼻を近づけてみると、んん~、昆布の佃煮
に龍角散をまぶしたような、妙なニオイがします。よくわからないので250mll程の冷水で溶かしてみると、薄茶色い麦茶
の様な液体が出来上がりました。
恐る恐る飲んでみると、んん~、味的には…レモンティーに近いかな?ちょっと漢方薬っぽい風味もありますが、結構
さっぱりしていて飲みやすいです。紅茶ではなく、中国茶に砂糖とレモンを入れるとこんな感じかも。ちょっと味が薄い気
がしたので、水の量は200ml位がいいかもしれませんが、まあこの辺は好みでしょうか。
次は『05圧縮食品』。パッケージを開封すると、薄いセロハンに包まれた固い石鹸みたいなのが2つ出て来ました。表
面の包装をぺリぺリと剥がすと、うーん、何だこりゃ。プラスチック樹脂の塊の様ですが、爪でひっかくとぽろぽろと粉末
状になってこぼれ落ちます。匂いも特に感じられず、食品と言うよりも何かの“素材”って感じだなあ。
パッケージの裏には説明書きが印刷されていますが、『有熱水的条件下』『2~3倍的水混合』『高能粥』『口感更好』と
書いてある所から察するに、どうやら固形の乾燥粥でしょうか。このまま食べる事も出来そうですが、2~3倍の量の湯を
加えると更に美味しい、と言う事かな?
とりあえずそのまま齧ってみます。うーん、味はある様なない様な、実に茫洋とした風味。ほんの少し小麦と乳脂肪っぽ
い香りがあり、海自艦艇の救命筏に積載されているいわゆる『ガンバレ食』にそっくりですが、こちらは随分と口当たりが
悪く、文字通り砂を噛んでいる様な食感。口中にほんの僅かに漂うイースト臭が、かろうじて主食らしさを感じさせますが、
これを2つとも齧って食べると言うのはちょっとツラいかも。
と言う訳で、2倍の量のお湯をかけてみます。すぐに柔らかくなるのかと思いましたが、意外にもこの塊が強情な奴で、
スプーンでゴリゴリと削ってお湯に溶かさないといけません。しかししばらくすると、お湯の浸入に耐えきれなくなったかの
様に、急に柔らかくなりました。
で、出来たのは、何と言うか見た目は離乳食っぽい、もったりぼってりとしたドロドロの物体です。ほのかに甘酸っぱい
様な香りが立ち上り、毎年年末になると駅前や繁華街の道端に落ちている何かを想像させますね。
しかもよく見ると、固形物が水を吸収してぶちぶちぶちぶちと泡を立てています。うーん、何だか妖怪人間ベムのOPみ
たいだなあ…。水分を加えた事により、得体の知れない化学反応が起きているみたいにも見えます。
勇気を出して一口食べてみますが、うぐぐ、なんだこの微妙な味は・・・。不味くはないのですが、極めてビミョーな味とし
か言えません。何に似ているかと言われれば、長期間庫内に放置して冷凍焼けした食パンの白い所を、脂肪感の無い
牛乳でふやかして、そこにマッシュポテトの粉末をぶち込んで3日ほど寝かせた様な感じ・・・でしょうか。
必死にいいとこ探しをすれば、胃腸での消化吸収が良さそうな気がしますが、ちょっとこれはなあ・・・。我慢して固形の
まま食べた方がはるかにマシだったかもしれません。何と言うか、『ゲンナリ食』です。
次は『猪肉蛋巻』。EGG ROLLS WITH PORKとあるので、豚肉の卵巻き、とでも言えばいいのかな?レトルトパ
ックを開封すると、ハムと卵のくるくる巻きをスライスした様なシロモノが2枚出て来ました。ぱっと見はおせちに入ってい
る安物のテリーヌっぽいですね。さっきの粥に比べると、はるかに“料理”っぽくてホッとしました。
とりあえず一口。んん~?確かにハム・・・と卵・・・ではありますが、何なんでしょうこの違和感は。何と言うか、『明らか
に豚肉でないもの』と『明らかに卵でないもの』で作った合成食品というか、非常にニセモノ臭い食品です。30年ぐらい前
の子供向けSFまんがで、21世紀の人達は銀色のピチピチ全身タイツを着て光線銃を持ちながらこんなものを食べてい
るんだろうと想像するような、非常にケミカルでサイエンスフィクション臭溢れる一品になっています。
味自体はそう酷くはないのですが、このきつい塩味と溢れる化学調味料臭さのお陰で、何と言っていいのやら分からな
い味ですね。
『爽口榨菜』。英語表記ではTASTY TSATSAI、おいしいザーサイ、でしょうか。こちらは普通に販売されているザー
サイと殆ど変わらず、ちょっとホッとしました。油っ気やピリ辛は無く、塩気がしっかり残ったあっさり味のザーサイで、クキ
クキとした独特の食感が個性的。こちらもかなり化学調味料臭がキツイですが、先の2品に比べるとぐっと親しみやすい
味と言えます。
最後は『能量棒』。ぱっと見は何だか分からない字面ですが、ENERGY BERとあったのですぐに理解できました。中
からは茶色い栗まんじゅうみたいなシロモノが出て来て、ためしに割ってみると中は黒いフィリングでいっぱいです。ん~、
これもしかして、アンコかな?
私は甘いものが苦手なんですが、その中でも群を抜いて避け続けて来たのがアンコです。体質的なものなのかもしれ
ませんが、アンコを食べると胸やけがキツイんですよね。と言う訳で出来れば勘弁してほしかったのですが、身体に危
険が無さそうなら極力食べる、というのが、私の戦闘糧食に対する基本姿勢です。非常に気が重いのですが、とにかく
一口。
うううう、やっぱりアンコだ・・・。黒糖っぽい風味の、かなり甘いこしあんです。微妙に変わったニオイがしますが、長期
保存食と言う点を考えれば十分食用に耐える味だと思います。しかしキツイ甘味だなあ。手っ取り早くカロリーを補給す
るにはもってこいですが、一つ食べるのにかなり時間がかかってしまいました。
以上、中国人民解放軍戦闘糧食『06単兵即食食品 1』の試食を終わります。何と言うか、食べた後にドッと疲労感
が押し寄せて来る、すごく微妙な戦闘糧食でした。粥(なのか?)、ハムの卵巻き、ザーサイ、飲み物、饅頭・・・と、一見
して中国らしくまとまった戦闘糧食の様に見えますが、なんかもうそれぞれの悪い個性ばかりが前面に出て、久しぶり
につらい試食となりました。
不味いなら不味いなりに、「ヒィィィィ、何じゃこりゃ(笑)!」とちょいM的な倒錯したヨロコビを感じる事が出来るのが戦
闘糧食マニアの必須能力だと思うのですが、正直「美味かった?」と訊かれても、黙って力なく首を振るしかない・・・と言
う内容でありました。
ちなみにこの試食はお昼の11時ごろ行ったのですが、夕方になっても胃の辺りの膨張感がなくならず、食べたものが
なかなか腸の方に降りて行かない様な違和感が続きました。なんかこう、内臓が消化吸収を必死に拒否している感じで
す。おかげでその日の夕食はあまり口に入らず、胃の中に居座った異物がなかなか消えない様な不快感が一日中続き
ました。
それにしても、この小さな糧食ひとつでもの凄い満腹感がありましたね。消化吸収と言う意味では、効率のいい(筈の)
食品が多かったと思いますし、兵士の体力を維持する上での最低限の機能は十分に果たせていると思います。とは言
え、世界三大料理に数えられる中国料理をバックボーンにした糧食にしては、ちょっと残念な味だったかもしれません。
また別のメニューが手に入る機会があれば、是非試してみたいですね。
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