護衛艦ちびしまカレー


       さて今回は、『護衛艦ちびしまカレー』であります(笑)。一行目からいきなり(笑)を使ってしまい恐縮
      ですが、このDDG1.74護衛艦ちびしまは実在する護衛艦ではなく、横須賀地方隊を定係港とするDDG
      174護衛艦きりしま
をコミカルにディフォルメした、横須賀地方隊のマスコット的なちび護衛艦ですね。観
      艦式等のイベントで活躍しているのは聞いていましたが、まさかここに来てカレー化するとは思いもしません
      でした(笑)。
       これまで数々の傑作カレーを生み出してきた海上自衛隊缶入りカレーシリーズが、ここにきて一気に遊ぶ方
      向
に舵を切り始めたというか、この嫌味のないスマートなユーモア感覚はやっぱり海軍さんならでは。お子様
      も楽しめる甘口仕立て
との事ですが、これはきっと私を笑わせるために作ったに違いない・・・とほくそ笑み
      つつ、まずは外観をチェックしていきます。

       明るいカシミヤイエローのラベルには護衛艦ちびしまきりしまが並んでいますが、肝心のちびしまがCG
      画像っぽい
のがちょっと残念。桟橋に仲良く並んだ2隻の画像が欲しかったところですが、あまりにサイズの
      差がありすぎて構図が作れなかった
のかな?
       また、バックに描かれた艦番号1.74の横には護衛艦ちびしまの性能緒元が表記されていますが、主要寸
      法がmm単位だし主機械が人力×6だし、馬力は微力だし速力は0.3ノットだし主要兵装は記念撮影システ
      ム一式
だし定員は大人1名もしくは子供2名・・・。もう徹頭徹尾遊ぶ気満々なのが好感持てるなあ。発売元
      は㈱ヤチヨですが、どうにも鋼海物産の匂いがしてくるのは気のせいでしょうか(笑)。

       いやあ、好きだなあこういうの・・・とニヤケつつ缶を開けて中身をレンジアップし、お皿に盛ったごはん
      にかけてみます。おおこの色!いかにも子供向け甘口カレーらしいオレンジがかった黄色が、なんとも懐かし
      いなあ。さっそく一口頂いてみます。
       ほうほう、なんというかこの・・・まるで水溶き小麦粉でつけたような、もったりのっぺりした懐かしい口
      当たり。期待通りの味わいに嬉しくなってしまいます。とは言えお味は意外と本格的で(失礼)、野菜とフル
      ーツの甘さ
が実にいい塩梅。子供向けカレーとは言え、手抜き一切なしの本気加減が伺えますね。確かに大人
      の舌にはやや物足りないかもしれませんが、子供向けカレーも真面目に作ればこんなに嬉しい美味しさになる
      とは

       よくよく考えてみれば、食べる側の心身の成長に合わせて自らを柔軟に変化させる食べ物って、カレーぐら
      いじゃないかなあ。実に不思議な立ち位置だと言えるでしょう。普通は変わらない位置にいて子供の味覚の成
      長を待つ
か、もしくは成長とともにだんだん遠ざかる子供の背中を見守りながら置いて行かれるかのどちらか
      ですからね。ちなみに前者はニンジンやピーマン、後者は駄菓子をイメージしています。
       そんな過ぎ去りし日々を思わせる甘い子供向けの味わいでありながら、手抜きも物足りなさも感じさせない
      骨太な旨味
を感じさせるこのカレー。ウスターソースのひと垂らしがあればぐっと味が締まると思いますが、
      私はあえてこのまま食べたいなあ。
       このカレーを一言で表現するなら・・・超お金持ちの家の蝶ネクタイ姿のこまっしゃくれたお子様が、ホテ
      ルの大広間みたいな食堂でメイドさん達に給仕してもらいながら食べるカレー
、でしょうか。とは言え、超お
      金持ちの家のカレーにしては若干肉が小さい気が・・・(笑)。まあ本当の超お金持ちの子供は、牛肉がデカ
      い程度でいちいち喜ばないんでしょう(笑)。

       しかしここで問題になるのが、具の中で大きな存在感を放っているニンジンです。小さな子供にこのサイズ
      のニンジンはちょっとした脅威。とは言え未来の〇〇コンツェルンの総帥の座を約束されたちびっ子にとって
      は、この大きなニンジンも越えねばならぬ大きな壁の一つなのでしょう。
       「馬鹿もん!ニンジンぐらいで泣く奴があるか!そんな事では来年はクラス委員にはなれんぞ!」
       と大声で叱責するガウン姿のお父さん。涙ぐむ蝶ネクタイ姿のちびっ子。目にハンカチをあてながら見守る
      爺や・・・。
       「坊ちゃま、頑張るのです、頑張るのですぞ・・・!」
       ああ、またいい年して馬鹿な妄想が爆発してしまいます(笑)。
       そしてこのカレーが意外と辛く、食べ進むうちにじわじわと舌を襲い始めます。もちろん大した辛さではあ
      りませんが、子供にとってはけっこうギリギリなラインという絶妙な匙加減。
       額ににじむ汗、目じりにたまる涙粒・・・っていうか、〇〇コンツェルンの総帥の座を約束されたお坊ちゃ
      まですから、家での食事の時も胸元のポケットに山折りにしたハンカチぐらい入っているのが当たり前なんだ
      ろうなあ。苦手なニンジンを乗り越え、辛さに耐え、こまっしゃくれた小憎たらしいガキは厳しいお父様から
      帝王学のなんたるかを学んでいくのでしょう。

       ・・・と、ここでこのカレーの意図するところが分かってきましたよ。確かに子供向けの味ではありますが、
      子供の方を向いている訳ではない気がします。このカレーが本当に狙っているターゲットは、子供時代のカレ
      ーの思い出に浸りたがるオッサン
ですね(笑)。いやあこれは見事なトラップ!してやられたとはこの事であ
      ります(笑)。
       「ふん、なかなかやるじゃない。今日のところは私の負けって事にしておいてあげるわ!」
       と、なぜかオカマみたいな捨て台詞をカレーに向かって吐いてしまいました。
       あと、そもそも私は横須賀地方隊で行われる観艦式に一度も参加した事がなく、護衛艦ちびしまも実際に見
      た事ない
んですよね。横須賀地方隊の桟橋で護衛艦ちびしまに会える日は何時の事になるんだろう・・・あと
      コンツェルンって一体なんなんだろう・・・と考え込みつつ、いつも以上に妄想力が迷走してしまった試食を
      終えました。




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