松山駐屯地創立61周年記念行事

2016.11.06


       愛媛県松山市に所在する松山駐屯地の創立記念行事に参加して来ました。松山駐屯地には第14特科隊
      14高射特科中隊を中核として第4後方支援隊第2整備中隊特科直接支援小隊高射直接支援小隊第348
      会計隊松山派遣隊第323基地通信中隊松山派遣隊駐屯地業務隊第133地区警務隊が駐屯する四国の
      砲兵どころ、陣地防空の要であります。この松山駐屯地、何年も前から私の遠征リストに上がりながらなかな
      か縁が無く、今年になってようやく参加の運びとなりました。いやーここまで長かった(笑)。長年の夢が叶
      った気分
です。
       前夜の車中泊地となった松山自動車道石鎚山SAを0730に出発し、薄曇りの松山市内を右手に望みつつ
      川内ICから一般道へ。しばらく走って、8時前に臨時駐車場となる旧重信町役場に到着。先客は一台だけで、
      静かなものですね。
       式典会場となる小野演習場まではここから1kmほど。シャトルバスもありますが、大した距離ではないの
      で徒歩で移動します。住宅がぽつぽつと点在する田んぼ、なだらかに広がる低い山並み。薄曇りですが上空は
      穏やかに晴れていて、いかにも晩秋の愛媛だなあ。山手には大きなドーム状の建物があり、あれが演習場の入
      口の目印となる重信ドームか。

       歩道橋を渡り川を越えたところにある坂道を上って行くと、フェンスに囲まれた広場に到着。ここが演習場
      の入口
です。広場には屋台が並び、開店準備の真っ最中。全部外部業者の屋台ですが、受付で貰ったパンフレ
      ットを見ると演習場内にも売店があるみたいですね。そっちには隊員さんの屋台があればいいなあ。
       広場の脇の道を上がっていくと、開放されたフェンスの前に何人かの開門待ちが。最後尾についてしばらく
      時間を潰します。

       そして時刻は0900、行列の先頭が動き始めました。戦車の体験試乗受付はパスして演習場内へ進むと、
      穏やかな坂道を上がったところに大きな広場が見えてきました。ああ、ここか式典会場ですね。まるで滑走路
      の様な横長の形状ですが、果たしてどこに場所をとればいいのやら。
       傍にいた隊員さんに訊ねると、訓練展示は左←右へと展開するので左側中央寄りあたりがよさそうですが、
      ここ松山のご当地部隊は特科と高射特科。最前線よりも陣地がある右側がベストかな?少し迷いましたが、本
      日の目玉となる155mmFH-70榴弾砲はでかいので、少々離れていても撮影は問題なさそう。目の前に
      高射特科の車両が立ちふさがるリスクもありますし、初めてのイベントは無難なポジショニングにすべきでし
      ょう。
という訳で、会場左側の観閲段寄りに拠点を確保します。

       会場には先程から第14旅団各部隊の隊歌が流れ、これはありそうでなかなか無いBGMのチョイス。普通
      は静かな音楽やポップス等が多いですが、演習場で流れる隊歌というのは味わい深いものがあります。
       おっ、よく見ると中央の観閲段07式機動支援橋の橋桁部分なんですね!傾斜のある地形をキレイに掘り
      込んできちんと水平をとっていますし、いかにも陸自施設からしい几帳面な仕事っぷり。いっその事橋桁を6
      つぐらい横並べにして、一般にも開放してほしかった気もしますが(笑)。

       すぐ脇にいた隊員さん同士がびしっと敬礼を交わしたあとに、
       「来てたのか!お疲れ様!」
       「うわー、久しぶり!」

       何年かぶりに顔を合わせた教育隊の同期かな?再会を喜び合う前にまず敬礼が出るあたりは、やっぱり自衛
      隊の人ですね。
       会場わきに停められたパジェロのタイヤには、この時期にはまだ不似合いなチェーンが巻き付けてありまし
      た。隊員さんに訊ねると、冬場でなくても摩擦係数の低い不整地では、普通にタイヤチェーンを使うそうです。
      こういうのも、駐屯地での記念行事ではわからない演習場ならではの事だなあ。

       式典会場を一旦離れ、途中にあった演習場内の売店広場へ向かいます。ずらりと並んだOD色のテントは来
      賓受付。その奥にある野外天幕招待者用の休憩所と、赤ちゃん用の授乳所になっています。しかしこんなス
      パルタンな雰囲気が漂う授乳所
は初めて見ました(笑)。赤ちゃんもゴルゴ13みたいな顔で、無言でミルク
      を飲みそう・・・。

       松山市自衛隊父兄会からは、地元野菜の直売所が。あれ?よく見ると鹿肉も販売していますよ?先月の饗庭
      野分屯基地祭
で食べた鹿肉カレーの美味しさを思い出すなあ。話を伺うと父兄会に猟師さんがいて、地元の山
      林で増えすぎた鹿を駆除したので、今日はその肉を持ってきたそうです。
       大きめのモモ肉の塊が300円、生食可能な背身が500円と、かなりのお買い得価格。寄生虫対策かカチ
      ンコチンに凍らせてありますが、これ欲しいなあ。一つ買うので、帰るまで保冷しておいて貰えませんかとお
      願いすると、そのまんまで大丈夫大丈夫!との事。という訳で、モモ肉を一つ購入です。今夜はこれで竜田揚
      げ&ビールだ!

       駐屯地売店からの出張テントは、グッズ目当ての人達で一杯。その中に、あ、やっぱりあったか、松山駐屯
      地黒にんにく牛カレー
。違いは外箱と名前だけで、中身はみんな同じ黒にんにくカレーシリーズ・・・。もう
      油断するとどこで掴まされるか分からないなあ。とは言え、結局コレクション用に一つ買ってしまうのですか
      ら我ながら思う壺ですね(苦笑)。

       後方からのモロ順光でレジの表示部分が見えづらいのか、店員さんは入力のたびに表示部に手をかざして影
      を作り、何度も何度も金額を確認。恐らく初めてであろう野外演習場でのイベントに、店員さんも準備が追い
      ついていないみたいです。
       どうやら食べ物系の屋台はなさそうなので、朝来た時に見つけた演習場入口の屋台広場へと移動。ざっと見
      見たところ焼肉重フランクフルトかっしゃ焼きぶひ丼フライドポテトクレープという陣容です。よ
      く分からないものも混じっていますが、わりと重量感のある品ぞろえ。
       という訳で、まずは最も得体の知れないかっしゃ焼きから行ってみます。が、ん~?これって、たこ焼き?
      店員さんに訊ねてみると、どうやら下味をつけた鶏肉を入れたもので、第2回讃岐B級グルメコンテストでグ
      ランプリを受賞した逸品
との事。
       さっそく一つ食べてみると、ほほう、これはこれは。普通の鶏肉とは噛み応えが異なる四国の親鳥を使って
      いるらしく、この皮目のクキクキコリコリした硬さが味わい深いなあ。下味のお陰で鶏臭さはまるでなく、
      こ焼きとは似て非なる美味しさ
。これで飲むビールはたまらないだろうなあ。

       焼いているところを撮影していいですか?と訊ねると、店員さんは笑顔でピース!・・・あ、いや、私が撮
      影したかったのは鉄板
なんですけど・・・なんかスミマセン・・・。
       続いては、隣にあった新居浜ぶひ丼。いわゆる豚丼ですが、豚ロースを丁寧に七輪で炭火焼にしているのが
      驚き。こんなやり方で昼のピークを乗りきれるとは思えませんが、よく見ると焼けた肉から炊飯器に入れて保
      温
してるんですね。

       なるほど、この方法なら焼きたてのジューシーさと柔らかさを保ったまま保温出来ますし、炭火焼の香り
      逃す事もありません。浸み出た肉汁にひたされた豚肉は炊飯器の中でいい塩梅に寝かされて、むしろ焼きたて
      よりも美味しくなるのでは?
なんという巧みな手法なんだろう。
       さっそく一つ注文してみましたが、店員さんは炭火から降ろしたばかりの焼きたての肉を切ってくれました。
      うーん、気を使ってくれたんでしょうけど、寝かせた奴を食べたかったな・・・。とは言え、炭火の火力で一
      気に焼き上げた豚肉
は香ばしく、甘辛いタレ青ネギの清涼感も相まってシンプルながらも実に深みのある美
      味しさ
でありました。

       いやあ、どちらも美味しかったですね。時刻は0930。おっと、そろそろ部隊入場が始まる頃です。式典
      会場に戻らなきゃ。その途中、会場へと向かうテンションあがりまくりな小さな男の子に対し、オーバーアク
      ションな芝居っ気たっぷりの敬礼
をする若い隊員さんがいました。おお、子供喜んでる(笑)。まだお若いの
      に、立派な隊員さんだなあ。
       確保した拠点に戻ると、よかった、部隊入場はまだでした。それにしても最前列はまだ空きがありますし、
      同じ第14旅団でも大賑わいだった善通寺とは違い、なんとも愛媛らしいのんびりした雰囲気
       ほどなく大太鼓小太鼓の隊員さんが入場し、軽快な行進曲に合わせて会場奥から部隊が続々と入場開始。特
      科と高射特科の山吹色マフラーが鮮やかだなあ。入場の最後は第14音楽隊。ばりっとした礼装ではなく戦闘
      服姿
ですが、やはり演習場にはこちらの方が絵になります。

       その後は部隊紹介。向かって左より、第14音楽隊(善通寺)、第14特科隊本部管理中隊ならびに第1~
      3各中隊
第14高射特科中隊第14後方支援隊第2整備中隊特科直接支援小隊並びに高射直接支援小隊
      そして松山駐屯地業務隊

       続いて本式典の観閲部隊指揮官を務める第14特科隊副隊長がパジェロに乗って入場。部隊は観閲部隊指揮
      官に敬礼
。さらに観閲官である第14特科隊隊長兼ねて松山駐屯地司令財津一等陸佐が入場し、観閲式の開会
      が宣言されました。
       まずは観閲官が登壇し、部隊は敬礼。続いて国旗入場。式典参加者は起立で迎えます。国歌君が代が厳かに
      吹奏される中、部隊は国旗に敬礼。捧げ銃(ささげつつ)を執り行います。

       続いては巡閲。パジェロに乗った観閲官が部隊の前をゆっくりと通過すると、指揮官の敬礼とともに隊旗
      きりっと掲げられます。なんというか、前回参加した空自の饗庭野分屯基地の式典とは随分違いますね。いか
      にも陸自らしい、生真面目過ぎる位に格式ばったこの感じ
       とは言え、そもそも記念式典とはこういうもの。いかにも空自らしい大らかでウェルカム感満点の式典もい
      いですが、見ているこちらまで身が引き締まりそうな陸自のこの雰囲気も悪くありません。

       晴れてはいますが風が強く、上空は雲が切れたり覆ったり。光線状態が安定しないなあ。雨さえ降らなけれ
      ば別にいいのですが、ちょっと怪しい色の雲も押し寄せて来ました。
       観閲壇では、観閲官による式辞が披露されました。その中で毎年駐屯地で行われていた記念式典を、今年は
      演習場で行う事になった経緯が説明されました。第14旅団の機動旅団化に伴う駐屯地の大規模な改修工事
      進められている為、今年はここ小野演習場で開催する事になったそうです。
       緊急時における主力部隊の迅速な行動、及び現地への素早い展開が可能な機動旅団の一つとして、組織の大
      改革
が進められている第14旅団は、まさに激動する国際情勢の大きなうねりの真っただ中、極めて重い責任
      を背負っているんですね。

       続いて来賓の祝辞が披露される頃にはいよいよ空模様が怪しくなり、ぽつぽつとが降り始めました。うわ
      あああ、勘弁してくれ・・・。幸いすぐ止んでくれましたが、天気予報の晴れマークに油断してパーカーを持
      って来なかった事が悔やまれます。
       来賓の紹介祝電披露感謝状贈呈者の紹介と、式典は粛々と進行。そして観閲行進の準備の為、部隊はこ
      こで一旦退場します。凸凹のある不整地を、隊員さん達は力強く駆け足行進。

       第14音楽隊が観閲段正面に移動し、各車両はエンジンスタート。そして観閲行進に先駆けて、愛媛県隊友
      会
が入場です。
       その後演奏は『抜刀隊』に切り替わり、観閲部隊指揮官幕僚を乗せたパジェロが先頭を切ってやってきま
      した。続いて第14特科隊本部管理中隊から高機動車救急車気象測定装置射撃統制装置が威風堂々の車
      両行進を披露します。さらに第1~3各中隊からは155mmFH-70榴弾砲を牽引した作業機つきの7㌧
      トラック
が。

       第14高射特科中隊からは93式近距離地対空誘導弾射撃統制装置81式短距離地対空誘導弾低空レ
      ーダ装置
が続きますが、先程通過した7㌧トラックが地面に結構深い轍を作っていて、各部隊の指揮官を乗せ
      たパジェロは走りづらそう。なるほど、これは確かにタイヤチェーンが要るなあ。

       第14後方支援隊第2中隊からはシェルターを搭載したトラック重レッカが来て、以上で観閲行進は終了。
      ほほう、松山駐屯地所在部隊のみの観閲行進だったんですね。戦車のない駐屯地の観閲行進に戦車が混じって
      いるのはそもそも変な話ですし、松山の隊員さんと装備品を地元の人に見てもらうという意味では、やっぱり
      こちらの方が正解でしょう。

       華のある戦車は昼から体験試乗がありますし、観閲行進はご当地部隊部隊の個性や独自性を前面に出す方が
      いいと思いました。それにしても、トリを務めたのが重レッカか・・・シブイなあ。私なら資材運搬車を抜擢
      しますね(笑)。確か特科や高射特科にもあったはずですが。
       最後は観閲部隊指揮官が観閲行進の終了を報告し、国旗が退場。式典参加者は起立で見送りました。
       さてこの後は、第14音楽隊松山大学吹奏楽部による合同演奏。この松山大学吹奏楽部、以前から駐屯地
      とは縁が深かったらしく、今年9月に行われた駐屯地秋祭りでも見事な演奏を披露したとの事。

       まず一曲目は、仮面ライダーのOP『レッツゴーライダーキック』。これはまた意外というか、意表をつい
      た選曲
ですね。何でこの曲を・・・と思ったら、主人公本郷猛を演じた俳優の藤岡弘さんの出身地が、ここ愛
      媛県
との事。言わば郷土のヒーローに敬意を表しての一曲目ですね。私はてっきり第14音楽隊長さんの趣味
      丸出
なのかと・・・(笑)。
       二曲目はアメリカのマーチ王J.P.スーザ作曲の『ワシントン・ポスト』。これは初めて聞くタイトルだ
      な・・・と思いましたが、聞いてみると誰もが一度は聞いた事のあるあの曲。三曲目は『千の風になって』
      音楽隊の2等陸曹による熱唱が披露されました。

       そしてラストは、来年開催予定のえひめ国体のテーマ曲『えがおは君のためにある』。ああ、すごくいい曲
      だなあ、これ。素晴らしく晴れ渡った空の下、さあ競技場で思いっきり体を動かそう!というイメージが浮か
      んで来るようです。国体にはぴったりですね。
       以上四曲を披露して、第14音楽隊と松山大学吹奏楽部による合同音楽隊は拍手を浴びながら退場。いやあ
      いい演奏でした

       続いてはいよいよ訓練展示。まずは災害派遣に備えた訓練展示が行われます。先程の謎の物体に駆け寄った
      隊員さん達が擬装網を外すと、うわっ、中からはボロボロの真っ黒焦げになった日産マーチが出てきました。

       余りの痛ましさに涙が出そうになりますが(泣)、よく見るとスプレーが塗りたくってあるだけで、問
      題なく自走してますね。ナンバープレートがないので、あくまでも災害救助訓練用の車両の様です。
       会場中央まで移動して来たマーチには大きな倒木が立てかけられ、まるで土砂崩れにでも襲われた様な臨場
      感
。そして隊員さんが状況開始のラッパを吹き鳴らし、いよいよ訓練展示の始まりです。

       まずはアナウンスによる状況の説明が行われます。愛媛県内の山間部において自然火災が発生、要請を受け
      た松山市消防局松山駐屯地から消防車が派遣されました。会場正面の茂みからは発煙筒の煙が濛々と流れて
      きて、状況を知らせる通信内容が緊迫感を高めます。

       陸自の北徳島分屯地から飛来したUH-1J多用途ヘリが、上空から現地の状況を偵察開始。お、オレンジ
      色の消火バスケット
を吊るしていますよ。あれで消火活動を行う模様。

       地上には松山市消防局松山駐屯地からの消防車が駆け付け、テキパキと放水準備を開始。防火服が黒い方
      が消防、黄色い方が陸自です。

       すぐに放水作業が始まり、太く勢いのある放水が高い弧を描いて火災現場に降り注ぎ始めました。今日は風
      があるので、上空に舞った水しぶきがこっちまで流れて来てもう大変。どうにか雨雲が切れたと思ったらコレ
      か(笑)。

       さらに陸自からは個人用消火水嚢を背負った隊員さん達が参加して、ハンドポンプで水鉄砲消火を開始。し
      かしこれ、本来は鎮火した火災現場の残り火の始末に使用される後片付け的な消火機材なので、消防車の放水
      と一緒に並んでいるのはなんか変な感じだなあ。

       さらに上空からはUH-1Jがバスケットによる消火を行いますが、残念ながら樹木に重なってしまい放水
      の瞬間は見えず。とほほ。
       上空と地上からの消火作業により山林火災はどうにか鎮火。燃え残りの有無を確認すべく、隊員さん達は号
      令とともに茂みの中へ。そして車内に取り残された人を発見、陸自の対策本部に救助要請が入りました。
       すぐに災害救助機材を搭載した救急車が駆け付け、救助活動を開始。被災車両を確認した隊員さんは、救助
      作業の妨げとなる倒木を撤去。外からドアを開ける事が出来ない為、人命救助セットの出番です。

       エンジンカッターを始動させた隊員さんが高速回転する丸い刃をドア部に当てると、真っ赤な火花が飛び散
      りました。おおおおお、本当にドアを切断してる!まあそれぐらいやらないと、本物の車を使う意味がありま
      せんからね。

       エンジンカッターの排気煙と金属が切断される特殊なニオイが漂う中、隊員さんはドアロック部の切断に成
      功
。車内からは運転手が引っ張り出され、すぐに救急病院へと移送されて行きました。以上で緊迫感あふれる
      災害救助訓練は終了。会場からは拍手が送られました。

       さて、最後はいよいよ戦闘訓練展示。第14高射特科中隊の93式近距離地対空誘導弾が射撃陣地につき、
      その後方には第14特科隊の155mmFH-70榴弾砲が展開開始。砲身を旋回させて、こちらも射撃準備
      を整えます。

       銃迫撃砲小隊の高機動車からは120mm迫撃砲RTが切り離され、こちらもあっという間に射撃陣地の構
      築を完了します。
       そこに第14飛行隊のUH-1Jが飛来し、上空から敵陣地を確認。さらに詳細な情報を入手すべく、陸自
      本隊からは2両の偵察オートが出撃。敵陣地まで一気に切り込んだあとは倒したオートに隠れるようにして、
      敵陣地に向けて威力偵察を実施します。

       返って来た反撃の様子から陣地の規模、形状、戦力に関する様々な情報を入手した偵察隊員は、オートを引
      き起こして一気に撤退。本隊に情報を持ち帰ります。
       そして小銃小隊の前進に先だち、特科のFH-70榴弾砲による敵陣地への2門同時発射が行われました。
      バン!という大きな音とともに砲口から巨大な火球が噴き出し、着弾した敵陣地周辺からは次々と発煙筒が炸
      裂。発射後いったん下げた砲口から、白い煙がたなびいているのが迫力あります。

       さらに畳みかける様に、再び2門同時に空包発射。かなり離れているのに発射音がいつもより腹に響く感じ
      ですが、これは空気が乾燥しているからかな?これだけ距離があってもこの大音量ですから、操っている隊員
      さん達は耳栓をしていても堪えるだろうなあ・・・。
       敵陣地からは装甲車が飛び出してきて、ルーフ上から機銃で反撃開始。すると74式戦車が茂みから飛び出
      してきて、射撃位置につきます。

       「まもなく戦車が空包射撃を行います」
       とアナウンスがいい終わるが早いか、戦車はいきなり空包を発射。バン!と空気を震わせる強烈な発射音に、
      観客からはどよめきが沸き起こります。それにしても随分早いタイミングで撃ちましたね。普通は続いてアナ
      ウンスが
       「大きな音がします、耳をふさいで下さい」
       と言ってから撃つのに。もしかしてフライングかな?後で怒られてなければいいのですが(笑)。

       その戸惑い混じりのどよめきが収まらないうちに、74式戦車はやらかしを誤魔化すかの様にもう一発発射
      撃破された装甲車からは、真っ赤な煙が噴き上がりました。

       ここで敵部隊の航空機が急速接近。すかさず93式近距離地対空誘導弾が発射機を旋回させ、誘導弾を発射。
      しばらく間が空いたのちに、
       「敵航空機、撃破!」
       との報告が入ります。

       更に後方の陸自本隊からは、第15普通科連隊の軽装甲車高機動車が突入開始。ルーフ上のMINIMI
      を撃ちまくりながら切り込んできた車両からは小銃小隊が飛び出して、地面に飛び込むようにして匍匐。敵陣
      地との間で激しい銃撃戦が展開されます。

       その小銃小隊の前進を支援すべく、後方の第14特科隊は敵陣地に向けてドカドカと砲弾の雨を降らせ、迫
      撃砲小隊は素早く陣地転換を開始。新たな射撃陣地についたあとは、すぐに次弾発射の態勢を作ります。

       そしてFH-70榴弾砲の最終弾の弾着と同時に、小銃小隊は敵陣地への突入を敢行。小銃を撃ちまくりつ
      つ巧みに連携をとり、一気に肉薄。みごと陣地の奪還に成功しました。寒空に状況終了ラッパが鳴り響き、こ
      れにて訓練展示は全て終了。パチパチパチと大きな拍手が送られました。

       それにしても、最後のヤマ場である小銃小隊の突撃はずいぶんあっさり終わりましたね。まあ特科と高射特
      科をメインにしたシナリオ
なのでそれも当然ですが、せっかくの演習場での訓練展示にしては、FH-70榴
      弾砲の参加が2門だけ
というのもちょっと寂しかった様な・・・。
       同様に、敵部隊の戦力が高機動車一両だけというのも少し物足りない内容です。会場左側に沢山あった地面
      のコブも敵兵士が隠れるのには格好だったのに、結局使わず仕舞いでしたし。あまり例のない演習場での戦闘
      訓練展示だったのに、その辺りを生かせなかったのはもったいなかった
ですね。

       式典会場では、訓練展示に参加した車両の撤収準備が始まりました。お、81式短距離地対空誘導弾も参加
      してたのか。私がいた場所からは完全に死角になっていたので、全然気がつきませんでした。やはりバックが
      演習場だと雰囲気ありますね。普段から好きな93式近距離地対空誘導弾が、5割増しぐらいカッコよく見え
      ますし(笑)


       その後は装備品展示会場へ。まずは155mmFH-70榴弾砲と、牽引して来た作業機付きの7㌧トラッ
      ク
。FH-70榴弾砲は擬装網で覆われていて、これもいかにも演習場らしい演出。FH-70榴弾砲をまる
      ごと覆うサイズの擬装となると、やはり迫力あります。

       続いては気象測定装置。長距離からの砲撃を行う特科には欠かせない、弾道計算用の気象データを測定する
      装備品です。車両の上の大きな羽釜みたいなのが、気象レーダー。なんか美味しいご飯が炊けそう。
       すぐ隣には測量で使う望遠鏡みたいなのがありますが、これは風船を飛ばして上空の風向や風速を測定する
      際に使用するとの事でした。

       お馴染み指揮通信車もいましたが、これも車体に擬装網を巻き付けてあります。それ自体の迷彩効果も高そ
      うですが、車体の直線や角ばった部分を覆うだけでも、結構分かりづらくなるもんですね。
       偵察オートの展示でも、バックにはこれまた擬装網を用意。ちなみに説明係の隊員さんは、オートの横に立
      って下さいという見学者のお願いに、
       「えっ、僕でいいんですかね(笑)」
       と、大いに照れながら写真に収まっていました。

       おお、長大なマストを展開しているのは低空レーダ装置ですね。というか、これも車体の殆どを擬装網で覆
      っているので、立てたマストしか見えません。見せる気がないどころか、むしろ隠そうと必死になってる装備
      品展示か・・・
。矛盾してるんだかしてないんだか(笑)。
       とは言え、せっかく演習場に展示するんだから、駐屯地では普段やらない見せ方をしてみよう!という考え
      は有難いなあ。もしかしたら部内では最後まで擬装網のあるなしについて議論が重ねられたのかもしれません
      が、この見せたいのか隠したいのかよく分からない装備品展示は、大いに気に入りました(笑)。

       ちなみにこの擬装網、内部に入ってみると結構明るい事に気づきます。外からは見えづらく、中からは見え
      やすく
。シンプルながらも実に上手く出来ています。さらに敵からのレーダー波の反射を抑える働きがあり、
      内部で動いている車両や発電機が放出する赤外線を隠す効果もあるとか。うーん、働き者すぎる・・・。
       その隣には81式短距離地対空誘導弾、そしてその目となる射撃統制装置がレーダー部を立ち上げていまし
      た。

       93式近距離地対空誘導弾も小さな車体を擬装網で覆っていますが、発射機に擬装網が被ってしまい、ちょ
      っと見えづらそう。実際はこれで十分事足りますが、隊員さんはせっかくだからもっと見え易い様に・・・と
      すぐそばの藪からをぽきりと折って来て、支柱代わりに使っていました。その場にあるものでとっさに何と
      かしてしまうこの工夫の精神
、何でもない様に見えて、やっぱりこれが職業柄なんだろうなあ。

       装備品展示会場の隣では、3.5㌧トラックと高機動車による体験試乗が行われていました。未舗装の会場
      をぐるりと回るコースですが、途中には水はけのためのちょっとした溝があり、そこを低速で乗り越える時に
      車体が大きく揺れる
のが面白そう(笑)。
       いかにも演習場らしい未舗装の広い道路を進んだ先には、子供向けのレンジャー体験コーナーが。ロープ結
      索、丸太渡り、ロープ渡り、匍匐前進での網くぐり
の全てをクリアすると、ちびっこレンジャー修了証記念
      品
が貰えるらしく、沢山の子供が列を作っています。ああ、これは子供は喜ぶだろうなあ。
       最後は式典会場をノリノリで走り回る74式戦車を見て、演習場を後にしました。

       駐屯地が改修工事で使えない為、急きょ演習場での開催となった異例の記念行事でしたが、準備期間が十分
      取れなかったせいか、戦闘訓練展示の見せ方に若干工夫の余地が残った様に思えました。とは言え災害救助訓
      練
演習場ならではの装備品の見せ方など随所にきらりと光るものが多かったですし、愛媛まで遠征してきた
      甲斐がありました。
       あと隊員さん達が実際に生活している駐屯地そのものを見れなかったのも、私的にはちょっぴり残念でした
      が、これはまた次も見に来てね!という事でしょう(笑)。日々流動化する世界情勢に対応すべく、大改革が
      進む第14旅団松山駐屯地
。新しく生まれ変わった姿をぜひ見に来たいものだと思いました。
       朝同様に駐車場まで歩いて帰り、近辺の地元スーパーを見て回った後は、新居浜に移動してマイントピア別
      子(べっし)
へ立ち寄ります!せっかく愛媛まで遠征したんですから、私の大好きな地底ワールドを満喫しな
      い手はありません(笑)。コンビニで買ったパンで小腹を満たしつつ、新居浜に向けて車を走らせました。




マイントピア別子に続く
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