コスモアイル羽咋
2015.10.24
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という訳で、コスモアイル羽咋(はくい)に行って参りました!コスモアイル羽咋とは、『UFOの街』宣言で一
躍ビミョーに有名になった石川県羽咋市に所在する宇宙科学博物館で、宇宙から帰還したロシアの宇宙カプ
セルの実機やNASAから提供された様々な実物や模型、さらにはUFO関連や地球外知的生命体探査等の
貴重な資料をを一堂に集めて展示した、宇宙好きにとってはもうアタシたまンないな施設であります。
実は数年前に一度この博物館を訪れていて、今回は2度目の来訪となるのですが、初めて来た時はなんで
こんな石川県の辺鄙な場所に(羽咋市のみなさんすみません)こんな凄いものが普通にあるんだ・・・と、呆然
としてしまったんですよね。今回は石川・富山・新潟遠征の第一発目として、久しぶりにこの地を踏む事となり
ました。
ちなみにコスモアイル(COSMO ISLE)とは、『宇宙の出島』の意。江戸時代に南蛮文化の出入り口となっ
た、長崎県の出島になぞらえたものだそうです。
当日は早朝に大阪市内を出発し、北陸自動車道をひた走って0810にコスモアイル羽咋駐車場に到着。見
晴らしのいい田舎道にずどーんとそそり立つロケット、そして巨大UFOの如き丸いドーム状の建物・・・。何度
見てもシュールな光景であります。
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開館時間まで20分程あるので、まずは周囲を散策です。建物を取り囲んだ円形の小道を歩いていると、ま
るで巨大惑星の衛星軌道上を漂っている気分。駐車場の一角にはギラギラと金属調に光る施設の案内看板
が出ていて、まるで宇宙船の外壁パネルを流用したみたい。なかなか心憎い演出です。
そしてその傍らには、観光地のお約束である宇宙服姿の顔出しパネルが。ちゃんと背の低い子供用もあり
ますが、えーと、子供用の宇宙服ってあったっけ?多分同じ宇宙服を、縮尺を変えて合成したんでしょう。
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それにしてもこの、青空に向かってすっくと立っている白いロケットがインパクト抜群。ここがいったい何の施
設なのかを、ひと目で分かる様に紹介しています。
ちなみにこのロケットは、NASA初の有人宇宙飛行を成功させたマーキュリー計画で使用された、レッドスト
ーンロケット。3段目から上の宇宙船はレプリカですが、1、2段目部分は実際に打ち上げられてから回収され
た、正真正銘の本物です。
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全長は26.5mとの事ですが、なんかもっと、50mぐらいある様に見えますね。とは言えこれで宇宙まで行
った(最高高度約190km)と思うと、むしろく感じるんだから不思議。へー、こんなもんで宇宙まで行けちゃう
のか・・・。ちなみにロケット本体の塗装は打ち上げられた当時そのまんまとの事で、グッとくるものがあります
ね。
先っちょについている黒い円錐形の部分が、一人乗りの宇宙船。先端部の赤いタワー状のものは、打ち上
げ失敗時の緊急脱出装置だそうです。
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建物の脇には、羽咋市の非常事態宣言を告げるポスターが(笑)。うーん、否が応にも目が行ってしまう、実
によく出来たデザインです。仕事で遊ぶ気満々なのが素晴らしいなあ、コスモアイル羽咋の人は(笑)。
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0830、開門。久々のコスモアイル羽咋に足を踏み入れます。受付にいた男性職員の方は、
「ありがとうございまーっす!」
と、朝からやけにテンション高め。
入ってすぐ左手にはお土産ショップがあり、その向いにはアポロ計画後期に開発された月面車、アポロ・ル
ナローバーが展示してありました。おお、いきなり大物ですね。
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このルナ・ローバーはアポロ15~17号計画で月面に持ち込まれ、それまで徒歩で移動していた宇宙飛行
士の月面探索範囲の拡大と、重く動きづらい宇宙服による負担を軽減した偉大なる車両。実際は計量化の
為に金属メッシュ製のタイヤを装着していましたが、地球の重力は月の6倍もあるので強度的に長時間の展
示に向かないため、ここではゴム製のタイヤを履かせています。
動力は電池式(亜鉛電池+太陽光発電)、4輪それぞれに一基ずつのモーターが装備され、月面を最高時
速17kmで走ったそうです。
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操縦席を見ると、操作系は実にシンプル。T字型の小さなレバーを傾けるだけで、進行方向と速度、さらに
ブレーキまでがコントロールできるとの事。
アルミフレームで作られた二つの座席ですが、座面は粗末ながらも結構クッションが効いているのに対して、
背面部分はかなり固め。宇宙服は大きな生命維持装置を背負っているので、これ位カチカチな方がむしろ姿
勢が安定するのかな。
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このルナ・ローバー、サイズの割に重量215kgとかなり軽いんですね。まあロケットに積み込んで月まで持
って行ったんですから、1kgどころか1g単位でギリギリまで軽量化された結果なんだろうなあ。
また、自重の倍以上の荷物を乗せての月面走行が可能だそうですが、宇宙服の重さが80kg、ほぼ同じ重
さの宇宙飛行士を2人、あと月面探査に必要な道具類を搭載すると、それだけでもう余裕はなさそう。せいぜ
い月面で採取した石を幾つか積める程度ですね。
ちなみに展示されているこのルナ・ローバーですが、実際に使用された3台は全て月面に置いてきたので、
これは試作機かレプリカだそうです。とは言えこれと全く同じものが今も月面に残っているのかと思うと、なん
だか不思議な気分。
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その後は2階の展示室へ。さっきのハイテンションな職員さんが、
「2階へはエレベーターで行って下さいね、仕掛けがありますから(笑)」
と言っていましたが・・・と思いつつ乗り込むと、扉が閉まった瞬間におお!真っ青な宇宙に散らばった無数
の星が、ブラックライトに浮かび上がりました!これはワクワクさせてくれますね。
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2階のフロアに出ると、目の前には展示室への入口が。スペースゲートってやつですね。展示室入口の脇に
は、墜落したUFOの修理費用稼ぎのために当博物館でのアルバイトを余儀なくされている宇宙人サンダーく
んのクイズ小冊子やJAXAのお堅い広報パンフ、あと羽咋市内の食べ歩きマップ等が揃っていて、街を挙げ
てUFOによる町興しに取り組んでいます。
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羽咋市内の飲食店もノリノリで、蕎麦屋やカレー屋、ラーメン屋、お好み焼き屋、さらに甘味処までが競い
合う様にUFOをモチーフにした独自商品を開発して、もはや街ぐるみでふざけているのか大真面目なんだか
よく分からない状態。
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ベントラベントラと不気味な血の色のフォントで描かれた気色の悪いポスターがあり、渡辺文樹監督作品チ
ックな強烈な異臭を放っていますが、これが羽咋市内の蕎麦処『あら鵜』の広告でありました。うーん・・・もう
ちょっと蕎麦が美味しそうに見えるデザインにすべきだと思うのですが・・・。店主さんは、市と運命を共にする
つもりの様です。
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さすが羽咋・・・と唸りながらトイレに向かうと、案内板が宇宙人(笑)。さらに清掃用具入れと、個室の案内
板まで宇宙人。そうか、宇宙人が掃除しているのか、コスモアイル羽咋・・・。ちなみに宇宙人の仕事ぶりは極
めて真面目で、トイレは眩しい位にピカピカでした。
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その後は先程のスペースゲートを通り、いよいよ宇宙科学展示室へ。まず目に飛び込んできたのは、アメ
リカのマーキュリー計画で使用されたマーキュリー宇宙船。NASA初の有人宇宙船として、1961年に打ち上
げられたものと全く同じ材質、部品で組みあげられた、本物と同じ展示品です。
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高さ3.3m、直径1.8m。ニッケル合金製の船体は人ひとり座るので精一杯で、帰還時の大気圏再突入で
は、スペースシャトルとは違って背中からまっさかさまに落ちる態勢を強いられたとか。考えただけで気分が悪
くなりそうです。内部のマネキンは宇宙服を着ていますが、宇宙飛行中の船内は与圧が保たれ、ヘルメットの
シールドを上げて水を飲んだり、丸薬状の食料を口にする事もできたとか。
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隙間の様なシートに宇宙服を着て押し込められ、何本ものホースで生命活動を維持され、目の前には無数
のスイッチやメーター、ヒューズ類。うーん、たまらないな、この味わい。この頃に比べると今の宇宙行きは随
分スマートというか、お手軽っぽく見えますね。
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それにしても展示室の内装や照明のセンスが素晴らしいなあ。宇宙船に照明が当たる部分と陰の部分が、
宇宙空間そのものみたいで(いや、私行った事ないですけど)演出効果抜群。こうしていると、太陽熱に直接
焙られる宇宙船の表面温度を一定に保つため、船体をゆっくりと回転させながら飛行する通称バーベキュー
モードの最中みたい。文字通りの焙り焼きだったんですね。
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そしてその隣にある赤茶けた巨大な球体は、おおおお、ボストーク宇宙船!人類で初めて宇宙に飛び出し
た、ガガーリン少佐の『地球は青かった』で有名な機体です。直径2.6mのカプセルの内部には宇宙服を着
たマネキンが座っていますが、展示されているこれは有人宇宙飛行に使われたものではなく、ボストーク6号
以降も150回にわたって打ち上げられた、データ観測用の無人カプセルを有人機風に改装したもの。
それにしても、このカプセルが実際に宇宙に打ち上げられ、大気圏再突入時の断熱圧縮による高熱に耐え
て地球に帰還したとは・・・。よく見ると赤茶けているのはごく一部で、それ以外は灰色に焦げています。
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一見してつるりと滑らかに見えるカプセルですが、近寄ってみると包帯みたいな繊維質で表面を覆われ、と
ころどころに樹脂が溶けた跡が残っています。再突入時のスピードはなんと時速2万km、その際の表面温度
は約2000℃か・・・。ちょっと想像力が追いつかないなあ。
![](2015cosmoisle26.jpg)
カプセル内部はもこもことした真っ白いキルティング状の素材で包まれ、なんだかすごく居心地が良さそう。
操作機器の類は驚くほど少なく、打ち上げから軌道投入、その後の再突入までの殆どを、地上からの管制に
任せていた様です。宇宙探査のために人間が必要な訳ではなく、人を乗せて宇宙にロケットを飛ばした、とい
う事実の獲得の方が重要なんだろうなあ。
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もちろんこれは隣にあるマーキュリー宇宙船にも言える事ですが、考え方そのものは非人間的と言えなくも
ないのに、その為に内部にいる人間を非常に大事にしているという、不思議な論理や倫理の捻くれがちょっ
と興味深い。
ちなみにこの宇宙カプセルで有人飛行が行われたボストーク1~6号ですが、大気圏への再突入後は高度
6000mで飛行士がこのカプセルから射出され、それぞれ別のパラシュートを使って地上まで降下する仕組
みだったそうです。旅客機感覚で滑走路に降り立ったスペースシャトルに比べると、格段にアドベンチャー度
が高いなあ。やはり有人宇宙飛行計画の初期は今から見れば随分と強引というか、無茶な真似を重ねてい
たんですね。
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続いては、NASAのルナ・マーズローバー。これは月や火星における移動や資材運搬の為に作られた車両
です。建物入ってすぐの所にあったアポロ・ルナローバー開発のプロトタイプで、世界にこれ一両しか現存しな
いそうです。なるほど、これを月面限定にして大幅に小型軽量化させたものが、さっきのルナローバーか。し
かしなんでこんなものがこんなところにあるんだ・・・。
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バッテリーを動力源とした四輪駆動方式で、巨大なお椀形のホイール内部に電動モーターを内蔵。高い地
上高とグリップ力の高そうな特殊形状タイヤで、かなり荒れた路面でも問題なく動けそう。スティック一本で進
行方向と速度、ブレーキのコントロールが可能なのはルナローバーと同様で、動きづらい宇宙服を着ていても
容易に操縦できます。
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全長と全幅がほぼ同じというワイドボディですが、車体中央のヒンジが『く』の字状に曲がる事により、最小内
径約1mで180度の方向転換が可能とか。面白い設計だなあ。
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壁際にある吊鐘の様な物体は、NASAのRL-10エンジンです。これは液体水素型ロケットエンジンで、信
頼性が高く設計から35年以上たった今もなお宇宙開発の第一線で活躍しているとか。それにしても、高さが
1.8mもある割に重量が137kgしかいないのが意外だなあ。金属の塊のはずなのに、大きさも重さも力士と
同じぐらいとは。宇宙開発というものが、いかに軽量化と耐久性確保のせめぎ合いなのかという事がよく分か
ります。
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また、スカート上部についている配管部分が、意外とシンプルなのも驚き。もっとぐねぐねうねうねと曲がりく
ねったイメージでしたが、やはりシンプルな構造ほど信頼性や耐久性、効率に優れているんだなあ。
頭上に浮かんでいる巨大なヒトデの化け物みたいなものは、太陽光発電パネルを展開したモルニア通信衛
星。これは旧ソ連時代に打ち上げられた通信衛星で、地表の1/6を占める広大な旧ソ連領内の電波通信
網拡充のために、1:100という極端な楕円軌道を描きながら地球軌道上を周回している衛星です。
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なぜそんな極端な楕円軌道を描いていたかというと、ソ連上空を8~10時間かけてゆっくりと、それ以外は
1~2時間で通過する為。なるほどなあ。ちなみに展示されているこれは、打ち上げ前にトラブルが発生した
場合に備えて代用機として制作されたバックアップ機。実際に軌道上に浮かんでいる衛星と全く同じものだそ
うです。
主な動力源は太陽光パネルによる発電で、内部に搭載された大型ジャイロとの組み合わせにより長期間に
渡って安定した姿勢を保つ事が可能になった、当時としては革命的な通信衛星だったとの事。なるほどそう言
われてみると、光学観測装置の付け根に描かれた星とCCCPのマークが、随分と誇らしげに見える気がする
なあ。
![](2015cosmoisle33.jpg)
ちなみにこのモルニア通信衛星、これまで150機以上が地球軌道上に打ち上げられ、寿命が尽きた機体
から順に大気圏に突っ込んで燃え尽きさせて更新していたそうです。2006年以降は後継機であるメリディア
ン衛星への入れ替えが始まっていますが、現在も20機近くのモルニア通信衛星が軌道上に浮かんでいると
の事。
天井から視線を戻すと、おお、メタルプラスチックがギラギラと輝く巨大な円錐形の物体が。言わずと知れた
アポロ司令船であります。機械船と組んで3人の宇宙飛行士を乗せ、地球と月の間を往復した機体です。展
示されているこれは本物ではありませんが、実機とほぼ同一の素材、部品の提供を受けて組みあげられたと
の事。
![](2015cosmoisle34.jpg)
ぜひ中に入ってみたい気がしますが、レプリカとは言え相当な予算がかかった展示物でしょうし、あくまで無
重力空間での運用を追求した構造なので、地上の1G環境下で乗り降りするのは簡単ではないんだろうなあ。
座席部分はチタンフレームにぺらぺらの布を張っただけ・・・という簡素なもので、ここで何日も過ごしたのか
と思うと大変そうですが、体重がかからない無重力空間ならこんな粗末なシートでも十分なのでしょう。
その座席の前には膨大な数のスイッチ、計測機器、ヒューズの類が並んでいて、非常に心が躍る光景。や
っぱりいいですねえ、アナログコックピット。3つ並んだ座席の中央が操縦士、左が船長、右が月着陸船操縦
士の位置だそうです。
ちなみに搭乗した3名のうち、着陸船で月に降り立つ事が出来たのは船長と月着陸船操縦士の2名だけで、
操縦士は司令船の内部でお留守番。2人が月面探査を行っている間、たった一人で月軌道上をぐるぐると回
っていたそうです。
![](2015cosmoisle35.jpg)
長年憧れ続けた月を目の前にして、自分だけ降り立つ事が出来ないのは無念の極みの様な気がしますが、
どこまでも続く月面と真っ暗な宇宙、そして遥かかなたにぽつんと浮かぶ青い地球・・・そんな光景を一人占め
出来るのは、それはそれで悪くない気がします。
とは言え私が操縦士なら、通信機のスイッチを切り忘れたまま
「おー、あの砂丘、まるでおっぱいみたいだなあ」
などと思いっきり油断した独り言を漏らしてしまい、その様子はヒューストンの管制室を通じて全世界に配信
され、世界規模の赤っ恥をかいてしまう・・・とか十分ありそうで嫌になりますね(笑)。しかし、例え宇宙飛行士
になれたとしても、そういうスピリッツは決して忘れてはいけない気がします。
・・・また脱線してしまいました。宇宙空間にたった一人ぼっちというのは、ある意味誰かと一緒に月面に降り
立つよりも、ずっとずっと贅沢な事なんでしょうね。
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アポロ司令船の周囲には、アポロ計画で採用され実際に月面で使用された腕時計『オメガ・スピードマスタ
ー』や、その形状から“スヌーピー”との愛称が付けられた通信用の帽子、宇宙服の生地、司令船の外装に使
用された特殊素材等が展示されていますが、やはり私的に一番興味をひかれたのは宇宙食(笑)。気になる
そのメニューは、
・カリフラワーのチーズ和え
・七面鳥の燻製
・砂糖入り紅茶
・マカデミアンナッツ
・ツナの缶詰
と、なかなかのもの。これを船内の電子レンジで温めたり、お湯を注いでもどしたりしたそうで、パッケージ
についたマジックテープを使えば宇宙服に固定する事もできたそうです。無重力状態の船内に放っておくとど
こへ飛んで行くか分からないので、そういう事も考慮しないといけないんだろうなあ。
![](2015cosmoisle37.jpg)
それにしてもこの七面鳥の燻製、昔のMREみたいなOD色の固いレトルトパックに入っているのが、糧食マ
ニアとしてはちょっとニヤッとさせられます(笑)。
続いてはSETI、地球外知的生命体探査についての展示です。1950年代から本格的に始まったこの分野
の研究ですが、パイオニアやボイジャーによる地球からのメッセージを携えた探査機の打ち上げ、地上から
2万4千光年離れた星団に向けての電波望遠鏡を使ったメッセージの送信など、そのスケールの巨大さに驚
かされます。
ちなみに1977年に打ち上げられた惑星探査機ボイジャー1・2号ですが、様々なメッセージが刻みこまれ
たレコードと針を乗せ、木星、土星、天王星、海王星を観測した後に太陽系を脱出し、現在は195億3600
万kmの彼方に居るとの事。その実物大の模型(素材や部品は本物と同じ)が、天井から吊るされたコレ。
![](2015cosmoisle38.jpg)
うーん、なんというか・・・どっちが正面でどっちが後なのかまるでわからない、ただひたすらに機能のみに特
化した形状が、不思議な美しさを感じさせます。
現在宇宙の彼方を漂っているボイジャー1・2号は、言うまでもなくもっとも地球から遠い所にある人工物で
あり、この後は太陽系を外から観測しつつ秒速17km、時速に換算すると6万km以上という途方も無い速
度で遠ざかっていくそうです
特にどこかの星に向かっている訳ではありませんが、太陽系から一番近い恒星であるケンタウルス座アル
ファ星まで辿り着いたとしても、あと8万光年の距離か・・・。
動力源として搭載された原子力電池には当然寿命があり、観測結果の地球への通信は2025年頃に終了
するそうですが、その後は地球人からのメッセージを乗せた船として、どこかの星に落下するか知的生命体
に回収されるまで、半永久的に宇宙を飛び続けるとの事。なんというか、凄い世界もあるもんだなあ・・・。まっ
たく税金とか家賃とか光熱費とか、本気でどうでもよくなりますね(なるなよ)。
そしてその横にそびえ立っているのは、アポロ計画の月着陸船。おおおお、思っていたよりもデカイですね!
とは言え、宇宙飛行士二人を乗せて月に着陸し、その後軌道上を周回している司令船まで戻ってランデブー
する事を考えると、この程度の機械でよくもまあやってのけたものだと、心の底から感心します。今から50年
も昔、私が生まれる前の話なんですよねえ・・・。
展示されているこれはアポロ有人飛行計画の最終機である17号のレプリカですが、一部の箇所に本物と
全く同じ部品を使用しているとの事。丸いんだか四角いんだかわからない太陽の塔の顔みたいな上昇部と、
カニみたいな下降部が一緒になって月に着陸し、月面探査を終えた後は下降部を発射台として、上昇部だけ
が宇宙飛行士を乗せて司令船まで戻る仕組みです。
アポロ計画では合計6機の着陸船が月面に到達しましたが、という事はこの発射台部が月面に今も6機残
されている訳ですね。完全無音の月面に、ただぽつんと佇んでいる下降部・・・。私が生きている間にその実
物を見る事はなさそうですが、いつか月に人類が定住出来る様になった時、記念公園みたいな形で保存整
備されるんだろうなあ。
電話ボックスの様なケース内に展示されているのは、アポロ計画で使用された船外活動用の宇宙服。残念
ながら本物ではありませんが、確か一着で10億円位するはずなので、流石に本物を持って来るのは無理か。
グローブ片方だけでも220万円もするのですから。
背後の生命維持装置には、酸素や飲料水、バッテリー、二酸化炭素除去装置、通信機などが詰め込まれ、
宇宙船から完全に切り離された状態で4時間の生命活動を維持できるとの事。全部ひっくるめて80kgもの
重量になりますが、月面の重力は地球の1/6なので、現地では14㎏位になるのかな。それでも十分すぎる
ぐらいに重いのですが。
アポロ計画では宇宙飛行士一人一人にオーダーメイドの宇宙服が用意されましたが、現在は頭部や胴体、
手足それぞれが分割して規格化され、体型に応じて組みあげられるシステムになったとの事。昔の様に宇宙
開発に湯水のように予算を使える訳ではないので、何事もコストダウンですね。
続いて現れたのは・・・なんだこりゃ。巨大なピンポン玉を積み上げたみたいなこれは、旧ソ連時代に打ち上
げられた月面無人探査機ルナ24号。先程のモルニア通信衛星同様に、実機と全く同一のバックアップ機で
す。
すごい、もの凄くカッコイイぞこれ・・・。ボリュームのある丸っこい雪ダルマみたいな機体から沢山の観測機
器やアーム類が突き出ていて、実用性重視なのにとてもそれだけとは思えない、見ていてうっとりする様なデ
ザインです。同時期に競う様にして開発されたアメリカの宇宙船や探査機と比較すると、カッコよさに関しては
旧ソ連の圧勝だと言えますね。これのプラモデルってあるんでしょうか。欲しい、猛烈に欲しい・・・。
それにしてもかなりの数が作られたとは言え、実物同様のバックアップ機をほいほい譲ってくれるとは、ロシ
アも随分気前がいいなあ。いや、経済的に苦しかった時期だからこその投げ売りだったのかも。資源外交を
バックにした今のプーチンなら、いくらふっかけて来るかわかりません。
実機のルナ24号は1976年にバイコヌール基地からプロトンロケットで打ち上げられ、10日間に及ぶ月面
探査の末に170gの月面土壌をサンプルとして採集したそうです。白黒の渦巻きドリルがありますが、これが
きゅるきゅる回って地面をほじくり返していたんですね。なんかカワイイぞ。
ちなみに地球に戻ってきたのは、探査機の最上部に乗せられたバスケットボール大の黒い球体部分のみ。
こんなものを月面からスローイングして、38万km離れた地球のロシア領内にゴールさせたんですから、凄い
話だなあ。
それを考えると、いくら当時とは技術水準が異なるとはいえ、3億km離れた場所にある長径500m足らず
の小惑星イトカワに着陸し、採集したサンプルを誤差2kmという精度で地球まで送り返した宇宙探査機はや
ぶさ、そしてそれを涙が出るほどの超低予算でやってのけたJAXAの技術は、つくづく想像を絶するものがあ
ります。
またその傍らには、写真のみではありますが同じく旧ソ連の無人月面探査機ルノホート1号の展示がありま
した。なんというかこの、蓋をあけた洋式便器に8つのタイヤを取り付けた様なこのデザイン・・・。11ヶ月かけ
て8万平方kmにも及ぶ月面を動き回り、その間2万枚もの画像撮影とデータ送信、土壌調査を行ったという
極めて優秀な働きぶりに似合わない不格好さが堪りません。旧ソ連時代のデザインセンスにはもうメロメロで
す。
ここまで素晴らしい展示内容の連発に感動を禁じ得ませんが、壁面の写真展示に目をやると、上空を漂う
円盤の写真や、レティクル座ベータ星からやってきた宇宙人によってUFO内に連れ込まれた・・・と証言する
男が拾った謎の物体など、実にいい塩梅に胡散臭くなってまいりました。
さらに私のハートを鷲掴みにしたのが、UFO墜落で世界的に有名になったロズウェル事件を扱ったテレビ
番組用に作られた、精巧極まりない等身大宇宙人模型!前頭部と胸腹部が別パーツになっていて、脳味噌
も内臓もはいどーぞ!と言わんばかりに露出させてあります。どこの誰が作ったのか分かりませんが、極め
て真面目に仕事で遊んでいる様子がひしひしと伝わってきて、誠に素晴らしい。
ガチで信じ込んでいる訳でもなく、またあからさまにネタに走る訳でもなく・・・。この辺りのバランス感覚が絶
妙です。脳味噌まるだしの宇宙人の模型を作ってくれ!と頼む方も、よっしゃ任せろ!と受ける方も、ニヤニ
ヤしっぱなしなのに目は完全にマジ・・・という感じ。
ここコスモアイル羽咋からそう遠くない所にはモーゼの墓なるものがあり、地元の人は誰一人として信じてい
ないという非常に微妙過ぎる観光資源になっているそうですし、先程の気色の悪い広告を平気で出す蕎麦屋
があったりと、なんか色々面白い県民性なんでしょうか、石川の人って。本気とも冗談ともつかないギリギリの
ところで大真面目に遊んでいる感じが、私的には非常に好印象と言わざるを得ません。
お、床に置いてあるのは、JAXAが誇るH-Ⅱ型ロケットの2段目部分に使われているLE-5Aエンジンの
実物。液体水素と液体酸素を混合して燃焼させ、4トンもの重量物を静止軌道や太陽周期軌道に乗せる事が
出来るすごい力持ちです。100%国産開発というのがいいですねえ。
ちなみにH-Ⅱ型ロケットの呼び方ですが、「えいちつーがた」でも「えいちにがた」でもどちらでもいいそうで
す。
そして最後の展示物、バイキング火星探査船のランダーです。1975年に打ち上げられて77~82年にか
けて火星での探査を行い、写真撮影や気象観測、土壌・大気の分析、光合成や代謝に関する生物実験、さ
らには火星生命体の探査を行い、その分析結果を火星軌道上を周回していたオービターで中継して地球に
送り続けたとの事。ピンク色の大気の下、赤茶けたゴロゴロ石が何所までも続く火星表面の画像を見た事が
ありますが、あれはこの探査機が撮影したものだったんですね。
期待された火星の生命体を発見する事は出来ませんでしたが、完全な調査とは言えなかったので、その可
能性はまだ否定出来ないとの事。いいですねえ、究極のリアリスト達によって作られる、究極のロマンだなあ。
またこのバイキングは先程のルナ24号とほぼ同時期に作られた無人探査機ですが、ルナ24号が何とも言
えない愛嬌を感じさせるデザインだったのに対し、こちらはもう無機質なロボットそのもの。似た様な目的で作
られた両者ですが、それぞれ全く異なった雰囲気なのは、やはりいろんな意味で人間が作ったもの・・・という
感じですねえ。
と、ここで羽咋市がUFO神話の街と呼ばれる所以についての説明書きが。なにやらここ羽咋市に伝わる昔
話の中に『そうはちほん伝説』なるものがあり、夜な夜な灯りを燈して上空を飛びまわる不審な物体のエピソ
ードや神の力で自由自在に飛び回る物体のエピソード、巨大な鍋のようなものに人が攫われるエピソードが
あるそうです。
ちなみにそうはちほんとは、シンバルの様な形をした仏具の一種で、確かにこれは空飛ぶ円盤にそっくり。
そんな地元の昔話を拾い集め、
「よーしこの際UFOで町興ししちゃおうか!」
と、ここまでの施設を作り上げてしまったコスモアイル羽咋には、脱帽の一言です。いいなあ、こんな施設が
もっと沢山あればいいのに。
ん?なんだこりゃ?壁の一部に小さなステッカーが貼り付けてあるのを見つけました。宇宙人サンダーくん
のひみつ?全部で20種類ある?なんだこりゃ?
よく見ると展示室の目立たない所のあちこちに、似た様なステッカーがこっそりと貼ってありました。ははあ、
なるほど。隠しネタというか、レアカードを探して見つけてね!的なお遊び企画でしょうか。いやあ、いろんな形
で楽しませようと頑張ってますね、コスモアイル羽咋。という訳で、館内を探し回ってみましたが、
⑳ サンダーくんのヒミツはぜんぶで20個ある
⑨ サンダーくんはモノカゲから急にあらわれる
⑯ サンダーくんは暑さにものすごく弱い
⑫ サンダーくんの宇宙船はコスモアイルのどこかにある
⑪ サンダーくんは実はけっこう飲める
⑥ サンダーくんはそこそこ生活に疲れている
⑰ サンダーくんのおもな仕事はそうじである
⑬ サンダーくんの財布にはいつもお金が少ない
③ サンダーくんは日本語をしゃべらない
と、ざっとこんなところ。なんじゃこりゃ。これがあと11枚もあるのか・・・。
それにしても、高度に発達した文明からやってきたくせにそうじしか出来ないとか、おごりの時しか飲みに来
ないとか、あんまり大したことないなサンダーくん・・・。まあここでのアルバイト料は故障した宇宙船の修理代
に消えている様なので、仕方ないと言えば仕方ないのですが。
またこの「~なのですよ」語尾も、微妙に萌えキャラを意識してるみたいでイラッとさせられますが、やっぱり
カワイイので許してあげましょう。
宇宙に関する沢山の文献や資料が揃ったガラス張りの部屋もありましたが、残念ながら関係者以外立ち入
り禁止。きっと貴重な資料が多いのでしょう。しかしこの、窓際に並んでいる気色悪い宇宙人フィギュアの群れ
はなんなんだ。この辺りのアカデミックとお遊びの絶妙な融合が、コスモアイル羽咋の真骨頂だなあ。
コスモシアターの隣には『人気撮影スポット』なるコーナーがあり、壁にでかでかと描かれた宇宙の風景画を
バックに撮影してね!との事。まるで中国の観光地みたいなこのいい加減さがたまりません。すぐ傍には、観
光にやってきた宇宙人一家が描かれた案内表示板がありますが、折角宇宙人が地球に遊びに来たのに、何
が悲しくてニセ宇宙の写真を撮らないといけないのでしょうか。海外旅行先でインチキ丸出しな日本料理店に
入ってみたくなる様な心境かな?あ、でもそれなら理解できるかも。
最後はお土産売り場へ。ここも実にコスモアイル羽咋らしく、ひと捻りふた捻りした胡散臭く気色の悪いグッ
ズ類がてんこ盛り。中でも特にバカバカしくて気に入ったのが、サンダーくんうちわ。あと、本物の宇宙食とし
て開発されたレトルトカレーも購入です。これは以前食べた事がありますが、戦闘糧食とは言えないものの、
レポ内におまけ的なリンクを設定して試食レポを行いたいので、改めて一つ購入。
ええい、あとサンダーくんシールも買っちゃえ!40過ぎたおっさんが、カワイイからという理由でこんなもの
を買ってしまうのはちょっとどうかと思いましたが、まあいいか。
ちなみにこの売店の売り上げの一部は、サンダーくんのアルバイト料に当てられるとのこと。そのサンダー
くんですが、レジのキャッシュトレーでも大活躍していました。
という訳で、コスモアイル羽咋の見学を終了。いやー、これでもかこれでもかと様々な角度から見学者を楽
しませるコスモアイル羽咋。売店のショッピングバッグもイカレ・・・いやイカしてますし、知的好奇心とお遊び
の完璧な融合とは、まさにこの事なんだろうなあ。こんな凄いものを見せつけられると、私ももっともっと頑張
っていいHP作らなくちゃなあ・・・と、大いに刺激を受けた再訪でありました。
![](2015cosmoisle61.jpg)
さて、この後は富山県の日本海食堂にて昼食です。午後からは新潟県に移動して、燕市内の銭湯を堪能し
てからあのホテル公楽園にて初めての宿泊です!ワクワクしながら、富山県に向けて車を走らせました。
石川富山新潟遠征初日、日本海食堂昼食編に続く
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