舞鶴ツアー2014 (二日目)

2014.03.23



       今年初のイベントとなる舞鶴ツアーの二日目です。前夜の車中泊先となった舞鶴若狭自動車道の綾部PA
      早朝に出発。もう4月前だというのに路面がかちんこちんに凍結していた事に驚きを感じつつ、舞鶴東ICで
      一般道に降りて前島埠頭を目指します。
       早朝の前島埠頭から眺める北吸桟橋はやや左側面からの順光ですが、艦橋部は朝日を受けて照り照りで、ど
      の艦もなんだかダイキャスト製のオモチャみたい。あんなにデカイはずの護衛艦みょうこうが、縮んで見える
      のが実に不思議
。想像していた様な画像にはなりませんでしたが、光の加減って面白いなあ。


       その後は西舞鶴の鮮魚店等を見てまわり、今年初入荷の地もののアサリを入手。よし、今夜はこれで酒蒸し
      かお吸い物だな!
       0900になるのを待って、赤れんがパークの駐車場へ車を乗り入れます。まだ人気は少なく、赤れんが倉
      庫
も朝の光を浴びていい感じ。きちんと整備されながらも、肝心の赤れんが倉庫は程良く汚れを残していて、
      傷み加減古び加減がとても素敵
です。円柱形の郵便ポストも、実に自然に周囲の空気に溶け込んでいます。少
      し離れた所にある赤れんが博物館のすぐ横からは、掃海艇桟橋越しに北吸桟橋を見る事が出来ました。


       それでは赤れんが博物館に向かいます。この赤れんが博物館は1903年に旧舞鶴海軍兵器廠水雷庫として
      建築された建物を再利用した、国内に現存する鉄骨構造のレンガ建築物としては最古級のものだそうです。レ
      ンガそのものについてはさほど興味がありませんでしたが、古いものをどういう風に工夫して見せているのか、
      以前から気になっていたんですよね。


       入館料300円を払って館内に入ると、おお、これはなかなかいい雰囲気。照明を抑えた館内は程良く暗く、
      スポットライトに照らされたレンガを上手く演出しています。
       エントランスのすぐ脇には巨大な錨がドーンと展示してあり、これは舞鶴を母港としていた護衛艦いすず
      装備されていたものを貰い受けて展示してあるとの事。でかいので苦労して撮影していると、受付にいた女性
      が
       「あの〜、看板どけましょうか?」
       と、気を使ってくれました。


       1階部分に展示されていたのは、ポーツマス・ドックヤードアウシュビッツ収容所ベルリンの壁アム
      ステルダム中央駅
クレムリンコロニア・グエル地下聖堂など、世界各地の有名なレンガ建築物で使用され
      ていたレンガ群。その他にも様々な文明で使用されたレンガも並んでいますが、正直なところジャンルがあま
      りに特殊過ぎて、凄いんだか凄くないんだか今一つピンとこない内容
です。
       とは言え、普通の人の価値基準を振り切った分野で異様なこだわりっぷりを見せているところは、そのマニ
      アックさ
に心を打たれた気分。レンガにかけた舞鶴市の地味な狂気が、私のハートをがっしりと鷲掴みにした
      感じ。


       正直大したことは無いだろうと思っていたのですが(スミマセン)、これはもしかしたら、凄い博物館なの
      かもしれないぞ・・・
と思いながら、スタンプ用紙に来館記念スタンプを押印します。
       そして面白かったのが、館内に再現されたホフマン窯展示コーナー。複数の焼成窯を楕円形に連結し、内部
      で粉炭による火を順番に移動させながら余熱、前期焼成、中期焼成、後期焼成、冷却のサイクルを繰り返す
      非常に高効率なレンガ大量生産システムです。


       一定量のレンガを焼き上げる度に窯に火を入れたり落としたりする必要がある従来の焼成方法とは大きく異
      なり、まるで4サイクルエンジンの燃焼過程の如く連続してレンガを生産するホフマン窯は、窯の着火消火の
      際のエネルギーロス
がなくなるので、まさにレンガの大量生産に革命を起こしたと言っても過言ではないシス
      テムなんですね。
       当時京都府に作られたホフマン式輪窯全長45mという巨大なもので、館内に再現されているのはそのご
      く一部。とは言え、照明の薄暗さ鏡による錯覚を効果的に使っていて、実物よりもぐっと奥行きがある様に
      見せているのが面白いなあ。江戸川乱歩の『パノラマ島奇譚』を彷彿とさせる、トリックじみた見事な展示手
      法
です。


       ホフマン窯を出た所には売店があり、レンガ色のハンカチレターセットを記念に購入。連絡事もメッセー
      ジも万事メールで済ませてしまう今日この頃、手紙なんてもう何年も書いていない気がしますが、その微妙に
      時代遅れな感じとシックなデザイン
が気に入りました。展示物が素晴らしいと、ついこういうものも欲しくな
      りますよね。
       その後は2階へ移動。踊り場の上にはステンドグラスがあしらわれ、薄暗い館内の怪しい雰囲気館外に広
      がる舞鶴の青い空
の両方を上手く活用しています(画像は上手く撮れませんでした・・・)。凄いな、この博
      物館。私の趣味にどストライクです(笑)。
       2階は舞鶴市と海軍の歩み、そしてその中でレンガが果たしてきた役割等が分かりやすく展示されていて、
      各国によって事なるレンガの組み上げ方式の違いを、積み木の様なミニチュアレンガを使って実際に試す事が
      出来るコーナーもありました。単に展示物を見せるだけでなく、指先の感覚で実際に体験できるのもいいです
      ねえ。


       また、昨日見て来たばかりの建部山堡塁砲台跡についての展示もあり、精巧に作り上げられた現地のジオラ
      マ
が面白いなあ。他にも、レンガ造りの古くて地味な建築物はここ舞鶴市内に沢山埋もれているらしく、私の
      好奇心
どこか歪んだ行動力を思いっきり刺激してくれました。全国各地に見たいものは沢山ありますが、し
      ばらくは舞鶴に的を絞って集中的に歩いてみようかなあ。
       あと『赤レンガ倉庫を作った人々』というコーナーには、東郷平八郎提督の大きな写真が展示されていまし
      たが、なんでこんなオカマみたいな口紅を引いているんだろう・・・。
       もともとの古い白黒写真に後から色を入れたんだと思いますが、礼装や勲章が実に自然な色合いで復元され
      ているのに、唇だけがやけに雑というか極めてオカマチックなので、そこだけもの凄く浮いて見えます。うー
      ん、なんじゃこりゃ・・・。


       ミニチュアや展示物による解説も分かりやすいですし、照明によるレンガの陰影の演出も実にお見事。レン
      ガそのものに興味がない人もいつの間にかレンガワールドに引き込まれ、一回りした後はいっぱしのにわかレ
      ンガオタク
になりそうな、素晴らしい博物館でした。いやー、ほんと面白かった。


       その後は北吸桟橋へ移動して、一般公開に臨みます。10時の開門を待って正門をくぐり、受付テントの列
      へ。テントの向こうにはDDG177護衛艦あたごの巨大な艦橋構造物が聳え立ち、まるでピラミッドの様。
      まさに見上げる様な迫力です。


       「あ、あれあれ!あれがふゆづき!」
       と、列の後ろの方の人達が言っていますが、ごくごく普通の地元のおじさんおばさん達で、マニアっぽさと
      いうかそのスジの人間特有の雰囲気がまるでなかったのが印象的。テレビのローカルニュースで話題に出たん
      でしょうか。これまで自衛隊について関心が薄かった人達が、こういったイベントに足を運ぶようになったの
      はとてもいい事です。

       桟橋を見下ろすようなあたごの威容にも目を奪われますが、今日は舞鶴に配属になったばかりのふゆづき
      注目ですね。おおー、やっぱりでかい!基準排水量5000トンと言えば、しらね型やはるな型といった一昔
      前のDDHレベル
ですからね。やっぱり迫力あるなあ・・・。


       一番艦のあきづきには昨年高知港で行われた体験航海で乗艦しましたが、ふゆづきは岡山県玉野造船所で行
      われた進水式&命名式に参加した艦なので、やっぱり思い入れが違います。
       あの時は船体が出来たばかりで、艤装は殆ど進んでいませんでしたが、こうして各種レーダー機器127
      mm速射砲、ファランクス等
を搭載して護衛艦隊の第一線で頑張っている様子を見ると、ほんと立派になった
      なあ・・・
と感慨深い思いです。
       弾道ミサイル防衛という新たな任務を背負う事になったイージス艦の防空を補佐すべく、洋上にて辺り一面
      にギロギロとガンを飛ばしまくっている様子
が想像できますね。


       桟橋に長々とその巨体を横付けしているAOE425補給艦ましゅうですが、艦橋構造物は艦幅そのまんま
      の横長で、よく見ると広大なウイング部分テントが張れるよう、フレームの張り出しが作られています。
      時間にわたる洋上給油や補給作業の監視
の際には、このフレームに日除けのキャンバスが張られるんでしょう。


       甲板に何基も立ち並ぶデリックポストクレーン、その他何に使われるのかよくわからない機器類がいっぱ
      いで、ましゅう型は一度乗ってみたい艦の一つです。数年前にふた回り程小さな補給艦とわだを見る機会に恵
      まれましたが、あれでも相当な大きさでしたし。
       それにしても、14000トン近いひゅうが型に匹敵する巨体を、3000トン足らずのはつゆき型よりも
      はるかに少ない人員
で維持しないといけない訳ですから、甲板掃除等での一人当たりの作業量は大変なんだろ
      うなあ。厖大な数の機器類のメンテナンスも含めて、乗組員の人達の苦労には頭が下がる思いです。


       そして桟橋の西側には、DD130護衛艦まつゆきの姿が。トップヘビーだの腰高だの余裕がないだの、今
      となっては旧式呼ばわりされても致し方ないはつゆき型護衛艦ですが、やっぱりデザイン的なバランスの良さ
      というか、いかにも軍艦らしい適度にごちゃごちゃした見た目のカッコよさはこれが一番だなあ。
       ちなみに全12隻ものラインナップを誇るはつゆき型護衛艦ですが、乗艦する前に退役してしまった一番艦
      はつゆきを除けば、未乗艦なのはこのまつゆきだけなんですよね。海上防衛の第一線からはつゆき型が姿を
      消す日もそう遠くないので、何としてでも近いうちに乗艦したいものです。


       港の最奥部にはミサイル艇うみたか、そして水船油船交通船タグボートといった舞鶴地方隊の縁の下
      の力持ち軍団
が、のんびりと朝日を浴びて休息中。こういう作業船の一般公開や体験航海も、是非やってほし
      いですね。日本の海の守りの最前線で奮闘している護衛艦もいいですが、それらが万全の体制で働ける様しっ
      かりと下支えしている作業船
も、もっと脚光を浴びてもいい筈です。


       舞鶴の顔とも言うべきイージス艦みょうこうと最新鋭のあたご、それら2隻を強力にバックアップする生ま
      れたばかりのふゆづき、いつか乗りたい憧れのまつゆき、誰にも負けない超高速を誇るうみたか、それらの長
      期的な作戦行動の面倒を見るましゅう、そして港内での様々な作業を一手に引き受ける作業船団・・・と、
      かにも舞鶴らしいラインナップが楽しめた北吸桟橋の一般公開でした。
       端の方にいたAMS4301多用途支援艦ひうちを見る事が出来なかったのは少し残念でしたが、天候も文
      句なしの青空でしたし、来てよかったなあ。
       最後は売店を一回りして、舞鶴地方隊北吸桟橋を後にします。その後は道の駅地元スーパーに立ち寄って
      色々と買い足して、12時前に舞鶴を出発。


       途中の西紀SAの野外売店にて肉巻おにぎり味覚汁を堪能しましたが、この味覚汁って何だろう。詳しく
      聞かずに買ってしまったのですが、根菜類と豚肉がどっさり入った味噌仕立ての豚汁でした。
       しかしこれ、以前どこかで食べた様な気がするなあ・・・と思ったら、秋の伊丹駐屯地で行われる中部方面
      隊創隊記念行事
の屋台群で、福知山の人達が出していた猪汁と同じ味でした。この辺の特産の味噌を使ってい
      るのかな?この遠征の最後を締めくくる、ほっとする優しい味わいでありました。


       今年初のイベントとなる舞鶴遠征、天候にも恵まれて実に楽しめました。実質一日半の行動時間でしたが、
      次回来た時はここも見たいあそこも見たい・・・と、軍港としての歴史を持つ舞鶴の懐の深さを改めて思い知
      らされた二日間でした。



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